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2008年06月30日

NO・1053トルコのファイナル・カウント・ダウン

 まもなく、トルコの憲法裁判所と与党AKPの闘いの火蓋が、切って落とされる。というよりは、憲法裁判所による与党AKPに対する、最終的な判断が下される日が近づいている。
 今週の火曜日、検事側がAKPに関する調書を憲法裁判所に提出し、AKP側は木曜日に、反論書類を提出することになった。
 憲法裁判所が何とかして、与党AKPを潰そうとしているのは、トルコを宗教国家にしたくない、という根拠からだが、大分無理があると思えてならない。トルコ国民の半数(47パーセント最近の調査では53・3パーセントがAKP支持)が与党AKPを支持しているからだ。
 今回の憲法裁判所の問題提起には、多くの政党が、過去にも将来にも、関ってきそうだ。既にDHP (クルドの政党)が与党AKPと並んで、槍玉に挙げられている。その根拠は、クルドの政党がクルド地区を、トルコから分離させる危険性があるからだ、というものだ。
 憲法裁判所が1998年に設立されてから、これまでに24の政党が憲法違反だとして、解党されているということだ。たとえば、ナジメッデーン・エルバカン党首が率いるリファー党(福祉党)は解党させられ、エルバカン氏は首相の座を追われている。
 トルコ国内では、既にAKPの議員が事務所の整理に入った、という情報が流されているが、彼らは次にどのような手を打つのであろうか。
トルコではマラティヤ市で、民主化のための集会が、NGOなど各種の民主化団体によって開催され、2万人が参加している。彼らは軍によるクーデターと、憲法裁判所の横暴を非難している。
 同様の集会が、イスタンブールでも1週間後に、開催される予定になっているらしいが、それに軍が弾圧を加えるのか、あるいは放置するのか。非常に関心のあるところだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:36 | パーマリンク

2008年06月29日

NO・1052アメリカによるイラン攻撃の懸念拡大

 ここ数日、外国の報道を見ていると、アメリカが昨年イランを攻撃することを躊躇したために、イランの核開発が進み、現在では阻止が困難な状態に、陥っているという記事や、イスラエルがなんとしても、イランの核開発を阻止しなければならないと考えている、といったニュースが増えてきている。
 他方、相変わらずアメリカはイラク、アフガニスタンと二つの戦争で苦戦しており、しかも膨大な戦費を使っていることから、三つ目のイランとの戦争を出来る状態にはない、といった判断をしている専門家もいる。
 しかし、状況は戦争無しとする人たちが考えるほど、心配ないのだろうか。これまでのマケイン大統領候補の湾岸諸国訪問、チェイニー副大統領の湾岸諸国訪問、ブッシュ大統領のエジプトのシャルム・シェイクで開催されたダボス会議や、湾岸諸国訪問での発言などを読んでいると、戦争を意識しなければならない状況が、相変わらずあると考える方が正しいのではないか。
 イスラエルはここに来て、イランに対する攻撃は空爆であり、そのターゲットも限定したと言い出している。もちろん、イスラエルがイラン攻撃に踏み切れば、アメリカは放置するわけには行くまい。アメリカがイスラエル同様に、イランとの戦争に踏み切ることになろう。
 その戦争の期間を、アメリカはせいぜい1ヶ月程度と考えていようが、それはあくまでもイラン国内で、既に展開している内部での破壊工作と、イラン国民のイスラム体制からの離反が、効果を出せばのことであろう。
 しかし、アメリカが空爆だけでイランとの戦争にけりをつけようとすれば、相当数の爆弾を投下しなければならないだろう。そうなれば、当然ことながらイラン国民の多数が犠牲となろう。
 もし、アメリカがイランとの戦争でもたつくようなことになれば、戦争の影響は周辺諸国にも及び、イスラム諸国の国民の間には、イランに対する同情も広がろう。そうなれば状況は悪化し、戦争や紛争、暴動が周辺諸国にも拡大することを、考えておかなければならないのではないか。
 私が抱いているような懸念を、日本政府は抱いているのだろうか。述べるまでもなく、戦争になれば湾岸諸国からの石油輸入は、当分の間(数ヶ月かそれ以上の期間)止まることも考えておかなければなるまい。そのような最悪の事態に対処する方法を、政府は検討しているのだろうか。
 イランをめぐる状況は、決して楽観できるものではない、ということを強調しておきたい。もし戦争にならなければ、それは幸運だったとし、戦時下での日本の対応を考えたことが、無駄だったと考えるべきではあるまい。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:14 | パーマリンク

NO・1051トルコの基礎消費物価上昇

 トルコも他の国々の例外ではなく、現在物価上昇が激しい。トルコ国民はその苦しさに耐えながら、日々の生活を送っているということだ。
 トルコではどの程度の物価上昇が見られるのか、基礎消費物資の価格推移の統計が出たのでご紹介する。

        2007年12月    2008年6月    上昇率   
レンズ豆       2.6TL      4.95TL   90・4%
食用油(5キロ)  16・9TL     25・9TL    53・3%
小麦粉(1キロ)   1・25TL     1・65TL   32%
蜂蜜(850G)  15・9TL     20・9TL    31・4%
パスタ(0・5キロ) 0・89TL      1・09TL  22・5%
オリーブ(1キロ)  4・9TL      5・9TL    20・4%    
紅茶(1キロ)    8・9TL     10・4TL    16・9%
ひき肉(1キロ)  11・9TL     13・9TL   16・8%
砂糖(5キロ)    9・9TL     11・2TL   13・1%
ジャム(385G)  2・45TL     2・75TL  12・2%
コーラ(1リットル) 1・29TL     1・35TL   4・7%
グリーンピース(1キロ)1・95TL    2・25TL  15・4% 
トマトペースト((1キロ)2・95TL   3・45TL  16・9%  
(TL=トルコリラ  G=グラム )

 このなかでレンズマメの値上がりが特に目立つが、トルコではレンズマメのスープが毎日の食卓に上るだけに家計への影響は大きいだろう。 
 蜂蜜とオリーブのt漬けたものはチーズやバタ―と一緒に、毎日の食卓に欠かせないものだし、小麦粉はパンが主食のトルコでは欠かすことの出来ない基礎食品となっている。
 トマトペーストもまた、レンズマメのスープと並んで、トルコではスープや他の料理の材料として、欠かせないものだ。これら以外の野菜や果物の価格も、軒並みに上昇していることは述べるまでもない。
 日本の値上がり状況と、比較してみるといいのではないか。
 

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:14 | パーマリンク

2008年06月27日

NO・1050サウジアラビア今年テロ容疑者逮捕数701人で過去最多

 日本の報道では紹介されていないが、サウジアラビア内務省は、今年のテロリスト容疑者逮捕数を発表した。それによると、逮捕者数は701人に上り過去最多だということだ。彼ら逮捕者は多国籍にわたり、アフリカ人も含まれているということだ。(昨年は1年間で208人)
しかし、そのうちの181人については、容疑不十分であることから、逮捕、取調べ後に釈放されたようだ。
 これらのテロリスト容疑者たちは、サウジアラビアの紅海沿岸のヤンブ―にある、石油化学施設に接近していたということだ。それ以外にも、サウジアラビア東部の石油施設などの、情報収集をしていたようだ。
 ビン・ラーデンは以前にから、サウジアラビア国内に存在する、外人用コンパウンドに対する攻撃を宣言していたが、石油施設に対する攻撃も開始するようだ。そうなれば石油施設だけではなく、パイプ・ラインもテロリストの攻撃、破壊工作の対象となることが予測される。
 これら一連の動きが、ビン・ラーデンと彼の組織アルカーイダによるものなのか、それ以外のグループによるものなのかは、今のところ確認のしようがない。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 01:04 | パーマリンク

