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2012年02月29日

NO・2245「二つの情報源サウジアラビアの体制危機を伝える」

 二つの著名な情報源が、サウジアラビアの将来に対する、危険を伝えている。一つはイギリスの権威あるガーデアン紙、もう一つはイランのプレステレビだ。
 イギリスのガーデアン紙は『アラブの春サウジアラビアは時間の問題』というタイトルで記事を掲載しているということを、アラビア語新聞のアッサフィール紙が伝えている。
 ガーデアン紙の記事によれば、サウジアラビアではシーア派マイノリテイ国民の蜂起や、女性の運転の自由を求める行動だけではなく、大きな社会的不満が、蓄積しているということのようだ。
 そのなかで興味深い部分は、誰が主催者なのか分からないが、22万人のメンバーを有するツイッター(mujtahidd@)が、サウジアラビア国内の、多くの不満の声を公表すると同時に、サウジアラビア王家にかかわるスキャンダルを、暴露しているのだ。
 たとえば、サウジアラビアの平均月収が1300ドルと伝えられているなかで、失業率は30パーセントに達している。そして貧困ライン以下で生活しているサウジアラビア人の割合は、22パーセントにも達しているというのだ。そうしたなかで、政府の要人たちの汚職は、目を見張るものがあるとも伝えている。
 この無名のツイッター氏をはじめ、今では多くのサウジアラビアのインテリたちが、衛生放送、インターネット、携帯電話などを通じて意見の発表や、情報を交換し合っているということだ。
 汚職では政府の公金が、どのように私的に使われているのか、王家のメンバーたちの散財振りなどが、明かされているということだ。この記事を見る限り、サウジアラビアの王家の将来は、危険なものだということになろう。
 もう一つの情報ソースである、イランのプレステレビは『アメリカはサウジアラビア分割を検討している』というタイトルだ。以前にもイランのプレステレビは、カタールの首相がサウジアラビアの国王や軍隊を非難し、体制打倒ができると語ったと伝えている。
 今回はアメリカが、サウジアラビアの体制がアメリカの意向通りに、行動しないことに業を煮やし、サウジアラビアの体制打倒を、考え始めているというものだ。そして、サウジアラビアの体制打倒は、現在のアブドッラー国王の死亡時が、最も可能であるとも指摘している。
 この情報をもたらしたイランのプレステレビは、情報源としてナヘール・ニューズ・エージェンシーの名を挙げている。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:24 | パーマリンク

2012年02月28日

NIO・2244「第3次インテファーダをイスラエルが警戒」

 インテファーダという言葉をお忘れの人がほとんどであろう。インテファーダは第一回が1987年の12月に発生し、第2回目は2000年9月に発生している。簡単に言えばパレスチナ問題が、完全にデッド・ロックにぶち当たり、なす術を失ったパレスチナ人たちが、石を武器にイスラエル軍と衝突するということだった。
 しかし、いずれのインテファーダも、しかるべき成果を生まずに、終わっている。そこには明確な方向性も目的もなかったのだから、無理の無いことであったろう。
最近になって、イスラエル軍や政府は、第3次インテファーダが起こるのではないかという懸念を、抱き始め警戒し始めている。状況は以前と同じであり、マハムード・アッバース議長によって行われてきた、イスラエルとパレスチナの交渉が、何の成果も生みだすことなく、今日に至っているからだ。
アラブ世界はいずこも『アラブの春革命』が大きく、各国を揺さぶっているというのに、パレスチナでは何の変化も生まれていないのだ。マハムード・アッバース議長による和平交渉は、何の成果も生まないだけではなく、同時進行でイスラエル側のヨルダン川西岸地区に対する、入植は着々と進んでいる。
こうしたなかでは、パレスチナ人の間で不満が増大していくのは、当然の帰結であろう。そのことは、パレスチナ内部でもアラブの春が吹き荒れる、可能性があるということだ。マハムード・アッバース議長に対する反乱の炎が、パレスチナ大衆のなかから生まれても、何ら不思議ではない。
そこでパレスチナ自治政府は、パレスチナ大衆の怒りをパレスチナ自治政府と、マハムード・アッバース議長に向けるのではなく、イスラエルに向かうよう、政治的インテファーダを起こすのではないか、という懸念が生まれている。
カタールの仲介でファタハとハマースが統一する方向に向かっているが、必ずしもしっくりいってはいないようだ。ハマースはこれまでの路線を捨てるつもりはなく、イスラエルに対する力による抵抗の姿勢を、崩していないのだ。
パレスチナ大衆の間には、イスラエルの拡張主義的な政策(ヨルダン川西岸地区への入植拡大)に対する反発もあるが、マハムード・アッバース議長に対する反発も強い。
パレスチナを各勢力を統一し、イスラエルに怒りを向けるという作戦は、場合によってはパレスチナ自治政府と、マハムード・アッバース議長に向かって、暴発するかもしれない。その選択肢はイスラエルも考えていよう。パレスチナ大衆の不満は、そこまで達しているのだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:26 | パーマリンク

2012年02月27日

NO・2243「H・クリントン国務長官シリア反体制武器供与に反対」

 アラブの親米国であるカタールやサウジアラビアは、シリアのアサド体制を打倒すべく、シリアの反体制派に武器を供与することを、真剣に検討している。アラブ諸国は総じて、アサド体制に見切りを付けているようだ。
 アメリカではマケイン議員が、強硬にシリアの反体制派に、武器を供与すべきだと主張している。そうしたなかで、このような動きに、冷水を浴びせるような発言が、ヒラリー・クリントン国務長官によって語られた。
 彼女に言わせれば『アルカーイダがシリアの反体制を支援すると言っている。我々はシリアのアルカーイダを、支援するというのだろうか。』ということのようだ。
 アメリカ政府はアルカーイダやハマースを、テロリスト集団の名簿に載せているわけであり、そのアルカーイダが支援すると語るシリアの反体制派は、同類だという論理であろう。
 しかし、それは少し飛躍のし過ぎではないのか。リビアの革命闘争の時は、アメリカがアルカーイダのメンバーだったベルハッジ氏を、リビアに連れ戻して、戦わせていたのではなかったのか。
 今回のヒラリー・クリントン国務長官の発言には、どうも裏がありそうな気がする。アメリカはシリアの反体制派に対して、現段階では正面切っては、支援しないということではないのか。そして、カタールやサウジアラビアが支援する分には、目をつむるということではないのか。
 リビア革命の当初、アメリカはイギリスとフランスに対し、戦闘には参加しない、できればNATOの名のもとに、リビアの反体制派を支援したほうがいい。』と言っていた。しかし、結果的には、カダフィ大佐の首をはねたのは、アメリカだった。
ヒラリー・クリントン国務長官の発言からすると、彼女が積極的にシリアの反体制派を支援しないのは、反体制派が未だに統一出来ていないということにもありそうだ。そして、シリアのアサド体制に敵対した場合、ロシア、中国、イランを敵に回すことになる、という懸念もあるようだ。
そうは言っても、ヒラリー・クリントン国務長官はシリアの反体制に対するシンパシーは、十分感じているようであり、その上で、彼女はシリアの国民がもっと積極的に、反体制運動に参加していくべきだ、と考えているようだ。そうなった段階では、いかなる支援も惜しまない、ということではないのか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:29 | パーマリンク

[トルコに関する本を出版しました」

昨年は『革命と独裁のアラブ』をダイヤモンド社から出版し、好評いただいております。ありがとうございます。

今年はますます重要になるトルコをテーマに『これから50年、世界はトルコを中心に回る』をプレジデント社から2月15日に出版しました。

トルコはアメリカやヨーロッパが不況下にあるにもかかわらず、8パーセント台の成長率を維持しています。その秘密は周辺諸国との友好的な関係を構築していることと、ギュル大統領、エルドアン首相、ダウトール外相の努力のたまものだと思われます。

日本が中東諸国、中央アジア諸国、ヨーロッパ諸国、アフリカ諸国とのビジネスを展開していく上で、トルコは最も信頼すべきパートナーだと思います。『トルコ大躍進7つの理由』を説明し、日本のビジネスマンの皆さんのお役に立てたいと思います。ご一読ください。
出版後幾つかの変化がありました。
あるテレビ局がこの本をベースに特別番組を作ることが決まりました。3月中の取材、4月初旬の放映のようです。
経団連がトルコとの経済関係促進のために委員会を結成し、政府に『日本トルコ経済連携協定』を働きかけるようです。そのための会議が4月9日に開催されることが決まっています。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 11:21 | パーマリンク

