« 2008年09月 | メイン | 2008年11月 »

2008年10月31日

NO1107イスラエルは左右両政党が拮抗

 カデマ党の党首に、リブニ女史が選ばれた後、リブニ女史は連立政権工作に動いたが、結果的には失敗した。残る手段は、早期にクネセト選挙を行って、多数派になり、左派政党との連立を組むことだ。
 他方、ウルトラ右派の代表者であるネタニヤフ首相は、この選挙を受けて立つ覚悟ができているようだ。選挙の結果どうなるかはわからないが、少なくとも、今後のイスラエルの国内外政治は、極めて頑迷かつ、強固なものになっていくのではないかと思われる。
 イスラエルのハアレツ紙の世論調査によれば、リブニ女史が率いるカデマ党とネタニヤフ氏が率いるリクード党は、次回選挙で同じ、31議席を獲得するだろう、という結果が出たようだ。
 しかし、エルサレム・ポストの世論調査では、リクード党を中心とした右派の連立には、64人の議員が結束するが、カデマ党を中心とした左派の連立には、56人の議員しか結束できないだろうというものだ。
 リクード党と連立を組むことが予想されている政党は、イスラエル・ベイトヌ党(ロシア移民の政党)、国民連合国移民宗教連合党、ユダヤ・トーラ連合党といったところだ。
 他方、リブニ女史が率いるカデマ党と、連立を組むことが期待されている政党は、メレツ党、アラブ各党などだ。
 もし、リブニ女史が右派の一部も抱き込んで、連合政府を構成するとすれば、エルサレムの分割という、パレスチナ側が絶対に譲れない問題で、イスラエル政府は妥協できず、和平交渉は決裂しよう。
 同様に、西岸の入植地についても、ネタニヤフ氏には返還意思が全くないばかりか、逆に入植地を拡大することを主張している。
 発足前の段階で、リブニ女史の政府が成立した場合に、イスラエル・パレスチナ問題はどうなるのかについて予測すると、どうやら、奇跡的なことでも起こらない限り、数年「和平という名の蜃気楼」がイスラエルとパレスチナを覆いそうだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:17 | パーマリンク

2008年10月30日

NO・1106ムバーラクは地獄に堕ちろ発言

イスラエルの国会議員である、イスラエル・ベイトヌ党のリーダーのアビドール・リーバーマン議員が、エジプトのムバーラク大統領に対して「ムバーラクは地獄へ堕ちろ」と語ったことが大問題になっている。
 この不穏当な発言は、イスラエルの議会クネセトでアビドール・リーバーマン議員が口にした言葉だ。彼がこのような言葉を口にしたのは、以下のような事情による。
 つまり、イスラエルとエジプトは1979年に和平を結んだが、未だにエジプトのムバーラク大統領は、イスラエルを訪問していないのだ。他方、イスラエルの首相や大統領は、頻繁にエジプトを訪問しており、それはあたかも巡礼のようだというのだ。
 アビドール・リーバーマン議員は「もし、ムバーラクが我々と話し合いたいのであればここに来るべきだ。もし、彼がここに来たくないのなら、彼は地獄に堕ちればいい」と言ったのだ。
 この発言後、イスラエルのペレス大統領やオルメルト首相は大慌てし、ムバーラク大統領にお詫びの電話を入れた。ペレス大統領はムバーラク大統領にお詫びする同時に「エジプトもムバーラク大統領も心から尊敬しており、同国が地域の平和構築の上で重要だ」と語っている。
 確かにアビドール・リーバーマン議員が語るように、ムバーラク大統領はイスラエルを訪問せず、イスラエルとの交渉にはエジプトのカイロか、シナイ半島にあるリゾート地、シャルム・エルシェイクで行っている。
 それが受け取りようによっては、イスラエルがエジプトに参勤交代に出かけるように、思えるのかもしれない。
 シャロン元首相は、イスラエルのスパイでエジプトの刑務所に入っていた、アッザーム・アッザーム氏の釈放が行われない限り、エジプトを訪問しないと語り、その通りに実行し、シャロン元首相がエジプトを訪問したのは、アッザーム・アッザーム氏が釈放された2005年のことであった。
 今回の「ムバーラクは地獄に堕ちろ」発言が、一議員の礼わきまえない暴言で済めばいいのだがだが、世界的な経済悪化の中で、この一言がエジプト社会の中に、反イスラエル感情を高めることが懸念される。そうあってほしくないものだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:56 | パーマリンク

2008年10月29日

NO・1105反主流パレスチナ四派会議

 パレスチナのガザ市で、パレスチナ解放機構(PLO)のメンバーPFLP.DFLPと、PLO(パレスチナ解放機構)メンバーではないハマース、ジハードが10月27−28日に合同会議を開いた。
 この会議は、来月9日にカイロで開催される、パレスチナ各派による、反主流四派が会議に参加する前に、意見調整することが目的であった。11月のカイロでの会議では、エジプトのムバーラク大統領が彼の沽券にかけて、会議を成功させようとすることが、今の段階から予測される。
 現在、パレスチナ内部が四分五裂していることから、パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長は、イスラエルとの交渉で、パレスチナ全組織を代表する形で、発言することができず、不利な立場に立たされているからだ。
 今回のガザの会議はもちろん、カイロ会議を成功させる目的ではあるが、反主流各派はPLOの中心組織であるファタハ(マハムード・アッバース議長もこの組織のメンバー)に対し、譲れない一線がある。
ファタハはイスラエルとの交渉の中で、明言こそ避けているが、パレスチナ難民のパレスチナの土地(イスラエルも含む)への帰還権を、実質的に放棄する姿勢にある。
冷静に判断すれば、それが無理のない、現実的なものであることが分かろう。数百万人にも及ぶパレスチナ難民が、イスラエル国内に帰還した場合、たちまちにしてイスラエル国内の人口構成は、パレスチナ側に有利になろうし、イスラエル政府としては、これら帰還パレスチナ難民に対して、教育、食料、衣料、住宅や職場の提供ができないだろう。
それでは、パレスチナ難民のすべてを、パレスチナ自治政府が受け入れ、西岸地区に住居を建設し、職を与えうるかといえば、それも不可能であろう。パレスチナ自治政府は故アラファト議長の時代から、実行不可能な「パレスチナ難民の帰還」を掲げてきたにすぎないのだ。
今回カイロで開催される、パレスチナ各組織の再連帯を、目的とする連帯会議で、反主流派の各組織は、パレスチナ難民の帰還権を、声高に唱えることになろう。同時に、67年の国境までのイスラエルの譲歩が、パレスチナ側が妥協できる、最低条件だと主張するであろう。
カイロ会議を成功させる目的で、開催されたガザでの会議は、結果的に、何の合意も生み出さない会議への、ガス抜きなのかもしれない。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:29 | パーマリンク

2008年10月28日

NO・1104やはり出てきたアルカーイダ掃討作戦

 先日、シリアの北部イラク国境に近い田舎町の家が、アメリカ軍の軍用ヘリで空爆され、8人の死者を出すという出来事があった。
 当初は、その攻撃理由がぼやけていたのだが、ここに来て一気に明らかになってきた。この田舎町の家とは、アメリカ側の説明によれば、イラクでテロを展開している、アルカーイダの幹部、4人のうちの一人が潜んでいたところだった、というのだ。
 彼の名はアブー・ガデヤで、もちろんこの名前はニック・ネームだ、ということだ。アメリカ軍ヘリに乗ったアメリカの戦闘員は、彼を殺害すると同時に、2人のアルカーイダのメンバーをさらっていったとう、現地からの情報がある。
 事件後、シリア政府はアメリカ非難を、声高に唱えているが、それはある程度、自制の効いたものになっている。イギリスを訪問したシリアのムアッレム外相が、アメリカの攻撃は犯罪行為であり、もし同様のことが行われた場合、シリアは「目には眼を歯には歯を」で復讐すると語っている。
 しかし、アメリカ側はこのシリア外相の非難に、全く耳を貸そうとしていない。アメリカ側はシリアの国境から、イラクにテロリストが侵入してくることは、イラクの治安を改善するうえで、非常に重要なことであるから、シリアと話し合う用意があると語っている。
 アルカーイダ掃討作戦という言葉は、あらゆることに対する免罪符になっている感があるが、いかがなものか。同時に、イスラム過激派も、アルカーイダとの関連で、自身の組織の存在を、大きく見せようとする傾向があり、実態を隠すことも、考えているのではないか。
 つまり、アメリカとイスラム過激派が、相互にお化けを活用しているということか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:29 | パーマリンク

NO・1103金融危機で湾岸住民の多くが大損?その後には?

 以前にも書いたが、1982年ごろだったと思うが、クウエイトでスーク・マナーハ事件が起こった。クウエイト政府が発行する国営会社の株は、クウエイト国民だけが買えるものだった。それは株式配当という名目で、政府が国民に石油収入の一部を配分するためのシステムだった。
 したがって、国営企業の株は年々値上がりしていったが、外国人には買えなかった。そこで私設の株式市場が誕生し、まさにペーパー・カンパニーの株が売買され、ものすごいスピードで値上がりして行った。
 もちろん、この値上がりを目の前にして、クウエイト国民の多くが手を出した。しかし、所詮は架空の取引であり、やがて私設の株式市場で売買されていた株は、大暴落することとなった。そして残ったのは、膨大な額の借金だった。
 なかでも、クウエイト国民は政府の銀行から、ほとんど制限無しに、金が借りられるような状態にあったために、銀行から株を買う金を借り、友人からも借り入れて、この私設の株の投資に使ったのだ。
 結果的に、これらの巨額の負債を抱え込んだクウエイト国民は、国外に脱出し借金の返済から逃れようとした。最終的には、クウエイト政府が恩赦のような措置をとり、多くの国民が逃亡先から、帰国出きることになった。
 今回の金融ショックで、湾岸諸国の全ては、石油収入があることから、他の国々に比べ、国家としてはあまり問題はない、というのが一般的な見方だ。しかし、それでもサウジアラビアを例にとると、石油精製会社、保険会社、銀行などが一日で10パーセント程度落ち込み、全体としては8・7パーセントも落ち込んでいるということだ。
 この窮地に、サウジアラビアのアブドッラー国王は、王室プレゼントとして100億リヤル(1サウジ・リヤル=34円)を、ローンの支払いに寄付している。
 しかし、湾岸諸国の国民たちは、湾岸諸国が発行する株を買える、システムがあったために、湾岸のどこかの国で株が売られるというと、我先にとその株を買いに走っていた。その金額は膨大なものであったと思われる。
 しかし、それらの株もいまでは、暴落しているのではないか。そして、その結果はどうなるのだろうか。湾岸各国の国民自身では、背負いきれないほどの負債になってしまっているのではないか。
 そこで関心がもたれるのは、ドバイの人工島に作られたリゾート型住宅だ。計画の段階で完売し、それが完成すると数倍で売れ、それを転売すると、、、。という夢のような話だったが、この住宅の購入も銀行からの借り入れによるんのではなかったか。
 だから以前に、ドバイの商法はばくちの、胴元のようなものだと言ったのだが、、。今では人工島から出る汚水で、観光用海岸は汚染されているということだ。もともと、室内気温が50度以上になるドバイで、住宅が売れるということが不思議ではないか。夢を追った多くの湾岸国民が、その夢に敗れたのではないかと思われる。
 資金が自由に手に入った者ほど、高みからの墜落で怪我する度合いが、ひどいのではないか。それがイスラム原理主義の増長に、繋がらなければいいのだが。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:44 | パーマリンク

2008年10月27日

NO・1102粗暴さが目立ってきたアメリカ軍の動き

 イラクとの国境に近いシリアのアブカマールにある、スッキラヤ村で10月26日午後、民間住宅が攻撃されるという事件が起きた。攻撃したのはイラク駐留のアメリカ軍ヘリだった。4機のヘリが民間住宅を爆撃し、子供4人を含む8人が犠牲になった。
 この空爆についてアメリカ側は、「シリアからイラクに飛来する、戦闘機網を狙ったものだ、」と説明しているようだが、実に要領を得ない。なぜ戦闘機網と村の民間住宅が関係あるというのか。
 もし、この民間住宅がシリアからイラクに潜入する、テロリストの隠れ家なり、集結場所だというなら、それなりに納得がいかないでもないのだが。
 いずれにしろ、無意味な空爆としか思えないのだが、そうでもあるまい。アメリカ軍のヘリが攻撃したのには、何らかの確たる理由があるはずだ。その理由は、推測の域を出ないが、以下のようなことが、考えられるのではないかと思われる。

:アメリカ大統領選挙に影響を与える。シリアとの間で緊張が高まれば、マケイン氏が有利になることが考えられる。
:この住居がイラクに侵入してくるテロリストの集結場所だったが、アメリカ側にはその事実を、明かしたくない理由があった。
:アメリカ軍の中の強硬派がシリア・イスラエル間に緊張を生み出すために行った。
:トルコの仲介によるイスラエル・シリア和平交渉を潰し、トルコの地域での影響力拡大を押さえ込む。

