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2008年01月31日

NO・916幾つかの重要と思われる短いニュース

解説を書くにはまだ早いが、重要だと思われるニュースが幾つもある。これらのニュースを何本かまとめてご紹介しておこう。

1:1月30日=イスラエルのネタニヤフ元首相は、経済協力がパレスチナ・イスラエル問題解決の良薬(西岸地域での3箇所の工業団地建設計画や、ヨルダン渓谷工業地帯構想を推進すれば、パレスチナ人の生活はよくなり、不満は解消されるという発想)

2:水が21世紀の国際紛争の原因になる(アラブ諸国でも、水資源問題が大きく取り上げられるようになってきている。トルコが川の流れを止めれば、シリアやイラクは干上がってしまうという現実がある。それ以外にも、水不足に悩むアラブ諸国は多い)

3:ガザとエジプト国境の壁が壊された結果、多数のハマース系テロリストが、シナイに入り込んでいる、という報告がイスラエルからあった。彼らはシナイ半島に潜伏するだけではなく、多くの武器をガザ側に持ち込んだとも、イスラエルは報じている)

4:中国将軍がイラン入り(中国軍幹部がイランを訪問し、イラン領内に中国軍の軍事基地を建設する、合意が交わされた。これは、フランスがアラブ首長国連邦に、海軍基地を建設する合意が交わされたことに対する、イランの対抗措置だと説明されている)

5:イスラム諸国議員会議にイランが参加(エジプトで開催された、イスラム諸国国会議員会議に、イランが大デレゲーションを派遣した。これは、両国関係が改善していることを示すものだ、とイラン側は説明している。

6:イラクが韓国企業への石油供給ストップ(イラク政府は、韓国企業とクルド自治シフトの間で交わされた、石油取引を認めないことにした。同時に、韓国企業が合意したバジアン鉱区の石油開発についても否認した)

7:シリア政府が元国会議員のライド・セイフ氏を逮捕した(ライド・セイフ氏は2000年の「ダマスカスの春」の主役の一人、シリアの著名な民主化運動家だ。彼が逮捕されたということは、以前に書いた(NO・912)シリア内部での何らかの変化に関連するものではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:33 | パーマリンク

2008年01月30日

NO・915小さなパーテイで会ったイラク通の話

 昨夜、小規模なイラクに関係した集まりがあった。そこには、これまでイラクと仕事をしていた人たちが集まったのだが、どうも見ていると、OBという感じの年配者が多かった。
 「貴方は何時ごろイラクに?」「自衛隊と一緒に2004年の1月に入りました」「そうですか私は1980年代に、、。」いろいろな貢献を、イラクにした人たちであり、それぞれにイラクに対する、思い入れがある人たちのようだった。
 そんななかで、イラクの内情に詳しい人物が一人いた。早速、彼に日本人があまりしないような、質問を向けてみた。
 日本企業や政府が、イラクに日本人を本格的に送り出すためには、現地の安全が最大のポイントであろう。したがって、現在の治安状況がどうなのか、という質問は当然のことであろう。
 もうひとつは、現在の状況が改善に向かっていても、将来、イラクが三分割されるのでは、たとえアメリカ軍が力づくで、安全な状態を創り出しても、安全な状態は長続きしない、と判断すべきであろう。
イラクが三分割されれば、地下資源の多い地域と、そうでない地域との間で、資源をめぐる闘争が起こる、と考えるのは当然のことであろう。ちなみに現在の段階では、イラクの石油資源は、北部と南部に偏っているといわれている。
 イラクの治安状況について、この人物は「1年から1年半で大分落ち着くだろう」と話していた、もちろん、それよりも早い時間に、安全の度合いが高くなることを、期待してもいたのだが。
彼の判断は、いたって正直な判断だろうと思った。もし半年とか今年以内に平和が実現する、というような言い回しをしたら、次の質問をする気にならなかったろう。
もうひとつの質問は、イラクの三分割についてだったが、これも非常に納得できる内容の返答だった。彼が言うには「イラクの海は南部にあり、大量の物資を輸入するためにも、輸出するためにも、海がもっとも便利なことは、誰にも分かろう。
もし、イラクが三分割されれば、港はシーア派の国(地域)だけが持つことになり、他のスンニー派の国(地域)やクルドの国(地域)は、海運と港の便利さを、享受することが出来なくなる」と言うのだ。
彼が言うには「同様に、ハイウエーをイラクの北から南まで通そうとすれば、国が三つに分断されているのでは意味がなくなるし、鉄道輸送も同じように、不便になってしまう」というのだ。
それでは、イラクは三分割しないで、どう存在していけるのか、という質問に対して、彼は「連邦の形をとり、それぞれの地域の利益を保証しあうことだ。そのためには、統一国家、中央政府がどうしても必要なのだ」と語っていた。
イラクを外側から見ていると、明日にでもイラクが三分割してしまいそうに思えたり、クルド地域は既に実質的に、分離独立しているではないか、と主張する人も少なくないだろう。しかし、イラク内部の人たちは、必ずしもそうは考えていないということだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:35 | パーマリンク

2008年01月29日

NO・914期待されるエジプト・イランの和解に希望

 中東の三大国エジプト、イラン、トルコの関係が正常になれば、ほとんどの中東地域の問題が、中東の国々の間で解決できるのではないか、という期待を持ち続けて久しい。
 これまでも述べてきたように、最近になってトルコとイランの関係が改善し、両国は多くの分野で、協力する形になってきている。トルコとエジプトの関係も、ほぼ問題ないのではないかと思える。一時期のように、エジプトがアラブ諸国の盟主だ、と主張する傾向が和らいできているからであろう。
 残るのは、エジプトとイランとの関係だが、これも最近になって、改善の兆しが見え隠れするようになった。今月に入り、これまで核開発問題の交渉で、前面に立って活動してきていた、ラリジャニ氏がエジプトを訪問した。
 アハマドネジャド大統領も、ムバーラク大統領に電話をして、ガザ問題の解決に向けた、協力の意思を伝えている。二人の会話も、決してぎこちないものではなかったようだ。
ラリジャニ氏のエジプト訪問時に、エジプト側を代表して、ラリジャニ氏の対応に当たったのは、アブルゲイト外相だったが、この二人の会話もいたってスムーズなものだったようだ。
 ただ、エジプトとイランとの間には、これから解決していかなければならない、幾つかの問題が横たわっていることも確かだ。
イランの側からすれば、イラン・イラク戦争時に、エジプトがイラクを支持したことは、忘れられない敵対行為であったろう。また、エジプトがサダト大統領の時代に、イスラエルとの外交関係を正常化させたことも、許せないことだった。
加えて、ホメイニ革命が戦い、遂には打倒したイランのパーレビ国王が、国外脱出した後、エジプトが最終的な死に場所を与えたことも、不愉快なことであったろう。
パーレビ国王の墓は、いまだにカイロの一角にあるモスクの中にあり、そこでは、イマームが毎日コーランを読誦してもいるのだ。エジプト側からすれば、当然の善意の証ということであろう。
しかし、多くのイラン国民を、圧政下に置いたパーレビ国王が、たとえ死亡した後とはいえ、厚遇されることは不愉快なのであろう。うがった捉え方をすれば、エジプト政府はいまだに、パーレビ王家の末裔を支持している、とも取れるからだ。
そうしたハードルを飛び越えて、エジプト・イラン関係が、いま30年ぶりに回復しようとしているようだ。ガザ問題をめぐって、両国は支援協力を討議したが、当然のことながら、外交関係の正常化以外に、政治協力なども話し合われたようだ。
イランのモッタキ外相が、エジプトとの外交関係正常化を、希望する旨の発言をしたのに対し、エジプトのアブルゲイト外相も、イラン側が幾つかの点で歩み寄りを示してくれれば、外交関係の正常化は可能である旨の、前向きな発言をしている。
イランとエジプトの関係正常化は、もう少し時間を必要としようが、確実に前進している、と見ていいのではないか。もしエジプトとイランとの関係に前進があれば、中東の状況には大きな変化が、生まれることが期待できよう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:30 | パーマリンク

ユーラシア情報ネットワークからお知らせ

東京財団 ユーラシア情報ネットワークのページに田代秀敏研究員の分析レポートが掲載されています。
今回は、中国のソヴリン・ウェルス・ファンドについて分析されていますので皆様どうぞご覧ください。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 17:29 | パーマリンク

NO・913急ぎ過ぎたイスラエルのエネルギー供給再開

 イスラエルがガザに対する、エネルギー供給を再開すると発表したこのエネルギーはあくまでも、工業用に限定されるという説明をイスラエル政府はしている。
 しかし、ガザでは現実には発電用のオイルが、底を尽く状態にあり、煮炊きする灯油が無い状態では、どのような口実を付けようが、イスラエルが供給するオイルは、パレスチナ人の必要にそって使われることになろう。
 イスラエルがいまの段階で、ガザへのエネルギー供給を再開すると発表したことは、結果的には「世界の目を気にした結果」であり「自国を悪者にすることを嫌った結果」であり、それは、ガザの住民の状況を考慮したものでは無い(人道的な意味からでは無い)という判断をされるだろう。
 しかも、パレスチナ側からは、思い切った手段を講ずれば、イスラエルは妥協する、という風に取られるだろう。そうでなくとも、最近のイスラエルは国内的に不安定の度を増し、国際的にも敵視される度合いが高まっている。
 今回のガザのボーダー破壊の事後処理は、エジプトに当分の間は任せる方を、私は選択すべきだったと思うのだが。そのなかで、既にエジプトが始めているように、ハマースとエジプト政府の対話が始まり、ハマースとファタハとの話し合いも、エジプトの仲介で進むだろう。その上でのエネルギー供給再開ならば、エジプトの顔を立てたのであって、今回の暴挙に妥協したのではない、と世界中が認め、しかも最も肝心なパレスチナ人たちが、イスラエルの決定をそう受け止めるだろう。
 早期の妥協は、新たな危機をイスラエルとパレスチナとの間に、生み出すだけであろう。以前にも書いたように、エレズの検問所に50万人のパレスチナ住民が殺到した場合、イスラエルはどう対処できるというのか。無差別に銃撃を加え、パレスチナ人を大量に殺戮するわけにもいくまい。 