2012年02月26日

NO・2242「シリア反政府派外国から武器供与・戦闘は本格化へ」


 シリアの反政府派による抵抗運動は、ほぼ1年続いているが、いまだに決着が付いていない。チュニジアやエジプト、そしてリビアの例を考えた場合、どうも不思議な気がするのは、当然ことであろう。
 しかし、長期に及んでいまだに、決着が付いていない反政府運動が、まだ二つある。一つはバハレーンであり、もう一つはサウジアラビアのアルカテイーフ地区の、シーア派住民による反政府運動だ。
 これら二つに共通することは、外国の関与が弱いか、ほとんど無いということであろう。したがって、反政府派には武器が渡っていない、ということであろう。
 加えて、テレビ報道の度合いが少ないということも、挙げられるのではないか。チュニジア、エジプト、リビアの場合は、大々的に報じられており、世界中の人たちが現地で起こっていることに、十分関心を払うだけの材料が、提供されていたのだ。
 それでは、シリアの場合はどうであろうか。最近になって、シリアの反政府運動は過剰なまでに、報道されるようになっている。その報道内容が何処まで正確であるのかはさておき、これだけ連日大量の映像を流されると、誰もがシリアのアサド大統領は独裁者だ、というイメージを抱くだろう。
 このイメージが出来上がると、国際的な合意が得られようが得られまいが、武器を供与したいと思う国が、行動を起こしても誰も非難すまい。先のチュニスで開かれた、シリア反体制を支援する国際会議では、具体的な介入支援に付いては、合意できなかったようだが、武器の供与をやりやすい環境は、出来上がったということではないのか。
サウジアラビアやカタールはこれまでも、少量の武器や資金を提供していたのであろうが、ここに来てシリアの反政府派に、資金と武器を本格的に送ることが容易になろう。
シリアの反政府派に渡る武器はトルコ、レバノン、ヨルダン、イラクが陸伝いであることから考えられるが、レバノンやイラクについては、断片的な武器の流れの情報が伝わってきていた。トルコもそうであろうが、いままでのところ、トルコはそれを認めていない。
これからは、これらシリアに隣接する国々から、本格的にシリアの反政府派に武器が贈られることになろう(通過を黙認することも含めて)。そうなると、シリア国内の反政府派と政府軍との戦闘は、激化することが予想される。
つまり、シリア国民の間に犠牲が出るのはこれからであって、いままでの5000人、あるいは7000人といわれている犠牲は、数のうちに入らなくなるかもしれない。
それでは、それだけの犠牲をシリア国民に支払わせて、一体何が得られるのか、ということになろう。つまり、一定の成果が期待できるからこそ、行動が起こるのだから、そこには然るべき理由が、あるだろうということだ。
単純に考えて、シリアは石油ガスの通過地点として、極めて便利だということだ。イラクはもちろんのこと、湾岸諸国やイランのガス石油が、シリアを通過できれば、地中海から欧米市場に直結できるのだ。
もう一つは、シリアにも石油ガス資源があるということだ。最近では、イスラエルとレバノン沖の、海底ガス資源が話題に上り、探査から採掘の段階に向かっている。トルコとキプロス島の間でも、同様にガス資源が埋蔵されていることが分かっている。
シリアの場合、海底石油ガス資源の存在は、確認されているが、イラク国境のガス石油資源についても、同様に期待できるのではないか。そして、イラクとの国境地帯には、ウラン鉱が埋蔵されている、可能性も高いようだ。
最後には、イスラエルの安全保障問題を、挙げることができよう。これまでイスラエルに対し、敵対的立場を堅持し、アラブ民族主義の旗頭を自認してきた、アサド体制が打倒されれば、イスラエルはシリアの軍事的脅威を、感じなくて済むようになるのではないか。
シリアは決して貧しい国でも、無価値な国ではないのだ。だからこそ、各国が介入を目論んでいるのであろう。したがって、シリア内戦はこれから、本格的な段階に入っていこう。そして、それは多くのシリア国民が、犠牲になるということでもある。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 22:17 | パーマリンク

「笹川会長の本を推薦する・大人の微笑と爆笑」

 最近声を出して笑う人が、めっきり少なくなっているように思えてならない。時折聞こえる笑い声は、上司の言った下手なジョークに付き合って、笑ったものであり、余り健康的でない雰囲気が伝わってくる。
 日本にはたくさんの笑いを表現する、言葉があると思うのだが、それすらも消えうせ、誰もがお通夜にでも行くような感じで、うつむき加減で出勤し、仕事場でも暗い表情を崩さない。それを神妙というのか、はたまた真面目というのか。
 その点、笹川陽平会長(日本財団)は人をリラックスさせる、特殊な能力をお持ちのようだ。私は仕事の関係で、週に何度かお会いするが、決まって冗談が飛び出す。私も会長の冗談に負けていられないとばかりに、双方からの冗談の応酬が始まる。
 その日は決まって仕事の調子がいいし、感が働く。笑うということは、脳により多くの血液を送り出してくれる、作用があるからなのかもしれない。
 ただ大人の冗談は、ややもすれば卑猥になる。私の冗談はすれすれのところに、何時も納まってるようだと自認しているが、周囲の若い女性からすれば『親父ギャグ』『セクハラ発言』なのかもしれない。それを許してくれるのは、周囲の『女性たちの品格』と『心のおおらかさ』であろう。
 先週の金曜日に『一寸来てくれませんか』という電話があり、7階の執務室まで上がって行くと、会長が最近出した『紳士の品格』という本を、あげるよといって差し出された。PHP 社から出したものだが、読んでみると実に面白い。
 本は人柄を表すもう一つの名刺、とよく言われるが、まさにそのとおりだ。会長は自分の周りで起こっている、あらゆる出来事を書き連ねている。それは家庭内の話から職場の仕事がらみ、スタッフとのやり取りから、外部の方々との話のなかで、生まれてきたものであり、何処にも障子を立てていない。
 そうした一つ一つのエピソードが笑えるのだから、会長の人柄がそうなのであろう。回りをリラックスさせ、自分も人との接触を楽しんで、仕事をしているということだ。
 もちろん、さりげない表現ではあるが、会長の博識ぶりも感じられる。その博識の範囲は、高度なものから、極めて庶民的なものまで、含まれているところにおかし味がある。それは多分に会長の照れによるものではなかろうか、と思われる。
 電車の中でこの本を読んだら、きっと読者は誰もがクスッと笑うだろう。フンフンと感心して、うなずく部分もあるだろう。奥様とのやり取りでは『世の男は皆同じだ』という同胞感を抱くだろう。上品な笑い話、楽しい会話をしたいと思う人に、うってつけの参考書であろう。同時に外国勤務の部下への、一番喜ばれるお土産になると思われる。外国勤務の人たちは、日本の国内、なかでも『高貴な人たちの日常』を知ることに飢えているのだから。
 

投稿者: 佐々木良昭 日時: 11:18 | パーマリンク

2012年02月25日

NO・2241「世論調査結果という不可思議な事実」


 イギリスのBBC放送局のブログが、シリアのアサド体制について行われた世論調査の結果に、疑問を呈している。簡単に言えば、『少ない人たちの意見を基にして、アサド体制が支持されている、という結論を導き出すのは間違いだ。』ということだ。
 それはそうであろう。ここで取り上げられている世論調査は約1000人の人たちの答えに基づくものだった。一般的には1000人の世論調査参加は、一定の状況を判断するに際しての、最低限の受け入れ可能な数字だ、ということのようだ。
 しかし、そればかりではなかろう。例えばその世論調査が、シリア国内に居住する人たちに対して行われたのであれば、アサド支持派の人たちが、絶対的に多くなろう。
 シリア国内でパソコンを持ち、インターネットにアクセスできる人たちは、一定以上の生活レベルを維持している人たちであり、同時に高等教育を受けた人たち、ということになるのではないか。
 その場合、そうした恵まれた人たちの多くは、体制側の人たちと考えるのが常識であろう。従って、そこから出てくる結論は、アサド体制支持ということになろう。
 もし、シリア以外にいるシリア人を対象にして行えば、結果は述べるまでも無く、反アサドということになろう。外国に在住している人たちの多くは、アサド体制を嫌って、シリアから出た人たちがほとんどであり、今回の戦闘から逃れるために、難民として周辺諸国に、出ている人たちだからだ。
 それでは、そうした偏った結果を出さないために、外国居住者と国内居住者を半々にして、世論調査を行うことが可能だろうか。その場合、出てくる結論は正解に近いものであろうか、いささか疑問だ。
 世論調査の結果は、世界的に一つの状況に対する、判断を下す場合の目安、として利用されているが、実は世論調査が、特定の意向を持った人たちによって行われた場合、多分に政治的意図のために、利用されるということになるのではないか。
 マスコミの報道もしかりだ、『イランは核兵器開発に向かっている。』と声高に報道が繰り返されれば、世界の人たちは『イランは危険な国家。』という結論に到るようになる。
 『狂犬カダフィ』『独裁者ムバーラク』『血塗られた手の男アサド』いずれもマスコミが煽っている部分が、大きいのではないのか。情報を受ける側の人たちは、報道のなかから事実を拾い上げる、努力が必要であろう。それ無しには、マスコミや特定の国家の意向に、何時の間にか盲目的に追従する、『無知な暴力の主体』になってしまう危険性がある。
もう一つ大事なことは、『常識』を元にした判断を心がけることであろう。日本人は幸いにして、平均的に高いレベルの教育を受けていることから、『日本人の常識』は他の国に比べて、より正解に近いのではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:11 | パーマリンク