 アメリカ軍が空爆を行ったのは、これらのいずれか、あるいは全く違う理由からかもしれない。少なくとも、シリアから戦闘機がイラク側に飛来するということは、ありえないわけであり、アメリカ側が主張する「シリアからイラクに飛来する戦闘機網を狙った」ということではあるまい。
 パキスタンの部族地域に対しても、アメリカは攻撃を加えている。この結果、ビルが破壊され、20人にも及ぶ死者が出ている。もちろん、パキスタン政府はアメリカ政府に抗議しているが、それでアメリカ軍の攻撃が停止されるとも、アメリカ政府が真摯にわびるとも思えない。
 アメリカの大統領選挙に絡んでなのか、あるいはそれ以外の理由からなのか知らないが、最近のアメリカの動きが、粗暴さを増しているような気がする。そして、イスラエルでも和平に逆行するような動きが、目立ち始めている。
 リブニ女史が連立に失敗したのは、その典型的な例であろう。その後に計画されている早期選挙では、強硬派が有利になることが、考えられるのではないか。アメリカ軍によるシリアへの攻撃などがあり、イスラエルの強硬派が勇気付けられたのではないか、と思われるからだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:31 | パーマリンク

2008年10月26日

NO1101リブニ・カデマ党首選挙で勝負に出る

 イスラエルの与党、カデマ党の党首に選出されたリブニ女史が、連立政府の結成に努力していたが、シャス党の抱き込みに失敗し、結果的には連立政府の結成に失敗した。このことは、今後のイスラエルの内外政治に、大きな波紋を広げていくものと思われる。
 第一に考えられるのは、イスラエルの選挙が、当初の予定の2010年ではなく、今後4ヶ月以内、つまり来年の2月までに、行われることになったということだ。したがって、イスラエル国内情勢は、今後、選挙一色に塗りつぶされることになり、パレスチナとの和平交渉には、力が入らなくなろう。
 そのことは、ブッシュ大統領任期中に、何らかの成果を生み出したいと願っている、ブッシュ政権にとっては、明確な中東和平交渉の、失敗ということになろう。ライス国務長官の度重なる中東訪問と、イスラエル・パレスチナ間の仲介工作は、水泡に帰するということだ。
 パレスチナ側も、今回のリブニ女史の選挙への移行を受けて、中東和平交渉に本格的に、取り組むことはあるまい。問題はその結果、イスラエル国内でもアラブ諸国のなかでも、ある種の強硬な意見が、幅を利かせるようになるということだ。
 イスラエルではネタニヤフ元首相の意見が、支持を増やす可能性があろうし、シリアでもトルコの仲介による、和平への動きが止まろう。そうした変化は、イスラエル側とアラブ諸国側の双方に、相手側に対する不信感を募らせ、緊張を高めていくということだ。
 不安の中では、新たな不安が生まれ、疑心暗鬼が拡大していくことになるわけであり、イスラエル国内の強硬派の主張する、「イランの核施設をた叩け」といった暴論が、再度支持を増やしていく可能性があろう。
 リブニ女史の前任者のオルメルト首相にしろ、その前のシャロン元首相にしろ、現実の政治を担当した人たちは、いまこそイスラエルにとって、和平が必要だということを、十分わかっていたものと思われる。もちろんペレス大統領もその一人だ。
 しかし、今回の連立内閣結成の失敗から、選挙に移行したということは、イスラエル政治の方向を、和平から大きく遠ざけていくかもしれない。2月に選挙が行われるまでに、イスラエル国民が冷静に現状を分析し、選挙で和平の選択を明確に支持しなければ、今後の中東はますます混乱を極めていくことになろう。
 最近、一部の国際問題専門家の間に、アメリカや一部の世界を動かす人たちの間で、中東をはじめ、世界全体を混乱に陥れたいという、欲望が渦巻いている、と主張する人たちがいる。もし、そのような指摘が正しのであれば、そのような陰謀に対し、世界中で反対の動きを、起こしていくべきではないのか。それが単なる「イフ=もし」であることを願うばかりだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:48 | パーマリンク

NO・1100治安協定合意困難に頭を抱える米

 アメリカ軍がイラクに何時まで駐留し続けられるか、いま非常に困難な状況にあるようだ。アメリカ軍は駐留を希望しているが(兵力を削減して)、イラク側がなかなか治安協定(SOFA)にサインしないのだ。
 問題になっている部分は、アメリカ兵とアメリカが雇用する民間軍事会社の社員に対する、逮捕権をイラク側は放棄したくないということに、こだわっているためだとされているが、そうではあるまい。
 イラク国民のほとんどが、アメリカとの治安協定(SOFA)合意に反対しているのは、アメリカ軍がイラク国内に駐留することを、望んでいないからであって、条件によっては認める、という種類のものではあるまい。
 シーア派にしろスンニー派の国民にしろ、外国の軍隊によって自国が支配される、駐留が何時までも続くということを、きわめて不名誉なことだと考えているからだ。それは、これまでのアメリカ軍の、不適切な行動によるところ大であろう。
 アメリカ軍兵士による家宅捜査、その時の婦女子に対する振る舞い、金品の略奪ときわめて下品な行動をとりすぎたため、イラク人はアメリカ兵もアメリカ人も、大嫌いになっているのだ。
 アメリカとの治安協定が結ばれなくて一番困るのは、イラク国民のなかではクルド人であろう。彼らの安全と現在の繁栄は、アメリカ軍によってクルド人が守られているからであり、アメリカ軍が撤退したと同時に、現在の状況が瓦解していく危険性があるのだ。
 だからこそ、ズイバリ外相(クルド人)はこの治安協定の重要性を主張し、「もし合意に至らなければ、アメリカ軍は出て行ってしまう。そうなれば安全は保障されないし、テロリストが政府も国民もターゲットにする。もちろん政治も経済も破滅的な状況になろう。」と警告している。
 確かに、アメリカ軍の撤退後、イラクはきわめて不安定な状況になろう。これまでアメリカ側はあらゆる圧力を、イラク政府にかけてきたが、いまだに治安協定(SOFA)の合意は成立していない。
 以前にも書いたが、マリキー首相はアメリカと合意を結ぶことにより、イラク国民から裏切り者、売国奴といわれることに耐え、自身の地位と生命と財産を守るのか、あるいは国家の名誉を守ることによって、国民から喝采を受けるのか。
 その難しい選択を迫られているのだ。しかも、この選択にはどちらを選んでも、肉体的死か人格的死が待ち受けているのだから、マリキー首相としても、できるだけ結論を先延ばししたい、というのが本音ではないのか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:40 | パーマリンク

2008年10月25日

NO・1099アメリカ軍のイラク撤退でイラン・トルコが罠に

 アメリカ軍の一部が、イラクからアフガニスタンに移動することと、大幅なイラク駐留軍の削減が、本格的な話題に上ってきている。アメリカの大統領にオバマ氏が選ばれれば、アメリカ軍もイラク削減のスピードは、速まるだろうと一般的に考えられている。
 確かにそうであろうが、もしそうなれば、その後には現状よりも困難な状況が、イラクを覆うことになろう。イラク国内ではスンニー派とシーア派、そしてクルドとの三つ巴の戦いが、展開される可能性が高いからだ。あるいは、スンニー・シーア合同軍がクルドに対抗するかもしれない。
 この動きと同時進行で、アメリカ軍の大幅削減を受け、イランがイラクの内政に、より積極的に出ることになろう。イラクの60パーセント以上の国民が、シーア派だということが、イランの野望をあおるのであおる。
 確かに、イラク南部住民のほとんどはシーア派であり、イラクのシーア派の活動家、政治家、宗教家の多くが、サダム体制下で弾圧から逃れ、イランに亡命していた。したがって、過去にイランに逃れていて、現在イラク国内で指導的な立場に立っている、政治家や宗教家たちは、必ずイランとの特殊な関係を、強化したいと願っているだろう、恩にも感じているだろう、という期待がイランにはあろう。
 しかし、そうだろうか、それほどイラク人はナイーブなのだろうか、という疑問が沸いてくる。過去15年20年のイラン・イラクの動きを振り返って見てみると、まず頭に浮かぶのは、1980年から1988年まで8年間にも渡って続いた、イラン・イラク戦争のことだ。
 この戦争では、イラン側もイラク側も、指導者たちは大きな勘違いをしていた。イラク側はイランの南西部のアフワーズ地区のアラブ系イラン人は、イラクとともに戦ってくれるだろう、と期待していたがそうはならなかった。
 同じように、イラン側はイラクのシーア派教徒が、共に戦ってくれると期待したが、全くそうはならなかった。つまり、イラン国内に住むアラブ人も、イラク国内に住むシーア派教徒も、それぞれの帰属する国家を自分の国家と確信し、国家のために戦ったのだ。
 もし、アメリカ軍が撤退を進めていくなかで、イランがイラクへの影響力を強める方向で動いた場合、イランが予測期待しているのとは、全く異なる状況が起こるのではないか。つまり、イラクのシーア派教徒が、イランイ抵抗する動きを始めるということだ。
 イランの意向を受けたかのように受け止められている、イラク議員やマリキー首相のアメリカとの、治安協定に対するネガテイブな反応は、イランの意向を受けてのものではなく、あくまでもイラク国民の意を受けてのものであり、彼ら自身の感情でもあるのだ。
 イランがその辺を誤解しているとは思いたくないが、やはり欲がイランをしてアメリカ軍撤退後の、イラクへの強い関与を願うだろう。しかし、その動きはイランをアメリカ同様の立場に、立たせる可能性があることを、忘れるべきではあるまい。
 同様に、トルコもクルド地区への軍事攻撃や、関与をする場合には、十分に検討したうえで、限定的な行動に留めておくべきであろう。そうしなければ、事によってはイランとトルコが、イラクを舞台にして対立する状況も起こって来るのだ。その結果を喜ぶのは誰かを考えれば、そのような陰謀がありうるし、すでに計画されている、とも考えておくべきだろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:14 | パーマリンク

2008年10月24日

NO・1098アハマド・ネジャド大統領再選へのハードル

 来年のことを言うと鬼が笑う、という言葉があるが、あえて来年のことを書いてみたい。来年の6月に、イランの大統領選挙がおこなわれる。今度の大統領選挙で誰が有利になり、当選するのかということが、既に欧米の間では、大きな話題になり始めている。
 アハマド・ネジャド大統領の、イスラエルに対する激しい敵対的な発言が続いたことが、イランの大統領選挙に対する、欧米の大きな関心を呼んでいる、原因の一つであろう。
 同時に、イランがアハマド・ネジャド大統領再選で、強力に核開発が継続されていき、イランがやがては核兵器保有国になるのか、ということも大問題であろう。
イランが核兵器を持つということは、イスラエルに対する脅威であると同時に、それよりも湾岸産油諸国に対する、無言の圧力となろう。
 湾岸産油諸国がイランの核兵器に脅え,言うことを聞くようになった場合、アメリカやヨーロッパが、これら諸国に要請することが通りにくくなり、石油供給そのものに、大きな不安が出てくるかもしれないということだ。
 さて、石油価格の高騰に助けられて、アハマド・ネジャド大統領は非常に幸運な、大統領期間を過ごしてきたが、ここにきて、石油価格が下落し始め、次回選挙を前に、国家の資金不足から、対応策で苦慮しそうだ。
 付加価値税3パーセントを提案したところ、バザール商人の猛烈な反対を受け、引っ込めてしまったが、それ以外には、国家の収入を増やす手立ては、見つかっていない。
 アハマド・ネジャド大統領にとって、次期選挙が不利になってきた要因の一つには、イランの宗教最高権威である、ハメネイ氏の病状が悪化いてきていることだ。彼が権限を発揮できなくなれば、対抗馬のラフサンジャン二元大統領が台頭し、穏健派を支援するであろうことから、アハマド・ネジャド大統領は苦しい選挙を、戦わなければならなくなるだろう。
 石油価格がどのレベルで推移するかも、大きな問題だ。一時期150―60ドル台に達していた石油価格は、現在60ドル前後で推移している。イランにとっては、できれば70−80ドル台で推移してくれれば、と望んでいるようだ。この点について、ロシアの石油専門家は「たぶん75ドルから80ドルで最終的には落ち着くのではないか。」という見通しを最近口にしている。
 石油価格の推移と同時に、アメリカとの関係がどうなるのか、ということもイランの大統領選挙には、影響を与える要素であろう。アラブ諸国もそうだが、イランの場合も、国民にとっての、完全に自由な空間は自宅であり、自家用車だからだ。
イランは石油産出国であるにもかからず、製油施設が不足しているために、ガソリンを大量に外国から輸入している。このガソリン価格が高騰すれば、無条件にイラン国民は、アハマド・ネジャド大統領に反発することになる。このことから、欧米の専門家はイランに圧力をかけるには、ガソリン輸入を阻止するのが、一番効果的だとさえ語っている。
 アハマド・ネジャド大統領の再選には、ここに挙げただけでも、幾つものハードルがありそうだ。もちろん、彼の前にはこれ以外にも、これから次々、に高いハードルが姿を見せてくるだろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:53 | パーマリンク

