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2010年03月31日

NO・1532イラクの選挙の裏で旧サダム派が動く

 イラクの選挙が終わり、大筋が明らかになってきた。アッラーウイ氏が勝利し、マリキー氏が現役の首相であったにもかかわらず敗北した。マリキー氏の政党は、2人の当選者数の差で、アッラーウイ氏の政党に敗北した。
 しかし、だからと言って今後、アッラーウイ氏の政党がすんなり、他党との連立に成功し、組閣が出来るのか否かは、不明な部分が残る。マリキー氏にはまだまだ、勝利の可能性が、残されているということだ。
 今回の選挙では世俗派と宗教派という形に、結果的には色分けされている。つまり、アッラーウイ氏率いる政党は世俗派であり、マリキー氏の世俗派をうたってはいたが、マリキー氏の政党は現実には、宗教色をぬぐい切れず、しかも、シーア主要各派との連携に失敗した。
 したがって、マリキー氏が今後勝利しようと考えれば、当然この宗教組織との関係を修復する必要があろう。サドル師、ハキーム師らの率いる、シーア派のグループがそれだ。
 世俗色を強く打ち出したアッラーウイ氏は、イラク国内で今後、どう自派の力を強めていくのであろうか。また、旧バアス党との関係を、どう考えているのであろうか、ということが気にかかる。
 選挙期間中には、旧バアス党関係者の候補が、多数立候補を認められなかったということがあったが、今後は彼らにも、選挙に参加する自由を認めていかなければなるまい。そのことにアッラーウイ氏は、反対しないのではないかと思われる。
 リビアのシルテでアラブ首脳会議が開催されたが、そこには意外なことに旧バアス党幹部が招かれていた。もちろん、オブザーバーであって、正式な参加者ではなかったろう。
 このバアス党の現在トップに位置している、サダム体制時のナンバー2であるイッザト・ドーリー氏は、アラブ諸国がイラクのミリシアを、支援すべきだと主張している。
 そのことは、今回のアラブ首脳会議に、旧バアスの代表が招待されたことと併せて考えると、アラブの一部の国々は旧バアス党に対し、何らかの支援援助を行っているということではないか。なかでも、今回の会議に旧バアス党員を招待したリビアは、バアス党支援をしているか、今後する意思がある、ということではないか。
 その旧バアス党が今後、例えばアッラーウイ政権が出来上がった段階で、どう影響を及ぼしていくのか、アッラーウイ氏はどう旧バアス党員に、対応していくのか、興味深いところではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 13:58 | パーマリンク

NO・1531アラブ首脳会議後のパレスチナの反応

 カダフィ大佐率いるリビアのシルテで、アラブ首脳会議が開催されたが、その後に幾つかの問題が浮上してきている。
 第一に挙げられるべきことは、このアラブ首脳会議の結論に、パレスチナのハマースがクレームをつけたことだ。ハマースのスポークスマンであるファウズィ・バルホウム氏は、「単なる時間の無駄であって、何等得るものがなかった。」と酷評している。
 こうした結論が出てくるのは、当然のことであろう。アラブは一つという夢想の時代は、終わりをとうの昔に告げたはずだ。したがって、アラブ各国は自国の利益を、最優先しているのだ。パレスチナの解放のために、戦争も辞さないと考えたのは、エジプトの故サダト大統領が最後であろう。
 そもそも、パレスチナ人たちは他力本願では、何も出てこないことを、十分知っているわけだから、自分たちの知恵と勇気と犠牲で、パレスチナの独立達成を、考えなければならないのではないか。
 アラブ世界と、西側世界でパレスチナの権利パレスチナの悲劇を、どんなに訴えても、もはやそれに敏感に応える状況にはない。パレスチナの自治政府幹部が巨万の富を有していることや、パレスチナ自治政府内部に汚職が蔓延していることは、世界中の国々が知っている。
 今回のアラブ首脳会議でも、5億ドルの援助が決められたようだが、それは確実に、パレスチナ自治政府幹部の懐に入るのであって、パレスチナ庶民の生活を助けるものにはならない。
 アラブ諸国がパレスチナ支援に資金を出すのは、パレスチナ人大衆を助けることが目的ではなく、パレスチナ自治政府が自国民の反政府活動を、助長することを防ぎたいからであろう。
アラブ世界ではエルサレム問題があることから、パレスチナ問題は大衆が正面切って、政府を批判する好材料になっているからだ。かつて1970年代に、湾岸諸国はこぞってPLO (パレスチナ解放機構)に援助を送ったが、あの時も自国でテロ活動をされることを、避けるためでしかなかったのだ。
パレスチナ各組織が自分たちの犠牲を考えずに、パレスチナの解放をアラブや世界の責務と叫んでも、もう耳を貸す人たちはいないのではないか。今こそパレスチナ人は、自分たちの犠牲と努力を真剣に考え、解放の実現を目指すべきであろう。
パレスチナ人たちが雄弁にパレスチナの悲劇を語り、建国の権利を主張しても、それは何も生み出しはすまい。他をではなく自己批判すべき時であろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 13:08 | パーマリンク

2010年03月29日

NO・1530ソロモンの神殿は再建されるのか?

 最近、イスラエルがソロモンの神殿を、再建するという話が、しきりに話題に上るようになってきている。もし、ソロモンの神殿が建設されるとすれば、それは第三神殿ということになる。
 述べるまでも無く、ソロモンの神殿は旧エルサレムの、テンプル・マウント(アルアクサモスクがあるところ)に建設されることになる。そして、その前兆とも言える同地への、シナゴーグ(ユダヤ教の教会)の建設が、だいぶ明確になってきている。
 このシナゴーグは、1967年に起こった第三次中東戦争まで存在していた、フルワ・シナゴーグだが、シナゴーグの再建そのものには、あまり特別な意味はないだろう、と我々には思えるのだが。
 しかし、ユダヤ教のラビ(聖職者)の語るところによれば、このシナゴーグが再建された後で、ソロモンの神殿が再建され、世界は終末戦争に突入するというのだ。そして、それがイエスキリストの再臨に、つながるということだ。
 このような話を聞いても、宗教的におおらかな日本人には、ピンとこないだろうが、ユダヤ教徒やイスラム教徒、キリスト教徒の間では、大問題になっているのだ。もちろん、ユダヤ教徒はシナゴーグの再建を支持し、キリスト教徒もイエス・キリストの再臨となれば、支持することになる。受け手の側のイスラム教徒も、真剣にこの可能性を検討することになろう。
 実際に、イランのアヤトラ・シラーズイ師は、「イスラエルがテンプル・マウントにシナゴーグを建設し、次いでアルアクサ・モスクを破壊し、ソロモンの神殿を再建する。」と語り、イスラム世界全体に対し、警告を発している。
 このアヤトラ・シラーズイ師の警告通り、今エルサレムでは、ソロモンの神殿再建図が、バスの横腹に貼り付けられ、再建を急ぐべきだという宣伝が、行われている。その宣伝をしているのは、ユダヤ教のラビであるシャロム・ドヴ・ヴォルプ氏や、活動家のバルーチ・マルゼル氏だということだ。
 彼らは「アルアクサ・モスクや岩のドームは、テンプル・マウントに存在すべきではない。」と語っている。しかも、「ソロモンの神殿の再建は、来年に始まらなければならない。」とも主張しているのだ。
 こうした動きが現実のものになってくれば、アラブ諸国はもちろんのこと、イスラム世界全体が、激しく反発するだろう。西側イスラエル寄りで知られる、ヨルダンの国王も遂に、腰を上げざるを得なくなったようで、エルサレムを守ると語っている。
 聖域、神聖なモスクをめぐっては、アラブ諸国もイスラム教徒の穏健派も、口をつぐんでいるわけにはいくまい。権力者がこの問題を放置すれば、大衆は確実に立ち上がり、政府打倒を叫ぼう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:04 | パーマリンク