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:37 | パーマリンク

2008年01月27日

NO・912シリアのパレスチナ会議強硬論が前面に

 シリアの首都ダマスカスで、1月23日から25日にかけて、パレスチナ各派の総会が開催された。
この会議には、およそ900人が参加したと伝えられているが、その結果は、これまで積み重ねてきたパレスチナ・イスラエル和平を、全面的に切り崩すものであったようだ。
 イスラエルに関する表現は「イスラエル」から、「シオニズム体」に変わっている。そのことは、当然のことながら、イスラエルの存在を、全面的に否定するという意味だ。 
 加えて、1967年に起こった第三次中戦争以前の、パレスチナの領土をパレスチナ国家の領域とする、という案は姿を消し、「川から海まで」という範囲に変わっている。
 「川から海まで」というのは、ヨルダン川から地中海までの間の土地全部、という意味であり、当然のことながら、イスラエルの存在を全く認めない、ということだ。
 また、パレスチナ難民の帰還については、個人の権利であると同時に、集団の権利でもあるとしており、先にブッシュ大統領が提案した、「代償を払うことにより帰還権を放棄する」という考えは、全面的に否定されたということだ。
 このダマスカスで開催されたパレスチナの総会には、PFLP、DFLP、ファタハなどは顔を出さなかったようだ
 アラブ諸国の大使にも招待が出されたが、これもほとんどが欠席したようだ。例外的に参加したのは、イエメン大使と南ア大使だけだった。もちろん、米英の大使も欠席している。
 問題は、何故この時期を狙って、シリアがパレスチナ総会の開催を、許したかということだ。(あるいはシリアが開催したと判断してもいいだろう)
 シリアはパレスチナ各派を前面に出し、欧米に対し、シリアを無視しては中東和平は進まない、と主張したいのか、あるいはシリアの権力内部で、強硬派が優位に立ってきたのか、のいずれかであろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:39 | パーマリンク

2008年01月26日

NO・911アラブ各地でガザ住民支持デモ

 ガザとエジプトを隔離する壁が破壊され、多くのガザに住むパレスチナ人が、エジプト領内になだれ込んだ。エジプト政府は、当初は食料、燃料などの購入を許していたが、イスラエルとの関係から、ガザの住民を締め出さなければならない状況に、追い込まれているようだ。
 エジプト政府はこのため、放水器などを使い、ガザからの入国者を追い返し、金網を張って応急の壁にするつもりだった。しかし、ガザの住民の激しい抵抗を受け、エジプト警察官が36人も負傷する事態に発展し、力ずくでガザの住民を追放することを、手控え始めているようだ。
 先にも書いたように、今回のエジプトとガザの壁が破壊され、ガザの住民がエジプト領内になだれ込んだことは、簡単な問題ではない。これは、ハマースが周到に計画を立てて、実行したものと思われる。
 ガザの住民を追い返すには、銃の使用が必要であろうが、それはエジプト政府には出来ないことだ。世界のジャーナリストはいま、エジプト・ガザのボーダーに集まっているのだ。
 このガザの状況を受け、エジプト、ヨルダン、バハレーンでは、ガザの住民支持と、ボーダー開放を要求するデモが行われた。金曜日には、エジプトのカイロ郊外にある国際展示場で開催されていたブック・フェアー会場の外で、平和的なデモが2000人の参加で実行された。
 彼らは「ガザを救え」という横断幕を掲げて、デモ行進した、とインターナショナル・ヘラルド・トリビューンは伝えている。彼らの多くは、ムスリム同胞団のメンバーで、コーランを掲げ、パレスチナのカフィーヤを、頭にかむっていたということだ。
 ヨルダンでも、金曜礼拝のあと、3000人がガザ住民支持のデモを行った。彼らはハマース支持と、イスラエルに対する特攻攻撃を呼びかけた。実行の主体となったのは、イスラーム行動フロントという組織だが、これはムスリム同胞団の別働隊だ。同様に、バハレーンでも金曜礼拝の後に、ガザ住民支持のデモが、数百人の参加で実行されている。
 アラブ各国はこうした動きが、危険な段階にまで発展していかないように、最大限の対応策を採っているようだ。もし、この対応が不十分であれば、アラブ各国で暴発が起こるであろう。ガザのパレスチナ住民の問題がいま、アラブ全体の問題に拡大していく、危険性をはらみ始めているようだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:26 | パーマリンク

NO・810ガザ・エジプトの壁が崩れたということ

 ガザとエジプトとを隔離する、壁が破壊されて数日するが、いまのところ、イスラエルもエジプトもハマースも、現状を変える意思はないようだ。
 つまり、ガザの住民は相変わらず、エジプト領内に入り買い物をし、病気の治療を受けたり、薬を買ったりしているのだ。それはあたかも、ガザの住民がエジプト国民であるような状況なのだ。
 もともと、ガザはエジプトの統治下にあったわけであり、表面上はいろいろな発言がなされているが、それは政治外交上の発言であり、ガザの住民もエジプト政府も心の中では、現状に対してあまり、違和感を抱いていないのではないか。
 エジプト政府はガザの人道が、危機的状況から回復するまでは、ガザの住民がエジプトに入ることを、放置する(許可する)と言い、イスラエルはエジプトがガザの問題を、解決すべきだと言い出している。
 ハマースはハマースで、ボーダーの管理はエジプトとハマースとの間で、話し合うべきだと言い出している。
 一部のマスコミでは、イスラエルとガザとの間に設けられている、エレツのゲートにもガザの住民が集結し、破壊されるのではないか、という推測を報じている。
 既に、今後の大まかな推移についての予測は書いたが、このガザの壁が崩されたということは、一体イスラエルにとって、どのような意味があるのだろうか。イスラエルが現状を放置すれば、ガザの住民だけではなく、西岸のパレスチナ人も、似たような行動を起こすであろう。
 つまり、今回のエジプトとガザを隔離する壁が、壊され放置されているということは、西岸を分断する、イスラエルが建設した安全のための壁も、壊される可能性があるということだ。
 そうした事態になれば、イスラエルは軍を西岸に送り、これを阻止しなければなるまい。当然のこととして、西岸の住民もこのイスラエル側の対応に対抗し、本格的なイスラエルに対する、抵抗闘争を起こす可能性があろう。
 ガザの壁が破壊されて、放置されているということは、エジプト側から武器兵器が、ガザにどんどん持ち込まれる可能性がある、ということでもあるのだ。これまでのような、地下トンネルを通って、秘密裏に運び込まれるのとは、まるで状況が異なってこよう。
イスラエルには、今回の動きを前にガザを放棄し、エジプトにガザの管理を任せよう、という考えがあるようだが、それはイスラエルにとって、命取りになりかねない、危険なことなのだ。
 ガザに資金と武器兵器が持ち込まれ、外国人の義勇兵までもが、ガザに入ってくるようになれば、戦闘が始まった場合、イスラエル軍が苦戦を強いられようし、イスラエルの民間人の居住地域に対する、パレスチナ側からの、ミサイル攻撃も本格化しよう。
 こう述べると、「まさか」と思う人がいるだろうが、エジプトが黙認する形で、実質的にエジプト政府が追放した、エジプト人ムスリム同胞団などの、イスラーム原理主義者たちは、現在ガザの元イスラエル人の入植地に、住み着いているのだ。
一説によると、彼らは武器兵器に関する知識を、パレスチナ人に教え、戦闘訓練も指導しているということだ。エジプトの反政府勢力だけではなく、イラン人やシリア人、レバノンのヘズブラのメンバーなども、ガザの壁の破壊の後、しかも、エジプト政府がその状態を放置するなかでは、ガザに入り込むことはそれほど難しいことではあるまい。
 イスラエルはそのような悪夢を、考えてみているのだろうか。現状では、オルメルト首相のスキャンダルや辞任などは、第三第四の重要事項であろう。優先順位を間違えて対応していたのでは、とんでもない事態が起こる危険性があるのだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 02:05 | パーマリンク

2008年01月24日

NO・809エジプト・ガザの国境壁破壊の意味するもの

 エジプトとパレスチナのガザ地区とを分断する壁が、ハマースのメンバーによって破壊される、という事件が起こった。そして、その破壊された部分から30万人とも35万人ともいわれる、パレスチナがエジプト側に入境した。
 彼らのエジプト側への入境理由は、あくまでも食料やタバコ、灯油などの購入が目的であった。それは、ガザ地区がイスラエルによって閉鎖され、オイルも電力も食料もタバコも、止められているからだ。
 このため、ガザ地区はいま飢餓の状態に近づいている、と人権団体や国連難民事務所などが、緊急アピールを発してきた。マスコミの報道を見ていると、ダンボールや木切れなどで煮炊きをして、生活している光景が目に入る。
 そうしたなかで、今回のエジプト・ガザ国境壁の、破壊があったということだ。その規模は決して小さくはない。壁には20箇所の穴が開けられ(壁が崩され)その後、ブルド−ザーで壁が取り払われているのだ。
 イスラエルがこれまで、ガザの閉鎖を断行してきた裏には、ガザにエジプト側から武器兵器が持ち込まれ、それによってイスラエル側が、攻撃を受けていたからだ。
イスラエル側の主張によれば、ガザのハマースはミサイル、地対空ミサイルなどを所持しており、これを操作するには、シリアやイランなどで訓練を受ける必要がある、ということになる。
 そうした強硬な立場をとっていたイスラエルが、今回の国境壁破壊については、穏健な立場を発表している。イスラエル側は「国境問題はエジプトが解決するだろう。」というのだ。
 ハマースの治安員は「エジプトとガザの間には国境は要らない」と語っている。他方、ムバーラク大統領は現状を当分放置するのではないか。彼は「人道的危機状況が解決されるまで国境は閉鎖しない。」と語っている。
 一体これは何を意味しているのだろうか。推測されるのは次のような事柄だ。
1:エジプトとイスラエルとの間で、ガザの管理についての秘密合意が出来たのではないか。
2:ガザは住民も含め、エジプトが管理することになるのではないか。
3:こうした裏があり、エジプト政府はこれまで、ハマースに対する対応を、ゆるくしていたのではないか。(エジプト・ガザ国境のトンネルを通じ、武器、資金をハマースはガザに持ち込んできたが、エジプト政府は厳重な監視はしていない)
4:今回の国境壁の爆破は、イスラエル・エジプト・ハマースの間で合意されていたのではないか。
5:ハマースは国境壁爆破前に、ガザの住民にそのことを、伝えていたのではないか。(30万人とも35万人とも言われる人数が、一気にエジプト側に渡るということは、それ以外に考えられない。現場写真を見ると、ガザ住民が越境を準備していたとしか考えられない。しかも、彼らは食料や灯油、タバコなどを購入して帰っているのだが、エジプト側が特別に用意していなければ、それだけの量がガザの国境に集積されているはずがない。)