NO・1049ブッシュ大統領はイラクとの長期治安協定をいまだに希望

 アメリカのブッシュ大統領はイラク戦争後、国連の決定に基づいて、イラクでのアメリカ軍の展開を正当化してきた。しかし、今年12月31日でその期間が切れることになっている。
 そこで、ブッシュ大統領はイラクのマリキー首相に対し、新たな長期間に渡る治安協定を締結するよう、圧力をかけてきている。以前にもこの欄でご紹介したが、イラクからは外務次官が日本を訪問し、日米安保の内容について、外務省からブリーフィングを受けて帰った。
 しかし、イラクでは宗教各派も政党も一般人も、誰もこの協定の締結を望んではいない。この治安協定はアメリカ軍が永久に、イラクに駐留することを認めることになり、イラクがアメリカの占領下におかれることになると、イラク国民の全てが認識しているからだ。
 アメリカ政府はこの治安協定で、アメリカ軍が必要と認めた場合、イラク人を逮捕拘留できる権利と、アメリカ人のイラクでの自由な活動の保証(イラク側にアメリカ人を逮捕する権利がない)を要求している。イラク側にとってこの点が、最も受け入れがたいようだ。
 イラクのマリキー首相の苦悩に全くかまわずに、ブッシュ大統領はなんとしても、この協定を実現させたいようだ。それは、イラク周辺諸国に対し軍事的な圧力をかけることが狙いであり、アメリカ政府はイラク国内に11箇所以上の基地を恒久化したいと望んでいるようだ。(現在430箇所以上のアメリカ軍基地、施設がある)
 イラン政府は最近になって、アメリカがイラン・イラク国境沿いに、4箇所の軍事基地を建設したと非難している。これらの基地には、イラク戦争のときにクウエイトに設置されたと同じような、レーダーその他の情報収集機器が、揃えられているというのだ。
アメリカ側の説明によれば、これら4基地は戦争を目的とするのではなく、あくまでもイランのイスラエル攻撃などといった事態を、防止することに目的があり、基地にはCIA、国防省、海兵隊員が勤務すると説明している。
言葉を変えて表現すれば、アメリカはイランに対する攻撃を十分に意識し、それに着々と備えているということであろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:42 | パーマリンク

2008年06月26日

NO・1048エジプトにはまだジョークがあった

 エジプト人はゆったりと流れる、ナイルの川がもたらす肥沃土に恵まれ、農産物が豊かであり、貧しい者も腹をすかすことはなかった。このためエジプト人は、辛いことがあってもジョークを交わしながら、それに耐えてこられたのだ。
 しかし、最近は様子ががらりと変わった。本来であればナイル川の水資源と肥沃な土壌で、小麦の生産は国内需要をカバーしていたのだが、最近では観光客用に、果物や野菜の栽培面積が増え、小麦の生産量が激減している。したがって、不足分はアメリカから輸入するということだ。
 パンの値上がりの主たる原因は、小麦の輸入価格の値上がりによる。腹が減ってはジョークも減るのだろうかと思って、友人のエジプト人に聞いてみると、彼は次のような最新のジョークを教えてくれた。

「その1」
 ナセル大統領は自分よりおろかな後継者を探して、副大統領にすることにした。10年間探した結果、副大統領に指名されたのがサダトだった。
 サダト大統領もナセル大統領に倣って、自分よりもおろかな人物を副大統領にすることにした。サダト大統領が7年間探した結果がムバーラクだった。
 ムバーラク大統領もナセル、サダト両大統領に倣って、自分よりもおろかな人物を副大統領に指名しようとして探したが、25年が過ぎたいまも副大統領に指名する人物は決まっていない。

 そのムバーラク大統領に関するジョーク
「その2」
 ムバーラク大統領とナジーフ首相が町を歩いていると、長い人の列を見かけた。ムバーラク大統領がナジーフに何の列なのかを聞くと、ナジーフ首相は「大統領閣下、国民は安いパンを買うために並んでいるんです。」と答えた。するとムバーラク大統領は「そうかまだ国民にはものを買う金が残っていたのか。」と言った。

 二つのジョークに関する説明は要るまいが、あえて説明すると、ムバーラク大統領はおろか過ぎて、彼よりもおろかな人物を探すのが困難だという、ムバーラク大統領に対する痛烈な批判と、エジプトの大統領は常に部下の裏切りを恐れているということだ。そしてこの副大統領を探す期間が、各大統領に対する評価を示してもいるのだ。
 もうひとつのジョークは、ムーラク大統領が国民の苦しみを、全く解していないということだ。そのムバーラク大統領の次男ガマールを、ムバーラク大統領は自分の後継者にしたいと望んでいるようだが、エジプト国民の間ではいまひとつガマールの人気がない。彼についてあるエジプト人はこう評していた。
 [ガマールが5歳のときムバーラクは空軍のトップだった。ガマールが00歳のときムバーラクは副大統領に就任していた。そしていまは大統領だ。そんなエリートの金持ちには、国民の生活ぶりや苦しみは全く分からない。
彼がムバーラク大統領の後継者になったら、ムバーラク以上にひどい政策を実施することになるだろうということはいまから想像がつくよ。]なんとなく納得のいく説明ではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:57 | パーマリンク

NO・1047エジプトにはうなるほど金があるという話

 友人のビジネスマンが語るところによれば、いまエジプトの銀行には、膨大な金がうなっているというのだ。行き場の無い資金を、何とか優良企業に貸し付けようと、銀行マンから一日何度も電話がかかってくるし、銀行マンが企業を訪問してもいるというのだ。
 一体何処からエジプトに、そんな金が集まっているのだろうかと、誰もがいぶかろう。実はエジプトは、例外的産油国なのだ。例外的産油国というのは、OPECにもOAPEC にも参加せずに、市場に合わせて有利なときに、有利な価格で石油が売れる国という意味だ。
 石油の価格は暴騰し、1バーレルの価格が170ドル台に近づいている。その恩恵をエジプトも受けているのだ。もちろん、湾岸産油諸国などからの資金の流入も、ものすごい金額に上っているだろう。
加えてエジプトへの観光ブームが続いている。日本からの小規模な観光客ではなく、欧米や観光では新興の中国、ロシアから、そして東欧圏や北欧から、観光客が集まってきているのだ。
 銀行から金を借りてくれと依頼されている友人は、「今後3年以内に紅海沿岸に3棟のホテルを建設する。」と言っていた。各棟は400室の客室を擁する規模だということだ。
 彼は自己資金で十分建設できるから、銀行の金を借りなくても済むと豪語し、外人観光客が多いから、すぐ元が取れると言っていた。
 エジプトで発行される毎日の新聞にも、エジプト政府の新計画なるもののニュースが掲載されているが、それらは何十億ドル規模のものがほとんどだ。小さいビジネスなど、目もくれないということであろうか。
 確かに、エジプトのカイロや郊外には、数億から数十億の豪邸開発が行われており、それを主にエジプト人が購入しているのだ。カイロの街中にはスター・シテイなる超巨大なショッピング・モールが建っているが、そのなかには、世界中のブランドの出店が並んでいる。それがペイしているのだからすごい。
 エジプトの現状は、まさに天国と地獄であろうか。85パーセントの庶民が、パンを買うのにも困っているというのに、残りの15パーセントの富裕層は、金を使うのに飽きたというのだ。
 カイロ郊外のアレキサンドリアに続く、砂漠道路沿いのレストランの駐車場には、ベンツ、BMW、ジャガー、ルノーなどの外車が所狭しと並んでいる。そこは、家族で贅沢な食事を楽しんでいる人たちであふれているのだ。
 エジプト駐在の日本人企業マンや報道特派員たちのほとんどは、高級住宅街の存在も、郊外のしゃれたレストランの存在も知らないで、カイロのザマーレクとモハンデシーンと呼ばれる、イギリス統治時代からの高級住宅街(?)に篭もり、そこから一歩も出ようとしていないのだ。
そして、エジプトの貧困層の苦しみも知らなければ、富裕層の贅沢の限りも知らないで、任期を全うする日を待ちあぐねているのだ。「エジプトは貧しいだから、日本政府は援助すべきだ。」と外務省は言うだろうが、日本のけちな援助額で、エジプト政府が喜びはしないし、日本が援助しても、貧困層を救済するには、何の役にも立たないのだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 01:37 | パーマリンク