NO1097危険なイラン・イスラエルの恫喝合戦

 最近になって、不思議な傾向が目立ち始めている。一時期は、アメリカがイランを攻撃する可能性が、中東ニュースのトップを飾っていたが、アメリカによるイラン攻撃の話は、アメリカの大統領選挙が大詰めに入っていることもあってか、後退している。
 それとは逆に、イスラエルとイランの双方から、先制攻撃の可能性に関する、情報が頻繁に流れてきている。イスラエルからは、イランが原発に核燃料を入れてしまってからでは、攻撃ができなくなるとして、先制攻撃の時間的リミットが、迫っているというニュースが、何度となく流されている。
 これに対し、イラン側はイスラエルが攻撃してくる前に、先制攻撃を加えるという話が、漏れ伝わってきている。
 同時に、イスラエルはイランの軍事力を、冷静に評価すると、本格的なイスラエルに対する、攻撃は不可能だとし、イスラエルまで届くイランの長距離ミサイルは、100発程度しかなかいと伝えている。
 イスラエルのこうした主張に対し、イラン側も負けてはいない。イスラエルはアメリカの参加をあてにしなければ、イランを攻撃できないし、攻撃したとしても、それはイランが反撃撃退できる、と豪語している。
 当然のことながら、イスラエルのイラン攻撃と絡み、アメリカのイラン攻撃のことも話題に上っているが、イラン側は「アメリカは戦争を始めることはできても、それを終わらせることはできまい。」とし、イラクやアフガニスタンで手こずっている、アメリカの戦略的能力、と軍事的能力に、大きな疑問符を付けている。
 イスラエルに対しても、アメリカに対しても、イランはこれ見よがしに軍事訓練を行ってみせ、イランの持つ兵器と、その実戦能力を誇示している。しかし、イランが所有している兵器は、アメリカ軍が装備している兵器の前には、おもちゃ同然であろうことから、どれだけ兵器を見せても、アメリカ側はあまり驚かないだろう。
 ただアメリカにとって、最も油断ならないのは、イラク国内に潜伏している、イランの破壊工作員の動きであり、イランの意向を強く受けている、イラク国内の親イラン派の動きだ。
 イランが主張するように、もしアメリカがイランを攻撃した場合、徹底抗戦になり、イラクでもアメリカ軍に対する、本格的な攻撃が始まれば、アメリカ軍は相当のダメージを、受ける可能性はある。
しかも、アメリカが強引に受け入れさせようとしている、イラクとの治安協定に対する、イラク国民の反発は強い。イランのアメリカに対する敵対に従ってではなく、イラク国民の自主的な反米抵抗戦争が、始まる危険性は高かろう。
イランの恫喝のもう一つの材料は、レバノンのヘズブラであり、パレスチナのハマースだ。これらの組織は、アメリカあるいはイスラエルが、イランを攻撃し始めれば、自動的にイスラエルに対する、本格的な攻撃を始める、と考えておいた方が正しいのではないか。
軍事大国の戦争は、いわば正面攻撃型であり、ヘズブラやハマース、そしてイランやシリアがこれから使うであろう、ゲリラ戦ではない。ゲリラ戦に対する対処能力は、イスラエルもアメリカも、あまり高くないのではないか。
イランとイスラエルが、相互に行っている恫喝戦、神経戦は、それだけに大爆発の、導火線ともいえる、危険なものではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 11:47 | パーマリンク

2008年10月22日

NO・1096サウジで約1000人のテロリスト裁判開始

 サウジアラビアは世界的に知られる、イスラム・テロリスト・グループ、アルカーイダのリーダーであるウサーマ・ビン・ラーデンを輩出した国だ。それだけに、この国には、ウサーマ・ビン・ラーデンの追従者が沢山いるし、彼と同じような考えを持つ者も、少なくないようだ。
 したがって、サウジアラビアの警察や内務省は、これらイスラム・テロリスト対策に追われている。これまでに、逮捕したイスラム・テロリスト容疑者の数は数千人に上り(数万人ではないかと思われる)、2007年の11月には、1500人が再教育の後に釈放されたが、その後にまた1000人以上が、収監されたということだ。
 彼ら収監者たちは、正式な裁判を受けることなく、刑務所の中に入れられているが、最近になって、サウジアラビア内務省はやっと、約1000人(991人)の裁判を始めることを決定した。
 裁判官は12人で構成されるということであるから、多分に長期間を要するものと思われる。あるいは、非常に簡単に判決が出るかもしれないが、その場合は、国際人権組織から、クレームがつくのではないか。
 サウジアラビアのナーイフ内相は、これまでに民間人90人、治安警察74人が死亡し、外国人を含む民間人439人が負傷し、治安警察657人が負傷していることを、明らかにした。
 彼の話によれば、これまでにサウジアラビアの治安警察は、160件のテロを未然に防止し、3トンの爆発物を押収し、25トンの爆発物製造原料を抑えたということだ。
 今回、サウジアラビアがイスラム・テロリストの、裁判に取り掛かったということは、これ以上、裁判なしに刑務所に収監しておくことが、国内では容疑者家族の不満が拡大し、社会不安の種になりかねないという懸念と、外国からの民主化が遅れているという批判に、対応しなければならなかったからではないか。もちろん、同時に、アメリカのグアンタナモ刑務所に収監されている、サウジアラビア人の一部が釈放され、帰国したこともその一因であろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:14 | パーマリンク

NO・1095ロカビー事件首謀者が癌に

 パンナムの旅客機が、イギリスのロカビー市上空で爆発し、機内の259人と、ロカビー市の住民11人を殺害するという事件が、1988年12月18日に起こったことをご記憶の方は、少なくなっているかもしれない。
 この事件後、アメリカとイギリスは、リビアが行ったテロだとして追及し、長期の制裁後、カダフィ大佐が妥協し、容疑者二人をイギリス側に引き渡す、ということで決着がついた。
容疑者ファヒーマ氏とメグラヒ氏は、リビア航空の職員で、マルタ空港で爆発物を積み込んだといわれていた。当時、PFLPが実行犯と言われたり、イラン主犯説やシリア説などが語られていたが、結局のところ、賠償能力があるということも絡んでか、リビアの犯行ということで決着したのだ。
 以後、ファヒーマ氏は釈放されたが、メグラヒ氏は犯人として、受刑することとなった。彼はイギリスの刑務所に収監されていたが、最近になって、彼が前立腺癌にかかっており、他の部分にも癌が転移しているというニュースが、彼の弁護士によって伝えられた。
 癌にかかったメグラ氏の余命が、どの程度あるのかについては、弁護士は明らかにしていないが、このことが理由で、メグラヒ氏が釈放されることがあれば、リビアとアメリカ・イギリスの関係は、完全に正常化するということではないか。
 パンナム機の爆破事件の処理は、極めて政治的な判断が絡んだものであっただけに、その終章も、極めて政治的なものになるのではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:14 | パーマリンク

NO・1094バルザーニがトルコ・クルドの分離帯構築認める

 これまで、トルコ政府が交渉相手としてこなかった、クルド自治区のマスウード・バルザーニ議長が、大きな譲歩をトルコ側に示したようだ。その譲歩とは、トルコ側がPKKの攻撃を抑えるために、クルドとの国境地帯に、安全のための分離帯を、構築することを認めたというのだ。
 このマスウード・バルザーニ議長の新しい立場は、イラク軍のバービキール・ズイバーリ司令官によって、もたらされた情報だ。このイラク軍の司令官は、名前からわかるように、クルド人であることから考えると、マスウード・バルザーニ議長の新たな立場に関する情報は、ほぼ間違いなかろう。
 バービキール・ズイバーリ司令官の語るところによれば、マスウード・バルザーニ議長はトルコ側がクルドとの国境地帯に、分離帯を構築することを認める条件として、トルコ政府がクルド自治政府との間で、正式な対話を開始することと、クルド自治政府とテロ組織であるPKKを、完全に別個のものとして、受け止めることだとしている。
 そして、トルコ政府がクルド自治政府との、良好な関係を構築していくことが、求められている。
 このことは、先のトルコ代表団のバグダッド訪問時に、クルド自治政府側が、トルコ代表団と話し合えたことを、大きな前進として、捉えたということであろう。
 同時に、クルド自治政府をはじめとする、イラクのクルド人たちが、どれだけ将来に対する不安を、抱いているかを表していよう。アメリカ軍が大幅に、イラクから撤退するようなことになれば、クルド人の安全は、脅かされる危険性が高まるからだ。
 そのような危険な状況に陥る前に、クルド側はトルコとの良好な関係を、構築しておきたい、ということであろう。そうなると、クルド自治政府やイラク軍の中のクルド将兵が、PKKに対する厳しい対応をとり始め、PKKはイラクのクルド領内から、自由な戦闘をトルコに対して行うことが、困難になっていくということではないか。
 そうなった場合、PKKは都市型テロを、主な戦術として選択していくかもしれない。そのPKKの戦術面での変化を、どう抑えていくかということが今後、トルコがPKK対策を考えるうえで、最も重要な問題になってくるのではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:46 | パーマリンク

2008年10月20日

NO・1093ムスリム同胞団とAKPの比較

 エジプトで起こったムスリム同胞団の活動は、エジプト国内では禁止されているが、アラブ全域に広がり、その分派もたくさんできている。このイスラム教組織は、政治的な力も発揮しているというのが現実だ。そのことの危険さを、最初に察知したのが、ムスリム同胞団とともに、エジプトで革命を起こした、故ナセル大統領だった。
 エジプト政府による弾圧から逃れ、多くのムスリム同胞団のメンバーが、当時(60年代)エジプトが社会主義であることから、王制のアラブ諸国に受け入れられ、後に大きな影響力を持つに至っている。
 湾岸諸国やヨルダンが、その典型的な例であろう。サウジアラビアで現在問題となっている、イスラム原理主義の思想は、サウジアラビアのワハビズムによるが、それ以上に理論武装した、ムスリム同胞団によるのではないか。ビン・ラーデンなども、実はムスリム同胞団の影響を受けているのだ。
 こうして考えてみると、現在トルコのAKP(開発公正党)は、ムスリム同胞団と同じような性格を持った政党だと思われるのだが、エジプトのムスリム同胞団幹部の、ムハンマド・ハビーブ氏はこれを否定している。
 彼によれば、AKPは世俗的で民主的な、政党だということだ。そしてムスリム同胞団とAKPの、もうひとつの大きな違いは、AKPがアメリカやヨーロッパ諸国、イスラエルとの関係を持っているが、ムスリム同胞団はそうではないということだ。
 そして、イスラエルについては、1948年のラインまでイスラエルが譲歩するのであれば認めるが、そうでなければイスラエルという国家を、認めないと語っている。
 トルコのイスラム学者のなかには、アルカーイダを評価する人たちもいるが、ムスリム同胞団はこれを認めない、とも語っている。(皮肉なことにアルカーイダは、ムスリム同胞団から分裂して出来上がった、組織ではないのか)
 エジプトのイラン・トルコの専門家、ムスタファ・レッベド氏はこの二つの組織の違いについて「AKPはイスラム愛国者たちによって運営されているが、ムスリム同胞団は世界規模のイスラム運動だ」と指摘している。
 このムスタファ・レベッド氏の指摘は、非常に興味深いのだが、彼が気がついていないのは、AKPを後ろから支えている、トルコの宗教集団の存在だ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:48 | パーマリンク

NO・1092サウジの和平案にイスラエル心動かされる

 サウジアラビアが2002年に提案した、包括的な中東和平案について、イスラエル内の穏健派は、心を動かされているようだ。
 このサウジアラビアの和平案は、1967年戦争以前の状態に戻すことによって、アラブとイスラエルが、最終的な和平を結ぶというものだ。つまり、ヨルダン川西岸地区ガザ地区、そして東エルサレムをパレスチナ側に引き渡し、難民の帰還権も認める。加えて、イスラエルが占領し続けているゴラン高原を、シリアに返還するというものった。
 このサウジアラビアの和平提案は、理にかなったものであったが、イスラエル側はこれを拒否してきた。その理由は、パレスチナ難民の帰還権が、最大の問題だった。難民が自分の家に戻れるということは、パレスチナ難民がイスラエル国内に、戻ってくるということだ。
このことは、大量のレスチナ難民が、イスラエル国内に入ってくることであり、彼らのイスラエル国民としての権利も、認める必要があろう(もし希望すればだが)。しかし、そのことはイスラエルの人口構成を、破壊してしまうことになるのだ。
 イスラエルにとっては、東エルサレムをパレスチナ側に返還する以上に、パレスチナ人口がイスラエル国内で増加する方が、大きな問題であろう。人口の逆転現象の時期が、早まる危険性があるのだ。
 そう言っても、イスラエルも何時までも、今のような不安定な状態に、アラブとの和平問題を放置して置くわけにはいくまい。そのような状態が続くことは、イスラエルは長期間にわたって、アラブ側からの危険に脅え、莫大な軍事費を、費やしていかなければ、ならないということだ。
 ペレス氏(現在大統領)からシャロン元首相、そしてオルメルト首相からリブニ首相候補への、イスラエルの権力の変遷は、イスラエルが平和を求めていることを、如実に表していよう。
 最近、バラク元国防報相はリブニ首相候補と会談し、サウジアラビアの和平提案について、検討したと語った。バラク氏は個別のアラブ諸国との、交渉の時期はすでに過ぎた。一括した形での交渉に、イスラエルは入るべきだ、と考えているという意見を述べている。
 これに対して、リブニ首相候補はコメントを拒否しているが、およそバラク氏と同じ意見であろう。彼女が明言を避けたのは、現在彼女が進めている、他党との連立交渉に、影響を与えるという懸念からであろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 17:23 | パーマリンク