NO・2240「ロシアはシリアを何処まで擁護できるか」


 シリアに対する世界の風当たりは、日増しに強くなってきている。5000人とも7000人とも言われる、犠牲者が出ているだけに、シリアのアサド政権を支持することを、大声で叫ぶのは困難な雰囲気が、世界中を包み込んでいるのだ。
 そうしたなかで、これまで本部をシリアのダマスカスに置いていた、パレスチナのハマースが、遂にシリア離れを明確にした。パレスチナのガザでは、アサド体制に対する、大規模な抗議デモが行われ、ガザの住民はシリアの反体制派を、支持することを明らかにした。
 今回のハマースのシリア離れは、そうした流れのなかで起こったものだった。もちろん、それに先駆けて、ハマースとファタハの和解が生まれ、その後、ハマースのミシャアル氏がヨルダンを訪問し、シリアのダマスカスに代わる本部の事務所を、暗にヨルダンのアンマンに開設する意向を示した。
 このハマースの路線変更の裏には、カタールの強い働きかけがあったが、その裏には、アメリカの意向が存在したのであろう。カタールがハマースを説得できたのは、金銭的援助であったろう。膨大なガス輸出によって得られる収入が、ハマースに対して説得力を持ったのであろう。もちろんそのことに加え、権力側の弾圧に対して抵抗を続ける、シリア国民を無視するわけには、いかなかったのでもあろう。
 チュニジアではシリアの反体制を支持する、国際会議が開催され、アメリカからはヒラリー・クリントン女史が、この会議に乗り込んでいる。会議場の外では、小規模な反対デモがあったようだが、そのことは会議の流れを、変えるには到らなかった。
 さて、そうした世界の流れに反して、ロシアはいまだに、シリアのアサド体制支持の立場を堅持している。それは、シリアとの良好な関係無しには、ロシアの中東地域での活動が、大幅に制約されるからに他ならない。ロシアにしてみれば、同国の海軍が地中海地域で自由に活動する上で、唯一利用可能な軍港が、シリアのタルトース港なのだ。
 もし、このタルトース港を利用できなくなるとすれば、ロシアは地中海地域を始めとする、中東地域での軍事作戦を、大幅に変更させられ、かつ縮小させられることになろう。もう一つの友好国であったリビアも、現在では欧米の支配下に置かれており、ロシア海軍がリビアの港を使うことは、不可能になっている。
 そうした事情から、ロシアはシリアのアサド政権を、支持する姿勢を堅持しているが、これから先もそうなのであろうか。これだけ多くの犠牲者を出したシリア内乱は、結局のところアサド憎し、アサドは許せない、という感情を世界的に燃え上がらせ、カダフィの最後のような結末に、到るのではないか。
 ロシアの外交方針は義理と人情で、決められているわけではない。あくまでも自国の利益を最優先して、種々の決定が下されているものと思われる。そうであるとすれば、近い将来、ロシアも他の国々と同じように、アサド体制に背を向ける時が来るのではないか。
 ロシアはそのことによって、アサド体制崩壊後のタルトース港の利用権を、維持しようとするのではないのか。つまり、シリアに対するロシアの対応の変化が、近い将来、アメリカとの取引材料に、なるのではないかということだ。アメリカもロシアもシリアのために、戦争をする気は毛頭無かろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 13:32 | パーマリンク

2012年02月24日

NO・2239「ムバーラク判決近付く・エジプトマスコミの意見」

 エジプトのムバーラク前大統領に対する判決が、6月2日に下されることになったが、判決が下る前に、エジプトの各マスコミが自説を述べている。そのことは、大衆の意向によるだろうし、大衆はマスコミの影響を、受けることになろう。
 したがって、ムバーラク前大統領に対する判決は、多分にマスコミや大衆の意向を、反映したものになり、罪を罰するというのではなく、憎しみを持って罰することになるのではないか。それは法の公正という立場から考えた場合、極めて問題のあることであろう。
 エジプトのマスコミは、それだけの重責を担っているのだが、現段階で、裁判の判決をどうしたいのであろうか。あるいはエジプト国民は、どのような判決を望んでいるのであろうか。

:アルアハラーム紙(政府所有)
―ハビーブ・アドリー前内相はハマースやヘズブラの関与を力説している。(発砲事件の多くは、彼らによるものだとする、ムバーラク前大統領やハビーブ・アドリー前内相に対する擁護。)

:アッドストール(民間企業の発行)
―ハビーブ・アドリー前内相と彼の部下アハマド・ラムジーは処刑されるべき。

:アルワフドワフド党所属反体制)
―ムバーラクは絞首台に向かう。

:アッシュルーク(個人所有)
―ムバーラク判決はショックを起こす。

:マスリ・アルヤウム(民間紙)
―ムバーラクは巧妙だ、処刑されれば支持派が狂気し、処刑されなければ大衆が騒ごう。彼は1か月前に撃たれて死ぬべきだった。

:アッタハリール(民間紙)
―ムバーラクは国民の流血を望んでいなかったと語っている。

:アル・ジュムフーリーヤ(政府系紙)
―ムバーラクの現実の姿があらわになった。

:ロウズルユーセフ(政府系誌)
―裁判所でベッドに横たわるムバーラクは、オスカーを受賞するにふさわしい最高の役者。

 これらの論評をどう理解するかは、読者個々人にお任せしよう。一言言えるのは、ムバーラク大統領に対して、あまり擁護の声は大きくないということだ。


投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:29 | パーマリンク

2012年02月23日

NO・2238「6月2日・ムバーラク裁判の判決が下るが」

 昨年起こったエジプトの革命は、900人弱(850人)の犠牲者を生んだ。そのため、ムバーラク前大統領は殺人者として、裁判にかけられている。もちろん、当時のハビーブ・アドリー内務大臣や、ムバーラク前大統領の二人の息子も、同列に並べられている。
 これは取りようによっては、復讐裁判ということになるのではないか。大衆の怒号の前に、そうした冷静な意見は、なかなかエジプト社会では、出て来難いようだ。
 昨年、エジプトへ行き、友人と話しているなかで、今回のエジプト革命の実態の一部を、耳にすることができた。友人が語っていたのは、次のような点だった。
1:犠牲者の多くは各地の警察署を襲撃したおりに、発砲されて死亡した。
2:アメリカ大使館からカイロの中心部にある、カイロ・アメリカ大学に武器が運び込まれ、その武器でデモ隊に向けて発砲した者がいた。
 真偽のほどはわからないが、彼の友人は警察の幹部であり、でたらめとは思えない部分がある、と聞き留めていた。
 6月2日にムバーラク裁判の判決が出るが、それを前に、これらの点が表面に出始めている。
1:外国人がデモ隊に向かって発砲した。
2:カイロ・アメリカ大学の警備員がデモ隊に向かって発砲した。
3:ハマースやヘズブラのメンバーが、刑務所を襲撃をしたときに発砲した。
 ムバーラク大統領は政治のベテランであり、軽々にデモ隊に対して、発砲を許可するようなことは、なかったと思われる。したがって、警察がデモ隊に発砲したとすれば、それは彼らが危険な状態に陥ったからであり、ムバーラク大統領の命令によるものでは、なかったのではないか。
 以前に、内務大臣が警察に対して、発砲を許可したか否かということが、取りざたされ、彼に対する死刑判決を要求する声が上がった時、もし、内務大臣が発砲を命令したのであれば、ムバーラク大統領はこのことでは、無罪だという意見があった。
 最近になって、ムバーラク大統領に似せた人形を、絞首刑にいている写真が報じられているが、決して品のいいものではないし、こうした行動は冷静な判断によるものとも思えない。
 ここで挙げたようなことが理由で、もし、ムバーラク前大統領が無罪、あるいは軽い罪に処せられるようなことになれば、エジプトの大衆やムスリム同胞団のメンバーは、大反対の抗議集会を開こう。
そこにはひとかけらの冷静さもない。魔女狩り裁判のようなものではないか。そこにあるのは大衆の感情の爆発だけだ。大衆の激昂の流れというものは、実に怖いものだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 13:33 | パーマリンク