NO・1046エジプトで何故暴動クーデター革命が起きないのか

 エジプトの物価高騰は、常識を超える段階をはるかに上回っている。庶民の生活はこのため、日毎に苦しさを増している。
 しかし、エジプトでは暴動も、クーデターも革命も起こる気配がない。それは何故なのだろうかと、誰もが不思議に思うだろう。実はこうした劇的な社会変革を生み出す、核となるべき人物や団体が存在しないというのが、エジプトのもうひとつの実情だ。
 本来であれば、軍が国民の苦しみを受け止め、クーデターを起こし、体制を打倒することにより、現状の問題解決を図ろうとするだろうが、軍部なかでも軍幹部は、ムバーラク体制と一体であり、ムバーラク体制を打倒するそぶりさえも見せていない。
 それでは大衆による暴動が、起こらないのはなぜかと思うだろう。大衆は完全に希望を失い、暴動を起こす気力さえ無いというのだ。アレキサンドリアに近いブロルスという町で、小規模な暴動が起こったが、警察によってまもなく、鎮圧されてしまった。
 それでは大衆による革命はどうかというと、この場合に必要な核となるべき組織も、英雄的人気を集める人物も、今のエジプトには存在しないというのだ。こうした動きでは、ムスリム同胞団が主導すると思われるのだが、ムスリム同胞団の大衆支持は、低下の一途をたどっている。
彼らムスリム同胞団が、大衆を扇動したとしても、大衆は付いていかないというのだ。それ以前に、ムスリム同胞団の幹部の多くが、警察によって逮捕され、投獄されてしまっているのだ。
 しかし、大衆、一般庶民の生活は日増しに、厳しさを増していることから、近いし将来暴発する危険性は、高いと考えておく方が正しいのではないか。その場合、権力側は弾圧すべき組織も、人物もいないとなれば、対応が困難であろう。そして、そうした状況下で起こる暴動は、凄惨を極めるのではないか。
 その暴動が起こらないように、エジプト政府はありえない戦争の可能性を、常に国民に対して宣伝しているのだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 01:05 | パーマリンク

2008年06月25日

NO・1045最近のエジプト犯罪事情

 最近になって、エジプトでは凶悪犯罪が増えているということだ。友人の警察官が話したところによれば、犯人は警察が駆けつけても、犯行を止めようとしないというのだ。以前は警察官が現場に駆けつけると、犯人は逃げるか、あるいはおとなしく逮捕されるのが、当たり前だったということだ。
 では今はどうなのかと聞いたところ、犯人が銃を持っていれば、警察官が銃を向けると、即座に発砲してくるということだ。つまり、破れかぶれな犯行を行うケースが、増えているということだ。
 それでは何故そうなったのかというと、現実の生活が非常に苦しくなり、罪を犯す者たちは、つかまれば刑務所の中でパンが食える。運悪く警察官に撃たれて死んでも、運がよければ来世に天国に行けるかも知れない、と考えるのだそうだ。
 犯罪者がどうして天国に行けるかもしれない、という期待を抱けるのかということについては、政府がひどい政策をするから、国民がこんなに苦しんでいるのだ。罪を犯す原因は政府にあり庶民にはない、つまり犯罪が起こる原因は政府が作っている、犯罪者は無罪だということになるらしい。
 エジプトの庶民はいま、過去に例を見なかったような、苦しみの中で生活している。サダト大統領の時代には、パンの値段が少し上がっただけ、暴動が起こったが、今では暴動を指揮する人間がいないのだ。
 苦しみがこのまま続けば、やがては大暴発するというのが、エジプトの現状だろう。だからといって、日本が何の工夫も無しに援助しても、その援助は一定の階層にしかたどり着かず、庶民の生活には何のプラスにもならないのだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 03:08 | パーマリンク

NO1044トルコ与党AKPと最高裁判所の闘い

 トルコの与党AKP(開発公正党)と最高裁判所との間で、スカーフ着用をキッカケに、激しい闘いが続いている。
最高裁判所側は与党AKPが決定した、スカーフの公共の場での着用許可に対し、憲法違反であるとし、与党AKPと党の幹部71人の、政治活動を禁止する判断を下す方向で動いている。
これに対しAKP側は、いたって平静を保っているようだ。党首のエルドアン首相も全く問題視していない様子だ。それはAKPが国民の多くから、支持されているためであろう。
確かに、AKPが政権をとってからの6,7年で、トルコの経済は大幅に改善された。その最大の理由は、汚職が減ったからであろうし、トルコ国内の資金が、トルコ国内に投資されるようになったからであろう。
海外からのトルコへの投資も、増加傾向にある。今回のAKPと最高裁判所との争いで、外国からの資金が、逃げ出すのではないかと懸念されていたが、それほどでもないようだ。トルコの株式市場も、それほどのダメージを受けていない。
そうした状況は、AKPにとって有利であろう。AKPにさえ付いていけば、将来は明るくなる、という見通しを持つ国民が増えるからだ。したがって、AKPは国民の支持を増やすことはあっても、減らすことはない。
国民が支持するAKPに対し、最高裁判所が憲法違反だとして、解党を命ずる方向にあえるということは、憲法が国民よりも優先されるということであり、おかしな話だということは誰にも分かろう。
AKPが今後どう憲法裁判所に対応していくのかについては、幾つものシナリオがうわさされている。それらは次のようなものだ。
1:将来どうなるか誰にも分からない、予測不可能。
2:AKPは解散し新党を結成する。
3:AKPを解散させ、AKPの候補者は個人候補として立候補し、当選後に新党を結成する。
    
最近では、AKPの若手議員の間から、エルドアン首相の口からも、憲法裁判所の決定を無視する、という発言が飛び出している。案外この選択が可能性も高く、一番正しいのかもしれない。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 01:19 | パーマリンク

NO・1043エジプトで起こっている増税の嵐

諸物価の高騰が、エジプトの庶民の生活を苦しめていることは、既に何度か報告したが、庶民が苦しんでいるのはこれだけではない。新たな課税が政府によって決められ、中産階級も苦しい立場に追い込まれている。
そのなかでも、もっとも深刻な問題は、私立の教育機関に対する課税だ。今までは私立の小中高校、大学は課税の対象にはなっていなかったが、ここに来てエジプト政府は課税を決定した。
結果的に、教育機関は授業料の引き上げをせざるを得なくなった。エジプトでは公立学校の教育レベルが低下しており、少しでも経済的に余裕のある家庭では、私立の学校に子供たちを送り出しているのだ。
しかし、政府による私立の教育機関に対する課税が決まったことで、教育費の負担が重くなったために、各家庭の負担が大きくなったのだ。エジプト人も面子を重んじ、教育を重視することから、教育費の負担が大きくなったからといって、簡単には私立学校から公立学校に、子供たちを編入させることは難しい。
もう一つの各家庭に及ぶ増税の影響は、不動産税が導入されたことだ。これまでは遺産相続税はあったものの、毎年支払う不動産税はなかったようだ。この不動産税が導入されたことにより、エジプトで400平方メートル以上の不動産を所有している各家庭は、毎年税の負担をこうむることになったのだ。
このことは、これまでカイロなどに見られた歴史的な建築物が、日本と同様に税金支払いのために取り壊され、土地が細切れにされて売られることになるということだ。カイロの町を歩いていると、古びたビルではあるが、よく見ると非常にこった外装の建物が少なくない。それがここ数年で、ほとんど姿を消すことになろう。
エジプト政府は教育費の負担が増えることについて、少子化を呼びかけている。子供の数を減らせば教育費の負担は、各家庭も政府も少なくて済むという考えのようだ。
カイロのメイン・ストリートの路肩には、幾つもの看板が出ているが、それらは「少子化によって生活を向上させよう」「少子化によって医療を受けられるようにしよう」「少子化によって失業を減らそう」「少子化によって満足できる生活を得よう」「少子化によって教育の機会を充実しよう」「少子化によって飲料水を確保しよう」といったことが書かれている。近い将来、人口が現在の倍になると予測されているエジプトでは、あるいは政府の掲げる方針が正解なのかもしれない。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:33 | パーマリンク

帰国しました

6月24日帰国しました。エジプトでは物価高と庶民感情を調査。トルコでは国際会議に出席後各地で講演をしながら国内の様子を調査してきました。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:31 | パーマリンク