 つまり、西岸地区については、イスラエルとマハムード・アッバース議長が管理し、問題を解決するが、ガザはエジプトに管理を任せることにより、イスラエルはパレスチナ問題に対する、一応の解決を生み出そうとしているのではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:21 | パーマリンク

2008年01月23日

NO・808アメリカのイラン制裁は失敗

 国連安全保障理事会の常任理事国5カ国とドイツが、アメリカの提案したイランに対する、新たな制裁について話し合った。
 結果は、どうやらアメリカの思惑ははずれ、各国共にイランに対する強い制裁は望まず、アメリカの面子を、かろうじて保つ程度のものに収まったようだ。
 新制裁は、渡航禁止とイランの海外資産凍結だった。
 したがって、今後イランに対する対応は、欧米共に緩んでいくということではないか。イスラエルが表面的には強気で、単独でもイランを攻撃する意思のあることを口にしているが、なかなかそうは行き難くなったのではないか。
 世界のイランに対する潮流は、完全に変わり始めているのではないか。日本の判断はどうなのかが問われる。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:48 | パーマリンク

NO・807エジプトと共通の話題を見出したA・ネジャド

 これまで疎遠だったエジプトとイランの関係が、修復しつつあるのではないか、ということをお伝えしたが、どうやら、それが本格的になり始めたのではないか、と思われる。
 イランのアハマド・ネジャド大統領が、エジプトのムバーラク大統領に電話をして、パレスチナ問題を話しあったということだ。もちろん、話題はガザのパレスチナ人の窮状を、どう救うかということだった。
 この問題は、ムバーラク大統領にとって、自分の政権を維持していくことに、直結しているだけに、アハマド・ネジャド大統領との間で協力が出来れば、それに越したことはない、と思ったことであろう。
 ガザの住民が電力、食料、水の供給を、イスラエルに止められ、餓死しかねない状態にあるからだ。この問題を解決するには、出来るだけ多くの国々が、エジプトと同じ立場に立つことが必要であり、イランも賛同してくれれば、それに越したことはあるまい。
 まさに、アハマド・ネジャド大統領にしてみれば、これまで開かなかった、エジプトとの外交修復の扉の鍵に、ガザ問題がなったということであろう。もちろん、イランとエジプトの大統領が直接話し合ったのだから、ガザの問題だけではなく、両国関係についても、話題が広がったものと思われる。
 トルコとイラン関係は大分前から良好であり、トルコとエジプト関係も悪くない、そして今度は、エジプトとイランの関係が修復することになれば、近い将来、トルコ。イラン。エジプトの三首脳が一堂に会して話し合う、という場面が出てくるかもしれない。
 それは、イスラエルにとっては、すこぶる不安な動きであろう。その不安を取り去ってくれるのは、トルコの存在であろう。トルコとイスラエルとの関係は、非常に強いからだ。この新しい一連の動きが、中東に全く新しい状況を生み出すかもしれない。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:19 | パーマリンク

2008年01月22日

NO・806冷却化が目立ち始めたエジプト・米関係

 唯一の超大国である、アメリカのブッシュ大統領の一言半句は、多くの国にとって、まさに決定的なもの、として受け止められるようだ。
 ブッシュ大統領はイスラエルを訪問し、パレスチナ問題の解決が近いことを高らかに宣言したが、何の具体的な中味もなかった。そのことは、世界中の中東専門家が、共通して抱いた印象であると同時に、アラブの大衆も、同様の印象を強くしたようだ。
 イスラエルの後に訪問した湾岸諸国では、イランの脅威を強調し、イランが核を製造する前に、軍事攻撃すべきだ、ということを主張して回った。しかし、湾岸諸国のどの国も、ブッシュ大統領の主張に、耳を貸そうとはしなかった。
そんな軽はずみなことをしたら、後で、イランとの間に、多くの困難な問題を抱えることになることを、彼らが一番よく知っているからだ。サウジアラビアなどは、ブッシュ大統領が帰国した後、早速とでもいった具合に、国王がイランのアハマド・ネジャド大統領と連絡を取り、ブッシュ大統領訪問の経緯を、細かく説明したようだ。
湾岸諸国の後に訪問したエジプトでは、国民がブッシュ大統領に対する、反対デモを展開し、明確に「ノー」という意思表示をした。政府は当然のことながら、戒厳令並みの警戒網を敷いたようだ。
もちろん、ムバーラク大統領とブッシュ大統領の会見場所は、ムバーラク大統領ご自慢のシャルム・エルシェイクで行われたため、エジプトの首都ではどんな状況であったのかを、短時間のエジプト訪問で終えたブッシュ大統領は、知る由もなかったろう。
ブッシュ大統領は湾岸諸国でもそうだったが、エジプトに対しても、民主化を推進するよう強く求めたようだ。しかし、それは一朝一夕には実現できるはずがない。ブッシュ大統領の発言は、現実を無視した乱暴な要求として、ムバーラク大統領には受け止められたことであろう。
そうした雰囲気は、アメリカをしてムバーラク体制に対する、不満と不信感を強めたようだ。結果的には、湾岸諸国やパレスチナ自治政府の立場を、全く説明、擁護できなかったムバーラク大統領に対する、失望感がアラブ諸国政府の間に広がったようだ。
これでますます、エジプトのアラブ諸国間における、指導的立場は弱まったということであろう。ブッシュ大統領のエジプト訪問についてアラブのマスコミは、意味のない単なる儀礼でしかなかった、と評してもいる。問題は、アラブ諸国には彼に代わるけん引役、代表者がいないということだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:42 | パーマリンク

NO・805トルコの核開発にイラン・米が前向き

 最近アメリカが、イランの核開発に怒利をあらわにしているが、エジプトもアラブ首長国連邦も、リビアもアルジェリアも、サウジアラビアも核開発の意向を示し、またある国は、既に核施設建設に基本的な合意をし始めている。
 そうした流れのなかにあって、トルコもその例外ではない。トルコも核施設を建設する方針を決めた。面白いことに、このトルコの核開発について、対立しあっているアメリカとイランが、共に賛成の立場を示しているのだ。
 イランはトルコのフッリエト紙の記事を引用し「トルコが核濃縮のセンターになることは戦略的に重要であり、トルコと世界にとって有益なことだ」という内容のトルコの核開発に関する記事を紹介している。
 そして、ワシントンも勧めるならば、NATOのメンバー国であるトルコが、ムスリム諸国に対する核燃料の供給国になることはいことだ、と語っているとも紹介している。
 もし、トルコが核の濃縮を進め、核燃料の供給国になるのであれば、それはアメリカにとっても、地域諸国にとってもいいことだ、なぜならば、これらの国々も、トルコから核燃料を入手できるようになるからだ。
 トルコのフッリエト紙の記事を引用した形ではあるが、これは明らかにイランがトルコの核開発を歓迎しているのだ、ということが分かろう。
 トルコのザマン新聞は、アメリカもまた、トルコがルールを守るなかで、核エネルギー開発を進めることを奨励している、とアメリカの立場を紹介している。
 そのザマン紙の記事によれば、在トルコ・アメリカ大使館の広報担当官は、トルコがGNEPのメンバーになるよう招待した、そのメンバーになることによる利益も説明した、と語ったということだ。
 これは一体何を意味しているのだろうか。多分にトルコが中東地域における、核燃料の供給国になることを、アメリカは望んでいるのではないか。そしてアメリカ政府は応分の協力を、トルコに対して行う、ということではないか。
 もしそうであるとすれば、現在のロシアが絶対的優先状況にある、核エネルギーの供給に、トルコが加わることによって、状況に変化が生まれるということかもしれない。
 それは、アメリカの代わりに、トルコが核濃縮を進めるといいうことであり、イランもトルコから核燃料を供給される、ということで妥協点を探る、ということではないか。これはあくまでも推測に過ぎないが。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:52 | パーマリンク