2012年02月22日

NO・2237「イエメンに33年振り新大統領登場だが」

 アリー・サーレハ大統領が、33年間に渡って支配してきたイエメンで、大きな変化が起こった。昨年に始まる反アリー・サーレハ大統領の国民運動は、アリー・サーレハ大統領がアメリカに治療に行ったことによって、新大統領選挙が可能となり、実施された。
 結果は、明確にアリー・サーレハ大統領体制に、終焉を告げるものであり、同時に、アブドルラッブ・マスール・アルハーデイ氏が、新大統領に選出された。これでめでたしめでたしと言いたいが、どうもそうでもなさそうだ。
 選挙の投票では、南部イエメンで反対行動が起こり、投票所の多くが途中で閉鎖したり、投票箱が持ち去られたりした。そのなかでは、怪我人や9人の死者も出ている。
 今回の大統領選挙は、アリー・サーレハ大統領が国外に出たのを機会に、大急ぎで決定され、実施されたもののようだ。したがって、大統領立候補者は1人であり、イエメンの大統領選挙はアブドルラッブ・マスール・アルハーデイ氏に対する、信任投票のような形になった。
 この新たな大統領が、実は問題がある人物のようだ。彼は南イエメンの軍学校を卒業し、軍人となったが、その後のイエメン統一の動きの中で、アリー・サーレハ大統領に取り上げられ、国防大臣に就任した後、副大統領に就任しているのだ。そのうえ、イエメンの与党の事務総長にもなっている。
 つまり、バリバリのアリー・サーレハ大統領の、子飼いの人物だということだ。彼が新大統領に就任したということは、アリ−・サーレハ大統領の影響が、今後もイエメン政治に及ぶということであろう。
 彼ばかりか、アリー・サーレハ大統領の子息や甥が、現在なおイエメンの軍や治安部分を、しっかりと握っているのだ。そうであるとすれば、新たに選出されたイエメンの大統領は、アリー・サーレハ前大統領の傀儡でしかない、ということではないのか。そうであることを分かっているからこそ、反アリー・サーレハ派は徹底的に、今回の選挙に反対したのであろう、
 そこで気になるのは、これまでアリー・サーレハ前大統領を、全面的に支援してきたサウジアラビアが、今回の選挙でもアブドルラッブ・マスール・アルハーデイ氏支持に、回っていたようだ。そして、今回の選挙結果に、アメリカのオバマ大統領が、祝意を送っている。
 つまり、イエメンの選挙はサウジアラビアとアメリカの影が、色濃く影響していたということであろう。そして、ムスリム同胞団もそれを支持していた、ということのようだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:08 | パーマリンク

2012年02月21日

『これから50年、世界はトルコを中心に回る』の訂正個所

各位へ
 昨年は『革命と独裁のアラブ』をダイヤモンド社から出版し、好評いただき、ありがとうございました。今年はトルコをテーマに『これから50年、世界はトルコを中心に回る』をプレジデント社から2月15日に出版しました。
有り難いことに早速、日本在住のトルコの友人たちが本を読んでくれ、丁寧に間違いと思われる個所を、指摘してくれました。
その指摘のうちの幾つかは、日本人からすればあまり問題のないことだったので、そのままにしますが、問題と思われる個所については、この場を通じてお伝えしたいと思います。
『訂正個所』
P/49(右から四行目)
「タリーカ」
ヒズメットがタリーカではない、ということは通説になっています。ヒズメットとタリーカの間には多くの相違点あるとされますが、主なものとして次のようなことが挙げられます。
タリーカのアプローチは、社会から内へという方向性があります。つまり、タリーカに外から入ることは難しく、タリーカのメンバーになるためには儀式が必要です。
これに対し、ヒズメットは、社会の中で生まれ、また社会に受け入れられることによって広がります。参加も自由です。入ることも簡単で、退会も個人の判断によって簡単にできます。登録もありません。
タリーカには、シャイフがいて、このシャイフに特定の系譜(スィルスィラ)があります。またタリーカには、ダルガー(修道場)が必要です。タリーカには特定の儀式(ズィクル)があり、タリーカの信奉者はこの儀式に参加しなければなりません。
ヒズメットは、これらの特徴をもっていません。たしかにヒズメットは、寛容、兄弟愛、神への愛など、スーフィズムから多大に思想的な影響を受けてはいますが、組織的には影響を受けていません。
また、ヒズメットにあってタリーカにない特徴もあります。たとえば、ヒズメットは幅広い分野で活躍しています。教育活動、メディア、宗教間対話、銀行等です。ヒズメットが社会のあらゆる側面に変化を起こす、一種の社会運動であるのに対し、タリーカは社会の一部の人たちの間でのみ機能する、個々人の心の中に変化を起こすものであると言えます。社会にオープンなアプローチはしません。
:タリーカは秘密結社という意味合いが強いので訂正します。
P/52
右から2行目
「14歳になったとき。。。アナトリアのモスク」
実は、トルコ全土ではなく、父がイマームだった村のモスクのみに説教をしています。アナトリアのモスクへの説教師のことは30年代以降のことです。
:これは訂正します。
右から2行目
「聖職者」
イスラームでは、聖職者という職位はありません。確かに、イマームいう存在がありますが、これは聖職者ではありません。イマームは、実際には誰でもなることができます。イマームという言葉を訳すならば、「モスクの宗務責任者」にあたります。同じページと次のページに「イマーム」の称号が使用されていますので、これに統一したほうが良いと思いました。
:イスラームには聖職者という職業はないが宗教に関係して一生を過ごす人もいるわけですから日本人の認識では聖職者となると思います。
右から8行目
イラクのフセイン、エジプトのナセル等と並べて比較するのは誤解を起こす恐れがあります。彼らは政治家であって、結果的には武力によって多くの人を死なせました。ギュレン氏には、政治的な目的がなく、生命を重視する姿勢など、彼らとは色々な面で異なります。この比較は無い方が良かったのではないでしょうか…。
:これは誤解を生じないために訂正します。
P/62
右から4行目から
「そう断言する者もいる。お分かりのようにギュレンという存在は半ば伝説化され、今や神格化されている感がある」
神学的に、イスラームは人間を神格化しません。神と人間の間には明確なラインがあるのです。それは、神は創造主で、人間はその被造物であるという事です。人間の中で最も素晴らしい人間は預言ですが、ギュレンは預言者ですらありません。彼は、一人間でありながらも社会秩序の崩れを非常に危惧する人なので、同じような問題意識を持つ人たちから特別に尊敬されているだけです。誰も彼を神のような存在などと思うことはありえません。
:日本では立派な人のことを、神のようなという表現をしますから、イスラム世界の認識とは少し異なります。神格化されたという言葉は、非常に尊敬されているという意味でもあります。しかし、説明が必要でしょうから訂正します。
右から6行目から
「政治や経済問題に関する講釈」
実は、彼は、基本的に人々と安易に合いません。許可がなければギュレンを訪問するこが不可能です。どんな人でも、どんなことでも話はしません。多くの場合は、瞑想的な生活を送っています。人々と会うのを拒否することは多いとされています。
:実際には相談に来ている人たちがいます。ただ秘密裏である場合が多いです。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 17:27 | パーマリンク

NO・2236「シリア・ビジネスマンが語る体制の弱体化」

 1961年から1963年まで、シリアの大統領を務めた人物に、アルコドスイーという人物がいた。彼の子息はいま、シリア人ビジネスマンとして、活躍している。
 このシリア人ビジネスマンの名は、ファイサル・アルコドスイー氏だ。彼はビジネスマンの冷静な目で、いまのシリアをどう見ているのであろうか。彼はシリアの体制内部で、次第に分裂が始まっているとみている。
 同時に、シリアの経済は各部門で、大幅な落ち込みが生じているとも語っている。例えば、観光収入はシリア国内が不安定になって以来、昨年の4月からほとんどゼロに落ち込んでいる。
 シリアにとって観光業の収入は、GDPの15パーセントを占めていたのだ。それだけに、観光業に関係する職業は、壊滅的なダメージを受けているということであろう。シリアの旅行会社をはじめとし、タクシー、町のレストラン、土産物屋、そしてこれらと結び付く農業、軽工業分野も、ダメージを受けているということであろう。
 シリアにとってのもう一つの、主要な外貨収入源となっているのは、石油の輸出だが、昨年11月から輸出が、停止状態にあるということのようだ。石油輸出はシリアの主要外貨収入源であり、GDP の30パーセントを占めていたのだ。
 この結果、シリアの外貨準備高は220億ドルあったものが、いまでは100億ドルにまで、落ち込んでいるということだ。しかも、この外貨準備高の減少は、極めて早いスピードで進んでいるということだ。
 このことに加え、シリア政府内部では、次第に分裂傾向が、顕著になってきており、イドリブ、ホムス、デラアと言った地方都市では、顕著にその傾向が表れ始めている。
 シリアの主要なビジネスマンは、近い将来に対する不安から、シリアを離れる者が増加してもいる。そのことは同時に、多くの資金が外国に逃避する、ということでもあろう。
 アメリカやヨーロッパ各国は、シリアに対する経済制裁を強化しており、シリアの経済の落ち込みは、ますます進むということであろう。その結果、シリアは外国が軍事介入しなくても、体制の崩壊が起こるかもしれない。
 シリアもイランも、経済制裁は相当に国内状況に響き、混乱と対立が、顕著になっていこう。デニス・ロス氏はイランへの経済制裁が、応分の効果を生んでいると語ったが、シリアも同様であろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:07 | パーマリンク