2008年10月19日

NO・1091ハマースへのアラブ穏健派諸国の接近とアッバースの後退

 これまでアラブ各国、なかでもアラブの穏健派諸国、あるいは親米派諸国は、パレスチナのハマースとの間に、距離を置いてきていた。それは、マハムード・アッバース議長が中心の、パレスチナ自治政府に対する、義理立てであったと同時に、自国へのイスラム原理主義の、浸透を恐れたためでもあろう。
 しかし、ここにきて、次第に明確な形でハマースに接近する、アラブ穏健派諸国が増加してきているようだ。エジプトはこれまで、ハマースを押さえ込むことに、パレスチナ対応を絞ってきていたが、次第にパレスチナ自治政府、マハムード・アッバース議長だけではなく、ハマースとイスマイル・ハニヤ首相を、相手にするようになってきている。
 ヨルダンがハマースとの関係を強化し始めたことは、公のものになってきている。もちろん、このアラブ穏健派諸国の動きに、一番敏感に反応しているのは、マハムード。アッバース議長だ。彼はエジプト政府による、パレスチナ自治政府とハマースとの会議に反対しているし、ムバーラク大統領が呼びかけた、マハムード・アッバース議長とイスマイル・、ハニヤ首相との、対談出席を拒否してもいる。
 述べるまでもなく、この一対一の会談に臨めば、イスマイル・ハニヤ首相が、マハムード・アッバース議長の汚職や、イスラエルへの際限のない妥協、イスラエル政府依存の体質について、厳しく追及されるからであろう。
 同時に、そのことは、ムバーラク大統領がマハムード・アッバース議長に対して、イスマイル・ハニヤ首相とハマースに対する、譲歩と妥協を迫ることになろうからであろう。
 マハムード・アッバース議長はイスマイル・ハニヤ首相を、現在ではパレスチナ自治政府の首相として、認めていないが、イスマイル・ハニヤ首相は正式な選挙で、選出されたものであり、マハムードア・ッバース議長が勝手に首にし、何の正統性もないファイヤード氏を、首相に任命することは、ルール違反であり、パレスチナ内部での、マハムード・アッバース議長の独裁色を、内外に明らかにするものであろう。
 なぜいまの段階になって、アラブ穏健派諸国が、イスマイル・ハニヤ首相やハマースとの距離を、つめているのであろうか。そこには、幾つもの理由がありそうだ。
 第一に考えられるのは、アラブ穏健派諸国のなかで、イスラム保守派の人たちが、増えてきているということだ。
 もし、この拡大傾向にあるイスラム保守勢力を、完全に無視すれば、次に拡大してくるのは、イスラム原理主義者たち、ということになろう。それは、アラブ穏健派諸国政権にとって、あまりにもリスクがありすぎるのだ。
 サウジアラビアの例が、アラブ穏健派諸国の政府に、変化を促しているのかもしれない。サウジアラビアでは、あまりにも国内的に、締め付けが厳しかったために、結果として、イスラム原理主義がはびこり、体制は不安定化しつつあるからだ。
 第二に考えられる理由は、アラブ穏健派諸国も世界の例外ではなく、高インフレと経済危機に直面しているということだ。なかでも、非産油諸国の経済は、危機的状況に近づきつつある。そうしたなかでは、国民の不満は拡大し、暴発点に到達するのも、時間の問題かもしれない。こうしたこと、がアラブ穏健派諸国をして、ハマースへの接近を、促しているのであろう。
 第三に考えられることは、シリアの立場に変化が出てきているということだ。シリアのアサド大統領は、これまでアラブ民族主義の旗頭という地位を、維持しようとしてきたが、最近になって、次第に現実的な選択をするようになってきている。
 レバノンとの正式な外交関係を開いたのは、その最も顕著な例であろうか。これまでシリアは、レバノンを自国領土あるいは属国とみなし、レバノンの内政に関与し、軍を駐留させ、暗殺にも関与してきているといわれていた。
 パレスチナ問題にも同様に、シリアは深く関与してきていた。しかし、シリアの最近の動きを見ていると、必ずしもパレスチナ自治政府に敵対する立場を、堅持しているとは言えなくなってきた。そのことは、ある意味ではハマースに対し、冷たく対応するようになってきている、ということでもあろう。
 シリアに亡命しているハマースのリーダーである、ハーリド・ミシャアル氏に対する対応は、これまでのような、温かいものではなくなってきているのだ。それどころか、ハーリド・ミシャアル氏を国外に追放するのではないか、彼の行動が大幅に押さえ込まれるのではないか、という懸念すら噂されるようになってきている。
 距離を置いて考えると、シリア、エジプト、ヨルダンといった国々が、それぞれの役割を果たし、パレスチナの両派を、操縦し始めているのかも知れない。その結果、パレスチナのリーダーたちが、冷静な判断を下し、汚職を減らし、パレスチナ問題の解決に真剣に向かって行くことを望む。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:07 | パーマリンク

2008年10月18日

NO・1090イラクで反治安協定の大規模デモとトルコの期待される役割

 イラクの首都バグダッドの、シーア派居住地域で、大規模な反治安協定デモが行われた。この反治安協定デモとは、露骨に言えば、アメリカが永久的にイ、ラクに軍事基地を持ち、実質的にイラクを、植民地下に置くというものだ。
 今年6月には、イラクの外務次官が訪日し、日本政府の例について、聞き取り調査をしていった。その時、私が彼らにどう日本の実情を、語ったのかについては、すでに報告している。治安協定そのものについては、反対しないが、アメリカ側の希望するような、一方的な形のもであっては、ならないだろうということだった。
 しかし、その後も、アメリカ側の希望する、治安協定の内容に、あまり変化がなかったのだろう。結果的には、今年7月には合意が予定されていたにもかかわらず、現在なお、治安協定は成立していない。
 そればかりか、治安協定交渉の中で、イラク国民の反発が強まったことから、マリキー政権はアメリカに対し、より明確で短期のアメリカ軍駐留と、その後の全面撤退を、求めざるを得ないようになってきている。
 今回、ムクタダ・サドル師が主導する、バグダッドで行われたデモでは、デモ参加者が「バグダードホッラ、アムリーカーバッラ=バグダッドは自由だ、アメリカは出て行け」というシュプレヒコールが、繰り返されていた。つまり、イラク国民多くが、アメリカ軍の駐留に完全に、そっぽを向いた形になったということだ。
 一部の、冷静なインテリイラク人たちは、アメリカ軍の近い将来の全面撤退が、危険なことはわかっている。彼らは、段階的にアメリカ軍が、イラクから撤退していくことを、望んでいるのだが、その冷静な声は、次第に聞こえなくなっていこう。
 そして、その後には、アメリカ軍のほぼ全面的な撤退があり、イラク国内は、シーア・スンニー・クルドの間で、内戦状態になる危険性が高い。
 そうした懸念を、イラクの全ての派が、抱いているのであろう。そのことは、トルコのエルドアン首相のバグダッド訪問や、最近、バグダッドを訪問したトルコ代表団に対する、イラク側の丁重な対応で感じ取れる。
 つまり、アメリカ軍に出て行ってほしいが、その後にイラクは不安定で、危険な状態になる、アメリカに代わる安定化のための、外国軍のイラク国内駐留が、どうしても必要だということであろうか。
 しかし、トルコはPKKの攻撃などで、冷静さを失って、イラクに軍事侵攻するようなことが、あってはなるまい。できるだけPKK問題は、イラク側やクルド自治政府側に、解決させるように仕向け、トルコは、できるだけPKK対応では、PKKの拠点に対する空爆に、とどめるべきであろう。
 トルコ軍はできるだけ、PKKに対する反撃を、限定的なものにし、大規模化してはならない、ということだ。そして、イラクのシーア、スンニー、クルドの各派が、イラクの国内安定維持に、トルコの力をどうしても借りたい、という合意に達した後に、初めてトルコ軍はイラク国内に、駐留すべきであろう。しかも、その駐留トルコ軍は、極めて限られた、規模のものであるべきだろう。
 トルコがイラクの隣国であるということを考えると、将来、イラクに駐留するトルコ軍は、あくまでも限定的で、形式的な規模のものであるべきで、イラク軍を支え、支援、指導することを主たる目的とし、そのことにとどめるべきであろう。
 アメリカは何とか、トルコ軍をイラクに引き込みたい、と思っているのではないかと思われるが、それは結果的には、アメリカにとっても、トルコにとっても、イラクにとっても、失敗に終わる可能性が高かろう。アメリカは冷静に、トルコを中東の主導国になるように、支援していくことこそ、考えるべきであろう。トルコにはその能力が、十分にあるのだから。日本のトルコに対する対応も、こうした認識の上から、なされるべきであろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:40 | パーマリンク

2008年10月17日

NO・1089イラク・クリスチャンの悲惨加害者はクルド

 イラクのクリスチャンがいま、悲惨な状況の置かれており、強姦、略奪、殺害,改宗強要の対象になっている、ということはすでにお伝えした。
 しかし、ここにきて、意外なことに、このクリスチャン受難事件の加害者として、クルド人が引き出され始めたのだ。イラクのクルド人は、イラク国内にあって、スンニー派主導のサダム体制下では、ハラブジャで毒ガス兵器によって、多数が犠牲になるという、マイノリテイの悲惨をなめてきた。
 その悲惨な状況を見かねてか、あるいは、あくまでも打算からか、アメリカ軍がサダム体制下に仕掛けた湾岸戦争後は、イラク国内にあってサダム体制が維持されていたにもかかわらず、特別の状況下で守られることとなった。
 アメリカはイラク北部に居住する、クルド人を庇護するために、湾岸戦争後サダム体制に対し、北緯32度以北への、航空機の乗り入れを禁止し、クルド地域はイラク国内にあっては、例外的な平和を享受してきた。
 続く2003年に起こったイラク戦争後は、他のイラクの地域とは異なり、クルド地区だけが、経済発展、復興が急速に進んで来た。こうした状況を、外部から見ている人たちの中には、イスラエルがクルド地区を、第二の故郷とする気なのではないか、という説まで飛び出すほどであった。
 したがって、クルド人たちは1991年の湾岸戦争以後、そして、2003年のイラク戦争後、特別な扱いをアメリカとイスラエルから、受けてきたということだ。
 ところが、アメリカ軍のイラク撤退が、具体的な形でタイム・テーブルに乗り始めたいまに至って、クルド人がクリスチャン弾圧の、張本人にされ始めたのは、何故なのだろうか。
 簡単に推測すると、アメリカはイラク撤退後、クルド人の安全を守れないことから、事前にクルド人に現実を教えるということを、狙っているのかもしれない。
 あるいは、クルド人とトルコとの関係を修復し、アメリカ軍が撤退した後の、イラク国内状況を安定化させるために、トルコ対クルドという対立関係や、イラクのスンニー・シーア派対クルドという対立関係を薄め、クルド対クリスチャンという、マイノリテイ同士の対立に変えることによって、対立のエネルギーの規模を、縮小しようとしているのかもしれない。
 クルド人がイラク・クリスチャンの弾圧者、というニュースは、その真因がどこにあるかは別に、一つのイラク国内と周辺での、大きな変化を示すものであろう。推測するには実に興味深いテーマであろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:53 | パーマリンク

2008年10月16日

NO・1088イラン来年度の石油価格55−69ドルを予想

 イランのガラーム・フセイン・ヌーズリ石油相は、来年の石油価格を、1バーレル当たり55ドルから60ドルの間と予測している。したがって、イランの2009年から2010年にかけた予算も、この収入の範囲内で、組まれることになる。
 イランは次年度の国家予算を、控えめに見積もりながらも、経済成長は6・6パーセントを、期待している。
 イランが今回、石油価格を55ドルから60ドルの範囲、と想定しているのには、前年度の石油価格の予測が、1バーレル39・70ドルであったものが、一時期、100ドルを超えることもあり、大幅な増収となった経緯からではないかと思われる。
 これに対し、OPECでは来年の石油価格を、75ドル程度と予測しているようだ。どちらが正解になるかは、来年になってみなければわからないが、これだけ世界経済が冷え込むことになれば、当然のこととして、石油の価格も下がることになろう。
 そればかりか、世界全体が経済の落ち込みで苦しくなろうから、OPECだけが勝手に石油価格を引き上げても、売れないという状況すら起こりかねまい。
 他方、ロシアが強力に推進しようとしてきた、原発施設の輸出も、石油価格が大幅に下がれば、当然のこととして、原発建設のメリットが下がることから、発注が減ることが予想できよう。
 その意味では、日本や欧米諸国ばかりではなく、産油諸国も現在の金融危機を救うために、資金を投入主る必要がある、ということではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:12 | パーマリンク