2010年03月28日

NO・1529A・ムーサ・アラブ連盟事務総長の発言の重要性

 イスラエルのエルサレムポスト紙は、「われわれは和平プロセスの失敗に備えなければならない」というタイトルの記事を掲載した。その記事は、アラブ連盟事務総長のアムル・ムーサ氏が、極め意味慎重な発言をしたことを報じている。受け取り様によっては、アラブ諸国に対し、イスラエルとの戦争を覚悟しろ、という内容になるものだと私は受け止めた。
 リビアの中間に位置する、地中海に面した街シルテで、アラブ首脳会議が開催されたが、その席上でアムル・ムーサ事務総長は、イスラエルの東エルサレムにおける、入植地建設という侵略行為を、激しく非難したのだ。
 彼は「われわれは和平プロセスが、完全に失敗した場合に、備えなければならない、イスラエルに対し、立ち上がる時が来た。われわれは別の選択を、見つけなければならない。なぜならば状況はターニング・ポイントに到達しているからだ。」といった内容の発言をしたのだ。
 これを受けて、トルコのエルドアン首相も「イスラエルによるエルサレムの平和と、ムスリムの聖域に対する侵犯は、受け入れられないものだ。」とイスラエルを非難し、「イスラエルの東西エルサレムを、自国の首都としようとする行為を、狂気に満ちたものであり、東エルサレムにおける建設行為は、全く正当性を持たないものだ。」とも非難している。
 アムル・ムーサ事務総長はイランの核について、話し合う必要があるとし、同時にイスラエルの核も、討議の対象だと主張し続けてきている。アラブ各国首脳も一様に、中東地域を非核地域にすべきだと主張している。
 このアムル・ムーサ事務総長の発言内容を、日本はどの程度重要に、受け止めるだろうか。そして、それと共に、トルコのエルドアン首相が同じような、厳しいイスラエル批判をしたことを、どう日本人は受け止めるだろうか。
 少なくとも、このアムル・ムーサ事務総長の発言を取り上げたイスラエルは、その内容が「イスラエルとの戦争」という、最悪の選択をアラブ各国首脳に、迫ったものだ、と受け止めたのではないか。
 いま、アラブ各国ばかりではなく、イスラム諸国全体が、イスラエルによるエルサレムの聖域に、シナゴーグを建設することは、アルアクサ・モスクの破壊に繋がることである。そしてそれは、ユダヤの第三神殿の建設に繋がるものだという受け止め方をし、イスラエルに対する激しい反対行動を、展開し始めていることを、見逃すわけには行くまい。
 そうした時期であるだけに、今回のアムル・ムーサ事務総長の発言は、極めて重要かつ危険性を含んでいる、と受け止めるのが妥当であろう。
イスラエルはアメリカの和平仲介に対しても、バイデン副大統領のイスラエル訪問時に、東エルサレムでの入植地住宅建設を、あてつけのように発表し、アメリカとの関係を極めて悪いものにしている。つまり、イスラエルはいま明確に、しかも意図的にアラブに対し、挑戦状を突きつけているということだ。 
そして、そのイスラエルの立場は、アメリカをしても阻止できない、ということを世界全体に対して、明確に示したということであろう。それにアムル・ムーサ事務総長が、明確に応えたということではないのか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:19 | パーマリンク

2010年03月27日

NO・1528アッラーウイの選挙勝利はイラクのイラン離れか?

 イラク選挙の結果がほぼ出た。それによればアッラーウイ氏派イラーキーヤが91議席、マリキー氏派法治国家連合が89議席を獲得したようだ。(アッラーウイ氏派が92議席、マリキー氏派が91議席という報道もある)
 この結果を見て、イスラエルのエルサレムポスト紙は、イラクのイラン離れと報じている。実際はどうなのだろうか。
 いまの段階では、アッラーウイ氏の派閥がマリキー氏の派閥よりも、多数を獲得したことは事実だが、だからといって、アッラーウイ氏が首相に就任する、とは断定できない。
 マリキー氏派は票の再計算を、要求していることがその理由の一つだ。加えて、首相が選ばれるまでには、まだまだ幾つものプロセスがある。議会議長が選出され、次いで大統領、副大統領が選出され、首相が選ばれるという過程が待ち受けている。
 その段階で、アッラーウイ氏の派閥もマリキー氏の派閥も、過半数を取っているわけではないから、当然、連立を他党と組まなければならない。そうなると、意外な組み合わせが、生まれる可能性があるのだ。
 そこで大きな影響を及ぼすであろうと思われるのは、前に書いた通り、シーア派の重鎮である、サドル師やハキーム師だ。イラク国民の60パーセントを占める、シーア派を代表する二人が、どう動くかによって状況は一変しよう。
 あえて、アッラーウイ氏の首相就任の可能性について述べれば、イラク国民はアッラーウイ氏という、豪腕な政治家を選択したということであろうか。彼は首相就任時、強力な治安対策を実施し、テロリストや反対派を押さえつけ、一定の安定を生み出していたからだ。
 もう一つの要素は、アメリカがどのような人物が、イラクの首相に就任することを希望するか、という問題があろう。マリキー氏はアメリカにとって、好都合な政治家であり続けたが、後期に入り次第に、イラクの国益を前面に出してきた、という経緯がある。それでもマリキー氏はアメリカにとって、好都合な人物であったのではないかと思われる。
 しかし、マリキー氏はイラン対応をめぐっては、イラク国内に建設されたアメリカ軍基地を、イラン攻撃には使用させないことを明言していた。つまり、マリキー氏はアメリカがイラク国内に建設した、幾つもの巨大な空軍基地を、イラン攻撃やイランへの軍事的圧力をかける上で、何の価値も有さない状態にしてしまったのだ。
 アッラーウイ氏が首相に就任した場合、彼はイラク国内のアメリカ軍の軍事基地を、イランに対する恫喝や攻撃に使用させるのだろうか。そうであるとすれば、アッラーウイ氏が首相に就任する可能性はあろう。またそうであるとすれば、アメリカが何らかの選挙結果と集票への関与をした、可能性があるかもしれない。
 最近になって、ジェゴガルシア島にあるアメリカ軍基地には、武器弾薬が相当量陸揚げされている、という情報があるし、サウジアラビアがイスラエルのイラン攻撃に際して、自国の領空通過を認めたという情報も流れている。
 イラクの今回の選挙は、イランに対するアメリカの対応がらみの、可能性があるのかもしれないとかんぐりたくなるが、それはかんぐりすぎだろうか。そうであって欲しいものだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 11:24 | パーマリンク

NO・1527サウジがイスラエルのイラン攻撃に領空通過許可?

 ドイツのシュピーゲル紙の報道が発信源で、いまサウジアラビアがイスラエルのイラン空爆を、支援するという情報が流れている。もし、これが事実であるとするならば、政治的に大きな変化が、サウジアラビア国内の権力者集団のなかで、起こっているということであろう。
 サウジアラビアはこれまで、アラブ・イスラムの指導的な立場の国の一つに、内外から認められてきていた。イランはシーア派とはいえ、イスラム教徒の国であり、サウジアラビアがもし、イスラエルのイラン空爆を認めるとなれば、それはイスラム教徒に対する、大きな裏切り行為ということになろう。
 このサウジアラビアがイスラエルのイラン空爆に際し、自国の領空をイスラエルの爆撃機が飛行することを、認めるという情報は事実なのだろうか。
敢えてこの情報を肯定するとすれば、次のような理由が挙げられるのではないか。サウジアラビアのワハビー派は、イランのシーア派をイスラム教の一宗派と認めながらも、あくまでも亜流であり正当なものではない、と考えているということが原因だと言えよう。
もう一つ考えられる理由は、イランがアラブ諸国の過激派を支援し、シーア派を支援して、イランの勢力圏を広げようとしていることと、それに伴ってスンニー派のアラブ諸国のなかのシーア派国民が、反政府運動を活発に行うようになってきているからだ。サウジアラビアのシーア派も例外ではない。
サウジアラビアのペルシャ湾岸サイドに位置する、アルカティーフ地域はシーア派が居住する地域だが、そこでは過去に何度も政府に対する、スンニー派国民と同等の権利を求めるデモが起こったし、それをサウジアラビア政府は力で抑えてきている。
サウジアラビアが恐れるように、レバノンではシーア派のヘズブラが、イスラエルとの間で戦争をし、精神的に勝利したために、アラブ各国の不満分子は、ヘズブラを高く評価するようになった。そして、レバノン国内でもヘズブラの政治的力は、イスラエルとの戦争のあと強化されている。
述べるまでも無く、ヘズブラはイランから物心両面で、支援を受けてきている。加えて、シリアのアサド政権はアラウイ派であることから、ヘズブラやイランとの関係が強い。したがって、レバノン・シリア・イランとの間には、強固な信頼関係が出来上がっている。
イラクでもマリキー首相に見るように、シーア派の人物が首相の座にあり、今回の選挙で例えマリキー首相がアッラーウイ氏に敗北して、首相職がマリキー氏からアッラーウイ氏に交替しても、アッラーウイ氏はシーア派教徒であり、スンニー派のイラク人が首相職に就任することは無いだろう。
つまり、たとえアッラーウイ氏が首相になっても、イランとの一定の良好な関係は、維持されるだろうということだ。もちろん、アッラーウイ氏は首相になった場合、彼は世俗的な政治をうたい文句にしていることから、それほど緊密な関係にはなるまい。
イラクでは首相職ではないが、絶対的な影響力を持つ、二人のシーア派代表者がいる。それはサドル師とハキーム師だが、両者ともにイランとの関係は極めて良好だ。この二人がマリキー氏あるいは、アッラーウイ氏のいずれかが首相に就任した場合、イランとの関係でイラク政府に対し、一定の影響力を行使することになろう。
これらのアラブ諸国以外に、湾岸諸国には多くのシーア派国民がいることから、彼らの動きも非常に気になるところであろう。バハレーン、カタール、クウエイト、アラブ首長国連邦のシャルジャなどは、シーア派の割合が非常に高い。もちろん、それらのいずれの国でも、スンニー派の割合は実際より多く、公表されていると思われる。
こうして考えてみると、サウジアラビアがイスラエルのイラン空爆に、便宜を図る可能性は無いとはいえない。イランと関係が深いイラクについては、これまでアメリカがイスラエル爆撃機の、イラク領空通過を認めていない。それはアメリカにとって、イラク駐留アメリカ軍の安全を確保する上で、極めて不都合であり、危険な状況を生み出す、可能性が高いからであろう。
さて、サウジアラビアは過去に、イスラエル爆撃機の領空通過を、認めたことがあるのだろうか。実は黙認という形で、それを許したことはある。イスラエルがイラクのオシラク原発(タンムーズ原発)を空爆した時、イスラエルの爆撃機はヨルダンとサウジアラビアの領空を、通過して作戦を実行している。
そうであるとすれば、サウジアラビアがイスラエルのイラン攻撃に際して、黙認する可能性はある、ということではないのか。
しかし、ドイツのシュピーゲル紙は極めてイスラエル寄りであることから、アドバル―ンを挙げたのであろう、という見方をする専門家もいる。願わくば、この情報は単なるアドバルーンであって欲しいものだ。イスラム教徒がイスラム教徒の虐殺に加担することは、極めて不幸なことだし、イスラエルによるイラン攻撃が起これば、完全な攻撃をしない限り、世界経済を破壊する危険性が高いだけに、あってはならないことだと思われる。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:33 | パーマリンク