NO・1042エジプト庶民の生活苦

エジプトのカイロに着いた日の朝、友人の事務所を訪ね、彼が姿を現すまで、彼の執務室で新聞を読んでいた。一面はムバーラク大統領を賞賛する記事が、ほとんどだった。続く二面を見てみると、目を引く記事が二つ並んでいた。
一つは肉屋の主人と近所に住む男との争いが、結果的に殺人事件になってしまったというものだった。肉屋の近所に住む男が、肉屋の主人に少しだけ肉を分けてくれないかと頼むと、肉屋の主人はそれを断った。すると近所の男は、肉切り包丁で肉を少しばかり切って、持ち帰ろうとした。それがきっかけで肉屋の主人と近所の男は、包丁を手にしてけんかになり、肉屋の主人は死亡、近所の男も重傷を負った、という内容だった。
もう一つの記事は、エジプトの一般家庭では、一日40枚平均でパンが消費されている、という内容だった。もちろん、どこの家でもパンを40枚、食べているわけではないのだが。
このパンは直径25センチほどの平たいパンだ。胚芽を含むパンで栄養が普通のパンよりもあるといわれている。エジプトの庶民はこのパンに、豆を煮てつぶしたペースト状のもの(フール)をつけて食べ、それ以外には野菜を食べている。肉が食卓に出ることは10日に一度か、1ヶ月に1,2度程度であろう。
その主食中の主食とも言えるパンの値段が、何倍にも跳ね上がったのだから、庶民にとっては大問題となった。4月ごろから職場ではストが起こり、街中ではデモが起こっている。しかし、今までのところ、大規模な暴動にまでは発展していない、というよりは未然に防がれているようだ。
それでも数日前には、アレキサンドリアに近いブロルスという街で、暴動が起こった。庶民はパンをはじめとする諸物価の値上げに抗議し、タイヤを燃やして道路を封鎖したということだ。
さる5月1日のメーデーには、大規模なストが発生することが予測されていたが、何事も起こらなかった。その後にも、同様の予測記事が出たが、何も起こらなかった。こうしたエジプト庶民の現状に対する対応について、友人が興味深い説明をしてくれた。
「エジプト人は急激な変化を望まないんだ。ムバーラク大統領が給料の30パーセント引き上げを発表したのに対し、庶民は給料の引き上げではなく、諸物価を前のままに据え置きしてほしいと言うんだよ。これにはもちろんそれなりの理由があるんだがね。政府が30パーセントの給料引き上げをしても、諸物価が80パーセント上がれば、結果的に庶民は50パーセントの値上がりに苦しむことになるからね。」
値上げはパンをはじめとした食料品全般から、バスをはじめとする交通費、ガソリンなどありとあらゆるものに及んでいる。この値上げの嵐にエジプトの大衆は、どこまで耐えられるのだろうか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:30 | パーマリンク

2008年06月11日

NO・1041中東主要国2050年の人口

 アルハヤート紙が6月10日に伝えたところによれば、2050年のイラン、トルコ、エジプトの人口増加予測は、以下の通りだ。
1:エジプト―1億6千万人。
2:トルコ―8千600万人。
3:イラン―1億人。
 当然のことながら、この数値を見て不安になるのは、2050年の段階でこれら三国の国内状況が、どうなっているかということだ。まず、第一に心配しなくてはならないのは、食料の確保の問題であろう。
 第二には、就業率であろう。どれだけの人たちがまともな仕事に、就くことができるのか。その職場は十分にあるのかといった問題だ。
 第三には、非常に悲観的な予測だが、教育や病院の施設、住宅事情などがどうなっているかだ。
 トルコの上昇率は対応可能な範囲であろうし、イランは石油が出る限り、何とかなるだろうが、イランでは2050年の段階で、ガスがかろうじて残存している程度ではないのかという不安がある。
エジプトの場合は、石油、ガスといった、天然資源に期待できないことから、破滅的な状態になる可能性があろう。エジプトの場合は、他のアラブの国々や、欧米に移住するしか方法がないのではないか。
 日本では2050年の段階で、人口が大幅に減っていることが予測されているが、これらの国々では、日本の逆で大幅な人口増加が、予測されているということだ。この状況に対する対応策は、現段階から考えたとしても、とても追いつかないのではないか。
 そうなると、戦争という手段が人口調整に必要だ、という悪魔の選択が、現実味を帯びてくるかもしれない。中東地域はこれから40年が過ぎても、不安定な状態にあるのかもしれないということだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:28 | パーマリンク

2008年06月10日

NO。1040中東へ11日から24日まで行ってきます

        中東TODAY当分休みのお知らせ
中東のエジプトとトルコに行ってきます。
期間は6月11日から24日までです。
したがってこの期間は現地から情報を送る可能性もありますが、中東TODAYは基本的に休みだと思ってください。
今回はエジプトの物価問題と大衆の感情。トルコでは国際会議出席の後、東部のクルド人居住地域に行ってみるつもりです。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:46 | パーマリンク

NO・1039一番信用できるのはイランか

 イラクとアメリカとの間で今話し合われている、アメリカ軍のイラク駐留問題は、イラク、アメリカ、イランそれぞれにとって、大きな問題となりつつあるようだ。
 イラクのマリキー政権にしてみれば、いまの段階でアメリカ軍に出て行かれては、イラク国内は内戦状態に陥る危険性が高いだろう。なかでも、キルクークの領有問題をめぐり、キルクーク地域には石油があるだけに、クルドとスンニー、シーアとの対立が先鋭化していくだろう。
 そのことから、アメリカが希望しているイラクとの治安協定について、ズイバリ外相(クルド出身)は前向きな発言をしている。それは、タラバーニ大統領(クルド出身)も同じであろう。そして、現政権を指導するマリキー首相)(シーア派)にとっても、アメリカの支援無しには、各派が入り乱れるイラクの国家を、運営していくことを容易ではあるまい。
 アメリカとの治安協定をめぐり、シーア派やスンニー派国民の間からは、強い反対があることはすでにお伝えしたとおりだが、何とかこの治安協定をまとめたいと願うマリキー首相は、イランを訪問しアハマドネジャド大統領やモッタキ外相らと話し合うと共に、イランの最高権威者であるハメネイ氏との会談も行った。
 マリキー首相はイランの要人らに対して「イラクがアメリカと結ぶ合意は、イランを敵視するものではない。」「合意はイラクをアメリカ軍の攻撃のジャンプ・パッドにはしない。」と説明しているが、イラン側がそのような言葉を信じるはずが無い。
 アメリカの国防省もまた、マリキー首相の発言を擁護するように「イラクのアメリカ軍基地は、周辺諸国に対する攻撃には使わない。」と述べている。
 これらマリキー首相やアメリカの国防省の説明に対し、ハメネイ師は明確に「アメリカがイラク国内に存在すること自体が、イランにとっては不愉快なのだ。」と本音を語っている。ハメネイ師は同時に「アメリカがイラクに存在することが、イラクの安定の邪魔になっている。」とも語っている。
 アメリカがイラクに恒久的に持とうとしている軍事基地が、周辺諸国に対する攻撃を前提としていないのであれば、何のために必要なのだろうか。それは日本の場合と同じように、周辺諸国よりも、軍事基地のあるイラクに対し、威圧をかけるために必要だということだろうか。 
 アメリカやマリキー首相がどう説明しようとも、イラク国内のアメリカ軍基地はイランをはじめ、中央アジア諸国、湾岸諸国に対する無言の威圧を加えるものとなろうし、必要によっては、攻撃の基地になるということであろう。
 そうである以上、イランはイラクにアメリカ軍が基地を持ち、それを長期的に使うことに対して、賛成するはずが無い。一説によれば、マリキー首相はイランにアメリカ軍の長期駐留に対する賛同を得に行き、イラン・イラク軍事協力に合意したということだ。イランとイラクはこの合意の覚書に、双方の国防大臣がサインしているということだ。
 この情報が事実であるとすれば「ミイラ取りがミイラになった。」話と共通するではないか。アメリカはこのことを確認し、事実であるとすれば、早い段階でマリキー首相の首を挿げ替えるのではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:43 | パーマリンク