2012年02月20日

NO・2235「ご存じだろうかKH・アドナーンが死の一歩手前だということを」

 ハデル・アドナーン氏は34歳のパレスチナ人で、現在イスラエルの刑務所に服役地中だが、最近彼の体調が著しく悪化したことから、刑務所の病院に移されたようだ。
 ハデル・アドナーン氏はパレスチナの、イスラミック・ジハードのスポークスマンを務めていたが、昨年12月17日イスラエル軍が家宅捜索し、逮捕されている。
以来、彼は正当な逮捕拘束理由を伝えられないままに、イスラエルによって拘留されているのだ。このことに抗議し、彼は64日前からハンストに入った。既に64日が経過しており、彼は食事を全くとらないために、体重が3分の1減量したということだ。
イスラエル側は彼を死なせないために、注射であろうが、一部の栄養素を彼に注入しているようだ。しかし、基本的にはそれが延命に繋がるかどうか分からない。つまり、ハデル・アドナーン氏は何時死ぬかわからない状況に、現在あるということだ。
逮捕理由を伝えられないままに、イスラエルの刑務所に、長期間入れられている、パレスチナ人の数は何千人にも上る。今回の彼のハンストが、述べるまでもなくガザ地区でも、ヨルダン川西岸地区でも、大きな関心を呼び、彼と連帯するデモが、両地区で繰り返されている。
もし、このままらちがあかず、イスラエルの裁判所も彼に対する、明確な罪状も示せずに時間が経過し、ハデル・アドナーン氏が死ぬようなことになれば、日本はともかく、世界の人道的組織が動き出すのではないか。そして、一般人の間からも、イスラエルに対する非難の声が、上がることが予測される。
そして、不幸にして彼が死亡した場合、パレスチナ人の間からも、激しいイスラエルに対する抗議の行動が、起きることは必至であろう。その抗議の行動のなかには、武器を持っての抗議行動も、含まれるということだ。
ハマースの活動が、次第にヨルダン川西岸地区でも、広がってきているなかで、今回のハデル・アドナーン氏の命をかけた抗議のハンストは、大きな波紋を呼び起こすものと思われる。
日本人はこのことを知らずに、済まされるのだろうか。日本のマスコミは、何時、この事実を日本人に伝えるのであろうか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:51 | パーマリンク

2012年02月19日

NO・2234『イランがサウジにイスラエルの核擁護と噛み付く』


 サウジアラビアの新聞がイスラエルの核兵器保有を、擁護する内容の記事を掲載したことで、イランがこれにクレームを付けた。
 イランは先週核燃料の濃縮に成功し、25パーセント程度だった濃縮度を、50パーセントにまで高められている。このことは、イランが核燃料の国産化に、ほぼ近づいてきていることを意味している。
 以前からサウジアラビアは、イランが核兵器を持つのであれば、自国も核兵器を持たなければならない、と主張してきていた。イランの脅威を強く感じているサウジアラビアとすれば、当然の反応ではあろうが、そのことは将来、中東の幾つもの国が、核兵器を保有するようになる、可能性が高いということであろう。
 例えば、技術的にはエジプトが可能であろうし、資金的には、ほとんどの湾岸諸国は、核兵器の購入が可能であろう。そのような危険な状態が発生しないためには、たとえ、イランが核兵器を製造する意志がなくても、核開発は将来の核兵器保有に繋がるとして、非難する必要があるのかも知れない。
 今回、イランがサウジアラビアのアッラーイ紙の、ユーセフ・クワイリト副編集長が書いた記事に、クレームを付けたのは、ユーセフ・クワイリド氏の原稿のなかに、イスラエルが何時も主張しているのと、同じ文言があったからのようだ。
 つまり、『イスラエルはアラブ諸国に囲まれている。アラブ諸国の人口はイスラエルの人口をはるかに上回っている。イスラエルは国土が狭いために、短期戦で勝利しなければ、国家の存亡に関わる危険性がある。従って、イスラエルは特殊な兵器を所有する権利がある。』というものだ。
 アッラーイの原文を読んでいないので、確たることは言えないが、このイスラエルの論理は、ある意味では当然ということであろうから、サウジアラビアの新聞が、似たようなことを書いたとしても、それはイスラエル擁護とは、言い切れないのではないか。
 イランが今回このことを取り上げた裏には、イランは核燃料の濃縮に成功した。従ってこれからは核燃料棒を輸入しなくても、国内生産したもの十分でまかなえる。ということをアピールしたかったのではないか。
 サウジアラビアはイランの核兵器製造を、真剣に恐れていようから、イランの核兵器(?)対抗する核兵器という意味で、イスラエルの核兵器保有を黙認するのは、当然のことかもしれない。
 ただ、忘れてならないのは、アメリカとイスラエルが過剰なまでに、イランの核開発に対する、敵対的発言を繰り返しているという点だ。この危機的状況のなかでこそ、イランにも、サウジアラビアを中心とする湾岸諸国にも、イスラエルにもアメリカにも、冷静さを保って欲しいものだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:02 | パーマリンク

2012年02月18日

NO・2233「ムスリム同胞団は大統領にA・ムーサ氏を推す」


 アラブの新聞が伝えるところによれば、エジプトのムスリム同胞団は次期大統領に、アムル・ムーサ氏を推薦するようだ。すでに、ムスリム同胞団はアムル・ムーサ氏に対して、打診を始めているようだ。
 ムスリム同胞団がアムル・ムーサ氏を、大統領に推薦しようと考えたのは、世俗派のエジプト国民からも、支持を受けることを、考えた結果ではないか。アムル・ムーサ氏は以前、ムバーラク大統領よりも国民に愛されていた。
そのことが、ムバーラク大統領に危機感を抱かせ、ムバーラク大統領はアムル・ムーサ氏を外相から外し、アラブ連盟の事務総長にしたという、噂が流れていたほどだ。
ムスリム同胞団はこのところ、軍最高評議会との良好な関係を、維持しようと努力している。エジプト国内が混乱したときに、一番頼れるのが軍だからであろう。同時に、アメリカ側からも軍との良好な関係を、維持するよう指図を受けているのではないか。
その軍最高評議会のトップであるタンターウイ国防相は、アムル・ムーサ氏とは旧知の仲であり、ムバーラク時代に一緒に仕事をしている関係だ。外交は軍事力を背景にしなければ、力を発揮できないのは、世界中何処も同じだ。
つまり、元外相のアムル・ムーサ氏とタンターウイ国防相は、これまでに何百回となく、意見交換をしてきた間柄だということだ。従って、アムル・ムーサ氏が大統領に就任することは、タンターウイ国防相も支持すると思われる。
現在のムスリム同胞団の力を考えると、アムル・ムーサ氏が大統領に就任すること、はほぼ確実なのではないか。それが一番妥当な大統領人事だと、私も思うのだが。
問題は、若手の世俗派がどう考えるかだ。現在でも、ムバーラク時代と同じ官僚たちが、エジプト政府の要職にあり、革命が達成されたにもかかわらず、なんら変わっていないというのが、最近の世俗派の判断だ。
今後、こうした不満を若手世俗派のメンバーが、どうエジプト国民をリードし、新しい政治機構を構築する方向にリードしていくのか。それが彼らには出来るのか。そのことが出来た場合、それでは新しく官僚に就任する人たちに、国家を運営していく能力があるのか。不安と難問が山積している
他方、ムスリム同胞団政府に対して、サウジアラビアやカタールはある程度の経済支援をするものと思われるが、それが何処まで大衆の生活向上に結びついていくのか、今の段階では判断が出来ない。これもまた不安だ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:54 | パーマリンク

2012年02月17日

NO・2232「カダフィの深謀遠慮と言っては褒めすぎか」

 カダフィ大佐は『国民は誰もが家を持つ権利があり、車を持つ権利があり、銃器を持つ権利がある』と語っていた。そのため、大量の軽火器が輸入され、リビア国民はその使い方を訓練され、誰もが機関銃や拳銃を、入手できる状況にあった。
 リビア各地には武器庫が建設され、そこには大量かつ多種類の武器が格納されてあった。それらの武器が今回の革命騒ぎの中で大活躍し、ついにはカダフィ大佐の命を、奪うに至ったのだ。
 しかし、話はこれで終わりではない。この革命を機会に武器を手にした男たちは、銃口から飛び出す弾丸の音と、硝煙に中毒になったのであろうか。革命が達成された今も、だれも銃器を手放そうとは考えない。
 誰もが明日への不安から、自分と家族を守るために、重火器を持ち続けているのだ。街中にはこの重火器を車に積んだ若者たちが、我が物顔で走り回っている。まさに傍若無人の様相だ。
 カダフィ大佐の息子の一人サアーデイ・カダフィ氏は、はこうしたリビアの混乱を見てか、最近、反革命の動きを起こすと宣言し、リビア国内には多くのカダフィ支持者がいると語り、臨時政府(NTC)内部にも、仲間がいると語っている。
 以前に、カダフィの隠し財宝の話を書いたが、それは二男のサイフルイスラーム氏が知っているとされ、カダフィ大佐の住居バーブ・アジージーヤ内を、探し回ったという情報が流れた。
 そこばかりではあるまい。NATOと反カダフィ革命に対し、長期戦を考えていたカダフィ大佐は、リビア各地に資金と武器を隠匿しているのであろう。それが今後、次第に独自の意思を持ち始め、リビアの内政を動かしていくかもしれない。いまサイフィルイスラーム氏を捉えている、ジンタンの部族は、場合によっては、サアーデイ・カダフィ氏の反政府蜂起に、加わるかもしれない。
 臨時政府は国内の安定化、選挙の実施と、西側先進国が描く計画に沿って、リビアを改善していきたいと考えているようだが、実際にはそうスムーズには行くまい。
 それどころか、リビアはこれから、2転3転するのではないかと思われる。リビア国民の生活は、日に日に苦しくなっているようでもあり、社会は不安定の度を増しているようだ。
リビアよりは民度の数段高いエジプトでも、最近になって『ムシュファーヘムハーガハーリス』つまり『何がどうなっているのかさっぱり分からない』という言葉がはやっているそうだ。『革命は一体何だったのか?』と誰もが思う昨今であろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:01 | パーマリンク