2010年03月26日

帰国しました

3月25日朝インドネシアとマレーシア視察出張から帰国しました。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 00:10 | パーマリンク

2010年03月19日

海外出張のお知らせ

         海外出張のお知らせ
 3月20日から3月25日まで外国に出張します。
 その間は中東TODAY を休ませていただきます。
 ご了承ください。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 22:27 | パーマリンク

NO・1526エルサレムのシナゴーグ建設は騒ぐ話ではない

 パレスチナとイスラエルとが、ともに自領地と主張して、問題が解決していないエルサレムのなかでも、もっともセンシティブな旧エルサレムに関して、いまイスラム世界全体に及ぶような、大問題が起こっている。
 それは、旧エルサレムのなかのある、アクサモスクがある地域に、イスラエルがシナゴーグ(ユダヤ教の教会)を建設する、と言い出したためだ。一見、奢れる者の力による、イスラム領域への侵犯のように思えるのだが、実態はどうなのであろうか。
 述べるまでも無く、この情報が流れた時、最初にパレスチナ人が反対行動に出た。以来、毎日のようにパレスチナ人たちは、投石でイスラエルに対し、抗議のデモを繰り返している。そのため、既に何十人もの逮捕者と、けが人が出ている。
 このニュースを見たエジプトやシリア、レバノンなどでは、抗議デモが起こり、パレスチナ人への連帯の意思が叫ばれている。これらの国以外にも、イランやトルコでも、同様のパレスチナ支持、反イスラエルの抗議行動が、起こっている。
 しかし、この話をよく調べてみると、そもそも、1948年の第一次中東戦争までは、そこにシナゴーグがあったのだということだ。つまり、第一次中東戦争が起こる前に、シナゴーグがそこに建設された。その建設が許されていたということだ。
 しかし、第一次中東戦争が起こり、シナゴーグは破壊され、今日に至ったということのようだ。そうであるとすれば、そのシナゴーグの建設は、オスマン帝国に認められたことなのか、あるいはイギリスが統治している時代に、許可されて建てられたものかの、いずれかだということだ。
 イギリスの許可の下に建設されたのであれば、いま抗議することにも、多少の理屈が成り立つかもしれないが、オスマン帝国の時代の許可によるものであったとすれば、それは別であろう。オスマン帝国は述べるまでも無く、イスラムの国家であったからだ。
 情報の伝わり方によって、ニュアンスは大きく異なり、場合によっては、それが過剰な反応を生み出し、流血から殺人に至る、ということがよくある。今回のアクサモスクのそばに、シナゴーグが再建されるという話も、それに近いのではないか。
もう一つの情報である「イスラエルはアクサモスクを破壊する意向だ。」ということと混同し、あたかも、アクサモスクが破壊され、その跡地にシナゴーグが再建されるような話として、イスラム教徒たちには、受け止められているのではないか。
情報によれば、イスラエルがシナゴーグを建設しようとしている候補地は、アクサモスクから2−300メートル離れた場所らしい。それならば、反対する必要はないのではないか、と思われるのだが。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:36 | パーマリンク

2010年03月18日

NO・1525エルドアン首相アルメニア人10万人追放と脅す

 トルコのエルドアン首相が、トルコに居住するアルメニア人非合法滞在者10万人を、追放すると脅しをかけた。これは、アメリカとスウェーデンの議会が、拘束力を持たないが、トルコのアルメニア人虐殺を、非難する決議を出したからだ。
 アメリカとスウェーデン政府は、この決議を拘束力の無いものに抑え込んではいるが、トルコにとっては極めて不愉快なものだった。トルコ政府はアルメニア政府との間で、気の遠くなるような辛抱強い交渉を続け、正常化への道を大きく開くことが出来たのは、昨年のことだった。
 多くの問題はまだ残っているものの、トルコとアルメニアは国境を開放し、通商を自由化する方向になっている。その最中に、アメリカとスウェーデンが、当事者であるトルコとアルメニアとの外交努力を、潰す動きをしたのだ。
 トルコにしてみれば、この問題を1日も早く片付けて、アルメニアと正常な関係になりたい、と望んでいる。自国の暗い歴史を書き変えたいのであろうし、経済関係の拡大も望んでいよう。
他方、アルメニアは周辺を外国に囲まれ、海へのアクセスがない国だけに、何とか外国への出口を得たい、ということであろう。そうなると、歴史的に種々の問題はあったものの、トルコがその相手としては、最も好都合なのであろう。 
アゼルバイジャンとは領土問題を抱えているし、イランとはあまり関係を持ちたくない、というのが本音であろう。
しかし、そうしたトルコ・アルメニア両当事国の思惑とは異なり、アメリカのアルメニア人団体が、相当に活発なロビー活動を展開し、今回の決議が出されたのであろう。アルメニアの活動家たちにしてみれば、生活がかかっているだけに、必死であろう。
トルコには現在、17万人のアルメニア人が居住しており、そのうち7万人はトルコ国籍を有し、10万人は非合法居住者だ。1988年のアルメニアの地震以来、トルコ領内に非合法に入り込み、生活しているということだ。
与党AKPの幹部は、これまでもこの話は出たが、実際にアルメニア人を追放していない、と語っている。エルドアン首相はアメリカとウェーデンに対し、ある種の警告を発したということであろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:58 | パーマリンク