NO・1087ジュンドッラーの48人が死傷というニュースの意味

 パキスタンの南西部からイランのザヘダン州に広がる地域を、バルチスタンと呼ぶが、そこに居住するバルーチ族の間から、ジュンドッラーというゲリラ組織が誕生している。
 そのジュンドッラーと呼ばれる、スンニー派の武装グループが、過去2ヶ月の間に、イランの国境警察や革命防衛隊と武力衝突し、ジュンドッラーのメンバー48人が死傷したというニュースが伝えられている。
 民族が混交し、宗派が入り乱れる西アジアから中東地域については、何時どこで宗派間の武力衝突が起こっても、不思議ではなかろう。しかも、いまのような国際情勢下では、武力衝突は各方面の意向を受けて、行動を起こすグループが乱立している。
 イラン側の伝えている情報では、イランのバルチスタンに隣接する国境地域に展開していた、イランの国境警察16人が、ジュンドッラーによって人質に取られており、そのなかには、司令官も含まれていたということだ。
 こうなると、イラン側も放置しておくわけにはいかず、何度かの戦闘を、ジュンドッラーとの間で展開したものと思われる。現地のイラン側の司令官は、ジュンドッラーのメンバー38人を、殺害したということだ。
 さて、このジュンドッラーは何を目的としてイラン側の国境警察を襲撃し、人質を取ったのかということを考えてみる必要があろう。いったい、何処の国がジュンドッラーを支援しているのかについても、考えてみる必要があろう。
 ジュンドッラー・グループが、バルチスタンの住民によって、構成されているとすれば、彼らはパキスタンからの分離独立を考え、パキスタン軍に対する攻撃を、第一に実行するはずだ。それが、イラン側に対して、攻撃が行われているということは、問題が単純ではないということだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:55 | パーマリンク

NO・1086イラクのクリスチャンが受難

 イラクの北部の街、モースルに居住しているクリスチャンが、暗殺されるという事件が重なり、1307家族が別の場所に移住している、という情報が伝わってきた。
 彼らは、ほかのイラク国民同様に、特別な犯罪を犯したわけでも、差別をしたわけでもないのだが、イラクの混沌とした状況の中で、狙われ犠牲になったということだ。
 モースルという街は多民族、多宗教、多宗派が混在している街だけに、少しの不満でも暴発しやすいのかもしれない。
 しかし、このニュースがキリスト教世界に、広範に伝わったとき、どのような反応が起こるのか、ということを考えると不安がよぎる。
 現在の状況は、あらゆる小さな出来事が、想像もつかないような、大事件に発展していくからだ。昨夜書いた、イスラエルのアッカ事件も、普通なら数時間で解決するはずのものが、数日にまたがり、イスラエル全体を不安に陥れている。
 今回のモースルで起こった、クリスチャン受難事件も、現代の十字軍戦争を引き起こすことに、つながるかもしれない。世界中にはそれだけの不満が、鬱積しているということだ。
 宗教は愛と正義を教えてりるはずなのに、今では殺人の方便として、使われているケースが多すぎる。それは、宗教者たちが権力の言いなりに動くことにより、個人的な現世利益を得ている、ということも影響していよう。
 日本で開催が続いて久しい、世界宗教者会議などで、この流れを変えることはできないものか。悲惨な状況が続いている国で、世界中の宗教指導者たちが集まり、会議を開き、平和を祈ることが有効かもしれない。そのために、自分の生命も賭す覚悟がある、宗教指導者たちがいればの話だが。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:15 | パーマリンク

2008年10月14日

NO・1085炭素菌がイラクで犠牲者生む

イラクの厚生省が発表したところによれば、イラクのクルド地区にある、ドホーク県のズイルヤン・オスマンという場所で、炭素病が発生したということだ。罹病した人の数は、すでに37人に上っているということだ。
 そもそも炭素菌兵器とは、細菌兵器として培養されたものであり、自然の中に存在する炭素菌では、なかなか発症しないもののようだが、イラク国内では1980年代以来、今回のケースが、初めてのことだということだ。
 細菌兵器の開発は、それが自国民に被害をもたらす危険性があり、しかも目に見えないものであるだけに、核兵器や毒ガス兵器よりも、管理が困難であり、炭素菌を兵器のレベルまで開発するには、相当の科学技術と、設備が必要なのではないか。
 アメリカはイラクに対する、攻撃を正当化するために、WMD(大量破壊兵器)をイラクが開発していると主張し、そのWMDのなかには、核兵器や化学兵器と並んで、炭素菌兵器が上げられていた。しかし、現実にはそのいずれも、イラクからは出てこなかったのではないか。
 もちろん、これらの兵器の一部は、開発段階にあったものもある。サダム体制がアメリカとの緊張が高まるなかで、廃棄したものもある。
 では炭素菌を現在、実際に使える形で、所持していると思われる国は、どこかと考えてみると、アメリカ、ロシア、中国などの大国だけに、限られているのではないのか。それ以外にも、考えられないことはないが、危険極まりない兵器であると同時に、その所持がばれた場合、国際的な非難を浴び、制裁を加えられる危険があろう。
 では今回の場合は、なぜ炭素菌による被害が、イラクのクルド地区で発生したのであろうか。もちろん、炭素菌を誰かが使ったという前提だが、以下のことが想像できるのではないか。
:サダム体制下にあったスンニー派バアス党の残党が、炭素菌をひそかに隠し持っていて、クルド 
 人攻撃に使った。
:クルド問題を抱えている国が、炭素菌兵器を開発していて、クルド人に対して使った。(例えばク
 ルド人とイランとの間には、PJAK(クルドの反イラン組織)問題がある。
:大国のいずれかが、なんらかの目的で使った。
:自然の炭素菌が今回の被害を生み出した。
 ここにあげたいずれにも確証はない。もちろん犯人探しをするつもりもない。したがって、あくまでも推測の範囲にとどまるしかないが、もし人為的なものであったとすれば、放置できない問題であろう。戦争には戦争なりのルール、人道の精神があってしかるべきだと思うのだが。
 

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:25 | パーマリンク

NO:1084アッカの出来事がパレスチナ全体に拡大する懸念

 先週後半に、イスラエルの北部に位置する港町アッカで、パレスチナ人とイスラエル人との衝突が起こった。イスラエルのユダヤ人たちにとっては、ヨム・キプールの祭日に当たっていただけに、些細なことが原因だったが、イスラエル人とアラブ系イスラエル人(パレスチナ人)との、大きな衝突に発展してしまった。
 このアッカの衝突を受け、ガザではアッカのアラブ系イスラエル人と連帯する、抗議集会が開かれ、数百人のパレスチナ人が集まり、イスラエルに抗議した。そのなかで、イスラミック・ジハードのムハンマド・アルヒンデイ氏は「イスラエルは民主国家だというが、人種差別国家であり、占領地のパレスチナ人に、更なる弾圧を加えようとしている。」と非難している。
 確かに、イスラエル人がアラブ系イスラエル人(パレスチナ人)にしたことは、非難されてもしかたがあるまい。放火、暴力が頻発したのだから。もちろん、イスラエル人側も被害を受けた、と主張するだろうが。
 問題は、このアッカでの出来事が、今後、イスラエル国内で、インテファーダを起こすことにならないかということだ。アラブ系イスラエル人とイスラエル人との、本格的な武力衝突に、発展しないかということだ。
 すでに、PFLP(パレスチナ革命人民戦線)のスポークス・マンは、今回のアッカ事件に関して、強硬な立場をとった、イスラエル・ベイトヌ党の議員、アビグドル・リーバーマン氏をさして、2001年にPFLPによって暗殺された、内閣担当大臣だったラハバム・ゼエビ氏と、同じ運命をたどるだろう、と警告している。
 PFLPのスポークスマンは「われわれの指は武器の引き金にかかっている。われわれはどこに銃口を向けるかをわかっている。シオニストのリーバーマンは、ラハバム・ゼエビと同じ運命をたどろう。」といった内容の発言をしているのだ。
 パレスチナ側はこのアビグドル・リーバーマン氏が、イスラエル国内に居住するアラブ系イスラエル人を、ヨルダン川西岸地区に造る、巨大な入植地に移住させようと考えている、と思っているのだ。そうしたことは当然のことながら、アッカで起こった今回のような出来事を機に、パレスチナ人全体の、認識となっていく可能性が高い。
 オルメルト首相が強く主張したように、いまイスラエルとパレスチナ人は、共生の最後のチャンスに、差し掛かっているのかもしれない。イスラエル人の安全を考えても、パレスチナ人の安全を考えても、暴発だけは避けたいものだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:25 | パーマリンク

2008年10月13日

NO・1083短いが重要なニュース3本

:カルービ師の大統領選挙立候補
 イランでは71歳のカルービ師が、来年6月12日に行われる予定の、大統領選挙に立候補することを、、明らかにした。彼は前回の大統領選挙にも立候補したが、改革派内部の分裂によって、3位に終わっている。
 今回のカルービ師の立候補は、明らかなアハマド・・ネジャド大統領に対する、強い反対の立場からのものであろう。そう考えなければ、71歳の高齢者が立候補する意味が、わからなくなるからだ。
 カルービ師の立候補と前後して、イランのテヘランで最も影響力を持つといわれる、バザール商人たちがストライキを行った。バザール商人たちの意思で、バザールの入り口が閉鎖され、、取引が止ったのだ。これはアハマド・ネジャド大統領の進めめようとしている、消費税に対する、反発から起こったものだ。
 1979年のホメイニ革命の成功の裏には、バザール商人の意思が、強く働いていたといわれたが、今回のバザール商人のストが、カルービ師の動きと連動するものであるとすれば、今後、イラン国内の大きな政治的うねりに、なっていく可能性があろう。

:ムバーラクの後継候補は3人か?
 エジプトのムバーラク大統領が高齢であることから、何時、彼が大統領職を引退するのかが、これまでうわさに上ってきた。
 しかし、ムバーラク大統領はなかなか引退しそうにない。それは、彼が考えている後継者問題が、スムーズにエジプト社会から受け入れられない、可能性が高いからだといわれてきた。ムバーラク大統領は彼の次男、ガマール氏を後継にしたいのだ、ともっぱらのうわさだ。
 しかし、ここにきてエジプトの次期大統領候補として、3人の名前が浮上してきた。第一に挙げられているのはムバーラク大統領の次男ガマール氏であり、二番目に挙げられているのはスレイマン情報長官だ。そして、三番目に名前が挙がっているのが、ムハンマド・フセイン・タンターウイ国防大臣だ。
 スレイマン情報長官については、これまでも何度となく名前が出てきているし、彼はムバーラク大統領のすべての秘密を、握っている人物として、最有力候補といわれてきていた。しかし、ムハンマド・フセイン・タンターウイ国防大臣については、これまで、彼は大統領職を望んでいない、といわれてきている。
 この予測はイスラエルの情報機関モサドの分析だが、どこまで正確なのか興味が持たれる。ちなみに、モサドはムスリム同胞団について、エジプト国内状況を見てみると、権力奪取の機会が全くない、という予測を出している。
        
:ボスポラス海峡を結ぶ海底トンネルが開通
 トルコの商都イスタンブールと、対岸のウシクダルを結ぶ、海底トンネルが日本の大成建設をはじめとする、企業群によって連結した。この海底トンネルは、海底60メートルに、1・4キロメートル分の11本のチューブを沈め、それを連結するという工法だった。
 マルマラ海(ボスポラス海峡のある)の両岸を結ぶ計画は、オスマン帝国の皇帝が、148年前に夢に描いていた計画だった。それだけに、海底トンネルが連結すると、ギュル大統領もエルドアン首相も、早速このトンネルの中に入ってみている。
 エルドアン首相は、トンネルが完成することによって、高速道路が延長され、電車の路線も延長されると語っている。このトンネルが完成すると、一時間に最高で75000人が通過できる計算だ。貨物輸送用の列車は、午後11時から午前6時まで、このトンネルを使う予定になっている。
 イスタンブールの交通渋滞は、これまで問題視されてきていただけに、トンネルの完成が待たれるし、完成時には、日本の土木技術が、高い評価を得よう。また、両国の関係が現在よりも、緊密なものになることが期待される。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:50 | パーマリンク