2008年06月09日

NO・1038トルコ統合参謀総長の警告

 エルドアン氏率いるAKP(開発公正党)が、トルコの政権を握って以来、トルコ国内では世俗派による、AKPに対する反発の動きが頻発してきている。それは、AKPが穏健な宗教政党だからだといわれてきた。
 そのAKPに対する反対の動きの中で、最も顕著に現れたのは、昨年の大統領選挙をめぐってであろう。AKPのギュル外相が大統領に立候補すると、軍部はネットを通じて、クーデターを起こす警告を発した。
 トルコ軍については、ケマル・アタチュルクの権力掌握以来、トルコが宗教国家化したり、不安定化した場合には、クーデターを起こし、世俗体制を守っていいという条項が、憲法のなかに記載されているのだ。
 しかし、ギュル外相の大統領立候補は、軍のクーデター無しにスムーズに進み、彼は大統領に就任した。それは欧米諸国がクーデターに反対だったことと、トルコ国民の多数がAKPを支持した結果であろう。
 トルコ軍と行動を共にする世俗政党のCHPは、ギュル大統領反対AKP反対の国民集会を、トルコの主要な都市数箇所で開催した。しかし、これも実際には国民の多くをひくつけるものに名はならなかった。全国から集めたCHP支持者や退役軍人の集会は、結果的に失敗に終わった。
 以来、AKPに反対するグループの行動は収まったかに見えていた。その後これといった動きがなかったのだ。しかし、今年に入り、4月が過ぎるとトルコの憲法裁判所が、「AKPは非合法である」という判断を下し、裁判にかけることを宣言した。
 これに先立つ、AKPによるスカーフ着用許可の決定が、世俗派の怒りを買ったようだった。というよりも、世俗派はAKPを攻撃するチャンスを、待っていたのであろう。このスカーフ問題をめぐっては、いわゆる世俗はといわれる人たちが、結構敏感かつ過激に反応していたのだ。
 ある大学の教授は、それまで大学構内や公共機関では禁止されていた、スカーフの着用許可が下りたことで、女子学生がスカーフをかむって大学構内に入ったことに激怒し、拳銃を発砲する事件まで起こっている。
 憲法裁判所がスカーフの着用をめぐり、世俗化に反するものだという判断ををするようになり、憲法裁判所とAKPの間で、この問題が闘われることになったわけだ。するとこの段階で、それまで鳴りを潜めていた軍部が、突然AKPに対して反旗を翻し始めた。
 ブユカヌト統合参謀総長がAKPに対して直接ではなく、あたかも欧米を非難するかのような婉曲な方法で、批判を行ったのだ。曰く『トルコが穏健なイスラム国家である、と呼ばれることに反対する。もしそのような言い回しが許されるのであれば、アメリカはキリスト教国家、と呼ぶことになるのか、、。』
 確かにブユカヌト統合参謀総長の屁理屈にも一理あろう。穏健イスラム・トルコ共和国やキリスト教アメリカ合衆国という呼称はなじまない。しかし、欧米諸国はトルコに対して「穏健イスラム国家」という呼称を使うようになったのには、それなりの理由があるのだ。
 世界のイスラム教徒が次第に、原理主義や過激主義に向かっているなかで、欧米諸国は「トルコこそが、穏健なイスラムを代表してくれる国家だ。」という評価を下したのだ。そのトルコを中心として、イスラム世界が欧米キリスト教世界との、対話を拡大していけば、イスラム・テロは沈静化できる、という平和的な発想に基づくものなのだ。
 このことはトルコとトルコの国民にとって、誇るべき外国からの評価であろう。しかし、ブユカヌト統合参謀総長に言わせれば、トルコが置かれている状況は、楽観が許されないのだということになる。彼はイラクが不安定化へのセンターになる危険性があり、それはトルコの安全にも関るとし、ハマースやヘズブラ、ムスリム同胞団、PKKもトルコの不安定を生み出す、元凶だと語っている。
 問題はこのブユカヌト統合参謀総長の発言が、憲法裁判所の動きと連携したものなのか、あるいは単に軍内部の意見を、代表したものかということだ。軍内部の青年将校団の、不満を解消するためのガス抜き発言であれば、あまり問題ではあるまいが、憲法裁判所との連携による発言であるとすれば、ことは面倒になる。
 トルコの憲法裁判所の長官は、大統領の指名によって決まるが、ギュル大統領が他の人物を、裁判所長官に指名すれば、トルコの司法も行政も立法も、完全にAKPの手中に落ちることになるのだ。そのことから、今回憲法裁判所が立ち上がったのであろう。しかし、それは大きなリスクをトルコとトルコ国民にもたらす、危険なものでもあるのだ。
 ブユルカヌト統合参謀総長の今回の発言は、PKKに対するトルコ政府の対応が、生ぬるいということが案外最大の理由かもしれない。彼の発言を読んでいると、トルコ国内の世俗派を大同団結させ、反AKPの行動を起こしていくためのものとは思えない。
そうあって欲しいものだ。そうでなければ、いまやっと経済成長のトバ口に立ったトルコの将来が、不安定なものになり、外国からの投資も、一斉に引き上げる危険性があるからだ。
 

投稿者: 佐々木良昭 日時: 10:42 | パーマリンク

2008年06月08日

NO・1037アメリカの悪夢・マリキー首相の裏切り

 アメリカにとっては、どうもあまりうれしくない状況が、イラクで拡大しているようだ。アメリカ政府がマリキー首相との間に、昨年11月に基本的に合意に至った、アメリカ軍のイラク駐留に関する地位協定(SOFA)に対し、イラク国民の間で猛反発が起こり、マリキー首相は非常に難しい状況に、追い込まれているようだ。
 この問題は、この地位協定がアメリカによる、イラン攻撃と直結する性質のものであるだけに、イラクの各政党や組織は「イラクをイラン攻撃のための、アメリカ軍の基地にするな。」と主張し始めているのだ。
 全くその通りであろう。イラクはイランと8年間にも及ぶ、長期間の戦争を経験してはいるが、国民の60パーセント以上が、イランと同じシーア派であり、サダム体制時代には、多くのシーア派のリーダーが、イランに亡命してもいた。したがって、イランは大恩ある国家になっているのだ。
 アメリカ軍のイラク侵攻後も、イラクのシーア派の何人ものリーダーが、イランを訪問し援助を取り付けているし、反政府の資金と訓練と武器を、今でもイランから受けているのだ。
 そうなると、アメリカの保護下にあるとはいえ、マリキー首相はイランを無視できないことになる。先にバスラで起こった戦闘では、多くのイラク軍の将兵が戦線離脱したため、マハデイ軍に対し政府軍が不利になり、危険な状況に追い込まれもした。
 そこで困り果てたマリキー首相は、イランに仲介を依頼し、何とか面子を保ち、イラク軍をバスラから撤退させたといういきさつもある。
 アメリカとの地位協定をめぐり、イラク国民の政府に対する反発が強まり、他方では、アメリカの強引な地位協定批准要求に対し、マリキー首相は困惑し、今回もイランに相談に行ったということであろう。
 こうなると、アメリカは信頼するマリキー首相が、実はイランの思惑のなかで動いているということになり、何処まで信頼を置いていいのか、分からなくなろう。当座は彼に代わる好都合な人物がいないことから、マリキー体制を支援して行こうが、何時それが急遽変更されるかは分からない。
 アメリカがどう本音をごまかそうとも、イラクに恒久基地を確保したいということは事実であろう。イランだけではなく、中央アジア諸国、トルコ、シリア、湾岸諸国、それにロシアに対しても影響力を確保していく上では、イラクは最も好都合な位置にあるのだ。
 マリキー首相はこのアメリカの意向を、何処まで受け入れられるのか、述べるまでもなく、イランはマリキー首相に対して、地位協定を結ぶな、と圧力をかけるだろう。もし、マリキー首相がイランの意向を受け入れないのであれば、マハデイ軍を始めとするプロ・イランのイラク各派が反政府、反アメリカ軍で立ち上がるということだ。
 アメリカにとって、もうひとつの不愉快な変化が、イラク国内で起こっている。それはサダム時代に、イランとの戦争を記念して、バグダッドのバーブ・アルモアッザム地区に建てられた反イランの銅像が、サーベル・アルイッサーウイ・バグイダッド市長の意向で撤去されることが決まったのだ。その後には、イラク・イランの平和的関係を祈念する銅像が建つことになるようだ。
 アメリカはいま、一体誰のためにイラク戦争をしたのか、分からなくなってきているのではないか。もちろん、アメリカがサダム体制を打倒する戦争を始めたのは、アメリカの国益のためであったことは間違いないのだが。
しかし、いまとなっては、ほとんどのイラク国民がアメリカに対し、敵意を強めるようになっている。アメリカン・ドリームならぬジャパン・ドリーム(日本支配はよかった)には、なかなかなりそうもないイラクということだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 12:15 | パーマリンク