NO・1524ドバイの保守化が進む

 アラブア半島の北東端に位置する、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイは、アラビア半島にあって、唯一例外的な欧米的な街として、高い評価を受けていた。したがって、ドバイには世界中の企業が支店を置き、あるいは本店を移していた。
 酒が飲め、世界の料理が楽しめ、砂漠を楽しむことができ、マリン・スポーツも楽しめた。暑い国でありながら、規模こそ小さいがスキー場も存在し、スケートリンクもある。
 そして、極め付きは公ではないが、性産業も存在していた。表向きはあくまでも客同士のことであり、管理をしているのではない、ということだった。このため、欧米諸国だけではなく、湾岸各国からも、観光客がドバイに向いていたのだ。
 しかし、サブプライムに始まった、アメリカの景気後退の後、ドバイは経済危機に見舞われている。それまで計画段階で売れ、建てれば売れ、買えば儲かると言われていた不動産ビジネスは、急激に冷え込み、多くの投資家や企業家が不渡りで逮捕される前に、身一つでドバイから逃げ出した。
 ドバイは悪霊にでもとり付かれたのか、ビジネス・チャンスの場というイメージが、徹底的に破壊された後、安全な場所というイメージも、壊れてしまった。それはパレスチナのハマース組織の幹部、マブフーフの暗殺によってだった。この事件の後も、幾つかの危険な情報が流れてもいる。
 そして多分、最後であろう決定的なダメージは、性的な問題に対して、ドバイが異常なまでに、厳しくなってきている、ということだ。公衆の面前で、キスをしたカップルは逮捕されるし、携帯でメールをやり取りしていたカップルは、同じように逮捕され裁判に賭けられて、受刑が決まっている。
 こうした悪循環が起こるまでのドバイは、罪を犯さない限り、個人の自由を大幅に認める、という風潮があったのではなかったか。今回の携帯電話を使ったメールの問題は、航空会社のフライト・アテンダントの既婚女性と、キャビン・クルーの男性、インド人同士の問題だった。
 裁判は女性の夫が訴え出たことから始まり、メールを調べ判決が出たわけだが、そこには具体的な性的関係を示す証拠はなく、6ヶ月の受刑と国外追放だったが、受刑期間が短縮され、国外追放は免れたということのようだ。
 こうしたアダルテイな問題に対する、敏感な反応はあたかも、ドバイが他の湾岸諸国と同じような、保守的な国になっていくことを、示しているのではないかという、暗い予測をさせる。それがドバイにとって、正しいのか正しくないのかは今後分かろう。所詮、ドバイが進めてきた開発は、イギリス退役大佐の思いつきであり、価値観だったところに、無理があったのではないか。


投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:04 | パーマリンク

2010年03月17日

NO・1523イランの核兵器は単なる噂とエルドアン

 イランが核兵器開発に向っているということが、アメリカによって強く非難され、イスラエルは自国の安全を考え、アメリカの支援がなくとも、イランの核施設を空爆する、と息巻いている。
 アメリカとイスラエルの勢いに押されてか、EU諸国もイランに対する新たな制裁を、早急に果たすべきだと言いだした。しかも、国連安保理で新たな制裁への合意が、生まれないのであれば、EU単独ででも、実施すべきだとまで言い出している。
 そうした雰囲気の中で、こうした世界の流れとは全く別の意見を、トルコのエルドアン首相が言いだした。彼曰く「イランの核は噂にすぎない、中東の国々は何処も、核兵器を持つことを望んではいない。」というのだ。
 しかも、エルドアン首相は、イランの平和的核開発が問題であるのに、何故イスラエルの核兵器は問題ではないのか、とも発言しているのだ。まさに、核心を突いた発言といえよう。
 そのうえで、エルドアン首相は、20パーセントに濃縮されたウラニュームと、低濃縮のイランの製造したウラニュームとの交換場所に、トルコがなることも、提案している
 一見、唐突とも言える、エルドアン首相の今回の発言は、実はイランに妥協の窓を開いた、ということではないかと思われる。こぶしを振り上げて、引っ込みがつかなくなった、アメリカやヨーロッパ諸国、イスラエルに対して、トルコがイランのメンツを保ちながら、妥協できる余地を、作ったのではないか。
 問題は、これにイランがどう応えるか、ということであろう。アハマド・ネジャド大統領やハメネイ師が、エルドアン首相の発言を受け止め、それなりの妥協の姿勢を示し始めれば、状況は急激に好転する可能性もあろう。
 エルドアン首相の発言で、いまのイラン政府の最高権力者群に、それだけの腹がある男がいるか否かが、試されることになったのではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:43 | パーマリンク

2010年03月16日

NO・1522マリキー首相銃撃の噂が流れる

 イラク選挙が済み、各地で票の計算が進んでいる。どうやら、マリキー首相が対抗馬のアッラーウイ元首相を、リードしているようだ。
 それはそれで結構なのだが、とんでもないニュースがいま、イラク国内では飛び交っている。マリキー首相が銃撃を受け、近くの病院に担ぎ込まれたというのだ。この噂にはいろいろな情報が張り付いて、どんどん大きくなっているようだ。
 マリキー首相に近い筋の情報としては、マリキー首相は胃のデキモノを除去する手術を、行ったと語っている。またもう一人のマリキー首相に近い人物は、デキモノは手にできていたもので、それを除去する手術を行ったのだ、と説明している。
 しかし、もしデキモノの手術であれば、イラク政府の高官が行く、グリーン・ゾーンの病院に行くはずなのに、彼は別の一般の病院に、向かったというのだ。それは銃撃を受け、緊急の措置が必要だったからだ、という説明を行っている事情通もいる。
 加えて、マリキー首相を支持している、ある部族長は「何マリキー首相が撃たれたって!!」と叫び頭を抱え込んでしまったとも伝えられている。一説によると、マリキー首相が撃たれた個所は、足だということだ。
 選挙結果の発表の遅延が、何かが起こっている、という推測を拡大し、今回の銃撃暗殺未遂という、ニュース(噂)を生み出しているのかも知れない。
 いずれにしろ、もし暗殺未遂で銃撃を受けたのであれば、近く彼が公の場に顔を出すであろうから、事実が明らかになろう。選挙が接戦であるだけに、噂と事実が大量に飛び交っているようだ。
 参考までに、マリキー首相にとって、必ずしもいい関係ではない、サウジアラビアの新聞、シャルク・ル・アウサトは暗殺未遂事件を、全面的に否定している。


投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:12 | パーマリンク

2010年03月15日

NO・1521エジプト政府エルバラダイ対策に野党の議席増

 エジプトの次期の大統領選挙をめぐり、IAEAの事務局長だったムハンマド・エルバラダイ氏が、挑戦するのではないか、という憶測から、与党も対策を考え始めているようだ。
 エジプトで発行されている「マスリ・アルヨウム=エジプト・トデイ」誌は、与党による野党各党に対する説得工作が、始まったことを伝えている。それによれば、正式に政党として認められている、代表的な野党3党であるワフド党、タガンムウ党、ナセル党に対し、与党は議席の追加配分を、持ちかけているということだ。
 ワフド党には23議席を、タガンムウ党には20議席、ナセル党には20議席を配分するという提案が、なされたということだ。これら3党以外の、弱小政党に対しては、5議席が配分される見通しのようだ。
 ムスリム同胞団は野党最大勢力なのだが、法律で政治活動は禁止ということになっているために、今回の場合は対象外になってしまう、ということであろう。そこで、エルバラダイ氏がムスリム同胞団と組んで、選挙に打って出るかというと、それは可能性が低いのではないか。
 野党各党は今回の選挙をめぐって、政府から種々の要求を引きだせる、チャンスとみたのであろうか。政党助成金を引き上げるように、という要請が出されているし、議員の活動助成金も、増額の要求が出始めている。
 そうだとすれば、エルバラダイ氏が野党連合を結成して、その結成された組織から代表として、大統領の選挙に挑むことは、ほとんど不可能に近いということではないか
 エジプト政府はムバーラク大統領、あるいは彼の子息ガマール氏の擁立に、有力な対抗馬が立つことの無いよう、1年以上前の今の段階から、周到に手を打ち始めているということであろう。
 ムハンマド・エルバラダイ氏には、たとえ立候補できたとしても、ムバーラク大統領や彼の子息だけではなく、有力な対抗馬がいることも事実だ。以前に大統領選挙立候補を噂された後、エジプト外相の立場から、アラブ連盟の事務総長に就任した、アムル・ムーサ氏がいる。
 それ以外にも、もしエジプトが選挙をめぐって、混乱をきたすようなことになれば、エジプト軍は黙ってはいまい。軍が最大の勢力であることはナセルの革命当時から今日に至っても、何の変化も無いということだ。タンターウイ国防大臣は現段階では、なりを潜めているが、エジプト政局が混とんとした場合には、何らかの動きに出ることもあろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:34 | パーマリンク