2008年01月21日

NO・804エジプト・イラン関係修復なるか

 中東の三大国が一致団結することが出来れば、中東に横たわる多くの問題の解決が、容易になるのではないか、と思われて久しい。しかし、現実には、なかなかうまく進んでいないようだ。それは、それぞれの国に思惑があり、しかも、自国が第一と考えているからだ。
 述べるまでもない、その三大国とはエジプト、トルコ、イランだ。これらの国々は中東にあって、8千万人に達する人口をようし、それぞれに、歴史と高度の知性を備えているのだ。
 ソビエトが崩壊したあと、アメリカが唯一の超大国となった昨今、中東問題の主導権が、完全に当事国ではない、アメリカの手に渡った感がある。アラブの盟主を気取っていたエジプトにも、何の影響力も残っていない。ただただ、アメリカの意向どおりに、中東問題は推移している。
 しかし、新しい状況が少しずつではあるが、これら三大国を結束させる方向への動きが、見え隠れするようになってきた。それは、イラクに次いで、イランに対するアメリカの軍事的脅威が、拡大してきたからだ。
イランはトルコに対し、何らかの助成を求めるようになり、両国関係は改善の方向にある、と言って間違いあるまい。その具体的な表れは、中央アジアのエネルギーを、イラン経由でトルコに送る、という合意が出来たことから、推察することが出来よう。
イランとエジプトとの間にも、同様に歩み寄りの動きがある。昨年11月にエジプトのアレキサンドリアで開催された、日本とアラブの対話会議で会ったエジプトの外交評議会元議長は「明日からテヘランを訪問する」と語り、エジプトがイランとの関係改善に、乗り出し始めていることをほのめかした。
その後、イランからラリジャニ氏がエジプトを訪問し、両国関係改善の話し合いを行ったことは、すでにこの欄でお伝えしている。しかし、いまだにエジプトとイランとの間には、解決しなければならない、幾つかの難問が横たわっているようだ。
それは、イランがエジプトのサダト大統領暗殺者イスランブーリの名前を、テヘランの通りの名前にしていることに、エジプトが不快感を抱いているからだ。イラン側では、すでにそれは昔の話だと言っているようだが、いまだにその通りの名前は変わっていないし、テヘランの街中には、イスランブーリのポスターも貼られているということのようだ。
エジプトにとって、イランに対して抱く、不満の原因は他にもある。イランが1970年代に占領した、アラブ首長国連邦の3島(アブムーサ島、大小トンブ島)が、そのまま未解決常態になっているのだ。アラブを代表する盟主として、エジプトはこの問題を放置するわけには行かない、ということであろう。
そして、イランが平和利用であるにせよ、核開発に本腰になっていることも、エジプトにとっては愉快な話ではなかろう。イランは否定しているが、若しエジプトではなく、イランが中東最初の核兵器保有国になるとすれば、中東のパワー・バランスは大きく崩れ、エジプトの存在感は小さくなってしまうからだ。
そのことに加え、アメリカはエジプトとイランとの関係が、修復することをなんとしてでも食い止めたい、と考えていよう。エジプトとイランとが連携した第四次中東戦争は、イスラエルにとって、大きな痛手となった経験があるからだ。
とはいえ、今後エジプトとイランとの関係は、トルコの仲介などを含め、少しずつではあれ、前進するのではないかと思われる。それは、関係改善が両国にとって、大きなメリットとなる、可能性があるからだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 21:50 | パーマリンク

2008年01月20日

NO・803米が手を引きイラン国内は混乱に向かう?

 アメリカがイランに対して、軍事攻撃をかける可能性は、大分低下したというのが、大方の専門家の見通しだ。しかし、そのことが逆に、イランの体制にとって、不安な材料となり始めているのではないか。
 歴史上証明されていることだが、どこの国も国内に問題を抱えたとき、外部に敵をつくり、国民の目をそらし、意思を統一し、危機から脱出しようと考える。あるいは外国を占領支配し、そこから利益を得ることによって、国内的な問題を解消しようとする。
 イランは1979年に起こった、ホメイニ師を中心とする革命で、パーレビ国王体制を打倒したが、その後、国内では権力闘争が起こり、危機のなかでは、イスラーム教の法(シャリーア)が、絶対的権威として力を発揮し、宗教者が権力を掌握する形となり、何とか持ちこたえることが出来た。
 その後には、イラクとの戦争が勃発し、8年間もの長きに及んだことにより、イランの宗教者による支配体制(ベラヤト・ファギ)を強化し、確固たる体制を継続することが出来てきた。
 そして、その後にはアメリカとの間に起こった、核問題を中心とする緊張状態が継続し、イランのベラヤト・ファギ体制は、安定して継続することが出来てきた。つまり、これまでイランは外部に敵を持つことによって、体制の維持に成功してきたといえるのではないか。
もちろん、イランはそればかりではなく、ハタミ師のような穏健派(?)とみなされる人物を、大統領に擁立したり、アハマド・ネジャド氏のような、、強硬派を大統領に立てたりして、外国との関係調整を図ってきてもいる。
 問題は、イランはいま、アメリカとの緊張関係が和らいだことにより、国民が一体となって対抗するべき相手(敵=大サタン))が、外部に存在しなくなってしまった、ということだ。
 この状態は、これまで押さえ込まれていた、国民の体制に対する不満が、一気に表面化してくるという、危険性をはらんでいるということだ。現実に、最近イラン国内から、極左の学生グループが体制批判を強めている、という情報が流れてきている。
 これらの学生は、政府がテヘラン大学で行う恒例の金曜礼拝に対抗して、政府批判の集会や、デモを行っているのだ。しかも、この動きは、単にテヘランだけではなく、地方都市でも始まっているようだ。
 ハメネイ師を中心とする、ベラヤト・ファギ集団(権力集団)は、最近になって、強硬派のアハマド・ネジャド大統領にブレーキをかけ、西側受けのいいラリジャニ氏を、前面に押し出そうとし始めているようだ。しかし、そのことは、少しでも舵取りを間違えると、体制にとって大きな不安を呼び込む、危険性があるのではないか。
 そこで、イランの権力筋が体制の安定を維持していくために、採るであろう対応の可能性について考えてみると、以下のようなことが浮かんでくる。
1:危険を承知の上で穏健化して行き、西側との対話を拡大していく。
2:新たな緊張を作り出して体制の安定を図る。
A)PJAKとの本格的な戦闘展開。
B)湾岸諸国への圧力強化。
C)イスラエルへの敵対姿勢強化。
D)国内のイスラーム法遵守強化。
 1の穏健化路線について、イラン政府は現在試みつつあるが、それは危険性の高いものではないのか。現在国内に存在知る各種の反体制派、他民族の反体制の動き(バルーチ族やアゼルバイジャン人、アラブ人、クルド人など)も警戒しなければなるまい。
 この方式を進めていくためには国内的に失業問題を解決し、インフレを抑制していくこと、報道の自由を認めること、などが必要であろう。まさに、安全弁の微妙な開閉調整が必要であろう。
2の選択のうち(A)のPJAK(イランのクルド反体制派)問題はそれほど深刻なものとは国民の間で認識されていないため、PJAKに対する圧力の強化(軍事攻勢)は、国民的な意思統一の核にはなり得まい。
 したがって、イランの体制派が選択するとすれば(B)ということになるが、湾岸諸国に対する圧力(軍事的脅威を与える)は、湾岸諸国全体ではなく一部の国に対してなら可能でも、それでは国民の意思をまとめ切れないかもしれない。
 (C)のイスラエルへの敵対姿勢強化は、イラン自身が行うものと、レバノンのヘズブラや、パレスチナのハマースなどにやらせるものと3通りあろう。イスラエルがイランを単独で攻撃する可能性は、現段階ではあまり高くないのではないか。
イスラエルは国内的に四分五裂しているために、イランに対しては警告を発することは出来ても、軍事攻撃まで実行することは、難しいと考えるべきであろう。もちろん、ブッシュ大統領がイスラエルの先制攻撃を支持し、それに続いて、アメリカがイラン攻撃をする、というのであれば話は別だが。
最後に考えられるのが、イラン国内でのイスラーム法の遵守強化だ。これは容易に実行できる方法であろう。しかし、それはいまイランの体制派が採り始めたばかりの穏健路線を、全く逆の方向に向かわせることであり、体制の不安定さ、混迷を国民の前にさらけ出すことになりかねない。
イランの体制はいま、アメリカの脅威から解放され、新たな脅威として、イラン国民の間に広がる、体制への不満に直面せざるを得なくなりつつある、ということだ。あるいはアメリカが意識せずに選択したイラン対応が、イランをして困難な状況に、追い込むことになるのかもしれない。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 12:06 | パーマリンク

2008年01月17日

NO・802仏サルコジ大統領がUAEに海軍基地設置合意

 既にこの欄で紹介したが、ブッシュ大統領がイランに対する圧力(軍事攻撃も念頭に入れた)と、湾岸各国の民主化を叫んで飛び回った影で、フランスのサルコジ大統領はアラブ首長国連邦(UAE)との間で、アブダビに海軍基地を設立することを合意している。
 日本では、このニュースはほとんど重視されていないが、とんでもない出来事なのだ。そもそも、アラブ首長国連邦はイギリスの権益下にあったところであり、いまだにイギリスの影響力は絶大なのだ。
 このためか、湾岸アラブ諸国のなかにあって、アメリカがいまだに軍事基地を有していないのは、アラブ首長国連邦だけだ。クウエイトはイラク戦争の前線補給基地であり、バハレーンは以前からアメリカ海軍の基地であり、サウジアラビアはいまだにアメリカ軍の基地がある。
カタールにもアメリカ軍の本格的な基地がある。そしてアラビア海、インド洋側に位置するオマーンも、アメリカ海軍に対し、港湾の利用と補給の便宜を図っている。
つまり、アメリカはイギリスに対する遠慮からか、アラブ首長国連邦に対してだけは、軍事基地を持とうとしてこなかったようだ。
そのアラブ首長国連邦に、突然フランスのサルコジ大統領が訪問し、海軍基地を建設し、恒久基地化を図るというのだ。言ってみれば、イギリスの権益域内に、フランスが土足で上がり込んだも、同然の行為であろう。
イギリスのBBCは「フランスがシリアスな動きを湾岸でしている」と題して、このニュースを伝えている。そして、フランスはこのことにより、アラブ首長国連邦に対し、兵器の売込みをしていく、と予測しているのだ。
しかし、ヨルダン・タイムズはもっと直接的な表現で、このニュースを伝え、核心部分を突いているのだ。同紙は「フランスは石油輸送ルートに戦略拠点」と伝えているのだ。(ヨルダンはイギリスとは特別に深い関係にある国だ)
確かにそのとおりだ、フランスがアラブ首長国連邦に、海軍基地を建設することは、イギリスとフランスのケンカのように思えるのだが、それだけではない。フランスはアラブ首長国連邦との今回の合意で、ペルシャ湾の出口ホルムズ海峡を、押さえたということだ。
そのことは、湾岸諸国から日本に送られる石油、ガスについても、いまフランスの支配下に落ちたということだ。一旦、何らかの不測の事態が発生した場合、フランスはどのような口実をつけてでも、ホルムズ海峡の航行に対し、条件を付けられるようになった、ということだ。
そうなったということは、今後、日本がフランスとの各種の交渉の上で、不利な立場に立たされた、ということなのだが、日本政府は今後、どう対応するつもりなのだろうか。失礼ながらそれ以前に、日本政府はこの事態の深刻さに、気が付いているのだろうか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:25 | パーマリンク