NO・1036真実味を帯びてきたイスラエルのイラン攻撃

 イスラエルは以前から、イランの核施設に対する空爆を行う意思のあることを、公言してきている。そのイスラエルは、1980年代にはイラクのオシラク原発を空爆し、つい最近では、シリアの核施設を空爆で、完全に破壊している。
 それだけに、イスラエルの空爆警告は、真実味を十分に帯びているのだが、ここに来てそれを、より一層印象付ける発言が、イスラエルの要人によって語られた。元国防相で現在副首相のモファズ氏が「イランがもし核開発を止めないのであれば、イスラエルはイランの核施設を空爆する。」と語ったのだ。
 これにはアメリカもあわてているようで、早速ホワイト・ハウスのスポークスウーマンのダナ・ペリノ女史が、ブッシュ大統領はイランの核問題を、外交で解決するつもりであることを強調している。もちろん、だからといってブッシュ大統領が、イランに対する軍事攻撃を、選択肢から外したわけではないとも語っているが。
 モファズ副首相はイランの核対応については、既に外交や制裁では埒があかないとも語っているのだ。イランが核開発を止めることは、ほとんどありえないことから考えると、イスラエルは本当にイランを空爆するかもしれない。その可能性はいままでと比べ、格段に大きくなっているのではないか。
 こうした雰囲気のなかで元国防情報局のトップだったアンソニー・コーデスマンという人物が「もし核戦争になったらイスラエルとイランはどうなるのか」ということを解説している。
 彼の解説によれば、2010年の段階で、イランが30発以上の核兵器を所有し、イスラエルとイランが核による攻撃を相互に始めた場合、イラン側には攻撃から21日以内に1600万人から2800万人の死者が出ようというのだ。
他方、イスラエル側には200発以上の核兵器を保有しているが、イランから攻撃されれば、同じ期間に20万人から80万人の死者が出ると予測している。
 この戦争が始まれば、イスラエルはエジプトやシリアからの攻撃も、覚悟しなければならないというのだ。そうなれば、イスラエルはエジプトのアスワンダムやスエズ運河も攻撃することになり、当然の帰結として、カイロなどは一瞬にして大洪水に見舞われたと同じ状態になり、壊滅するというのだ。
 結果的に、イスラエルとイランとの核戦争に介入するシリアは、1800万人の死者を出し、シリアは再起不能状態に陥ると予測している。他方、イスラエルはシリアからの化学兵器や細菌兵器によって80万人の犠牲者を出すということだが、再起可能だとしている。
 エジプトについてはカイロ、アレキサンドリア、ダミエッタ、ルクソール、アスワンといった主要都市が攻撃の対象となり、前記したスエズ運河やアスワンダムも攻撃対象となるということだ。コーデスマン氏はエジプト側の犠牲者数については述べていないが、数千万人に及ぶことは間違いあるまい。
 コーデスマン氏の予測は、もしイスラエルとイランが戦争した場合、エジプトやシリアも加わることになり、結果としてペルシャ文明は終焉し、エジプト文明も滅び、石油時代も終わるというものだ。そしてインドや中国にも、大きな被害が及ぶことになるというものだ。つまりこれは、まさにハルマゲドンという状況といえよう。
 イスラエルやユダヤ人は、これだけ事態を深刻に受け止めているということを、実感を持って受け止められる日本人は、どれだけいるのだろうか。原爆被害の経験を有する広島や長崎の人たちですら、実感がほとんどわかないのではないだろうか。いまこそ日本が世界を救うため、に立ち上がるときではないのか。その期待は全く持てないのだが。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 01:16 | パーマリンク

2008年06月07日

NO・1035エジプトはユダヤの歴史を消すな

 イスラエルのエルサレム・ポストが報じているので、事実とは少し異なるかもしれないが、記事の内容が重要であることと、大筋ではあまり違っていないと思われるので、この記事の要旨を紹介することにした。
 エルサレム・ポストは6月6日付のインターネット・ニュースで「エジプトはわれわれの存在を否定しようとしている」というタイトルの記事を掲載した。
 この記事によれば、エジプトに居住していたユダヤ人に関する、歴史的な記録が、いま焼却されようとしているということのようだ。その焼却される資料のなかには、貴重な書籍やユダヤ人の出生証明書、宗教関係書籍などだということだ。
エジプトはユダヤ人組織が要求している出生証明書などの引渡しを、拒んでいるということだ。そのことからユダヤ人組織は「エジプトはユダヤ人が居住していたことを否定しようとしている、、。」と主張しているのだ。
 エジプトにはイスラエル建国後、ナセル革命前後の段階まで、多数のユダヤ人が居住していた。もちろんエジプトのカイロなどには、いまだにユダヤ教のシナゴーグが存在しているし、少数ではあるがユダヤ人が居住している。
 ユダヤ人の記録によれば、1948年にエジプトを逃れ、他国に移住した人たちの数は、10万人近いということだ。しかし、いまでは20人から100人程度しか、エジプトにはユダヤ人が残っていないということのようだ。(エジプトにいまでも残っている人たちは皆高齢者で、もう移住しないでエジプトで死にたいということのようだ。)
 ユダヤ人組織が主張するところによれば、もしユダヤ人がいまエジプト国民であることを主張した場合に、それを否定できなくなるからだというのだ。しかも、現在の段階ではエジプトから出国した、ユダヤ人たちの子供や孫もいるわけであり、その数は相当数に上るだろう。
 ユダヤ人組織はエジプトに居住していた、ユダヤ人の調査を目的とする、旅行を企画したが、エジプト政府に拒否されたということだ。
 現在の段階になって、エジプトを出国したユダヤ人が、エジプト国民であることを主張し、エジプト国籍を要求し帰国するとしたら、やはりエジプト国内では大きな問題となろう。
 そればかりではない。エジプトから1948年の段階やそれ以降に、を出国したユダヤ人は、エジプトのカイロやアレキサンドリアに、不動産を所有していたはずだ。エジプトに居住していたユダヤ人が、所有していた不動産の返還を要求し始めたら、とんでもない裁判沙汰になろうし、その不動産をエジプト政府が買い上げ(補償)るとすれば、それは莫大な金額に上ろう。(以前にカイロのメイン・ストリートにあるデパートなどのビルの相当数が、元はユダヤ人の所有だったという話を聞いたことがある)
 この問題はエジプトばかりでは済むまい。エジプトで訴訟が始まり、ユダヤ人たちの要求が一つでも通るようなことになれば、他のアラブに対しても、同様の訴訟が起こることは必至であろう。
 この問題はいま、UNESCOに対して文書で持ち込まれた。そのUNESCO の訴訟の受け手は、現在事務総長に就任している日本人の「マツウロコウイチロウ」氏(ローマ字表記のまま)だということだ。マツウロ氏はこの問題をどう処理するのか、結構難しい問題になると思う。
 アラブ側にとっては大問題になろうし、ユダヤ側にとってもやはり、自分たちの歴史の一部が抹消されるとなれば、ただ事ではあるまい。そして、この問題への対応は、マツウロ氏個人の問題ではなく、アラブ・ユダヤ双方と日本との関係にも影響してこよう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:14 | パーマリンク

2008年06月06日

NO・1034アメリカ・イラク治安協定について

 以前にも、アメリカとイラクとの間で検討されている、治安協定について書いたが、その後も、この問題はアメリカ、イラク双方にとって、大きな重石となっているようだ。
 今年末には、国連が決めた国際合同軍の、イラクへの派遣期間が終了することになっている。そのことは、アメリカ軍だけではなく、イラクに駐留する他の国々の軍隊も、イラクから撤退することを意味している。
 アメリカは何らかの形で残ろうとするだろうが、他の国々の軍隊はこれを機会に、イラクへの軍事的関与を終わらせたい、と考えているのではないか。そうなると、アメリカ軍が弱体化し、危険度が高まろうし、イラクのミリシアはアメリカ軍に対する攻撃を、強化する可能性が高いだろう。 
 イラク政府もそうした国内と国民の雰囲気のなかでは、持ちこたえられない可能性が、高まるということであろう。サドル派などはマリキー政権に対し、より一層の要求を突きつけ、マリキー政権はアメリカとの間で、非常に苦しい立場に追い込まれるものと思われる。
 以前にも書いたが、このアメリカ・イラク治安協定については、イラクの最高宗教指導者である、アヤトラ・シスターニ師が「私の命のある限り反対する。」と明言しているし、それ以外のアヤトラであるシーラーズィ師、アルハリーリ師なども反対している。
 シスターに師は最近、アメリカ・イラク治安協定への4条件なるものを発表しているが、それは「イラクの安全」「イラクの利」「イラクの主権」「イラク国民の合意」などというものであり、あくまでも条件らしいものを示し、頑迷ではないことを、示そうとしたに過ぎないのではないか。
 イラク駐在のアメリカ大使は「イラクをアメリカの恒久的な基地にするつもりは無い」と語っているが、アメリカ政府としてはイラク全土で、50箇所の基地を確保し、維持したいと考えているし、イラク領土からの自由な軍事作戦活動の保証を求めてもいる。
 アメリカが考えているのは、10年間の治安協定ということだが、実際にはその後も、10年20年という期間延長があるものと思われ、イラクはアメリカ軍の恒久基地化することになるのではないか。 
 この場合、アメリカ政府の方がこの治安協定を必要としているのか、イラク政府なのかという問題が出てくるが、現在の段階では双方にとって、必要なのではないか。ただし、イラクのマリキー政権としては、どう転んでも危険と背中合わせの、厳しいテーマということになろう。
 合意しなければ、アメリカとの信頼関係が著しく損なわれ、かつイラク国内では外国軍の駐留が、大幅に削減される結果、不安定な状態になり、マリキー首相暗殺の危険性もたかまろう。
 もし、マリキー首相が合意すれば、イラク国民の側から、マリキー首相とイラク政府に対する反発が強まり、マリキー首相はやはり、生命の危険にさらされることになろう。まさにマリキー首相はいま、板ばさみ状態にあるということだ。
 アメリカは大東亜戦争後、日本がアメリカに従順であったことからイラクでも同様の反応があることを期待していたようだが、その期待は完全に裏切られたということだ。同時に、治安協定を結んだとしても、やはり日本の例のようには推移すまい。アメリカ軍は危険と常に過ごさなければなるまい。  