2010年03月14日

NO・1520トルコの不動産外人客には法が不整備で難

 長い冬の季節を抱えている、北ヨーロッパの国々の人にとっても、比較的温暖とされる、中部ヨーロッパの国々の人たちにとっても、地中海沿岸は夢のような場所であろう。
 もう5-6年前の話だが、友人のトルコ人たちに、2キロ程度の幅で地中海やマルマラ海、エーゲ海の海岸の土地を買っておくべきだ、とアドバイスしたことがある。述べるまでも無く、この地域の土地はヨーロッパ人を始めとした、世界中の人たちにとって、最高のリゾート地だからだ。
 しかし、ほとんどのトルコ人は、私のアドバイス通りには動かなかった。ヨーロッパの人たちにとって、なかでも北ヨーロッパの人たちにとって、地中海沿岸の土地が、どれほど魅力的なものであるのかを、あまり理解できなかったのであろう。
 その後、しばらく時間が経過すると、トルコ政府が地中海沿岸を始めとした海岸線の土地の、リゾート開発を始めるというニュースが流れた。そのとき私は得意になって「やっとトルコ政府が、自国の領土の何処が価値あるのかを理解した。」とトルコ人の友人たちに語ったものだ。
 しかし、ここに来て海岸線の土地の価値は、トルコ政府も外国人も認めたものの、法整備が不十分なためにトラブルが多発し、不動産人気にかげりが生じ始めている、というニュースが流れてきた。
 不動産を購入した外国人が、その所有権を登記する上で、幾つもの問題が発生しているというのだ。不動産を購入して代金を支払っても、その不動産が購入者の名義に、なかなかならないというのだ。それどころか、不登記ということで、購入したはずの土地が凍結され、建物を建てることも、土地の整備をすることも、不可能になっているケースが、多いということだ。
 これはトルコに限ったことではないのだが、海岸線の土地は軍部から見れば、重要な戦略地であり、リゾートの乱開発を放置しておくわけには、行かないの。土地の登記には軍の許可が必要であったり、地方自治体の許可が必要であったりと、面倒な仕組みになっているらしい。
 いずれにしろ、そのことがいまトルコ国内で、話題になり始めたということは、トルコ政府による法改正が、間も無く始まるということではないか。トルコの沿岸部は実に魅力的なところだ。私ですら金と時間さえあれば、そこに家を買って老後を過ごしたい、と夢見ることがしばしばだ。トルコは野菜、果物が豊富でしかも安い。人は人情深く、気候温暖とくれば、ヨーロッパの年金生活者にとっては、老後の居住地としては申し分なかろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 21:02 | パーマリンク

NO・1519アラブから追放されるパレスチナ人

 ヨルダンで2700人を超えるパレスチナ人が、市民権を失った話は、大分前に書いた。その結果、彼らにはいろいろな困難が発生している。
たとえば、大学生は市民権を失ったことで、外国人扱いとなり、授業料が高くなるのだ。結果的にその学生は、卒業までの学費が続かず、学業半ばで退学せざるを得なくなる。
各種専門技術や資格を持つ者も、市民権を失うと、専門家の組合員である資格を失い、結果的に働けなくなるというのだ。たとえば薬剤師は、ヨルダンの薬剤師組合の会員でなければ、薬剤師として勤務することが、不可能になるのだ。それは、他の専門的な職業に従事している人にも、当てはまることだ。
こうした市民権を失うことで起こる問題は、数知れないほどあるのではないか。その一つの解消法は、イスラエルに住民登録をすることであろうが、この場合にも、問題が発生している。
イスラエルとPA(パレスチナ自治体)との間には、住民登録に関する、共同の委員会があるのだが、過去数年間この委員会が機能しておらず、ヨルダン居住のパレスチナ人が、ヨルダンでの市民権を失った後に、イスラエル側から住民資格をとろうとしても、取れないということだ。
結果的に、ヨルダンの市民権を失ったパレスチナ人たちは、ヨルダンでも非合法な滞在者扱いとされ、イスラエルからも住民許可が下りないために、ヨルダン川西岸地区にも戻れない、という状況に板ばさみになっている。
そうした流れのなかで最近、エジプト政府もパレスチナ人締め出しの動きに出ている。これはガザのパレスチナ人が主な対象となっているが、イスラエルとの戦いで負傷したり、病気になった者が、エジプトで治療を受けていたが、最近になって、エジプトから追い出しを受けているのだ。
一部では、エジプト政府のハマースとファタハとの仲介で、ハマースが頑なにファタハとの合意を拒否していることが、原因だと言われている。エジプト政府はこれまで、ハマースとファタハ間の、和解の仲介努力を続けてきたが、ハマース側はこれを受け入れていない。
大分前の話になるが、リビアからもパレスチナ人が、大量に追放されたことがある。アラブは一つというが、実際にはパレスチナ人に対する対応は、各国の国内事情を強く受けているのだ。
ヨルダンではヨルダン人の人口に比べ、既にパレスチナ人の人口が、大幅に上回っている。そのことが近い将来に、ヨルダン国内で問題となることが、懸念されている。
イスラエルの厳しいパレスチナ人に対する、締め付けと追い出しが、パレスチナ人の立場を追い詰めており、アラブ各国もパレスチナ人に対する、冷遇の度を高めている。パレスチナ人がどの段階で暴発するのか、という新たな懸念が関係各国の間で、広がり始めているのではないか。それはイスラエルにもパレスチナの周辺諸国にも、共通した不安なのだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 20:22 | パーマリンク

2010年03月12日

NO・1518アハマド・ネジャド大統領のイスラエル非難

 イランのアハマド・ネジャド大統領がイスラエルに対して、敵対的発言を繰り返してきたことは、誰もが知るところだ。
 その上に輪をかけたような発言が、彼の口から最近飛び出している。アハマド・ネジャド大統領は、イスラエルにはどのようなことをしても、将来がないのだ、と断言している。
彼はイスラエルについて「世界で最も嫌われる体制」と語り、「欧米諸国にとって最早、イスラエルは有益ではない存在になっている。」とも語っている。したがって、欧米諸国はいま、イスラエルへの支援を継続することが、得策か否かを、考慮し始めているとも語った。
そのようなイスラエルという体制は、新たな地域戦争を起こしても、その国家的生命を、長らえることはできない、とも語っている。例えば、イスラエルがレバノンやシリアに対する、新たな戦争を起こしたとしても、ほんの少しだけ寿命を延ばすにとどまるだろう、という見通しだ。
ここで考えなければならないのは、アマハド、・ネジャド大統領が何故ここまで、イスラエルを目の敵にするのだろうかという点だ。イランにとって一番の懸念は、アメリカによる軍事攻撃ではなく、イスラエルによる軍事攻撃の、可能性であろう。
そもそも、イランの核施設が平和利用ではなく、核兵器の開発を最終目的にしている。したがって、これを早期に阻止しなければならない、と叫び続けてきたのはイスラエルだった。そのイスラエルに対して、イラン側、アハマド・ネジャド大統領が、強い敵意を抱いたとしても、何の不思議もあるまい。
アハマド・ネジャド大統領がここまで、イスラエルをあからさまに非難するのは、それだけイランがイスラエルによる軍事攻撃を、現実の脅威として受け止めている、ということではないか。
他方、イスラエルもまたイランと同様に、イランの核開発は核兵器の製造に、繋がるものだと信じ込み、その核兵器が最初にイスラエルに向けて、放たれると信じているのであろう。
このイスラエルとイランとの、双方向の不信感と敵意は、ヨーロッパ諸国もアメリカも、あおることこそあっても、沈静化に努力する姿勢は見えない。そのことは、ヨーロッパ諸国やアメリカには、イランとイスラエルとの緊張が高まることによって、何らかのメリットがあるという憶測も成り立とう。
このイランとイスラエルとの緊張緩和に、手を差し伸べられる国のひとつは日本であろうが、IAEAの事務局長に就任した天野氏は、イランばかりではなく、第三世界の諸国からも、アメリカ・イスラエルに寄り過ぎている、という厳しい批判の声が上がっている。
 残る仲介役を務め得る国は、トルコだけということになるのではないか。そのトルコがどこまで、この重大問題の仲介役を、果たしうるのか注目したい。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:15 | パーマリンク

2010年03月11日

NO・1517イラク選挙後の状況・当分は安定か

 イラクの選挙が3月7日に実施された。この選挙には有権者のおよそ62パーセントが参加し、その投票総数は2000万票とされている。
 前回、2005年の選挙では76パーセント程度の投票数だったが、今回はアメリカが関与せず、イラク人自身の手で実施されたということから、賞賛に値するものだ、というのが内外の評価だ。
 さて問題はこの選挙の最終結果が、いつ発表されるのか。そして、その投票結果が、今後のイラク国内にどのような状況を、生み出すのかということだ。当初、予定されていた中間発表は、水曜日(3月10日)であったが、一日遅れて木曜日(3月11日)になる模様だ。
 しかし、それは中間発表であり、最終的なものではない。選挙の最終結果は、3月末に発表されるという見通しだが、この結果発表の遅延をめぐり、種々の憶測が、飛び始めている。
すでに、INA(イラク国民同盟)はアメリカが投票数に、集計段階で関与し、得票数を操作する、という疑念を発表している。INAに言わせれば、30パーセント開票段階での、中間発表が遅れたのは、アメリカが得票数を操作する、意図があるからだというのだ。
 アメリカに対する不信感は、INAばかりではなく、他の政党にもあろう。しかし、イラク国内諸政党間の問題は、当分は棚上げされるのではないか、と思われる。マリキー首相は拒否権を発動しないのであれば、内閣に参加できるとしているし、今回の選挙では前回とは異なり、スンニー派も積極的に、投票に参加している。スンニー派議員の内閣入りも、十分ありうる状況になってきている。
 シーア派の政党も、内閣入りを口にし始め、拒否権は発動しない方向であることを、明らかにしている。問題は、選挙後の治安がどうなるのか、ということだが、イラク内相は治安維持に問題はないよう、最大の努力をする、と語っている。
 こうなると、当分の間、イラク国内各政党各派は連帯し、新たな国造りに向かうということになるが、そうなると、アメリカ軍には一日でも早く出て行って欲しい、というイラク人の国民感情が、前面に出てこよう。
 アメリカはこのイラク国民の感情を受け止め、素直にイラクから撤退していくのだろうか。もしそうでない場合には、これまでとは異なる、イラク対アメリカの戦いが始まる、危険性があるということだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:40 | パーマリンク

2010年03月10日

NO・1516ハタミ元大統領出国禁止か?