2008年01月16日

NO・801アルカーイダ結成から20年が経過した

 アラブの新聞が、アルカーイダが結成されて、既に20年が経過しようとしている、という記事を掲載していた。確かにアルカーイダは、1988年2月22日に、ビンラーデンとアブドッラー・アッザームによって結成されたものだ。
 最初は、ユダヤ教徒とキリスト教徒を敵に戦う、イスラム教徒の戦闘集団といったふれこみだったと思う。しかし、その後、アルカーイダは次第に、目的が不明確になっていったのではないか。
 たとえ、9・11の真犯人がアルカーイダでないとしても、アルカーイダが犯行声明を出したものの中には、彼らが当初主張していた、ユダヤ教徒とキリスト教徒に対する攻撃よりも、次第に身近なイスラム教徒を、ターゲットにするようになってしまっている。
 革命闘争というものの多くが、同じような形をとり、同士討ちを繰り返し、遂には自滅していったが、アルカーイダの場合も、そうなのかもしれない。世界各地で、アルカーイダと連帯するという新組織が現れ、闘争目的が不明確のまま、連帯という名の下に、残忍な行為を繰り返し続けている。
 こうしたパターンには、必ず終焉があろう。アルカーイダ結成から20年が経過したいま、どうやらアルカーイダに、消え去るときが近づいているのではないか。終わりの日を迎えるとき、何事も激しさを増し、消耗のスピードを上げるが、いまのアルカーイダもそうなのではないのか。
 イスラム教の信仰篤い戦士たちに、一日も早く本当の信仰と、信仰目的に目覚め、向かうことを切望してやまない。アルカーイダと連帯すると叫ぶことは、暴力の連鎖を生むだけであり、何一つ生み出しはしない

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:50 | パーマリンク

2008年01月15日

NO・800パレスチナの分裂が深刻化の度を強める

 パレスチナ政府が、ファタハとハマースの対立により、結果的には権力を分割する形になった。ご存知のとおり、西岸地区はマハムード・アッバース議長のファタハが抑え、ファッヤード氏が新しい首相に任命された。
 しかし、選挙で選出されたハマースのハニヤ氏も首相職に留まり、彼はガザ地区だけを、担当する形になっている。彼が正統な首相であることは、理屈抜きにも分かろう物だが、マハムード・アッバース議長は、ハニヤ首相を首にし、ファッヤード氏を新しい首相に就任させたのだ。
述べるまでもなく、ハニヤ氏が首相に就任したのは、パレスチナ大衆による選挙の結果だったのだが、選挙の結果によって選出されたハニヤ氏を、マハムード・アッバース議長は彼個人の考えで首にしたのであり、そのことはパレスチナ大衆の意思を、無視したことになるのだ。
このいざこざは、結果的に西岸地区とガザとを、全く別個の地域にし、西岸地区を支配するマハムード・アッバース議長が、西側によって抱え込まれ、西側諸国の援助を独り占めにし、ハマースのハニヤ首相が率いるガザ地区を、秤量攻めにしている。
当然のことながら、こうしたマハムード・アッバース議長の横暴に対し、ハマース以外のパレスチナ各派の間からも、非難の声が上がっている。
マハムード・アッバース議長が率いるファタハは、イランとシリアが莫大な資金と武器をハマースに提供し、マハムード・アッバース体制を引きずり降ろそうとしていると非難している。
ファタハから資金が潤沢に流れてくる、PFLPやDFLPはいまだにマハムード・アッバース議長を支持しているようだが、アハマド・ジブリールが率いるPFLP−GCや、ファタハの分派であるアクサ旅団、イスラーム・ジハードなど10組織は、ハマースと同じ立場に立っている。
彼らは1月23日に、シリアの首都ダマスカスで会議を開催し、今後の方針を話し合うようだ。ハマースの代表は、この会議がマハムード・アッバース議長を弾劾する目的で、開催されるのではない、と言っている。
しかし、ファタハ側は、シリアとイランの支援を受け、マハムード・アッバース議長体制を打倒する目的で、会議が開催されると非難している。
どうやら、パレスチナ内部は混乱の度をますます強め、分裂が進むようだ。これでは、イスラエルに和平交渉を遅らせる、口実を与えるだけであろう。イスラエル政府は「和平を望むが一体どのパレスチナの代表と話し合えばいいのか?」と嘯くだろう。それにしてもパレスチナの内情は、「情け無い」の一語に尽きる。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:03 | パーマリンク

NO・799フランスが漁夫の利をつかむ

 ブッシュ大統領の中東訪問は、現在の段階で評価するならば、失敗の一語に尽きよう。彼がアラブ諸国の首脳に示したのは、アラブ人が最も嫌う、他者の事を完全に無視した、自分中心の考えかただった。
 パレスチナ問題では、パレスチナ人が解決したい、絶対に譲れない、という核心部分を、全く無視した和平案を語り、多くのアラブ人を、激怒させただけだった。
 湾岸諸国訪問でも、彼が持ち込んだのは、イランに対する締め付けへの協力要請(押し付け)であり、イランが世界を敵にまわす、最も危険なテロ支援国家だ、と言い放った。
しかし、湾岸諸国はイランとの正常な関係を、維持していけるように、それぞれが努力し、イランと話し合っているのだ。そのことに対する、ブッシュ大統領の配慮は微塵もなかった。
極めつけは、アメリカの艦船にペルシャ湾の出口ホルモズ海峡付近で、イランの革命防衛隊のスピード・ボートが接近し、威嚇したというデマ報道だった。それが作られた話であることは、誰にも分かるのだが、ブッシュ大統領は「今度やったらただではおかないぞ」とすごんで見せている。
 そしてもうひとつは、兵器の大量押し売りであり、湾岸諸国はそれを買っても、使いこなせないのだ。言ってみれば、アメリカによる中古になった兵器の、押し売りであったということだ。
しかも、それが何百億ドルにものぼるのでは、買わされたほうはたまったものではあるまい。その上、アメリカはサウジアラビアに売りつけたと同種の兵器を、イスラエルにも提供すると言い、イスラエルに渡すほうが、より優れたものだというのでは、ただただ唖然とするばかりであろう。
アラブ諸国、なかでもパレスチナ人と湾岸のアラブ人たちは、ブッシュ大統領のあまりにも無神経な言動に、うんざりしたことであろう。その間隙を突いて、フランスのサルコジ大統領は、湾岸諸国との間で、いい取引を交わしたようだ。そればかりかアラブへの原発の売り込みも、成功しかけているのだ。
アラブ首長国連邦との間では、海軍基地を建設し、防衛に協力することにした。このことは、いままでイギリスの独壇場であったアラブ首長国連邦に、フランスが本格的に乗り込み、権益を争う覚悟であることを示したものだ。
ブッシュ大統領の蛮行が、結果的に盟友イギリスの、アラブ首長国連邦における権益を、危ういものにしてしまったのではないのか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 22:27 | パーマリンク

2008年01月14日

NO・798ブッシュ中東訪問は独りよがり

 ブッシュ大統領がイスラエルとパレスチナを訪問し、今年中の中東問題解決に努力した。しかも、彼はアメリカ大統領という要職にありながら、5月にも再度中東を訪問して、和平の推進に努力するということだ。
 今回の、ブッシュ大統領の中東訪問の目的は、パレスチナ問題の解決であり、もうひとつは、イランに対する締め付けと、場合によってはイランに対する軍事攻撃への、賛成取り付けにあったものと思われる。
 しかし、パレスチナ問題解決について言えば、ブッシュ大統領の提案は、パレスチナ側が受け入れることの出来ない、難民の帰還権を彼らに対する補償と交換で、あきらめさせるというものだった。領土の問題も境界の問題も、パレスチナ側には受け入れられるものではなかった。
 さすがに厚顔無比のマハムード・アッバース議長も、これだけあからさまに言われたのでは、イエスと答えにくかったのであろう。しかし、かといってノーとも言えず、彼の側近が拒否の発言をするという形を取り、マハムード・アッバース議長は、あたかもブッシュ大統領の仲介で、オルメルト首相との間で話し合いが進んでいるように、にこやかに微笑む写真を大量に、世界の報道機関向けにサービスしたようだ。
 現実は、ヘズブラのナスラッラー師が非難するように、今回のブッシュ大統領の中東訪問は、アラブへのブラック・メールであったろう。
 ナスラッラー師は、ブッシュ大統領が湾岸諸国を訪問した折、イランの核問題に触れず、テロ支援国家とだけしか言及できなかったと指摘している。それは、ブッシュ大統領の湾岸諸国に対する、配慮からであったと思われる。
 つまり、湾岸諸国はどの国も、ブッシュ大統領がイランを軍事攻撃すると言っても支持する国はなく、経済制裁の強化についても、必ずしも賛同を得られないからであろう。
 ブッシュ大統領の湾岸訪問では、鷹狩りの写真が目立ったが、他方、フランスのサルコジ大統領は、核施設取引の話をし、好転しているようだ。どうやら今回のブッシュ大統領の中東訪問は、成果なしということではないのか。
もちろん、ブッシュ大統領がアメリカの大統領選挙を前に、イスラエル支持の立場を伝え、共和党候補への選挙資金支援を、取り付けに来たのであれば話は全く別だが。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 21:59 | パーマリンク