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:39 | パーマリンク

2008年06月05日

NO・1033ハメネイ師も大統領に負けないブッシュ非難

 イランのアハマド・ネジャド大統領の、アメリカやイスラエルに対する非難の言葉は、言われている当事者であるブッシュ大統領やイスラエルにとっては、激怒ということであろうが、許容範囲をはるかに超えていて、第三者である我々にはもうあきれるというか、コミック並みのおかしさを含んできている。
 彼のキャラクターと、彼のそうしたアメリカやイスラエルに向けられる悪口が、イラン国民の不満を一掃してくれる、特効薬のような効果があるのであろうか。イラン国内からは言い過ぎだ、という批判の声は聞こえてこない。
 彼だけならまだ限度を超えた場合、大統領を辞めさせればすむのだが、イランのシーア派最高権威者であるアヤトラ・ハメネイ師までもが、最近になって強烈な言葉を、ブッシュ大統領と彼の側近たちに向けている。
 ハメネイ師はホメイニ師の記念日で講演し「ブッシュ大統領と彼のアドバイザーたちは、精神病にかかっているような行動をしている。ブッシュ大統領と彼のチーム・メンバーを見ていると、彼らの言葉は精神病患者のようだ。」と語っているのだ。
 加えて、ハメネイ師は「彼らはあるときは侵攻し、あるときは暗殺し、あるときは助けを求めている。それはまるで気の狂った人のように、ふらついた行動だ。ブッシュ大統領がこうも異常な行動をとるのは、彼がアフガニスタンで失敗し、イラクででも失敗した結果であろう。彼は各国にアメリカのいじめに抵抗するよう呼びかけている。」
 イランはいま、アメリカの軍事侵攻の可能性を、真剣に受け止めているのであろうが、これではケンカとしか言いようがなかろう。ライス国務長官もこれに負けじとばかりに、イラン非難の言葉を繰り返している。
彼女はヨーロッパ諸国に対して、イランに対する締め付けを強化するよう呼びかけ、イランとの対話には意味がないと繰り返しているのだ。
 言葉の戦争のときはいいのだが、これが実弾が飛び交いミサイルが飛び交う戦争に発展したのでは、周囲は大迷惑ということであろう。既にイランは、アメリカに対する報復に、カタールの米軍基地に対し、第一撃を加えるだろうと予測されている。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:50 | パーマリンク

2008年06月04日

NO・1032イラク外務次官との対話

 イラクから外務次官とその一行が訪日した。訪日の目的は、いまイラクが結ぼうとしている、アメリカとの治安協定(防衛協定)の前例国である日本に、日米安保条約の内容と、その功罪を聞きに来たのだ。
 イラクはこれと同じ目的の訪問団を、韓国、トルコ、ドイツにも送る予定になっている。それらの前例国から、どのような内容の協定を結んでいるのかを細かく聞いて、自分の国が結ぶ協定内容を、決めるということであろう。日本の場合は、外務省の条約局経験者が、もっぱら日米安保について、説明を行ったようだ。
 この外務次官は、フランス留学の博士課程を終えた法律の専門家で、バグダッド大学の教授や、外務大臣の法律顧問などを経験し、現在イラクの外務次官に就任している人物だ。
 外務省の関係者の話によれば、彼は日本側の説明を細かくメモに取り、必要に応じて質問をしていたようだ。彼と対話していて、とても71歳とは思えない、エネルギッシュな印象を受けた。
 彼は現在、イラクに大小340以上の米軍基地があり、これを漸減していきたいと語っていた。このアメリカとの治安協定については、現在の段階では必要だと語り、その必要な理由は、イラクは近隣国からの攻撃を、警戒しなければならないからだと語っていた。
 イラクはイランとの間で、8年にも及ぶ戦争を経験しており、現在もイラン側のイラクに対する関与が、非常に懸念されているのであろう。しかし、だからといって、アメリカとの間で、長期の治安協定を結ぶことは、望んでいない様子だった。
 この外務次官は帰国後、イラクの議会に対して、日本の前例を細かく説明し、どのような内容の協定を結ぶかを、討議するのであろう。もちろん、協定文書の大まかな部分は、既に出来ているのであろうが、細目については、まだ調整が可能なのであろう。
 気になったのは、日本の例が果たして、何処までイラクに当てはまるか、ということだ。日本人は従順であまり自己主張をしないし、罪を許す傾向が強い。しかし、イラク人は非常に個性が強く、敵を許す気持ちは薄いのではないか。
 なかでも性犯罪に対しては、一族の名誉が傷つけられたと認識する人たちなだけに、中途半端な形ではすまないだろう。アメリカ軍の兵士が日本国内で行った性犯罪については、軽い処罰で済んでいるが、イラクでは必ず復讐が行われる、と考えたほうがよかろう。
 私は日米安保の功罪について話し、アメリカ人による犯罪については、事前にイラク側に司法の権利を、留保すべきだろうと語った。そのためには、イラクの司法がアメリカ人の犯罪に対して、冷静に審理し判決を下す、という保証が必要になろう。
 したがって、アメリカがこの治安協定をイラクと結びたいのであれば、来年の1月を期限とせずに、もう少し時間をかける必要があるのではないか。アメリカが急いでゴリ押ししても、イラク国民と政府に不満が残るだけであり、逆効果となる懸念が強いからだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:27 | パーマリンク

NO・1031実現性が高まってきたイスラエル・シリア和平合意

 トルコの仲介で、イスラエルとシリアが和平交渉を始めて久しい。当初はほとんどの中東専門家たちが、両国間の和平実現の可能性を、全く信じていなかったのではないか。
 しかし、ここに来てどうも以外に裏では、イスラエルとシリアの交渉が現実味を帯びてきているのではないか、と思えてならない。たとえば、イスラエルでは多くの強硬派の政治家たちが、「ゴラン高原を手放さない。」と主張し始めていることも、和平交渉が前進している証ではないか。
イランもシリアとの関係維持を強く主張し、シリアがイスラエルとの和平を実現することに対して、強い反対の立場を示している。シリアはシリアで、イランに対し、イスラエルとの交渉でヘズブラやイランとの関係断絶は、条件として提示されてはいないと説明している。
シリアのダマスカスに拠点を置いている、ハマースのリーダーであるハーリド・ミシャアルは、場合によってはシリアを離れ、イランに拠点を移すと言い出している。しかも、このハマースがシリアに敵対する、イランの道具にもなりうるというのだ。
最近になって、シリアはIAEAの査察を受け入れると発表し、何の抵抗も査察に対して行わない方針のようだ。加えて、シリアのアサド大統領は、イスラエルとの和平交渉で、保証者(スポンサー)が必要だと言い出している。しかも、アサド大統領はアメリカが保証者になる必要がある、とまで言い出しているのだ。
一体、何がここまでイスラエルとシリアとの和平交渉を、現実的なレベルまで引き上げたのであろうか。それは、トルコが仲介者になったこともひとつだろうが、そのことに加え、イスラエルのオルメルト首相が、政治的に危険な状況に入ってきていることにも、起因しているのではないか。
オルメルト首相は汚職問題で追い込まれ、近い将来に辞任するかもしれないのだ。既に、リブニ外相やネタニヤフ元首相などが、次期首相候補として活発に動き始めているのだ。しかも、選挙は今年の11月頃という予測が、既に出ているのだ。
オルメルト首相の辞任は、時間の問題かもしれない。あまりにも明確な汚職の証拠が、揃い過ぎているからだ。そうなると、オルメルト首相は何とか、歴史的大逆転をしたいと考えているのではないか。
シリアとイスラエルとの和平が実現すれば、イスラエル国民の安全の度合いが、大幅に高まることになろう。シリアが和平を結べば、レバノンのヘズブラに渡る兵器の量は、大幅に減少しようし、イスラエルに対する敵対行為も、大幅に低下することが予測されるからだ。
オルメルト首相はいま、汚職による辞任という不名誉から逃れ、イスラエルの歴史に名を留める、シリアとの和平実現の英雄的首相というゴールに向け、猛ダッシュしているのではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:03 | パーマリンク