 イランの大統領を務め、日本でもよく知られるハタミ師が、いまイランからの出国を、さし止めされている、という情報が流れている。この情報は革命防衛隊筋から、出てきているのだが、果たしてどうなのか。
 ハタミ師の立場は現在、決して政府から歓迎されるものではない。なぜならば、昨年6月の大統領選挙で、彼はアハマド・ネジャド候補(現大統領)ではなく、ムサヴィ氏を推していたからだ。
 選挙の後も、ハタミ師はアハマド・ネジャド体制に対する、批判を行ってもいた。その結果、アハマド・ネジャド大統領を支持する革命防衛隊は、ハタミ師に対して、厳しい見方をしているのであろう。
 イラン外務省高官は、この情報を否定し、ハタミ師が国外に出ることは、何ら規制されていないと語っている。事実、イラン外務省はハタミ師が最近、パスポートのページを増やす手続きを行った際に、何の問題もなくそれに、応じているということだ。
 しかし、イラン情報部の高官は、ハタミ師が国外に出ることを、禁止されていると語っている。つまり、それは公式には、ハタミ師の自由な出国が認められているとしながらも、実質は不可能な状態になっている、ということではないか。
 ハタミ師に対してそのような措置が、裏側でとられているということは、ムサヴィ氏やカロウビ師も、同じような扱いなのではないか。イラン国内では、アハマド・ネジャド大統領の体制が、日に日に反体制側の代表的な人士に対し、締め付けを強化してきている、ということであろう。
 そのことは、イランがいま国内的に、結束する必要がある、ということであろう。イランの核をめぐるアメリカの締め付け、イスラエルの追い込みは、否応なしにイランを、緊張させているのではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:52 | パーマリンク

2010年03月09日

NO・1515アラブの自由選挙は建前・イラク選挙ははた迷惑

 IAEAの事務局長として、世界的な活躍をし、ノーベル賞も受賞したムハンマド・エルバラダイ氏が、母国エジプトに帰り、大統領選挙への出馬の意向を明らかにした。
そのことは、この欄で何度か書いたので、多少の事情はお分かりいただけたろう。 つまり、アラブ世界の中で最も進歩的なエジプトですら、実は自由選挙はありえないのだ。
 湾岸の王国では、自由選挙どころか、選挙そのものが無い国も多い。あるいは、選挙は形式的には行われるが、ほとんどは国王の指名で決まる、というケースもある。共和国でも同様で、裏で大統領から指名を受けた者が、選挙の型式を踏んで、国会議員になる場合が少なくない。
 こうしたアラブ諸国の選挙事情から、今回イラクで行われた選挙をめぐり、周辺諸国からは、あまり芳しくない受け止め方が、なされているようだ。
 当然のことながら、アラブ各国の国民は、自由な選挙を実施して欲しいと願っている。しかし、政府はそうはしてくれないのだ。そこで、今回イラクで自由な選挙が行われたことが、アラブ各国の国民に少なからぬ影響を、与えることになったと思われる。
 もし、自由な選挙がアラブ各国で実施された場合、どのようなことが起こるのであろうか。第一には、立候補者には知性や教養というよりも、土地の名士が選ばれるということだ。もし、彼に対抗馬がいれば、金やモノを配って、買収するのは当然のこととなる。
 そして結果が出た段階では、落選者側の部族やグループが、当選者側のメンバーに対する、武力攻撃を行うこともあるのだ。あるいは、選挙の投票が行われる以前の段階から、武力衝突が起こることもあるのだ。
 共和国ではこうした事情から、指名による候補者の選出と、その後の選挙といった、パターンが生まれてくるのだ。つまり、政府は混雑や武力衝突を避けるために、事前に候補者を整理したうえで、選挙活動をさせ投票させるというものだ。
 残念だが、アラブ諸国では部族や血族の結束が、いまだに非常に強く、それが直接的に選挙に影響を及ぼすことになる。したがって、政府が薦める手法は、あながち間違いではない、ということになってしまうのだ。
 それでも、国民は自由選挙を希望する。したがって、今回のイラクの自由選挙は、アラブ各国政府にとっては、全くもって迷惑な話ということになる。
 イラクでは選挙が自由に行われたとは言うものの、立候補者は部族、宗派、グループなどによって選ばれたわけであり、選挙結果がその後の衝突を、生み出す危険性は、他の国の場合と同じだ。しかし、名目的であれ実質であれ、自由選挙が行われたことに対する、嫉妬は他のアラブ諸国の国民の間で広がろう。アラブは嫉妬の世界でもあるのだから。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 21:14 | パーマリンク

2010年03月08日

NO・1514パレスチナ自治政府の入植地への対応はザル

 パレスチナ自治政府がヨルダン川西岸の住民に対し、二つの厳しい決定を下した。一つは、イスラエル人が住み着く、ヨルダン川西岸の入植地住宅建設に従事することを、禁止する決定だ。
 しかし、問題は入植地の住宅建設に、従事することを禁じた後、パレスチナ自治政府はパレスチナ人建築労働者に、新たな代替の仕事を与えることはできないのだ。つまり、入植地の住宅建設に従事することを禁ずるということは、明日からの生活の糧を得る道を、断つということなのだ。
 以前から、ヨルダン川西岸地区でのイスラエル人による、入植地建設で働く労働者の多くが、パレスチナ人であることに、何とも言えない挫折感を感じてきたが、パレスチナ人にしてみれば、それ以外に生きる術が無いのだから仕方がない、ということになるのだ。
 では、パレスチナ自治政府は今回の決定について、具体的にどうしようというのだろうか。実は入植地建設に従事することを、パレスチナ自治政府は禁止する決定を下したものの、この決定に従わない者を処罰する罰則は、決められていないようだ。
 つまり、世間体を考えた決定であり、実際にヨルダン川西岸地区での、入植地の建設を遅らせるとか、阻止することを狙ったものではない、ということになる。これまで入植地の住宅建設に、従事していたパレスチナ人たちは、今までと同様に建設現場に向かい、仕事を続けるということだ。
 もう一つの決定は、ヨルダン川西岸のイスラエル人入植地で生産されたものを、西岸のパレスチナ人の店では、販売してはならないというものだ。しかし、そうなるとパレスチナ自治政府は、周辺のアラブ諸国や欧米から、輸入しなければならなくなる。
 そうした場合、輸送コストなどを考慮すると、パレスチナ人は価格の高い商品を、買わなければならなくなるかもしれない。あるいはまた、鮮度の低いもの、古いものも買わざるを得ないかもしれない。パレスチナの商人やパレスチナ自治政府が、イスラエル人の入植地以外から輸入しようとすれば、イスラエル政府によって、通関で手間取らせられることも、十分に起こりうるのだ。
 現在、ヨルダン川西岸地区が西岸にある、イスラエル人の入植地から購入している製品の合計金額は、年間で200億円から500億円にも上るようだ。そうだとすれば、既に流通経路も確立しており、生産者と販売者、そして消費者の間に、信頼関係が成り立っている、ということではないのか。
 西岸で入植地の製品を、販売することを禁止しても、それは徹底できないだろう。もしも徹底した場合、物資の不足や流通に問題が発生するだろうが、パレスチナ自治政府には、対応のしようが無かろう。パレスチナ自治政府が入植地で生産された一部物品の、流通を抑えたと言われているが、それはごく一部にすぎないだろう。インドで起こった、イギリス製品ボイコットのような動きは、すでに便利さとぜいたくさを覚えてしまった、パレスチナ人には不可能ではないのか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:23 | パーマリンク