2008年01月12日

NO・797ブッシュ訪問にアラブ全体が反発

 ブッシュ大統領が、イスラエルとパレスチナを訪問し、和平の進展に努力した。この訪問は中東問題の解決に風穴を開け、今年中の問題解決への道を、大きく開いた、、。
 多分、ブッシュ大統領と彼の今回の訪問に関った、すべてのアメリカ人はそう思いたいのであろう。しかし、アラブ側は全くこれとは反対の評価を、ブッシュ大統領の訪問に下している。
 ブッシュ大統領の訪問は、イスラエルにとっては得るものがあったが、パレスチナ側には何もなかった、空虚なスローガンだけを並べた、ブッシュ大統領の演説には、パレスチナの根本的な問題に関る解決への、糸口は何も見当たらなかったからだ。
 パレスチナ問題がこれまで、何の進展もないままに、一方的なイスラエルの入植地拡大を許してきたのは、パレスチナ側が頑迷だからだけではない。パレスチナ問題の根本部分である、難民の期間問題をどうするかということと、イスラエルは領土面でどこまで譲歩するか、ということだった。
 現実には何百万人という、多数のパレスチナ難民を、パレスチナ自治政府が受け入れ、面倒を見る能力などない。もし、そうすると言うのであれば、それは世界から寄付を集める口実だけであり、寄付金のほとんどは、一瞬にしてパレスチナ幹部の懐、消えていくことになろう。
 彼らパレスチナ幹部は、帰還させようとは思っていないが、これが世界に対する寄付を集める切り札であり、パレスチナ人の間では、ありえない夢を見続けさせることのできる睡眠薬なのだ。
現実には不可能な、パレスチナ難民全員の帰還を、不可能なものとして取り下げれば、たちまちにして、パレスチナ自治政府は崩壊し、ファタハも分裂し、消えてしまおう。
 しかし、ブッシュ大統領は、パレスチナ難民が彼らの父祖の地、親が、あるいは自分が住んでいた、イスラエル領土内の自宅に帰る権利を、全く認めなかった。ブッシュ大統領が言ったのは、「彼らの帰還権を認める必要はないが、補償だけはしろ」というものだった。つまり、「難民問題は金でけりをつけろ」というものだった。
 パレスチナ難民問題に関するブッシュ大統領の発言は、国連決議第194号に違反するものだ、とパレスチナ議員のバッサーム・サーレハ氏は抗議している。国連決議第154号によれは「すべてのパレスチナ難民は、自分の家に戻れる」ことになっているのだ。
 領土問題でも、1967年の境界線を重視するものの、1967年戦争以前の地点まで、イスラエル側は撤退すべきだ、とはしなかった。それどころか、西岸地区の入植地については、十分に検討する必要がある、といった含みの発言までしているのだ。
 さすがに、これではマハムード・アッバース議長も、内心では困り果てていることだろう。当然のことながら、ハマースの出身のであるイスマイル・ハニヤ・パレスチナ首相をはじめ、マハムード・アッバース議長の所属するファタハの幹部からも、激しい非難の声が上がっている。
 ブッシュ大統領は、パレスチナ・イスラエル問題の解決に向けて努力するため、5月にもイスラエルを訪問するというが、今回と同じ立場で「努力」するのであれば、何の成果も上がらないことは、いまから明らかであり、それどころか、かえってアラブの反発、反米感情をあおることになろう。
アメリカ政府内には、パレスチナ問題の基本的本質を、理解している人物はいないのだろか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:27 | パーマリンク

2008年01月11日

東京財団政策懇談会「パキスタンの今後と日本」ご案内

 東京財団は来る1月18日午後零時から、日本財団ビル2階で、パキスタン情勢をめぐるシンポジュームを開催します。

 ブット元首相が暗殺され、大統領選挙が延期されたために、パキスタン国内は混沌とした状況が続いています。こうした状況の中で、若しパキスタンの核兵器や核兵器に関する情報が、国外に持ち出された場合、世界は大きな不安に包まれることになります。

 パキスタンは今後どうなっていくのか、パキスタンの情勢がどうインドとの関係に影響を及ぼしていくのか、パキスタンの部族地帯はどうなっているのかなどパキスタンをめぐる疑問と不安が日本人の間にも広がり、高い関心をもたれるようになって来ました。

 しかし、現実にパキスタンやインドを訪問し、現地の人たちと直接意見交換をしている専門家は、非常に少ないと思います。ほとんどの日本人専門家は、日本大使館や日本企業の駐在員から、ブリーフィングを受けてくるだけです。それではパキスタンの実情は、ほとんど掴めないでしょう。

 緊迫した情勢のいま、東京財団では本格派のインドパキスタン専門家に、実情を報告してもらうことにしました。

 参加お申し込みは東京財団ホームページからどうぞ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:20 | パーマリンク

2008年01月10日

NO・796クルド地区とトルコの深い関りと未来

 トルコのビジネスマンが、イラク北部クルド地区でビジネスを展開していることは、これまで何度もこのコーナーでご紹介している。1000社を超えるトルコ企業が、クルド地区でビジネスを展開しているのだ。
 インフラの建設から食料、薬品、教材、事務用品に日用雑貨と、何でもトルコから入っているのだ。このためトルコのトラック・ドライバーは大忙しで行きはトルコ製品を、帰りはクルド地区から安い油を買って、それをトルコ国内で何倍もの値段で売って利益を得ている。
 トルコ企業、なかでもクルド地区に隣接する、トルコ東部のビジネスマンやトルコ国籍のクルド人は、いま非常に恵まれた環境にいるのだ。たとえば、トルコ東部で働く、建設作業員の月給は350ドル程度なのだが、イラク北部のクルド地区で働くと、2000ドル貰えるというのだ。
 彼らトルコのクルド人は言葉も習慣も、あまりイラクのクルド人と変わらないために、ビジネスマンにとっては重宝な存在なのだ。
 結果的に、トルコの建設会社は、今後20年間で200億ドルのインフラ事業を受注できる可能性がある、ということだ。ちなみに、昨年2007年には、40億ドルのインフラ工事を請け負っているのだ。
 もちろん、この状況を見ている西側企業は、何とかクルド地区のインフラ工事に自分たちも参加しようと、トルコ企業との共同受注を狙っているようだ。しかし、そう簡単には行くまい。ほとんどの工事が、トルコ企業独自で出来るからだ。
 トルコのビジネスマンにもリスクはある。それはクルド人との取引で、商品は届けたものの、支払いが滞ったり、全く支払いが行われない場合もあるのだ。その解決は、クルド自治政府ではまだ、完全には監視できていないようだ。
 前述のトラック・ドライバーも儲けは大きいが、殺害される場合もあり、まさにクルド地区とのビジネスは、ハイリスク・ハイリターンのビジネス・チャンスということであろうか。
しかし、トルコ人は勇敢であり、この程度のことでは、全くひるまないようだ。日本は社員の安全第一と、企業幹部の責任逃れから、当分キルクークがビジネスの黄金地帯でも、入ってはいけまい。
イラク北部のクルド地区の開発ブームは、結果的にトルコ東部のクルド人たちに、就職の機会を増やし、収入を増やすことから、将来的には反トルコ政府の活動が停滞し、沈静化していくということであろう。
また、イラクのクルド地区は、トルコとの深いかかわりの中でしか、発展していき難いということを、実感するであろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:34 | パーマリンク

NO・795ラリジャニが台頭、イラン政治の変革が始まった?

 イラン国内で政治の潮流が、少しずつ変化し始めているようだ。
 イラン国内ではいま、アハマド・ネジャド大統領の強硬路線から、次第に平和的な対話路線に、移行しつつあるのではないか。 
 それは、アメリカの軍事攻撃に対する、不安からの路線変更もあろうが、もうひとつは、イランが国際的に完全に孤立することを、避けるためであろう。
 イラン国民の多くは、決して教条主義的なイスラーム教徒ではない。どちらかといえば、アラブ諸国のイスラーム教徒に比べて、より緩やかな信仰姿勢を、持った人たちが多いのだ。
 国内経済の問題を抱えて、イラン国民のアハマド・ネジャド大統領離れ現象が顕著になり、ハメネイ師も路線をそろそろ変更すべきだ、と考えているのではないか。 
 そうしたなかで、先日カイロを訪問し、エジプトとイランとの関係改善に努力し、一定の成果を挙げたラリジャニ氏が、ハメネイ師によって一定の評価を受けても、不思議はあるまい。
 今後は彼ラリジャニ氏が、どこまで浮上してくるのかを見ることによって、イランの対外政策の変更を予測することが出来そうだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 01:30 | パーマリンク

2008年01月08日

NO・794ハメネイ師の微妙な舵取り

 イランの宗教最高指導者であるハメネイ師が、大学生を前に行った演説で、イランはアメリカとの関係を、修復する意思があることを明かしている。それは、現在のイランとアメリカとの緊張の中では、妥当な判断だといえよう。
 しかし、その後彼は、アメリカとの関係修復を急いではいないとも語った。それは、ハメネイ師が前言を翻したということなのであろうか。正直なところ、どうもハメネイ師の本心が理解でき無い、と思う人が多いのではないか。
 その後に出てくる日本人の判断は、やっぱりイランはイスラム原理主義に凝り固まった、イスラム教条主義の国家なんだ、危険な国家だ、という判断を下すのではないか。
 しかし、ここに来て、ハメネイ師は再度、アメリカに対する接近の姿勢を示したようだ。それは、ハメネイ師がいままでのように、アハマド・ネジャド大統領の政策を支持しなくなっていくだろう、というニュースが流れ始めているからだ。
 イラン国内は、インフレ率が2006年10月の段階で12パーセントだったものが、今年に入り19パーセントに跳ね上がっている。これではイラン国民が、アハマド・ネジャド大統領に対して、不満を抱くのは当たり前であろう。
 ハメネイ師はヤズド市で行った講演の中で、政府のミステイクを指摘したのだ。最近になって、アハマド・ネジャド大統領の権限を侵すような指示が、どうもハメネイ師から出始めているようだ。
 先日、エジプトを訪問したラリジャニ氏は、アマハド・ネジャド大統領の知らないところで、外交活動を展開したのだ。もちろん、アハマド・ネジャド大統領は激怒し、外交は外務省ルートで行うべきだと語っている。
ラリジャニ氏がエジプト訪問で何を話し合ったかといえば、1979年以来断絶していた、エジプト・イラン関係修復が目的だった。述べるまでもなく、それはエジプト接近を通じて、アメリカへのメッセージを送ろうとしたということであろう。
 ハメネイ師の柔軟外交努力を、アメリカが今後どう受け止め、反応するのか見ものだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:42 | パーマリンク

NO・793イラン革命防衛隊のスピードボートが米艦に接近?