2012年02月16日

NO・2231「オリバー・ストーン監督の子息イスラム教に入信」


 数々の世界を魅了した映画を製作した、オリバー・ストーン監督の子息セイン・ストーン氏が、イランのイスファハーンを訪問し、イスラム教シーア派に入信した。
 オリバー・ストーン監督の製作した映画は多数あるが、日本でも大ヒットしたものとしては、ウオールストリート、ブッシュ、ワールドトレードセンター、アレキサンダー、プラトーンなどを上げることができる。
 オリバー・ストーン監督自身はユダヤ教徒であり、彼の妻はキリスト教徒だ。ユダヤ教徒の父とキリスト教徒の母の間に生まれた、セイン・ストーン氏がイスラム教徒になった理由については、明らかになっていない。
彼はイスラム教に入信した後『キリスト教もユダヤ教も否定してはいない。いずれの預言者もイスラム教では、預言者として認めている。私はムハンマドを預言者として受け入れ、他の預言者たちも受け入れている。』と語ったということだ。
この言葉から感じられるのは、彼がユダヤ教徒の父と、キリスト教徒の母を持つことによって、精神的に苦しい立場に、あったのではないかということだ。結果的に、全ての天啓宗教の預言者を認めているイスラム教が、彼にとっては救いだったのかもしれない。
セイン・ストーン氏は27歳で、イスラム教徒の名前は、アリーと命名されたということだ。彼がこれからユダヤ教社会や、キリスト教社会でどう受け止められるかが、興味深いところだ。イスラム教世界よりも厳しいのではないか、とも思われるが。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 22:46 | パーマリンク

2012年02月15日

NO・2230「2月10日の大衆デモは失敗・エジプトは安定化に向かうのか」


 エジプト革命の火付け役であった若者層や、それ以外の社会運動家による、体制に対する抵抗運動が、結果的にエジプトのムバーラク体制を、打倒することに成功した。
 しかし、革命が達成された後で、彼らが直面した現実は、どうも彼らが期待したものとは、全く異なるものだった。ムバーラク体制時代と変わらない、官僚による国家支配、新たな権力層としては、ムスリム同胞団やサラフィ運動といった、イスラム原理主義組織の台頭が目立っている。
 多分、現段階で若者層や世俗派の改革運動家たちは、彼らが期待した変化とは、全く異なる現実を前に、戸惑っていることであろう。そこで新たな革命運動を、起こそうと動き始めた。
 だが、どうも、国民の反応が悪いようだ。2月10日の金曜日に呼びかけられた集会には、あまり人が集まらなかったようだ。この集会に10万人単位の動員に成功していれば、流れは大きく変わった可能性があるのだが、そうはならなかったのだ。
 一体、何が世俗派の新たな動きを、抑えているのであろうか。それは革命の結果が、エジプトの大衆にとって、あまりにも惨めなものだったからではないか。失業率が上がり、物価が上がり、人口の10パーセント以上の人たちの、生活を潤していた、観光産業がダメージを受け、犯罪が激増しているのだ。
 世俗派が反体制運動を起こした当初、『キファーヤ』という言葉が流行った。それは『もう十分だ』という意味で、ムバーラク体制に飽き飽きしたという、反対の意味を込めていた。
 しかし、今になってみると、革命に対しても『キファーヤ』という感情が、エジプト国民の間で、広がっているのではないだろうか。そして、取り敢えずの間、ムスリム同胞団やサラフィ運動に、エジプトの政治を任せてみよう、ということではないのか。
 そのムスリム同胞団やサラフィ運動のメンバーによって、エジプトの政治が国民の期待するようなものに、改善されていくという保証は何処にも無い。逆に、悪くなっていく可能性の方が、強いのではないか。
 軍や警察、治安部隊が動くことを嫌う、世俗派の人たちのデモに、イスラム原理主義政府が強硬に、軍や警察を動員すれば、反発が激しくなり内乱状態に、陥る危険性があろう。
 外国の援助もあまり期待できないし、観光産業の復活にも、治安状態が良くないままでは期待できまい。国民が求める生活向上の資金を、ムスリム同胞団が結成する政府は、何処から持ってくるというのだろうか。
 混乱な状況、社会的不安定な状況が、エジプトでは今後も続く、と予測すべきであろう。若者たちは今後、新たに登場するムスリム同胞団政府に対して、抵抗を続けていくものと思われる。若者たちは何処の国でも、我慢が出来ず行動に出るのだから。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:41 | パーマリンク

NO・2228「温家宝首相シリアには関与せずと語る」

先に国連で開催された、シリアの内戦に対する対応をめぐって、中国とロシアはシリアに対する、制裁に賛成しなかった。それはそうであろう。社会主義国同士ということもあり、中国とシリアとの関係は良かったのだ。
 その後、EUの代表団が中国を訪問したが、当然のことながら、シリア問題が取り上げられたようだ。そのなかで中国の温家宝首相は、これまでとは少しニュアンスの異なる、発言をしている。
 それは、シリア問題で、中国がアサド体制を支援することはない、という新しい立場を匂わせたからだ。これはやはり大きな変化であろう。シリアにしてみれば、世界中から非難され、孤立しているなかで、中国やロシアがせめもの、救いだったからだ。
 もちろん、中国政府の重鎮である温家宝首相は、穏やかな内容で、立場の変更を伝えている。曰く『いま一番重要なことは、戦争やカオスを防ぐことです。そしてシリア国民が災難に遭遇しないことです。』
 中国にしてみれば、シリア問題は単に、中国とシリアだけの問題ではなかろう。イランとアメリカ・イスラエルが軍事的に、緊張しているなかで、ペルシャ湾の出口であるホルムズ海峡が、閉鎖されるようなことになったり、イランが軍事攻撃を受けることも、想定に入れておかなければならないだろう。
 そうなると、サウジアラビアからイラン分の石油を、買わなければならなくなるが、サウジアラビア政府は反アサドの立場にある。そうなると、アサド政権を明確に支持するということは、中国にとってアサウジアラビアとの関係上、決してよくはないだろう。あるいはそのことが、今回のような立場の変化を、中国政府に生ませたのかもしれない。
 国際政治はクモの巣のように入り組んでおり、エイヤッとばかりはいかない、ということであろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:24 | パーマリンク

2012年02月14日

NO・2227「イラク人のシリア人に対する義侠心」

 2003年に、イラクがアメリカ軍によって攻撃され、サダム体制が打倒された後、イラクの国内は民主化が進むのではなく、内乱状態に陥った。そのため、多くのイラク人が難民として、シリアに逃れて生活していた。
 加えて、イラク人の間で、シーア派対スンニー派の宗派対立が起こると、多くのシリア人がイラクのスンニー派の人たちに対し、武器や資金、戦闘員を送ってくれた。
 いまイラクの国内で、この時のシリア人の恩義に報いるべきだと考える、イラク人スンニー派の人たちが増えている。ある人たちは、煙草の空箱に銃器の部品を詰めて密輸しているし、ある人たちは義捐金を募っているようだ。
 イラク人スンニー派の人たち、なかでもモ−スルやアンバルの人たちは、義勇軍を送り出し始めている。このためモースルでは、これまで300ドルで取り引きされていた機関銃が、2000ドルに跳ね上がったということだ。
 アラブの国内問題、その結果としての戦闘は、国家や国境をまたがって、展開するようになってきている。英仏によって人工的に引かれた国境線をまたいで、同じ部族の人たちが居住しているのだから無理もない。シリアとイラクの場合も、それに当てはまる。イラクの部族の人たちが苦しい時には、シリアの同じ部族の人たちが支援を送り、その逆もあるのだ。
 イラクとシリアばかりではなく今回のシリアの内乱のなかで、レバノンとシリアとの間でも、同じような支援活動が見られる。ここでも、国境をまたいで同じ部族が、棲みついているのだ。1975年に始まった、レバノンの15年に及んだ内戦時、シリアはレバノンからの難民を、受け入れてくれていたのだ。
 問題はイラクのスンニー派国民が、シリアのアサド体制に対抗する勢力を支援していることが、イランの利益に直接的に、関わってくるということだ。シリアのアサド体制は、イランと強い連帯関係にあり、シリアはイランのアラブ世界台頭の、橋頭保になっていたのだ。
 そのシリアを死守することは、イランの中東戦略上、極めて重要なことだ。このためシリアに向かうスンニー派イラク人を、イラク国内にとどめ置くために、イランはイラクのシーア派に、スンニー派との戦闘を始めさせるかも知れない。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:47 | パーマリンク