2008年06月03日

NO1030イラクの石油生産250万BDに

 イラクの石油生産が遂に250万バーレル/日 に達した 。そのうち200万バーレル/日 が、輸出されているということだ。
しかも、イラクは今年中に290万バーレル/日まで、生産を拡大することが出来るという見通しだ。
 この結果、イラクは石油輸出によって、2008年に700億ドルを手にすることが、出来るようになる見通しだ。
 イラクは現在、サウジアラビア、イランに次いで、世界で三番目の可採埋蔵量1150億バーレルを有する国だ。(一説には、世界最大の埋蔵量、2900億バーレルがイラクの地下には眠っているということだ)
 問題はこの石油収入が、イラクの国庫に全て入るのか、イラク国民の生活向上と、イラクの再建に使えるのかということだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:17 | パーマリンク

2008年06月02日

NO・1029イラクが米との治安合意に向けて他国の例を調査

 アメリカはイラク国内に、恒久的な基地を確保するために、イラク政府との間で、長期間に及ぶ治安協定を、結ぼうとしている。それを急ぐのは、今年中にいままでの協定が、期限切れになるからだ。
 しかし、このアメリカの希望している治安協定は、イラク国内にアメリカが13の基地を有し、駐留のアメリカ軍民は、犯罪を犯してもその罪を、イラクの司法が裁くことが出来ない性質のもののようだ。
 つまり、沖縄の米軍駐留とほぼ同じ条件か、それよりもアメリカ側に有利なものであろう。日本本土の場合も、沖縄の場合も、当初はいま以上にアメリカに都合のいいものであったのだろうが、次第に改善されてきているのであろう。
 したがって、もしイラクがこの協定を交わした場合、アメリカ軍の将兵は、犯罪を犯しても、罪を問われることなく、平気でイラク国内に、駐留し続けることが出来る、ということであろう。
 イラクではこうした事情から、シーア派のモクタダ・サドルを先頭に、協定合意反対の動きが、活発になってきている。民族派、愛国者、文化人、宗教家など多くのイラクの人たちが、反対しているのだ。
 モクタダ・サドル師は「金曜礼拝の後は、毎週デモを行おう。」とイラク国民に呼びかけている。イラクのシーアは最高権威者であるシスターニ師も、「合意には国民投票が必要だ。」と語り、反対の立場に回っている。
 イラク国民の反対を前に、多くのイラク国会議員は、賛成票を投じることに躊躇しているが、アメリカはこれらの議員に対し、賛成に回れば300万ドル与える、という買収工作を始めたという情報が流れている。
 こうした状況を見ると、今回のアメリカ・イラクの治安協定は、合意が難しいと思えるのだが、そうではなさそうだ。
現段階でイラク政府は、合意するとは言っていないが、アメリカと似通った協定を交わしている、ドイツ、日本、韓国、トルコなどの実例を知るために、調査団をこれらの国々に送ることを決定している。
日本にも近く、日米安全保障条約の実情調査団が、イラクから派遣されて来るものと思われるが、この際、イラクの調査団は自民党や、政府の関係機関にだけ実情説明を受けるのであろうか。あるいは、民主党や共産党にも実情説明を申し込むのであろうか。
アメリカとの協定を結んで、既に50年近い期間が経過している日本は、やはりこの合意のもたらす、いい点と悪い点を、正直に説明してあげるべきであろうと思われる。
もし、社会党や共産党、民主党がこの訪問団の来日を知らないのであれば、中東TODAYの読者の誰かが教えてあげ、野党各党は在京のイラク大使館に、訪問団の来日時期を、問い合わせるべきではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:13 | パーマリンク

NO・1028カザフスタンの石油トルコに直結

 これまで中央アジア諸国は、石油やガス資源を持っていても、全てロシア経由でなければ、輸出できない状態に置かれていた。ロシア大陸を延々と繋ぐパイプ・ライン無しには、ヨーロッパのマーケットに送ることは出来なかったのだ。黒海経由の場合でも、結局はロシアの領土を経由して運ばれていた。
 したがって、これまでロシアの中央アジア諸国に対する影響力は、政治的にも経済的にも、強大であったということだ。加えて、ロシアは軍事的にも大きな圧力を、これら中央アジア諸国に、かけ続けてきたということだ。
 こうした状態は、中央アジアでの権益を拡大したい、と望んでいたトルコにとっては、なんとしても解決したい、あるいは打ち破りたい壁だった。その方法は、カスピ海を通り、アゼルバイジャンからグルジアを抜けて、トルコ領に運ぶというルートの開拓だった。
 それがBTC(バクー、チブリシ、ジェイハーン)ルートだった。そしてこの三地域を結ぶパイプ・ラインが完成し、やっとカザフスタンの石油が、トルコまで送られるようになったのだ。
 カザフスタンは自国の石油を、クルク港からアゼルバイジャンのバクー港までタンカーで運び、そこからはパイプ・ラインで、トルコまで送るということになったのだ。この計画の推進には、相当デリケートな交渉がトルコとロシアの間で、中央アジア諸国とロシアの間で、行われていたものと思われる。
 述べるまでもなく、この石油の新しいルートの開発は、ロシアの中央アジア諸国に対する、政治経済的圧力を、軽減することになるからだ。また、ロシアは中央アジアの石油やガスを、これまでのように安価では輸入できなくなり、ヨーロッパへの輸出でも、これまでのような大きな利益を、上げることはでき難くなったということだ。
 これまで、ロシアは中央アジア諸国から、石油やガスを安価に購入し、ヨーロッパには高い値段で売ることが出来ていたのだ。BTCパイプ・ラインの完成は2006年で、その長さは1767キロメートルにも及ぶものだ。そして完全に整えば、カザフスタンからはこのパイプ・ラインを通じて、年間7500万トンの石油が、トルコのジェイハーン港に、届けられることになるのだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:49 | パーマリンク

2008年06月01日

NO・1027イラン次の大統領はアリー・ラリジャニ氏か?

 もう大分前に書いたと思うのだが、どうやらイランのイスラム最高指導者のハメネイ師は、アハマド・ネジャド大統領の後継に、これまで核交渉を担当してきた、アリー・ラリジャニ氏を推すようだ。
 アリー・ラリジャニ氏が、次の大統領になるのではないか、と思われる根拠は、彼がイランの国会議長に、就任することが決まったからだ。このポストはイラン国内では、大きな権限を持つようだ。しかも、彼は西側諸国から、穏健で国際常識のある、インテリと受け止められている人物だ。
 アハマド・ネジャド大統領の大衆向け政治は、多分にアジテーションが効き過ぎ、西側諸国との間に、必要以上の緊張を生み出し、場合によっては、核問題を理由に、アメリカから軍事攻撃を受ける、危険性さえ高まっている。
 加えて、アハマド・ネジャド大統領の国内経済政策は失敗している。それをアハマド・ネジャド大統領は石油価格の高騰で、何とかごまかしている状態のようだ。この経済政策の失敗については、イランの閣僚の間からも、経済専門家の間からも非難が出て来ている。
 イランの核開発が、後退できないところまで進展したのを機に、ハメネイ師はアハマド・ネジャド大統領の役割を、終えさせようと考えたのであろう。ハメネイ師はアリー・ラリジャニ氏が国会議長に就任したのを機に「政府は議会が成立させた法律を忠実に守らなければならない。」と語っている。
つまり、アリー・ラリジャニ氏が国会で決めたことには従え、という意味であり、これはアリー・ラリジャニ氏を支援する意思を、アハマド・ネジャド大統領に伝えると共に、その方針を国民の前に明らかにしたものであろう。
既に西側マスコミでは、アリー・ラリジャニ氏が国会議長に選ばれたことは、イラン政府の内外政策における、大変革だと受け止めている。来年の6月には、イランの大統領選挙が行われるが、それまでアメリカはイランの政策変更を、待てるのだろうか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 01:06 | パーマリンク

 
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