 ペンタゴンの情報筋から、先週の土曜日あるいは今週の日曜日に、ペルシャ湾の出口ホルムズ海峡で、イランの革命防衛隊のスピードボートが、米艦に接近し、爆破警告を出したというニュースが伝わっている。
 これは情報ソースが伏せられていること、アメリカ政府が正式に発表していないことなどから、まだ確証は得られないが、もし事実であるとすれば、実にばかげた革命防衛隊員の行動といえよう。
 あるいは、アメリカ側がこの手のニュースを繰り返して流すことにより、イランに対する軍事攻撃の正当化を図っているのかもしれない。そのいずれであるにせよ、実に危険なゲームといわざるを得まい。
 こうしたニュースは、結果的にアメリカとイランの緊張を高め、石油価格に跳ね返ってくるだろう。
現段階ですら高すぎる石油価格が、意図的なニュースの捏造で(?)、より高騰するとなれば、世界の経済は最終的に、壊滅的な打撃を受けるかもしれない。ことの真偽を出来るだけ早く、確認したいものだ。
 なおこの情報は、1月8日午前1時前に、BBCとエルサレム・ポストのオン・ラインで流されている。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 01:11 | パーマリンク

NO・792ブッシュのイスラエル訪問成果予測

 アメリカのブッシュ大統領が、1月にイスラエルを訪問することになっているが、出発前の現段階から評価はいたって芳しくない。イスラエル人の中には「ブッシュ大統領は全く問題を理解していない】と語る者もいる。
 同じように、アラブ側でも悲観的な予測をする者が多い。アラブ連盟の事務総長アムル・ムーサ氏は、現段階で入植が拡大しており、安全の壁が現存しており、境界線が変更され、人口が移動しており、しかも、東エルサレム地域の入植が拡大しているなかでは、和平の進展に期待は持てないと語った。
彼は、「ブッシュ大統領の訪問で何が出てくるか静観するしかない」と延べ、「アラブ側はあくまでも、あらゆる可能性に対して門戸を開く立場を維持するだけだ」、と語っている。こうした発言からは、アラブ側にはブッシュ大統領の訪問に対する、期待がほとんど皆無であることが伺えよう。
湾岸諸国も、ブッシュ大統領が取るイランに対する強硬姿勢について、全く賛成する気配はない。先月ブッシュ大統領が、イランへの対応で賛同を求めるべく、湾岸4カ国を歴訪したが、どの国の反応も「ノー」だった。
湾岸諸国は、もしイランとアメリカの戦いが始まれば、自国がイランによって攻撃される危険を、十分に認識しているからだ。
こうした雰囲気から、アラブ諸国と大衆は、ブッシュ大統領のイスラエル訪問を、単なる卒業旅行とみなしているようだ。パレスチナのハマースを代表するイスマイル・ハニヤ氏などは、「ブッシュは記念写真を撮りに来るだけだ、」と全く期待も評価もしていない。
パレスチナ問題が前進するためには、イスラエルに対しても苦言を呈することが出来なければなるまいし、自国が本格的に関与する姿勢で無ければなるまい。現段階で唯一期待できるのは、イスラエルのペレス大統領が、トルコを訪問した折に合意した、西岸地区に産業地帯を建設する計画であろう。
トルコの企業が西岸地区に進出するには、イスラエルが製品の輸出を認めなければならないからだ。そうなれば、パレスチナの生活状況は改善され、今とは違った状況が生まれてくることが期待される。地域のことは、地域の国々で解決するのが、一番いいのではないのか。
そういう形ではない日本の援助は、一瞬にしてパレスチナ自治政府幹部の間で、分配され敵得るのだ、ということを正面から受け止めるべきであろう。パレスチナに対する日本の援助は、ほとんどパレスチナ大衆には、役立ってはいないのだから。
なお、ブッシュ大統領のイスラエル・パレスチナ訪問を、あえてイスラエル訪問と書いたのは、彼がアラファト議長の墓を詣でない、ということに起因している。常識には無い非礼であろう。またそれなしには、パレスチナを訪問するとは言えまい。あるいはブッシュ大統領が常々口にする、臆病からなのであろうか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:04 | パーマリンク

2008年01月06日

NO・791M・バルグーテイ釈放案が急浮上

 現在、イスラエルの刑務所に収監されている、パレスチナ解放運動の闘士マルワーン・バルグーテイの釈放を、イスラエルの閣僚が口にし始めている。これはイスラエル内部の、大きな変化といえそうだ。
 これまで、イスラエル政府は手が血で汚れている者(イスラエル人の殺害にかかわった者)の釈放はありえないとして、マルワーン・バルグーテイなどの釈放は、いかなる条件でもありえないとしてきた。
 しかし、ここに来て国防副大臣のマタン・ヴィルナイが、現在、パレスチナ側の捕虜になっている、イスラエル兵ギラド・シャリトの釈放と交換に、マルワーン・バルグーテイを釈放してもいいだろう、と言い始めている。
 もちろん、これはあくまでも彼個人の見解であって、イスラエル政府の意見ではないとしているが、いずれにしろ、マルワーン・バルグーテイ釈放を条件付ながらも、話題にしたということは、見逃すべきではあるまい。
 このマタン・ヴィルナイ国防副大臣の意見を支持すると表明したのは、国家インフラ大臣のベニヤミン・ベン・エリエゼルだが、この発言に対し、バラク国防大臣の近い人物は、ベニヤミン・ベン・エリエゼルの意見は、バラク国防大臣の意見を表明したのではないと語っている。
 そのことは、暗にバラク国防大臣も、囚人のパレスチナ解放運動の闘士マルワーン・バルグーテイと、捕虜のイスラエル兵ギラド・シャリトとの交換を、支持しているということではないか。
 そうでなければ、何の脈絡も無いように見える、ベニヤミン・ベン・エリエゼル国家インフラ大臣の発言に、バラク・サイドがコメントする必要はあるまい。もし、バラク国防大臣が交換に反対ならば、国防副大臣の発言に対して、述べるべきであろう。
 では何故この時期に、マルワーン・バルグーテイ釈放の話題が出てきたのであろうか。もちろん、イスラエル兵ギラド・シャリトの救出は大事であろうが、そのためにマルワーン・バルグーテイを釈放することが、いまの段階で取りざたされるとは考えにくい。
 想像できることは、マハムード・アッバース議長に代わる、パレスチナのスーパー・スターの登場を、イスラエルは考え始めているのではないか、ということだ。現状では、マハムード・アッバース議長にはルビコンを渡るだけの、決断は出来そうにない。
 そうであれば、イスラエルとパレスチナとの関係は、こう着状態を続け、次第にパレスチナ大衆の不満は高まり、ファタハに代わりハマースへの支持が増大し、遂には、イスラエルやアメリカが考えているような、ファタハを交渉の中心に据えた和平路線は、完全に崩れてしまう危険性があるからであろう。
 あるいは、このマルワーン・バルグーテイ釈放の話は、マハムード・アッバース議長に対して、決断を促す圧力なのかもしれない。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 18:46 | パーマリンク

2008年01月05日

NO・790パレスチナ大衆の信頼失うM・アッバース体制

 最近行われた、パレスチナ人の論調査の結果が報じられているが、それによると、マハムード・アッバース議長がリードするファタハは、大幅に支持を失っているようだ。しかも、その主たる原因はマハムード・アッバース議長に対する不信によるということだ。
 マハムード・アッバース議長のリードする、ファタハに対する支持が39パーセント、ファタハに対抗するハマースに対する支持が、19パーセントだということだ。
 さる11月に行われた世論調査では、ファタハ支持が46パーセント、ハマース支持が13パーセントだったことからすると、大幅なファタハへの支持低下が見られるということだ。
 ファタハ支持の人たちは、ファタハが和平を実現してくれる、と期待しているようだが、現実には可能性は低いと見ているようだ。世界のパレスチナに対する支援金は増加しても、それが生かされてはいないという現実がある。
 さる12月に開催された、パレスチナへの援助の国際会議では、パレスチナに対する援助が、今後5年間の間に74億ドル、と決定されたが、その相当部分は使途不明金になるだろう。
 問題は、世界のパレスチナ援助の目的は何かということだ。つまり、パレスチナ問題をアメリカやヨーロッパ、イスラエルなどにとって都合のいい状況にしていくために行うのか、それともパレスチナ人を援助するための純粋な人道援助なのかということだ。現実はパレスチナへの援助は人道援助ではなく、政治目的の援助になっている。
 ガザではその日の食料に事欠く人たちが多数いるが、ファタハの支配する西岸地区には建ち豪邸が並んでいる。加えて、大型ベンツが走り回っているが、これらの相当部分は、外国からの援助資金の流用によるものなのだ。
 パレスチナ幹部の発想は「俺たちもアラブ人だ。アラブ産油国の連中よりも俺たちのほうが賢いのに、あいつらは俺たちよりも金持ちだ。だから俺たちが金持ちになって何が悪い。」その発想からは金を手にすることが、いかなる方法であれ合法になるのだ。
 日本のパレスチナ援助は正しく使われているというが、それを十分に説明できるのだろうか。アラブ商人のほうが数枚上手だ。日本のやわな神経では、援助金が正しく使われているか否かについて数パーセントも確認できまい。
そうであるとすれば、援助の必要な人たちに直接届く形の、支援をすべきであろう。それを行うには危険が伴うからいやだというのでは、援助などということを、行う資格はあるまい。
 