2012年02月13日

「トルコに関する本を出版しました」

昨年は『革命と独裁のアラブ』をダイヤモンド社から出版し、好評いただきました。ありがとうございました。
今年はますます重要になるトルコをテーマに『これから50年、世界はトルコを中心に回る』をプレジデント社から2月15日に出版しました。
トルコはアメリカやヨーロッパが不況下にあるにもかかわらず、8パーセント台の成長率を維持しています。その秘密は周辺諸国との友好的な関係を構築していることと、ギュル大統領、エルドアン首相、ダウトール外相の努力のたまものだと思われます。
日本が中東、中央アジア諸国とのビジネスを展開していく上で、トルコは最も信頼すべきパートナーだと思います。『トルコ大躍進7つの理由』を説明し、日本のビジネスマンの皆さんのお役に立てたいと思います。ご一読ください。


投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:37 | パーマリンク

NO・2226「中東7カ国の体制打倒計画はオバマでも進行中」

 ブッシュ・ジュニア大統領時代に始まった、アメリカによる中東の独裁体制(?)打倒計画は、オバマ大統領の時代になっても、続けられているようだ。
 述べるまでもなく、この中東独裁体制打倒計画は、チェイニー副大統領やネオコンの面々によって計画され、実行されてきたものだ。最初は、イラクのサダム体制が、2003年に打倒された。
 この中東独裁体制打倒計画とは、アラブの6カ国とイランの体制を、打倒するというものであり、実際に、オバマ大統領の時代に入り、チュニジアのベンアリ体制、エジプトのムバーラク体制、リビアのカダフィ体制が打倒された。
 その後も、シリアとイランがこの計画の対象に、なっているということだ。この計画ではイラク、イラン、リビア、シリア、スーダン、レバノンがその対象の体制とされていたが、これらの国以外でも、エジプトの体制が打倒され、チュニジアも打倒されている。
 そうなると、オバマ大統領時代に入って、打倒の対象となる国は、8カ国ということなのであろうか。あるいはエジプトやチュニジアが、例外的に加えられているということは、これら以外の国でもありうる、ということであろうか。
 今の段階で、打倒されそうな国としては、内乱状態にあるイエメンやバハレーンが挙げられるが、この二つを加えると10カ国、それ以外にも不安定化の方向にある国としては、11カ国目にヨルダンが挙げられよう。
 アメリカが当初考えた7カ国の体制打倒が、8カ国で進んでおり、変革途上にあるのが2カ国、そして危険レベルに達している国が1カ国となっているのはアメリカの計算違いであろうか。
 もし、アメリカの計算違いの結果だとすれば、それは今後、アメリカの中東地域における利益に、どう影響を及ぼしてくるのであろうか。
アラブ人は通常穏やかだが、激こうすると、止まらなくなる性格を、持っている。意外だったチュニジアの革命は、まさにその典型であろうし、エジプトでもムバーラク体制が打倒されるとは、デモの首謀者たちも、予測していなかったのではなかろうか。
これから先にも、似たような現象が起こりうるだろう、つまり、アメリカが想定していなかった国で、体制打倒の動きが始まり、想定していた国では、失敗に終わることもありうる、ということだ。
アメリカが想定している体制打倒対象国には、イランも含まれているが、意外に希望通りには、いかないかもしれないし、逆に、アメリカが望んでいない(?)サウジアラビアの体制に、不安定な状況が、発生してくるかもしれない。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:23 | パーマリンク

2012年02月12日

NO・2225「A ・ダウトール外相イラン攻撃はナンセンス」


 トルコのアハマド・ダウトール外相が、ワシントンのCSIS(国際戦略研究所)で講演を行い、アメリカやイスラエルが、声高に叫んでいるイラン攻撃は、ナンセンスと切って捨てた。
 彼はトルコの立場を明確に語り、トルコがアメリカの唱える、イランのエネルギー資源禁輸に賛同しないことを、明らかにした。彼はトルコのガスは、ロシアとイランに依存しており、それを断つことはありえないと語り、石油禁輸もまた、ありえないと語った。
 また、アハマド・ダウトール外相は、トルコが中東地域での、新たな紛争を望んでいないし、いかなる新たな戦争に対しても、それを認めることは無い、とも語った。
 アメリカのレオン・パネッタ国防長官が、イスラエルのイラン攻撃の可能性について言及した『イスラエルは4月あるいは5月、あるいは6月にイランを攻撃しよう。』という発言についても、明確な反対の立場を示している。
 トルコはエルドアン首相体制下で、周辺諸国との良好な関係維持を、外交の最大目標としており、その対象国のなかには、当然のことながら、イランも含まれている。
 正直なところ、このトルコの立場は、ヨーロッパ諸国から無言の支持を、受けているのではないか。ヨーロッパ諸国は苦しい経済状況下で、イランのエネルギー資源を輸入できないことになれば、ますます状況は悪化するからだ。
 なかでも、スペイン、ポルトガル、ギリシャといった国々は、イラン石油に対する、依存の度合いが高いだけに、これを禁輸にするということは、ますます経済を悪化させることになろう。
 一見、アハマド・ダウトール外相の発言が、唐突かつ、乱暴なように思えるのだが、実のところ、多くの国々から支持されているのではないか。アメリカがそれにも関わらず、トルコに圧力をかけ、イラン石油を禁輸させようとすれば、アメリカは世界中を、敵に回すことになるのではないか。
 このトルコの勇気ある行動に、日本は呼応すべきではないのか。ロシア、中国その他の国々も、イラン石油を禁輸するつもりは無いのだから。日本がそれに乗っても、例外的にアメリカから制裁を、受けることはあるまい。


投稿者: 佐々木良昭 日時: 23:08 | パーマリンク

2012年02月11日

NO・2224「ハマース・ファタハ連合はパレスチナ問題にマイナス」


 ハマースとファタハが連合して、統一政府を作ることに合意した。それまではパレスチナが分裂状態にあり、パレスチナ内部には、二つの政府と二人の首相が存在していた。従って、今回パレスチナの2大勢力が統一されたことは、一見パレスチナ内部の力を、倍加したかに見えるのだが、そうではなさそうだ。
 ファタハは設立当初は武力闘争によって、パレスチナの地を解放するつもりだったが、第一次オイルショックで、アラブの産油国が豊かになると、パレスチナPLOに偽善的寄付が送られるようになり、資金が豊かになって腐ってしまった。以来、ファタハは革命闘争組織ではなく、たかりや集団に成り下がった。
 その堕落が生み出したのが、パレスチナ国家が設立され、イスラエルと隣接して共存するという、二つの国家論であり、第3次中東戦争以前のイスラエルとアラブの接点を、国境とするという67年国境案だった。
 他方、そうしたファタハに失望した、ガザの住民が設立したのが、ハマースだった。ハマースはいまだに、イスラエルという国家を認めず、67年国境案も受け入れていない。時折ハマースが口にする、67年国境案受け入れのニュアンスの発言は、当座の国境として受け入れるが、将来パレスチナはイスラエルに勝利し、パレスチナの全てを領土とする、と考えているのだ。
 このファタハとハマースの立場の違いを、最も明確に認識できているのは、述べるまでも無くイスラエルだ。イスラエルがマハムード・アッバース議長を評価し、ファタハをあくまでもパレスチナの代表として認めるのは、マハムード・アッバース議長が堕落しきっているからであり、彼は金で何とでもなる人物だ、と踏んでいるからに他ならない。
 日本政府がマハムード・アッバース議長に対して、評価するのも同じ理由からだ。一番妥協しやすい人物を担ぎ上げておいた方が、中東で混乱が発生し難くすることが、出来るからに他ならない。
彼の人格や政治手腕を、評価してではないのだ。もしそうではなくて、マハムード・アッバース議長を本心から、評価しているからだと言うのであれば、日本の外務省は全く情報収集能力も、分析能力も無いということであろう。
 イスラエルは冷静な評価を、パレスチナの各組織と人物に、下している以上、今回のファタハ・ハマースの連帯合意は、極めて好都合な出来事として、受け止めているのではないか。イスラエルは『わが国の存在を認めない、ハマースが参加しているパレスチナ政府とは、交渉できない。』と世界に対して説明できるからだ。
 これでイスラエルは当分の間、パレスチナ問題を放置し、シリアやレバノン、イランに対する対応に、全神経を集中できるだろう。世界の国々も当分は、パレスチナ問題を放置しよう。元々パレスチナ問題は、中東の主要な問題でも、イスラム諸国の主要な問題でも無いのだ。
パレスチナ問題が重視されるのは『国内問題を誤魔化すため。』『自国がアラブ世界、イスラム世界の中心だと主張したいため。』などであり、純粋に『イスラムの第三の聖地エルサレムを奪還する闘い。』『アラブの同胞パレスチナ人を支援し解放するための闘い。』などと考えている政治家も運動家も、いないのだ。
皮肉な言い方が許されるならば、ファタハとハマースの妥協による、連帯を生み出す仲介の労をとり、成功したカタールは、その意味で本音を暴露する、偉大な成果を挙げた、ということであろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 22:29 | パーマリンク