2010年03月07日

NO・1513アルメニア人虐殺問題が米とトルコの緊張生む

 いまから100年ほど前に起こったとされる、アルメニア人虐殺事件がアメリカで再燃した。1915年にオスマン帝国時代に起こったとされる問題だが、これについては幾つもの解釈がある。
 トルコ側は虐殺ではないとし、トルコとロシアとの戦いの中で、一部はロシア側に付いたアルメニア人によって、殺害されたのだと主張している、もちろんアルメニア側は虐殺だと主張し続けてきていた。トルコはまた、アルメニア人によってトルコ人も、大量に殺害された、とも主張してきている。
 しかし、最近になりトルコの外交努力もあり、トルコとアルメニアはこの問題について、冷静な対応を採り始めている。つまり、トルコとアルメニアの学者専門家による共同研究で、事実を明らかにしようという動きだ。 
 こうした共同研究の動きが、双方から出てきたのには、それなりの理由がある。アルメニアはコーカサスの南、トルコの東に位置しているが、海へのアクセスが全く無い。周辺を完全に他国によって、囲まれている内陸国家なのだ。
 このため、アルメニアはこれまで経済発展をしようとしても、多くの難問に直面せざるを得なかった。しかも、周辺諸国とアルメニアの関係は、決していいものではなかった。
 トルコとの間には虐殺問題が、約100年にも及んで横たわっており、東の隣国アゼルバイジャンとは、ナゴルノカラバフ問題を抱えている。南部はイランだが、この国との関係もよくない。加えて北に隣接するグルジアとの関係も、決していいものではないからだ。
 皮肉なことに、この地域でアルメニアに対して、比較的友好的な姿勢を示してくれ、経済的支援が可能な国は、虐殺問題を抱えている、人種も宗教も異なる、トルコだけであろう。
 アルメニアが最近、トルコとの関係改善を考え始めたのは、こうした事情からだ。まさに背に腹は変えられないということであろうか。トルコ側との国境が再開されれば、アルメニアの物資がトルコだけではなく、ヨーロッパ市場にも流れやすくなるのだ。
 トルコの建設技術や、多くの分野での開発技術は、アルメニアの産業振興、インフラ整備に不可欠であろう。トルコ人のビジネスマンが、アルメニアに進出してくれば、観光開発も可能となろう。
 そうしたアルメニアの事情を無視したような、今回の突然のアメリカ議会における、アルメニア人虐殺問題の復活は、当事者であるアルメニアにして見れば、いい迷惑なのではないか。
 誰がこの問題に火をつけたのか、という犯人探しをすれば、在米アルメニア人団体であり、それを支援するユダヤ人団体、ということになろう。在米アルメニア人団体にしてみれば、彼らがアルメニア人であり続ける上で、虐殺問題は団結の唯一のコアであろう。
ユダヤ人団体にしてみれば、虐殺がホロコーストだけではなく、起こったのだということになり、ホロコーストというユダヤ人の受けた、悲惨な過去がより明確なものに、なるからではないか。アルメニア問題がアメリカ議会で持ち上がった後、間も無くアラブのマスコミでは、ユダヤ人の策謀、という憶測ニュースが流れている。
結果的には、アメリカの下院議会はアルメニア人殺害事件を、虐殺事件と断定することを避けた。賢明な判断であろう。
もし、アメリカ政府がアルメニア問題を、虐殺事件と断定すれば、トルコはアメリカ軍がいま使用している、トルコ国内にあるインジルリク空軍基地の使用合意を、破棄したかもしれないからだ。それだけトルコにとっては、アルメニア人虐殺問題は大きな比重を占めている、歴史的な汚点ということであろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 12:14 | パーマリンク

2010年03月06日

NO・1512ムバーラク大統領エルバラダイ氏の立候補容認だが

 エジプトのムバーラク大統領が82歳の高齢に到り、しかも30年にも及ぶ長期にわたって、大統領職に留まってきていただけに、内外で、彼の任期もそろそろ終わりか、という声が高い。
 これまで、エジプト国内では何とか、ムバーラク大統領に辞任してもらい、新しい大統領に替わってほしい、という考えを持つ人たちのなかから、種々の試みが行われてきた。キファーヤ(イナフ=ムバーラク大統領は十分やったから辞任してくれ)という運動は、その典型だった。
 こうしたエジプトの国民的な雰囲気のなかで、IAEAの事務局長を勤め、ノーベル平和賞を受賞した、エルバラダイ氏が大統領選挙に挑む、という憶測が流れ始めた。本人も十分にその意志があるのかもしれない。ただし、彼の立候補には、エジプトの憲法が変わり、国民が支持してくれるなら、という条件が付いているようだが。
 つまり、エルバラダイ氏は、全てのお膳立てが済み、お座敷が整ったら、上座に据わってもいいという、極めて他力本願的な意思表示のようだ。それはやはり、国際舞台で重要な役割を果たしてきたという自負心と、彼の身の安全を、考慮してのことではないか。
 外国の報道を見ていると、エルバラダイ氏がエジプトの次期大統領選挙に立候補するのは、ほぼ確実であり、当選の可能性も、極めて高いような内容になっているが、そう簡単ではあるまい。ムバーラク大統領はドイツ訪問時に、エルバラダイ氏の大統領選挙立候補について、記者団に対し、明確な返答をしている。
 ムバーラク大統領は、エルバラダイ氏が大統領に立候補することに問題は無いが、あくまでも憲法の許す範囲で、立候補すべきだと語っている。つまり、いずれかの政党に加わって、その党の推薦で立候補するか、個人で立候補するかのいずれかだ。
 もし政党に加わって立候補するとすれば、エジプトの現状からすれば、与党が大半を占めていることから、野党各派を結集する必要があるということだ。その掌握力がエルバラダイ氏にあるのか、野党各党がエルバラダイ氏支持で結束しうるのか、という問題が残っている。
 単独で立候補する場合には、やはり国会地方議会の議員の多数の支持を、取り付ける必要があるが、それは簡単ではあるまい。ここでも、与党が最大政党であることが、ネックになってくるだろう。
 ムバーラク大統領は記者団の中から出た「エルバラダイ氏はエジプトの英雄なのか?」という質問に対し、「今のエジプトは英雄を必要とない。エジプト国民皆が英雄なのだから。}と答えている。
 エルバラダイ氏は憲法の改正を、大統領選挙立候補の条件としているが、ムバーラク大統領はあくまでも、現行憲法で大統領選挙を行う方針だ。つまり、エルバラダイ氏とムバーラク大統領との間の食い違いは、変更されないということだ。そうなれば、エルバラダイ氏の大統領選挙への立候補は、立ち消えになるのではないか。
 唯一、ムバーラク大統領が大統領職を下りるとすれば、それは彼の健康問題であろう。彼が近く手術をする、という情報も流れ始めている。いまはムバーラク大統領が、健康を回復することを祈るのみだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 11:54 | パーマリンク

2010年03月04日

NO・1511パキスタンの元情報トップがアメリカの工作をばらす

 アメリカのCIAとパキスタンのISIは、共に国を背負って立つ情報機関ということで、緊密な関係を維持してきていた。特に、アフガニスタン対応では、アメリカにとってパキスタンの情報部(ISI)は、最も信頼できるパートナーであった。
 しかし、ここ1−2年、両者の信頼関係には溝が発生し、お互いが邪魔しあったり、情報をリークし始めたりしている。アフガニスタンの原理主義者たちと、パキスタンの原理主義者たちの関係がいいことに加え、パキスタンの情報部は、アフガニスタンの各派との関係を維持しながら、対応を行ってきていた。
 最初のうちは、それはある意味では当然のこととして、アメリカも黙認してきたわけだが、だんだん我慢の限界に達したのかもしれない。あるいは、パキスタンの進め方と、アメリカのそれとの間に、食い違いが生まれてきたからであろうか。
 パキスタンの民間人に対する情け容赦のない、アメリカ軍の攻撃の仕方は、さすがに、パキスタンの軍人たちの琴線に、触れたのであろうか。
 パキスタンのISI(情報部)の、元トップであるグル将軍が、最近になって、アメリカの情報部の手口をばらし始めた。いわく、イランの反体制派であるジュンドッラーは、CIAの支援を受けている組織であり、イラン内部の不安定化を、狙ったものだと語っている。
 グル将軍は、アメリカにはパキスタンとイランとの関係を、こじらせようという意思もあるとも語った。つまり、これ以上、アメリカの言いなりになっていたのでは、パキスタンは自国の利害を、侵されると思ったのであろう。
 イランのスンニー派の反体制組織である、ジュンドッラーを指導しているアブドルマリク・リギ氏が、キルギス行きの飛行機に乗っていたところを、イラン側に捕まり、PTV(イランのプレステレビ)とのインタビューで、アメリカから無制限の支援を、約束されていたことを明かしている。
 アメリカと距離を置いたパキスタンの今後はどうなるのか、イランの将来と合わせ関心の持たれるところだ。
 

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:35 | パーマリンク

2010年03月03日

 NO・1510イスラエルがマブフーフ暗殺で逆襲開始?