投稿者: 佐々木良昭 日時: 13:41 | パーマリンク

2008年01月04日

NO・789目立ち始めたユダヤ人のイスラーム再評価

最近、ユダヤ人やイスラエル人(イスラエルにいるユダヤ人)による、イスラーム世界に対する再認識というか、再評価が始まっている。
 彼らは、イスラーム世界がスルタンやカリフによって統治されていた時代に、ユダヤ人がどれだけ自由を保障され、安全を守られていたかを評価している。その延長線上で、イスラーム教徒との対話の機会を増やすべきだ、という主張も増えてきている。
 確かに、トルコがオスマン帝国の時代には、スペインで改宗を迫られるユダヤ人たちの命を救ったのは、オスマン敵国が差し向けた軍艦だった。この軍艦に乗せられスペインを逃れたユダヤ人たちは、後にオスマン帝国内で自由に活動していたし、大臣職にまでも採りたてられていた。
 この歴史的事実が、いままでユダヤ教対イスラーム教の対立構造のなかで、忘れられあるいは無視されてきていた。そのことは、イスラーム世界もユダヤ世界も、宗教より政治が優先していたからかもしれない。
 イスラーム教に対する再評価が行われるなかで、ユダヤ人らしいとでも言うべきなのだろうか。彼らは、ユダヤ人がアラブ世界で暮らしていたときに持っていた財産よりも、イスラエルを建国したシオニズムが与えたものは少ない、と不平を述べてもいる。
 バチカンがユダヤ人のキリストに対する裏切非難をやめ、正常な関係になると宣言して以来、かえってユダヤ教徒キリスト教徒の間には、溝が深まったようだ。物事は問題が解決して冷静になると、真実が見えてくるのであろうか。
 ユダヤ教徒がいま世界の中で置かれている立場が、非常に微妙なことも、ユダヤ教徒によるイスラーム教徒再評価の原因なのであろうが。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:36 | パーマリンク

2008年01月03日

NO・788混乱が見え始めたイスラエル内部

 イスラエルの右派のラビ(宗教者)が、オルメルトを殺せと発言した。しかも彼だけではなく、副首相のハイム・ラモンやツイヴィ・リブニ、エフド・バラクまでもだ。
 この発言を集会の中でしたのはドブ・オルペであり、この集会にはクネセト議員や、キリヤト・アルバのヘブロン地区ラビなども参加していた。
 このラビは、オルメルト首相がナチと同じ連中に武器を与え資金を与えている、と非難している。ナチと同列の連中に支援するオルメルト首相という表現は、多分イスラエルの社会では最悪の言葉であろう。
 この言葉を受けて、オルメルト首相は怖気づくのか、敢然として立ち向かうのかが、まさに問われていよう。彼にとって2008年という年は、命がけの年になるかもしれない。
 ガザからメッカ巡礼に行ったパレスチナ人たちを、再度ガザに入れさせないという、全く常識外の対応をし、そのことでエジプトとの関係を、悪化させているオルメルト政権は、大分ふらついているようだ。いまイスラエルにはそんな余裕はないはずなのだが。
 イスラエル国民の、しかも宗教家の間から、ここまで厳しい意見が出てくるということは、オルメルト暗殺が現実のものになってきていることを、十分に感じさせる。ラビン首相が殺されたのも、宗教右派の指導者の意見に従って、若者が暗殺を実行しているからだ。
 しかし、だからといって、ここでオルメルト首相が怖気づいてしり込みしたのでは、何事も前進すまい。それよりも、ラビン首相の死や、シャロン首相の挫折を無駄にすることになろう。
 歴史を変えるときは、誰かが死を覚悟するくらいで無ければなるまい。それはマハムード・アッバース議長の場合も同じであろう。外国からの援助を集めることに、神経のほとんどを使っているようでは、何事も前進すまい。その結果は、パレスチナ人同士の殺し合いという体たらくだ。
 そうした状況は、最悪の事態につながることを、忘れるべきではあるまい。残念だが、いま待たれるのは、オルメルト首相とマハムード・アッバース議長の、後継者となるにふさわしい人物の登場かもしれない。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:36 | パーマリンク

2008年01月02日

NO・787玉突き現象を起こしたガス供給イラン・トルコ

 トルクメニスタンはロシアに次いで第二のガス産出国だが、この国のガスはほとんどがロシアを経由して、西ヨーロッパの消費地まで送られているようだ。昨今の石油ガス価格の高騰により、潤っている国のひとつに、トルクメニスタンは含まれている。
 しかも、ロシアは自国の経済状態が大幅に改善されたことと、エネルギーの国際価格の上昇に合わせ、トルクメニスタンからのガス購入価格を、50パーセント引き上げている。こうしたこともあり、トルクメニスタンはロシアとの関係を、改善しつつあるのではないかと思われていた。
 ここに来て、トルクメニスタンがイランに対し、ガス供給を停止したことが、この推測をより確かなものにしたようだ、と見る専門家もいる。(トルクメニスタン側はイラン向けガス供給が停止した理由を、あくまでも技術的なものだと説明している。)
ロシアに輸出する分を削って、イランに輸出しなければならないという義理だては、トルクメニスタンとイランとの関係ではないからだ。
 しかし、困ったことにはイランへの、トルクメニスタンからのガス供給が途絶えたことから、イランからのトルコへのガス輸出が、停止する事態が起こっているということだ。
イランの北部諸都市はパイプ・ラインによる輸送上の問題から、トルクメニスタンのガスが供給されているが、このガスが供給されないとなれば、イラン南西部で生産されるガスを充当するしかないのだ。
しかしこうなると、そこで生産されたガスがトルコに送られていたことから、トルコへの輸出が滞ることになる。トルクメニスタンのガス輸出が止まったことにより、トルコへのイラン・ガスの輸出が止まるという玉突き現象を起こすことになった。
 当然のこととしてトルコは、トルクメニスタンに対して、イランへのガス供給を、早急に再開するよう働きかけるだろう。そこで、トルクメニスタンが早急にトルコの要請に応じるか否かだ。両国関係は非常に強いのだが、ロシアの中央アジアへの台頭の中で、それがどう働くのか見ものだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:21 | パーマリンク

2008年01月01日

NO・786今年の中東占い

 予測をすることは必ずしも分析や研究をしている者にとって いいこととは限らない。しかし、何の予測もしない分析者や研究者は、世の中が必要としないだろう。つまり、彼らは自分の殻の中に閉じこもって、自己満足しているに過ぎず、何ら社会に利益をもたらさないからだ。
 そこで今年の中東地域について、大胆に予測をしてみることにした。

:シリアがイスラエルとの和平に向かおう。
:ヨルダンはパレスチナ内部対立の影響で国内的に不安定化しよう。
:エジプトはムバーラク政権に対する不満がますます高まっていこう。テロが起こる危険性も増そう。
:リビアは国内的には発展に向かおうが、イスラーム原理主義の動きも活発化していこう。
:イラクはかろうじて統一政府が存在し続けよう、しかし、マリキー首相の権限は弱まろう。
:イランはアメリカとの緊張関係が続くものの、緊張は少し緩んでいこう。  
:湾岸諸国は石油価格が高止まりであることから、全体的に好景気が続こう。しかし、富の配分がうまく行かない国では不満分子も増えよう。
:パレスチナは西岸については対立があるものの、安定化に向かおう。ガザは当分放置されよう。
:レバノンは前半もたつくが、後半では安定化するだろう。
:スーダンの状況に改善はなかろう。
:マグレブ諸国はイスラーム原理主義者の動きが目立ち、不安定な状況が続こう。
:PKKは最後の抵抗をしようが、結果的には沈静化していき、トルコは安全の度を増そう。
:トルコの経済は前進しよう。エルドアン体制は強化されよう。
:アフガニスタンの混乱は今後も続こう。
:イスラエルは国内が混沌とし、対外的に厳しい状況に置かれよう。
:トルコを中心にエジプト・イランの関係改善があろう。
:トルコ・シリア・イスラエルの接近があろう。
:トルコとイスラエルの協力で、西岸地区に工場が設立され、工業地帯が誕生しよう。

*2008年は中東地域でトルコが主役になるのではないか。したがってトルコとの良好な関係を構築する国は前進し、そうでない国は後退する可能性が高いのではないか。
 今年末には結果が出ますが、その時にお笑いください。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:14 | パーマリンク

NO・785新年にふさわしい明るいニュース

「中東和平は永遠に解決されない」と言う専門家が少なくない。しかし、今年は中東和平の一部が、動き出す気配がある。
 それは、シリアとイスラエルの和平だが、ここに来て、イスラエルからもアメリカからも、シリア・イスラエルの和平が進む、という見通しのニュースが増えてきている。
 年末にシリアを訪問した、アレン・スペクター氏を代表とするアメリカの代表団も、イスラエルとの和平に、アメリカが全面的に協力することを明かしている。
 シリアとイスラエルの和平が、動き出しそうな気配が見え始めたのは、フランスのシリアへの接近からであろうか。サルコジ氏がフランスの大統領に就任して以来、フランスはシリアとイスラエルの和平実現に、真剣に取り組むようになった。
 一説によれば、サルコジ大統領がシリアに積極的に働きかけているのは、それなりの理由があるというのだ。彼が内相時代にシリアの治安担当最高責任者であったショウカト氏が、何度もフランスを訪問しており、両者が親しい関係になったのだというのだ。
 ショウカト氏はバッシャール・アサド大統領の義兄弟であり、シリアのナンバー2といわれている。したがって、サルコジ大統領は彼との会話の中で、シリアが和平に向けて、確実に動きだしたい意向があることを、つかんだのであろう。
 シリアに対しては、これでトルコ、フランス、アメリカが、イスラエルとの和平実現に協力する態勢を、採り始めたということであろう。残る作業は、シリアとイランとを切り離し、シリアを穏健派の側に引き込むことであろう。
 その条件は、シリアにどれだけこれらの国々が、経済的メリットを与えられるか、にかかっているのではないか。つまり、シリアとイスラエルとの和平は、秒読み段階に入った、と言っても過言ではないのではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:33 | パーマリンク

 
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