NO・1082バベルの塔を建てたがる湾岸の金持ちたち

 アラビア半島の北東端に位置する、アラブ首長国連邦の一角をなす、ドバイという首長国がある。この国は早い段階で、、石油資源が枯渇し、以来、石油に代わる経済繁栄策をとってきた。そのひとつが、ドバイをアラブ湾岸諸国の中で、外国人ビジネスマンにとって、最も快適なビジネス環境を提供することであった。
 世界中の航空会社が、乗り入れ可能になるように、空港の拡張と整備を進め、インターネットや電話の施設を整え、世界中の料理が楽しめる、高級レストランも用意した。そして、豪華なホテルとオフィスビルも建設した。
 結果的に、ドバイは湾岸諸国のなかでは、例外的にアルコールの入手も含む、あらゆる自由が享受できる国として、世界中の企業が支店を開設することとなった。
 そうした流れの中で、、ドバイは420メートルを越えるビルを建設しているが、新たに、これよりも高い、1000メートル以上の高さのビルが計画されている。地震の無い国だからできることであろうが、日本では建設許可が下りないのではないだろうか。
 このドバイの超高層ビルは、当然のことながら、世界中の関心を集めることとなった。そのことが、ドバイに世界中の企業を誘致させる、起爆剤になるということであろう。そうであるとすれば、この高層ビル建設は、ドバイにとって大成功ということであろう。
 ドバイの成功を横目で見ていた、サウジアラビアのワリード・ビン・タラール王子が、このドバイの1000メートルのビルよりも高い、1000メートル以上のビルを、同国の紅海に面した港町、ジェッダに建設することを発表した。
 そのビルの高さは、約1050メートル(3281フィート)だということだ。建設費は267億ドル、ビルの総床面積は、、2300万平方メートルだということだ。このビルには住宅、ホテル、オフィスなどが入る予定になっている。
 こうした湾岸諸国の、高層ビル建設競走を見ていると、バベルの塔の話を思い出す。高いバベルの塔を建設することにより、人々の言葉がばらばらになり、お互いに相手の話している言葉を、、理解できなくなったという話だ。
 高層ビルの建築には、膨大な数の労働者が必要になる。彼らは低賃金で仕事に従事し、高い場所から落下して、死亡する者も数も少なくなかろう。彼ら犠牲者に対する保障は、きわめて小額であることが想像できる。
 以前に報告したように、ドバイでは不審な事故が起こったり、ストが行われたりしているが、そのストの中心となった人たちは、、強制送還されているのだ。自国には仕事が無いことから、ほとんどの外人出稼ぎ者たちは、過酷な労働、危険な作業に、、何の不満も口にすることなしに、従事しているのだ。
 バベルの塔と同じように、湾岸諸国での高層ビル建築が、やがてはその国の社会内部に、不安定な状況を、、生んでいくものと思われる。自国民の何倍何十倍もの、外国人労働者の人口、彼らが不満を爆発させたとき、自国民の力だけでは、コントロールできなくなるのではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 17:24 | パーマリンク

2008年10月12日

NO・1081イスラエル・イラクの壁は安全を守ってくれるのか

 現代の万里の長城とも呼べる、長大な壁がイスラエルでも、イラクでも建設されている。その建設の目的は述べるまでも無い、民族と民族、宗派と宗派を分離することによって、攻撃を止め安全を確保するというものだ。
 イスラエルではイスラエル領土と、ヨルダン川西岸地区との間に建設され、パレスチナのテロリストのイスラエルへの侵攻を、阻止するということだ。イラクでは首都バグダッドに、スンニー派、シーア派を区別する壁が設けられている。それ以前には、グリーン・ゾーンなる、特権階級とアメリカ人を守るための、壁画建設されてもいる。
 しかし、実際にはこれらの壁が、どれだけ安全に役立つか疑問だ。安全確保というよりも、失業対策のためのものではないか、と思えてならない。イスラエルではアメリカをはじめとする、在外のユダヤ人からの寄付や、アメリカ政府からの援助で、この壁が建設されている。イラクの場合は言うまでも無く、イラクの石油収入が、この壁の建設に使われているのであろう。
 一部ではこの壁によって、テロが起こる頻度が低下したといわれているが、それはあくまでも短期的な効果しか、もたらさないのではないかと思われる。
 実際にガザからは、相変わらずテロ攻撃が行われ、しかもその攻撃兵器は、次第に本格的なものに、改良されつつある。ヨルダン川西岸からのテロ攻撃が少ないのは、必死にマハムード・アッバース議長の率いるファタハが 取りしまっているからではないか。
 このイスラエルが設置した安全のための壁は、爆弾を仕掛ければ、たちまちにして崩壊することは、誰が考えてもわかろう。つまり、パレスチナ側は当分壁を、放置しているに過ぎないのではないか。壁があるからテロ攻撃が少なくなったのではなくて、ほかの理由によって、攻撃が少なくなっているのであろう。
 イラクの首都バグダッドの壁の場合も同様に、スンニー派もシーア派もアルカーイダさえも、テロを実行する場所を、変更しているに過ぎないのではないか。現に最近イラクでは、低下していたテロの発生件数が増えているようだ。しかも、その発生場所は、バグダッドの中心部ではなく、郊外や他の都市に移っているに過ぎない。
 イラクに駐留するアメリカ軍が懸念しているのは、イラク国民の不満が、アルカーイダのリクルートに対して、イラクの若者たちが応え、今後、テロ攻撃が活発化することだ。その理由は失業問題もあるが、アメリカ軍が長期間イラクにとどまり、その状態を恒久化する(イラクを植民地化する)ことに対する反発からだ。
 安全のための壁は、イスラエルでもイラクでも、一時的な効果しか生まないだろう。その後には、逆効果が生まれてくるのではないか。そして、最終的に安全の壁は、人間のおろかさの象徴として、世界遺産に登録されるのではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:23 | パーマリンク

2008年10月11日

NO・1080アッカで起こった暴動の意味

 東地中海の海岸に位置る、イスラエル古い街アッカは、聖書に出てくる街であり、ナポレオンのエジプト遠征の舞台ともなった場所だ。街の中には古い建物が、いまだに残っていることもあり、世界遺産のひとつに登録されている。
 この街にはイスラエルの拡張の中で、例外的に多くのパレスチナ人が、1948年に起こった、第一次中東戦争の後も残った。その結果、いまではアッカの住民人口の三分の一にあたる、5万人のアラブ系イスラエル人が居住している。(アラブ系イスラエル人とは、パレスチナ人でイスラエル国籍を有する者)
 言ってみれば、アッカはイスラエル国内にあって、アラブ系イスラエル国民が、ひとつの街の中で、イスラエル人とうまく共生しているところの、典型的な例となっていたわけだ。
 しかし、そのアッカで10月10日に暴動が発生している。ことの起こりは、アラブ系イスラエル人のジャマール・ファルーク青年が、イスラエルの祭日であるヨム・キプールに、車で騒音を立てたことに腹を立てた、イスラエル人が襲いかかったことに始まったものだ。
 些細なことから始まったとはいえ、この暴動は規模が大きくなったために、アッカの警察200人では静止できず、他の場所から、500人の警察が援軍として、暴動鎮圧に参加することとなった。
 今回アッカで起こった暴動は、イスラエル政府が最近主張し始めている、「ひとつの国家によるパレスチナ問題の解決」という考え方を、真っ向から否定するものになりかねない性質のものだ。
 つまり、イスラエル政府はパレスチナ・イスラエルを二つの土地に分け、イスラエルとパレスチナという二つの国家にすることを断念し、イスラエル国家の中に二つの地域を設けることを、主張し始めているのだ。
 これまでは二つの国家建設による、パレスチナ問題の解決を考えていたが、その考え方には無理があるとして、イスラエルというひとつの国家の中に、イスラエル人とパレスチナ人が共生する方法を、考え始めているのだ。
 アッカで起こった今回の暴動は、特別な政治的意味合いを、持っていなかったとされているが、アラブ系イスラエル国民のアッカ住民の中には、あるいはイスラエルというひとつの国が最終的なパレスチナ問題の解決方法となることに対する、反発があったのではないか。
 ツビ・リブニ外相(首相になる予定)は、アッカの暴動に際して、「イスラエル人にもアラブ系イスラエル人にも得にならない暴動はやめろ、」と呼びかけたが、彼女らが考える、新たなパレスチナ問題の解決策は、早くもツビ・リブニ首相誕生前に、厳しい反発をアラブ系イスラエル国民から、受けたということではないか。
 以前から言われてきたように、イスラエルにとっての最大の問題は、人口時限爆弾なのかもしれない。現在では、イスラエル国民人口500万人のうち、その五分の一に当たる100万人が、正式にイスラエル国民となっており、彼らはイスラエル国民としての、すべての権利を有するアラブ系イスラエル人となっているのだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 22:22 | パーマリンク

2008年10月10日

NO・1079バルザーニ甥PKK攻撃はトルコ・クルド関係破壊目的

 イラク北部のクルド地区を統括する、バルザーニ議長の甥である、ネチルバン・バルザーニ氏は、先週起こったPKKによる、トルコのアクトトン軍基地攻撃について、クルドとトルコとの関係を、悪化させるためのものだと非難した。
 このPKKの攻撃にどう対応するか、トルコの議会や内閣で、現在激論が交わされている。トルコ国民や政府の要人とすれば、PKKの攻撃に対し、沈黙を守ることは、耐えられないことであろう。
 しかし、だからと言って、トルコがPKKの拠点に対し、報復攻撃を加えたとしても、それは十分な成果を挙げることはできまい。そうなればトルイコは、イラク領土内のクルド地区に対する攻撃を、考えざるを得ないということになるが、欧米諸国をそれを、快く認めるとは考えにくい。
 トルコ政府はクルド自治政府側に対して、安全地帯の構築を打診しているようだが、クルド自治政府はそれが期待するような、効果を生むとは考えておらず、賛成しかねるという立場を、トルコ政府側に伝えたようだ。
 結果的に、トルコ政府は国民の怒りの高まりと、国際政治のはざまで、対応に苦慮することになろう。
 実はこうした状況は、アメリカにとって、好都合なのではないかと思われる。アメリカ軍はイラク国内で、一応の成果をあげ、大部分の地域の治安権を、イラク軍や警察に、移譲することができるようになった。
 その結果を受け、アメリカ政府はイラク駐留のアメリカ軍を、アフガニスタンに移駐させたい、と考えているようだ。しかし、アメリカ軍が大規模に、イラクからアフガニスタンに移駐することになれば、せっかく安定化の方向に向かい始めているイラクが、再度混乱状態に陥っていくことになろう。
 そこで、撤退するアメリカ軍の数に、ほぼ匹敵する数のトルコ軍が、イラクに進駐してくれることを、アメリカは期待しているものと思われる。今回、PKKが行ったトルコ軍への攻撃の背景には、そうしたことも潜んでいるのではないか、と考えられるのだが、、。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:31 | パーマリンク

2008年10月09日

NO・1078シリア軍がレバノン国境に増強

 シリア軍が、レバノン国境に増強している、という情報が流れている。具体的には、シリアとの国境に近い、アッカ地区の近くだということだ。
 そのシリア軍の数は、およそ1万人だと言われているが、増派の理由について、シリア側は密輸の取り締まりと、テロ防止だと説明している。
シリアの首都ダマスカスでは、最近爆弾テロが発生し、多数の死傷者を出しており、この犯行者について、シリア政府はイスラミストによるものだった、と説明している。
 しかし、レバノン側は、今度のシリア軍の動きについて、二つの不安を抱いているようだ。反シリアの急先鋒ともいえる、サアード・ハリーリ議員(彼の父親故ハリーリ首相は、シリアによって暗殺された、とみなされている)は、シリアが再度、レバノンを軍事的に制圧することを考えての、動きだと非難している。
そして、レバノン側のもう一つの懸念は、シリアがイスラム原理主義者を、レバノンに潜入させることを、目論んでいるのではないか、ということだ。事実、レバノン国境に近いシリア北部には、イスラム原理主義者が、相当数集まっているようだ。
彼らイスラム原理主義者たちは、シリアがイラクに潜入することを、手びきしたイスラム原理主義者たちであり、その後、イラクでの戦闘が不利になったために、シリアに戻り、シリア側が国外に追放したい、と思っている人たちではないか、と思われる。
シリア側は今回の軍の移動について、国連の決議に基づくものであり、なんら非合法なものではないと説明している。
シリア軍の移動について、今のところイスラエル側が、特別な関心を寄せていないことが救いであろうか。シリア軍の動きが、単にレバノンに対するものであれば、国際的な危機につながる不安はないからだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 13:52 | パーマリンク

2008年10月07日

NO・1077世界では諸悪の根源はCIAという話がぶり返してきている

 私の学生時代だから、1960年代の終わりごろ、大学はどこも学生運動で休講の連続、社会的にも左傾化のためか、反米色が強かった。大学教授や文化人の多くが、左翼的な考えを持ち、アメリカを賞賛するような人たちは、徹底的に糾弾されていた。
 時代が変わったのだろうか、最近では急先鋒だった当時の左翼文化人が、いつの間にか、ナショナリズム高揚の旗頭に変身している。そのことを攻めはしないのだが、そうした御仁たちに言いたいのは、またぞろ「諸悪の根源はCIA」という考えが、世界的に広まりつつあるということだ。
 アラブ諸国、アフリカ諸国、中南米諸国では、反米色がこのところ強まっている。日本でも若者の間で、左翼文学本が売れているというが、若者は時代の変化に敏感なのかもしれない。
 湾岸のある国の文化財団の代表団が来日し、夕食をともにしたのだが、彼らは口をそろえてアメリカ批判をしていた。湾岸各国の株価が、どれだけ下落しているのかについて、そのうちの一人は、具体的な数字を挙げて説明してくれた。
 彼らのうちの一人が私に、日本の総理大臣が短期間で辞任するのはなぜか、という質問を向けたので、アメリカの要求が厳しすぎることも、早期辞任の原因のひとつだろうと答えた。
 湾岸から来た友人は「アメリカは勝手に戦争して、その代金を日本や湾岸諸国に要求してくる。こんなのにいちいち応えなければならないというのは、実に悔しい限りだ、と語っていた。その意見を聞いてふと、日本の官僚や政治家には、悔しいと思っている人たちがいるのだろうか、という疑問が浮かんだ。
 先日、日本で行われた総理総裁選挙の候補者たちに、フィナンシャル・タイムズ紙が、現在の金融危機に、どう対応すればいいか、という質問を向けたところ、ほとんどの総理候補者が、「日本にある虎の子を突っ込めばいい」と答えたというのだ。そのことは日本では報道されていないのだが、こんな大事なニュースを伝えない、日本のマスコミの姿勢にも、問題があると思えてならない。
 そうした雰囲気の中で、イエメンの大統領は真正面から、イスラエルのモサドを、イエメンで起こったテロの、背後にいると非難した。もちろん、モサドの背後にはCIAがいるということであろうが。
 このイエメンの大統領の発言が事実かどうかについては、現段階では判断できないが、少なくとも、小国とはいえ一国の大統領の発言だけに、重く受け止める必要があろう。ソマリア沖で起こっている海賊行為について、外国の中東専門家のなかには、「アメリカが背後にいる」という主張をする人が少なくない。
 最近では、9・11事件はアメリカの内部犯行という見方が、欧州やロシアでは、相当広がってきているということだ。
 世界経済、金融ががたがたになっているいまだからこそ、中心になってその建て直しに取り組む国が必要なのだが、アメリカの信用がこうまでも落ち込むと、主導国家は消えてしまうことになり、経済の低迷期は、長引くことが予想される。財団のアメリカ専門家の意見によれば、たぶん、アメリカが世界経済の牽引車に復帰できるのは、10年後ではないかということだ。
 その期間には、戦争が起こり、経済破綻による難民、飢餓といった問題も起ころう。その悲惨な状況に日本人も加わることになりそうだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:56 | パーマリンク

NO・1076アルカーイダは敗北したのか?