 始めから裏があると思えてならなかった、ムハンマド・マブフーフ氏暗殺への各国の対応が、ここにきてようやく、表面化し始めたようだ。
 事件後間もなく、ドバイ警察はイスラエルのモサドによる犯行だ、と決めつけて、何度となく「モサド犯行説」を強調した。失礼ながらドバイ警察に、それほど迅速に犯人割り出しが、できるとは思えないのだが。
 イギリスなど容疑者が所持していたとされる、パスポートを使用された国々は、押し並べてイスラエル非難を始めた。イギリス、アイルランド、フランス、ドイツといった国々がそれだ。
 そればかりか、全ヨーロッパの国々が、イスラエル非難を始めてもいた。まさに、それまで抑え込まれていた、反ユダヤ感情を、ヨーロッパ人が一気に爆発させるには、うってつけの口実が、できたという感じさえしていた。
 こうしたヨーロッパ諸国の動きに対し、イスラエル政府は犯行を、認めも否定もしない、あいまいな対応をとってきている。イスラエル政府のそうした事件への対応が「ネタニヤフ首相暗殺部隊激励」「ネタニヤフ首相暗殺部隊を激賞」といった報道を生み出したのであろう。
 しかし、ここにきてイスラエルは、ハマースの幹部マハムード・ナセル氏の発言として「犯行はアラブ」ということを報じ始めている。情報元はアルクドス・ル・アラビー紙で、それをロイター通信が伝えたとしている。
 イスラエルのルサレムポストによれば、アラブのなかの穏健派諸国にとって、ムハンマド・マブフーフ氏は暗殺対象になっていた。エジプトやヨルダンの情報機関は、ムハンマド・マブフーフ氏の暗殺機会を、狙っていたというのだ。
 ムハンマド・マブフーフ氏はハマースの、武器調達の総責任者であり、イランとの関係が深く、ハマースばかりか、他のイスラム・グループにも、武器を調達していたということのようだ。
 ドバイ警察はFBIにも、捜査協力を依頼しているようだが、これからどのような事実(?)が出てくるのか、興味がそそられる。どうやら、この事件に関わっているのは、ハマース、イラン、イスラエル、ドバイだけではなさそうだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:39 | パーマリンク

2010年03月02日

NO・1509エルバラダイ氏はエジプト政治変革に一石を投じたか

 元IAEAの事務局長だったエルバラダイ氏は「エジプトの政治を変えるためには、憲法を改正し、自由に立候補ができるようにすべきだ、エジプトが変わるためには、エジプト国民皆が立ち上がらなければならない。」と語った。
次期大統領選挙に、出馬意向をちらつかせたエルバラダイ氏は、エジプト政治の変革に、一石を投じることができたのであろうか。エルバラダイ氏はエジプトに帰国し、多くの政治団体幹部や知識人と意見を交わし、自身の方針を明らかにしたようだ。
エルバラダイ氏の呼びかけに応じて、エジプトの主要野党である、ワフド党、タガンマア党、ナセル党、民主戦線党などが、合同会議を土曜日に開催し、憲法改正を実現する方法について、討議することを予定している。
エルバラダイ氏はインターネットやフェイスブックを活用し、できるだけ多くの国民層に、働きかけるべきだとも呼びかけ、特に青年層の活躍を期待した。もちろん、インテリ層に対しても、同様に期待している。
このエルバラダイ氏の呼びかけに応え、一部ジャーナリストの間からも「大統領職を、子息に継がせてはならない。」と主張する動きが再燃してもいる。一部、エルバラダイ氏を推す知識層の間には、エルバラダイ氏が元政府機構の一員であったことや、彼がラジカルではないことを、好感する者もいる。
しかし、ムバーラク大統領の側も、このエルバラダイ氏を中心とする新しい動きを、ただ眺めているわけではあるまい。彼は高齢を推して、最近エジプト各地を訪問しているが、それは次期選挙に向けた、キャンペーンであったともとれよう。
 エジプト最大の発行部数と長い歴史を誇るアルアハラーム新聞の編集長であるアブドルモナイム・サイド氏は「現体制が30年にも渡る長い間、この国を統治してきており、十分にスマートでずる賢くもある。エルバラダイ氏はナイーヴ過ぎる、蜃気楼を見ているだけではないのか。」と皮肉っている。
 また、アルマスリ・アルヨウム紙の編集長であるマグデイ・アルガッラード氏は「いかにして野党各派と話し合うかだ。彼らと個別に話し合って、どう野党の勢力をまとめるかが重要だ。」と語っている
いまの段階では、エルバラダイ氏の投げた一石が、エジプトの政治に大きな水の輪を作っていくのか、あるいは、大騒ぎしただけに終わるのか、判断のしようがない。
しかし、彼の動きにはもう一つ、自身の努力が欠けているように思えるのだが。エルバラダイ氏は「私を支援することは、貴方方自身を支援することになる。それがエジプトの政治を変えるのだ。」と語っているが、それだけではなく、彼自身の一層の努力が必要なのではないか。
エジプトに出入りするのではなく、エジプト国内に腰を据えて、政治と国家の変革に着手すべきではないのか。これまで多くの政治家たちが、その結果として逮捕されたり、弾圧を受けたりしてきていることを考えると、エルバラダイ氏が何の犠牲も払うことなく、大統領に当選するのは、夢物語のような気がするのだが。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:49 | パーマリンク

2010年03月01日

no・1508イラン体制側と反体制側どちらが正しいのか

 ついにといっては何だ、がまさについにと言うにふさわしい発言が、イランの反体制側から出てきた。昨年の大統領に立候補して敗れた、ミル・フセイン・ムサヴィ氏が体制側に対して、最近、最も手厳しく最も過激な発言をした。
 ミル・フセイン・ムサヴィ氏は、イランの現体制を「カルト集団」だ、と非難したのだ。つまり、現在イランを統治している、ベラヤト・ファギ集団(イスラム法によって統治する集団)はカルトであって、正しいイスラム教に沿って国を統治しているのではない、と言い放ったのだ。
 ミル・フセイン・ムサヴィ氏は「このカルト集団によって、イランの民族主義やイラン主義は押さえ込まれたため、イラン国民は宗教の名によって行われる、カルト統治に寛容性を失ったのだ。」と語っている。この発言は「カラメ」という名のウエッブ・サイトとの、インタビューの中で語られたものだ。
 ミル・フセイン・ムサヴィ氏と対抗する側の、ハメネイ師は「昨年の6月12日に行われた、大統領選挙の結果を受け入れない者は、政治に参加する資格がない。」と切り捨てている。つまり、反体制派のリーダーであるミル・フセイン・ムサヴィ氏やカロウビ師は、イランの政治について、語る資格の無い者たちだ、ということだ。
 そうである以上は、この反体制側の二人が主導する、体制に対する批判の運動は、全て非合法ということになり、これまで以上の弾圧が、反体制派の人たちには、行われるということであろう。
 イランの体制側は、昨年激しかった反体制派のデモを、首尾よく押さえ込むことに成功し、今年の革命記念日では、一部の小規模な例外を除いて、ほぼ完全に押さえ込めた、という自信があるのであろう。
しかも、最近ではイスラエルやアメリカとの間で、戦争の可能性が高まっており、イラン国内は緊張に包まれている。そうした折に、反体制運動も民主化運動も、国民の多数派によって、否定されると考えているのであろう。
そうだとすれば、アメリカやイスラエルが、激しくイランの体制を非難することや、戦争の可能性をちらつかせることは、かえってイランの体制を、堅固なものにするのかも知れない。
アメリカの力による他国への介入と干渉は、どうもこのところ、反発を強めるだけで、効果を生み出していないのではないか。アフガニスタンでもイラクでも、同様の反応が見られるのだが、そのことを、アメリカは全く意に介していないようだ。
アメリカは力による押さえ込みを、続ければ続けるほど、世界中でアメリカに対する反発を強め、アメリカ自身は経済的にも精神的にも、軍事的にも疲弊していくのではないか。そうであるとすれば、一度立ち止まって、世界への対応を、再考すべきではないのか。今となっては、アメリカの力による支配に、何の抵抗も示さずに、屈服するのは世界では、日本人だけなのかもしれない。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:09 | パーマリンク

 
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