 アメリカのニューヨークの中心に位置する、世界貿易センタービルが、アルカーイダによって攻撃されたのは、2001年9月11日のことだった。
 その後まもなく、アメリカはアルカーイダとその同胞である、アフガニスタンのタリバン政府に対して爆撃を敢行し、ついにはタリバン政権を消滅させることに成功した。
 アメリカのブッシュ大統領は、9月11日の世界貿易センターに対するテロの後、世界でテロリストを相手に、100年戦争を展開すると息巻いた。しかし、今日なお、ブッシュ大統領の最大の敵とされるアルカーイダは、生き残っている。
 あのテロ事件から5年が経過した今、欧米諸国では、アルカーイダが結果的にどうなっているのかが、議論の的になっている。先日も、BBCが特別番組を組み、アラブ各国のオピニオン・リーダーを集めて、電話による討論会を開催していた。
 アルカーイダの実態について、知る国や機関は、非常に限られているが、パキスタンの情報部(ISI)は、最もアルカーイダの実態を把握している、数少ない機関であろう。なんとならば、ISIはアフガニスタンの各組織に支援を送りながら、これまでコントロールしてきたからだ。
 そして、アフガニスタンのタリバンやアルカーイダのメンバーは、現在、主にアフガニスタンとパキスタンの国境地帯の部族地域(トライバル・エリア)に潜伏しているからだ。
 そのISIが、最近になってアルカーイダの残党の数は、80人程度だと語っている。しかし、これはあくまでも、トライバル・エリアに残存する、アルカーイダという意味であって、すでにアフガニスタンから国外に出た、アルカーイダのメンバーの数を、含んでいるのではない。
 アルカーイダのメンバーは今、ヨルダンやシリア、レバノンなどで、リクルート活動を行い、新しいアルカーイダ・メンバーを、イラクに送り込んでいるということだ。イラクの治安担当者は、アルカーイダの活動が沈静化したように思えるのは、大都市部から追い出した結果であり、彼らはイラクの地方に、散っただけだということだ。
 同時にアルジェリアを基盤に、北アフリカ諸国でも、アルカーイダは拡大しつつある。チュニジア、モロッコ、ソマリアでも、アルカーイダと関係を持つ組織が、次々と誕生している。
 サウジアラビア国内では、これまで外人住宅地区(コンパウンド)に対する攻撃や、警察幹部暗殺、市街戦といったことが、アルカーイダによって、実行されている。
 治安の専門家の間からは、アルカーイダがイランと連携をするようなことになれば、危険度は高まることから、何らかのイランとの妥協が、必要だという考えが出てきている。
 世界のイスラム教徒の中には、キリスト教徒によって占領される、あるいはキリスト教徒の支配下にある、イスラム諸国の体制を、打倒するのはイスラム教徒の義務だ、と考える者が少なくない現状では、アルカーイダのリクルートは、まだ成功の余地が残されている、ということではないか。
 アルカーイダによる、西側諸国への次なる攻撃が行われるとすれば、それは、大量破壊兵器を使ったものになるだろう、という予測がなされている。それは、アメリカのワシントンであるかもしれないし、イギリスのロンドンになるかもしれないということだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:42 | パーマリンク

2008年10月06日

NO・1075トルコ・PKK武力衝突の疑問点

 先週の金曜日、つまり10月3日に、トルコとイラクの国境に近い、トルコ側の軍事基地アクトトン基地が、イラク北部からPKKによって攻撃され、その後戦闘となり、トルコ軍兵士15人が死亡し、PKK側は23人が死亡するという、最近では希な、大規模な軍事衝突が起こった。
 この軍事衝突が起こったアクトトン基地は、これまで5回に渡って大規模な攻撃を受け、合計で45人のトルコ兵が死亡したといわれている。いったい、なぜこの基地だけがこうも多数の犠牲者を出し、何度も攻繰り返し撃されているのか、という疑問がトルコ国内では起こっている。
 そして、もうひとつの疑問は、戦闘が起こって7時間の間、なぜ空軍や援軍が駆けつけなかったのか、という疑問が広がっている。
 最初の疑問については、すでに軍幹部の汚職による、基地の手抜き工事の結果ではないか、という疑問が出ているし、第二の疑問については、エルゲネコンがそのように、軍内部にはらたきかけた結果ではないか、という疑問が起こっている。
 もうひとつの疑問は、この戦闘の発端は、PKKによって起こったのか、あるいはアメリカ軍もしくは、イラク軍によるものではなのかという点だ。このことに関する十分な情報は、トルコ国内で現段階では、止められているようだ。
 一部のトルコ人の間では、アメリカ・イラク・トルコとの関係を、壊そうとする勢力によるのではないかという疑問が広がっている。この推測が成立するとすれば、それはエルゲネコンによる、という推測が信憑性をもってこよう。
 ある友人は、今後イスラエルで大きなテロが起こるのではないか。もしそうであれば、トルコ・イスラエル・イラク関係に、相互不信が生まれ、東地中海沿岸諸国関係は、不安定化するだろう、と語っていた。そこまでは推測したくはないが、今回起こった武力衝突で、トルコ軍がばらばらな動きをしたことは事実であり、AKPが主導するトルコ政府を、窮地に立たせようとする勢力が、後ろで動いていた可能性はあろう。
 トルコの友人たちは、今回の15人のトルコ兵の葬儀が終わり少し時間がたったら、今回の武力衝突の真相が、少しずつ明らかにされていこう、と語っていた。あまり手の込んだ工作の、結果でないことを祈る。トルコ国内が不安定化すれば、すべての中東諸国が、不安定化することになるからだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:00 | パーマリンク

NO・1074イランの発言に変化ウラン濃縮継続

 数日前、イランのIAEA大使である、アリー・アスガル・スルターニ氏が「イランに対して、燃料棒の提供があるのであれば、ウランの濃縮を停止する」といった内容の発言をしたため、世界の関心を呼んだ。
 しかし、その後、イランのモッタキ外相は、どのような状況でも、ウランの濃縮を継続する、と前言を撤回する内容の発言をしている。
、モッタキ外相が、自国によるウランの濃縮にこだわるのは、過去にアメリカがイランに対して、核施設の建設を合意していたにもかかわらず(1979年イランがパーレビ国王の時代)、それを実施しなかったことから、不信感を抱いている結果と思われる。
 この強気の発言の裏には、グルジア問題が世界的な関心を集め、イランに対する対応に、緊張感が欠けてきたこともあるのではないか。
 イランに言わせれば、アメリカはインドに対して、核技術の面で協力しているが、これはダブル・スタンダードの対応だということになる。
 イランの強気の発言が、イランとアメリカとの間に不測の事態を、生まないことを祈るのみだ。
 

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:48 | パーマリンク

2008年10月05日

NO・1073イランのあからさまなサウジアラビア非難

 イランが英語でニュースを流している、PTV(プレス・テレビ)というサイトがある。そのサイトが最近になって、連続してサウジアラビアの非難を行っている。
 ひとつは「アラブの国がイスラエルのモサドと協力している」というタイトルのニュースであり、もうひとつは「サウジアラビア人がレバノンのサラフィー支援」というものだ。
 最初の「アラブの国がイスラエルのモサドと協力している」というニュースを読んでみると、シリアで起こった、レバノンのヘズブラ司令官イマード・ムグニエのダマスカスでの暗殺には、サウジアラビアが情報を提供したとなっている。
 また、シリアの軍司令官ムハンマド・スレイマンの暗殺の場合も、同様にサウジアラビアが情報提供し、モサドが犯行に及んだというのだ。イランのPTVは、このサウジアラビア側のモサドへの協力を推進している人物は、元駐米大使で現在サウジアラビアの治安の責任者である、バンダル王子だというのだ。
 もうひとつのニュース「「サウジアラビア人がレバノンのサラフィー支援」というニュースの中では、レバノンのアラウイー派のリーダーであるラファアト・イードの発言として、サウジアラビアが北レバノンの、サラフィー・グループ(イスラム原理主義グループ)を支援していた、と語ったというものだ。
 レバノンのトリポリ市で起こった軍用バスの爆破事件では、24人が犠牲になったが、これはサラフィーグ・ループによる犯行だったというのだ。この爆破テロは、サウジアラビアのあるグループによって支援され実行された、とレバノンの統一党党首ウイアーム・ワッハーブ氏が語っている。
 このサラフィー・グループのレバノン入りを、ハリーリ議員(暗殺されたハリーリ元首相の子息)に強く求めたのはサウジアラビアのスルタン国防相だとも伝えている。ハリーリ議員はこの要請を拒否したということだ。このサラフィー・グループがレバノン国内で、アラウイー派に対するテロを行い、地域の安定を壊しているということだ。
 イランがサウジアラビアに対して、連続してこうも非難を行っている裏には、サウジアラビアが来るイラン攻撃で、アメリカ軍の最大の攻撃基地になる可能性がある、とイラン側が考えているからではないか。アメリカがアフガニスタンに攻撃を仕掛ける前に、サウジアラビアは自国内からの、アフガニスタン攻撃を許可しなかった。
 このため、アメリカ軍はサウジアラビアからカタールに、軍の本拠地を移動したといわれているが、やはり本格的な巨大な基地は、小国カタールでは無理であり、国土面積の広大な、サウジアラビアのなかにいまだにある、ということではないのか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 12:16 | パーマリンク

2008年10月04日

NO.1072カルザイ大統領タリバンに政府参加呼びかけの意味するところ

 アフガニスタンのカルザイ大統領が、反政府のタリバン組織のリーダである、ムッラー・オマルに対し、政府への参加を求めた。
 ムッラーオ・マルは、1996年から2001年まで、アフガニスタンの大統領だった人物であった、が同年に起こったアメリカ軍による攻撃で政権は打倒されたが、その後姿を消し、タリバンのアメリカに対する抵抗闘争を、指揮し続けてきた人物だ。
 述べるまでも無く、ムッラー・オマルの認識では、カルザイ大統領は明確なアメリカの傀儡であり、「アフガニスタンの敵」ということになるのだが、それにもかかわらず、カルザイ大統領が彼に対し、政府への参加を呼びかけたのには、大きな意味がある。
 このカルザイ大統領による、ムッラー・オマルに対する、政府参加の呼びかけについて、カルザイ大統領はアフガニスタンの安定に必要だと語り、世界に対しては自分が説明し、ムッラー・オマルの身の安全は、自分が保証するとも語っている
 しかし、話はまったく別だろう。アフガニスタンに対するアメリカの戦いのうえで、最も協力的だったパキスタンのムシャッラフ大統領は、結果的にアメリカに捨てられることになり、大統領の地位から引き摺り下ろされた。
 カルザイ大統領はその顛末を、すべて見ており、彼自身も、近い将来同じ運命になる、と判断したのであろう。その場合、ムシャッラフ大統領とカルザイ大統領との違いは、ムシャッラフ大統領が軍の出身であることから、ある程度身の安全を確保することができたが、カルザイ大統領の場合は、完全なアメリカの傀儡として、アフガニスタンの大統領に就任していることから、アフガニスタン国民の間に、味方は一人もいないということだ。
 したがって、カルザイ大統領は単に、大統領職から引き摺り下ろされるだけではなく、アフガニスタンの国民によって、虐殺される可能性が非常に高いということだ。
 そのことを恐れての妥協提案であろうが、ムッラー・オマルはカルザイ大統領の提案を、素直に受け入れるとはとても思えない。受け入れるとすれば、カルザイ大統領が大統領の座、をムッラー・オマルに引き渡すことが最低限の条件となろう。
 カルザイ大統領による、今回のムッラー・オマルに対する提案は、アメリカ政府に対するする信頼を、完全に失ったことの証明であろう。つまり、アメリカ政府はカルザイという傀儡を立てることによって、見せかけの民主国家樹立を唱えたが、完全に失敗したというとではないか。
 すでに、イギリスはアフガニスタン作戦の失敗を認めている。そのことは、アフガニスタン駐在のイギリス大使の発言から明らかになっている。彼は「われわれはアフガニスタンで米国を支援する以外にない」しかし「われわれが関与を望んでいるのは勝つ戦略であって、負ける戦略ではないということを伝えるべきだ」と在アフガニスタン・フランス大使に語ったということだ。
 当然のこととして、このアフガニスタンの大きな変化は、イスラム世界全体に、強烈な影響を与えるのではないか。つまり、徹底したアメリカに対する武力による抵抗は、結果的に、アメリカに敗北をもたらすということだ。
 このアフガニスタンの抵抗闘争の勝利は、今後アラブのイラクやパレスチナ、シリア、そしてイランのアメリカに対する強気の抵抗闘争を、刺激するものと思われるし、アメリカ支持のアラブの政権は今後、非常に難しい立場に追い込まれていく、可能性が高くなるということでもあろう。
 BBCの10月3日の夜のアラビア語放送では、アラブ各国の知識人による、今回のカルザイ大統領の、ムッラー・オマルに対する妥協提案についての番組が組まれたが、アラブの知識人の誰もが、口をそろえてアメリカの敗北を強調している。
 今回のカルザイ大統領による、タリバンのリーダー・ムッラー・オマルに対する妥協が、アメリカの作戦に従ったものであれば、話は全く別であろうが、どうもそうは取り難いような気がする。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 01:04 | パーマリンク

2008年10月03日

NO・1071ロシア海軍地中海で訓練後にベネズエラへ

 来月半ばに、ロシア海軍艦隊が地中海海域で、軍事訓練を行うことになった。この折に、ロシア艦隊はリビアのトリポリと、シリアを訪問することになっているようだ。(シリア訪問については、タルトース港なのか、ラタキア港なのか、今のところ明らかになっていない)
 リビアはライス国務長官の訪問以来、アメリカとの関係を強化しているが、その後のロシア海軍のリビア訪問は、いわば示威行為ともいえる訪問、政治的な意図があるものとして、受け止めるべきであろう。
 同時に、ロシア海軍艦隊はシリアも訪問することになっているが、これもシリアのトルコを仲介とする、イスラエルとの和平交渉の継続、それを支持するアメリカとシリアの動きを、受けての行動ではないか。
 グルジアでの戦闘後、ロシアはアメリカの裏庭にあたる、ベネズエラとの海軍の軍事訓練を行うことも、明らかなアメリカに対する、ロシアの新しい出方を示すものであろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:45 | パーマリンク

2008年10月02日

NO・1070一難去ってまた一難のイラク情勢

イラク国内の治安状況が、だいぶ改善されたという情報を、アメリカは流し続けてきていたが、ここにきてどうもそうではない、新たな緊張の不安要素が、出てきたことを認め始めた。
 それは述べるまでもない、イラク国民の間の、金に繋がる利害の対立が原因だ。イラク北部は主に、クルド人が居住しており、1991年に起こった湾岸戦争後は、アメリカの保護の下に、ある種の独立地域のような状態にあった。
 クルド地区はこのため、他のイラクの地域とは異なり、戦後の復興発展がめざましかった。トルコの企業が大挙して進出し、道路から住宅、公共施設、それに大型店舗まで建設されたのだ。
 クルド地区はマスウード・バルザーニが議長を務め、彼自身はクルド共和国の大統領に、なったような気分でいたのであろう。しかし、イラク中央政府は彼に対し、クルド地区の分離独立を認めてはいない。
 問題は、クルド地区に埋蔵されている、石油資源の配分が、いまだに決着がついていないことにある。述べるまでもなく、クルド地区側はより多くの取り分を主張している。
 そうしたなかで、イラク中央政府が、国軍を大量にクルド地区に、送り込む方向で動き始めたのだ。そのことは、クルド自治政府側には受け入れられないことだとして、イラク中央政府とクルド自治政府との間に、緊張状態が生まれてきているということだ。
 なかでも、ハナキン地域への、イラク中央政府軍の進出は、認められないとし、クルド自治政府は戦闘も辞さない、という強気の対応を取り始めている。
当然のこととして、イラクのスンニー派国民や、シーア派国民と彼らを代表する政府関係者は、クルド自治政府に対して、イラク中央政府の権限が、十分に及ぶことを望んでいる。
クルド地区の自治権、クルド地区の石油資源などをめぐり、今後、軍事緊張が高まっていく可能性が、非常に高いということだ。そうなれば、大統領であるタラバーニ氏が、クルド人であること、首相のマリキー氏がシーア派であることから、イラク中央政府の分裂もありうるということになる。
アメリカ政府は、どこまでこのイラクの国内問題を、スムーズにリードしていけるのか。もし、それに失敗すれば、イラク戦争後いままでの苦労が、水泡に帰することになるのだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:02 | パーマリンク

NO・1069アラブ人ドクターのオルメルト発言に対する意見

 今日の午後に、日本に滞在しているアラブ人ドクターが、私のオフィスを訪ねてきた。財団のスタッフの紹介で来たのだが、初対面もかかわらず、お互いにざっくばらんな話ができた。それは多分にイスラム教の断食明けのお祭り、イードルフィトルの期間であったことも影響していよう。
 私がアラビア語で「イードルフィトル・ムバーラク=イードのお祭りおめでとう」と声をかけると、彼も同じように答えてきた。それ以後は、なんとなく会話が英語でも日本語でもない、アラビア語に定着した。
 会話は最初のうちは、アラブの政治を中心にした、冗談の応酬だった。彼も私に負けずに、ポリテイカル・ジョークを飛ばしてくる。そうこうしているうちに、会話は次第に私のペースで進んで行った。自慢ではないが、アラブ人に本音に近いことを、冗談の中で話させるのは、私が長年の経験から、培って得た財産なのだ。
 話題は冗談から、今日の午前中に私が書いた、原稿の内容に移っていった。つまり、イスラエルのオルメルト首相が、ヨルダン川西岸地区を、パレスチナ側にほぼ全面的に返還すべきだ、という意見を述べたことに移っていった。
 彼は勿論、このオルメルト首相の発言を知っていたが、私とは異なる見解を語ってくれた。
 曰く「イスラエルは今まで何度と無く、和平の妥協を示すそぶりをしてきた。パレスチナの幹部たちはその度にだまされ、裏切られてきた。パレスチナ人はおろかで、人が良すぎるのかもしれない。今回の場合もイスラエル側には、オルメルト首相だけではなく、それなりの計算があってのことだと思う。」と語りおよそ以下のような説明をしてくれた。
 イスラエルのオルメルト首相が、ヨルダン川西岸地区の、全面的なパレスチナ側への委譲をすると言う発言は、シリアとの和平を念頭においてのものであろうというのだ。アラブ諸国では自国民が政府に対して不満を抱いている場合、パレスチナ問題に対する、政府の対応が悪いという言い方で、政府非難をすることから、国民のガス抜きには、パレスチナ支持の発言をすることが、最も簡単なアラブ政府の共通した手法だというのだ。
 今回のオルメルト首相のパレスチナに対する妥協案は、そのことを念頭においてのものだったというのだ。つまり、アラブ諸国政府は自国民に対して「イスラエルのオルメルト首相がそこまで妥協したのだから、アラブ側、パレスチナ側に有利になったのだから、合意に向けた交渉をすべきだ。」という国民に対する説明が、成立するというのだ。
 オルメルト首相は、シリアのバッシャール・アサド大統領が、イスラエルとの和平を推進し易くするために、発言したのだということだ。バッシャール・アサド大統領は、このオルメルト首相のパレスチナ側に対する、妥協の発言を受けることによって、シリア国民に対し、イスラエルとの和平に一歩前進しやすくなったといういことだ。
 確かにその通りかもしれないし、私が考えているように、イスラエルはいま、過去に経験をしたことがなかったような、窮地に立たされていることからの、発言であったとも考えられる。
 問題は、アラブ人の訪問者の、オルメルト発言に対する受け止め方が、彼だけのものではなく、多くのアラブ知識人の共通した認識だということだ。つまり、イスラエルがどう方針を変更しようとしても、アラブ側はそれを、なかなか「イスラエルの方針が変更されたのだ」とは受け止めてくれないということだ。
 過去に大きな戦争を4度も経験してきている、イスラエルとアラブの敵意は、それだけ強いということだ。この凍った関係を融解するには、しかるべきギャランターが必要になってこよう。さすがに初対面の相手に対しては、トルコを仲介者、ギャランターにしてはどうか、という提案まではしなかったが、いまの段階で考えてみると、それしか道はないのではないかと思われた。
 考えようによっては、私と同じように平和ボケしている日本こそが、この凍りついたアラブとイスラエルとの敵対関係を、終わらせることのできる、数少ない国なのかもしれない。勿論、それは資金援助だけしか知らない、外務省にには所詮無理な役割であろうが。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 01:27 | パーマリンク

2008年10月01日

NO・1068オルメルト首相はなぜ占領地の返還をいま呼びかけるのか

 最近、何度となく、イスラエルの首相オルメルト氏が、占領地の返還を、イスラエル国民に訴えるようになった。
 それは何故なのであろうか、といぶかっている人は少なくあるまい。私もその一人なのだが、イスラエルが多分に、金融ビジネスである種の限界点に達し、同時に、世界のニュースをコントロールし難くなってきたことによるのではないか。
 イスラエルというよりも、ユダヤ人と言ったほうがいいだろうが、これまで彼らは世界の金融を支配し、巨額な資金を元に、世界の報道を牛耳っているといわれてきた。確かに、イスラエル問題やユダヤ問題に関する情報は、これらのユダヤ人によって、報道が操作されてきていた部分はあろう。
 しかし、世界が突入し始めた金融恐慌を前に、報道を牛耳る資金に問題が発生してきているのではないか。同時に、インターネッの普及が世界中の人々に、自分の通信社を持たせるようになった。つまり、誰もが自由に何も規制も無く、情報、主張、デマ、宣伝を世界中に送ることが、できるようになったのだ。
 このインターネット効果は、すでに何度と無くこの欄でも書いてきたが、1998年にアフリカのケニヤとタンザニアの、アメリカ大使館爆破事件が起こった後、私はインターネットと衛星放送と銀行のオンライン・システムが、世界中のイスラム・テロリストを結び付けるし、世界中のイスラム教徒を、バーチャルな国家の国民にすることの、危険性を訴えた。しかし、私の警告に対して、日本では何の反応も起こらなかった。 
 いま、イスラエルはその三つの新しい道具によって、危険の淵に立たされているということだ。アメリカはサブ・プライム・ショック以来、イスラエルの面倒を十分に見るだけの、余裕はなくなっているのかもしれない。
 それとは反対に、第三世界の国々が、独自の主張を強化し始めており、反米国家がアメリカの内庭の国々で、一斉に広がってもいる。
 イランのアハマドネジャド大統領は、「イスラエル国家が地上から消え去ろう。」と警告をしてもいる。こうした状況を冷静に判断すると、アハマド・ネジャド大統領が警告するように、イスラエル国家が滅亡するとはあるまいが、非常に苦しい立場に追い込まれていく、可能性は高いといえよう。
 イスラエル政府は、ブッシュ大統領がイスラエルを訪問した今年の5月に、イランに対する軍事攻撃を主張し、アメリカンの支援を求めたが、ブッシュ大統領はそれを拒否した、という情報が最近になって伝えられている。
 こうした種々の状況を考えて見ると、オルメルト首相はできるだけ、イスラエルが世界で孤立しない前に、しかも、軍事的優位を保っているうちに、アラブとの和平を確立したい、と思っているのであろう。その判断は間違っていないと思う。
 一部には、オルメルト首相は辞任したから、そのようなことが言えるのだ、という人たちもいるが、そうではない。彼は辞任するとは言ったが、次の首相が決定するまでは、イスラエルの首相であり続けるのだ。
 オルメルト首相の発言は、イスラエル国家設立の趣旨とは、完全に異なるものであり、歴代のイスラエル首相や、1967年に起こった第三次中東戦争の英雄、モシェ・ダヤン将軍らが主張していたイスラエルとは、全く異なるイスラエルを、イスラエル国民と世界のユダヤ人に対して、語りかけているのだ。
 イスラエルにとって、状況はそれだけ厳しいということだ。そのイスラエルの苦境を、どれだけ日本人の中東専門家諸氏は、実感しているのだろうか。日本政府と中東専門家諸氏は、反イスラエルの主張を展開するだけではなく、いまこそオルメルト首相の呼びかけを、支持すべきではないのか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:57 | パーマリンク

 
利用条件プライバシーポリシー
東京財団とはトピックス研究員紹介奨学事業研究事業イベント情報公募・お知らせお問い合わせ
copyright(c)2006TheTokyoFoundation, The Tokyo Foundation bears no responsibility for information derived from links to remote sources.