2012年02月10日

NO・2223「権力の座近付きムスリム同胞団が穏健路線模索」

 エジプトではアラブの春革命のおかげで、ムスリム同胞団の自由公正党が第一党に踊り出し、サラフィ集団のヌール党が第二党になっている。当然のことながら、イスラム原理主義同士であるこの二つの党は、今後のエジプト政治を協力しながら進めていきたい、ということのようだ。
 しかし、ムスリム同胞団とサラフィ集団との間には、見解の違いが見え隠れし始めている。ムスリム同胞団はあくまでも、世俗的な政治を実施していくことによって、庶民の支持を維持していきたいと考えているが、サラフィ集団はあくまでもイスラムの理念を厳格に貫く方針だ。
 そこでムスリム同胞団は、サラフィ集団をなだめるべく、アーデル・イマーム氏(アラブ世界で著名な俳優)に対し、3カ月の投獄を決めたのであろうが、それだけではサラフィ集団は満足してくれないようだ。
 最近、カイロにあるアインシャムス大学で録画していたのであろう、テレビのシリーズ番組に、イスラム原理主義の学生たちがクレームを付けた。そのシリーズ番組に登場する女優の服装が、イスラム的に問題があるというのだ。
 そうは言われても、テレビ番組制作会社とすれば、既に録画撮りが進んでおりそれをやり直すとなれば、費用がかさむであろうことから、あっさりは受け入れたくないだろう。
 こうした一連のイスラム原理主義と世俗の間で発生してくる、小さな問題の積み重ねが、やがてはい大きな不満を世俗派に抱かせ、暴発する危険性があろう。それで、ムスリム同胞団は同盟相手であるサラフィ集団に対して、穏健イスラムを説得するのであろうが、どうも成功していないということだ。
 ムスリム同胞団のメンバーも、元をただせばサラフィ集団と同じ、イスラム原理主義の思想に基づいているわけであり、苦しいところであろう。この問題の処理がうまく進まず、一般のイスラム原理主義者やサラフィ集団のメンバーが、イスラム原理主義を強く主張するようになれば、エジプトの大衆はムスリム同胞団の政権に対し、強い警戒心を抱くことになろう。
 権力を手にするということが、思いの外に難しい問題を抱え込むということを、ムスリム同胞団はいま実感しているのではないか。そのうえで軍部との良好な関係を維持していかなければ、何時クーデターを起こされるかわからない、という不安もあろう。
 大統領選挙が近付くにしたがい、軍内部には何故今回は軍から大統領が出ないのか、という不満も高まってこよう。エジプトの内政は極めて微妙かつ、複雑な時期を迎えてきているということであろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:32 | パーマリンク

2012年02月09日

NO・2222「エジプト大統領選挙立候補者予測」

 今年エジプトでは、革命後初の大統領選挙が、行われる予定になっている。本来は立候補受付が4月15日の予定だったが、国内で高まる『軍政から民政への早期移行』を求める声に応え、大統領候補届け出と選挙活動は、3月10日から始まるようだ。
 これまで何人もの立候補予測が流れては見え隠れしてきたが、ここで再度立候補が予定されている人士の名前を、挙げてみることにした。
:アムル・ムーサ=前アラブ連盟事務総長でエジプトの元外相。
:アブドルムナイム・アブルファットウフ=ムスリム同胞団から抜けて立候補。
:アハマド・シャフィーク=ムバーラク体制下最後の首相
:ハーゼム・サラー・アブイスマイル=サラフィスト
:ハマデイーン・サバヒー=ナセリスト
:サリーム・アルアワー=独立イスラミスト

 このうち最も有利なのが、アムル・ムーサ氏であろう。彼の知名度はエジプト中に知れ渡っているし、世界的にも知られている。元閣僚経験者でもあり、安定した政策が期待できるからだ。
 ムスリム同胞団を抜けて立候補するアブドルムナイム・アブルファットウフ氏はどうであろうか。彼は本当にムスリム同胞団が大統領選挙立候補を禁じたにもかかわらず、ムスリム同胞団を飛び出して、立候補するのであろうか。
 あるいは表面的にそのような形にし、裏でムスリム同胞団は彼に投票するよう、活動するのではないかとも思える。なぜならば、先の国会議員選挙や諮問会議議員選挙で見られるように、ムスリム同胞団の組織力は強力であり、大統領選挙にも立候補となれば、エジプト国内ではムスリム同胞団が、政治のすべてを抑えてしまうことに対する警戒心が、高まるからではないのか。
 もし、アブドルムナイム・アブルファットウフ氏が当選した場合、ムスリム同胞団はシブシブを装いながら、彼の復党を許可するのかもしれない。その可能性は意外に高いのではないか。
 次いで当選の可能性の高い人物はアハマド・シャフィーク氏ではないか。彼はムバーラク大統領時代、最後の首相職にあった人物だが、エジプト国内では一部の強硬派は別だが、今の状況に満足していないサイレント・マジョリテイが少なくないからだ。それ以外の候補はまさに泡沫候補に過ぎないのではないか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 13:26 | パーマリンク

2012年02月08日

NO・2221「アハマド・ネジャド大統領が議会で吊るし上げ」

 以前からこの欄で書いてきたことだが、イランの権力内部で亀裂が、より鮮明になってきたようだ。これまでは、アハマド・ネジャド大統領に対する非難を、体制が弱体化する危険性があるとして、最高権力者のハメネイ師が抑えてきていた。
 しかし、今回は290人からなる議会議員のうちの、100人が署名することで、遂にアハマド・ネジャド大統領を査問に掛ける決定がなされた。アハマド・ネジャド大統領はこれらの議員から、議会で経済政策について、追及を受けることになるのだ。
 その裏には金融スキャンダル問題が、起こっていたこともあろう。アハマド・ネジャド大統領の親しい人物たちが、そのスキャンダルに連なっていたのだから、ある意味では仕方のないことであろう。
 いずれにしろ、今回のように議会議員の署名によって、体制内部からの突き上げで、イランの大統領が追及を受けるのは、1979年にイスラム体制が出来て以来、初めてのことだ。
 一部の情報筋は、今回の革命的な動きについて、アハマド・ネジャド大統領の権限を弱めることはあっても、彼を権力の座から引きずり降ろすことには、つながらないだろうと見ている。
 問題はこの後に続く、3月の実施される予定の、イランの議会選挙であろう。今回の査問の中で、アハマド・ネジャド大統領がきちんとした答弁ができなければ、政府は信用を失いかねない。
 アメリカを中心に西側諸国による、イランに対する経済制裁が、効果を出し始めてきており、それが庶民の生活を苦しくしてきていることは事実だ。イランの通貨はドルに対しても、ユーロに対しても大幅に下げているし、国際金融機関では、金が動かせなくなっているからだ。
 つい最近起こった現象では、インドからのコメの買い付けに対し、イランの業者が支払い不能に陥ったことだ。当然そうしたことは、諸物価の国内価格を押し上げることになろう。
 イラン政府は西側諸国の石油不買や、金融制裁は西側諸国を、最終的には苦しめるだけだ、と強気の発言をしているが、それはイランについても同じではないのか。ここで、イランが当面の問題をクリア出来、国内物価を安定させることができれば、問題はなかろうが、輸入上の問題から物価が値上がりするようなことになれば、たちまちにして大衆はアハマド・ネジャド体制に、反旗を翻すことになろう。
 アメリカのイランに対する、軍事攻撃の可能性が薄らいでいるなかで、他方、経済的締め付けは、効果を出しつつあるということであり、アメリカは戦わずして、イランを屈服させることができるかもしれない。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 16:10 | パーマリンク

2012年02月07日

NO・2220「ファタハとハマースが合意その先には何が」

 ムスリム同胞団をベースに結成されたハマースが、2006年の選挙で勝利し、イスマイル・ハニヤ氏が首相に就任した。しかし、その後に生じたファタハとハマースとの対立で、二組織は分裂しガザにはハマースのイスマイル・ハニヤ氏が率いる政府が残存し、ヨルダン川西岸地区には、新たに結成されて政府が誕生した。
 以来、パレスチナは二つの政府から成り立ってきていた。しかし、そうしたパレスチナ内部の分裂を梃子に、イスラエル側は何かにつけてパレスチナ自治政府を非難し、何年も続けられたにもかかわらず、和平交渉は何の成果も生み出していない。
そこで業を煮やしたファタハとハマースが連帯し、再度一つの政府一つの民族という立場を、示そうとしたのだ。カタールのドーハ市で行われた、マハムード・アッバース議長とハマースの代表者であるハーリド。ミシャアル氏の交渉が合意に達し、パレスチナは再度統一された形になった。
しかし、そのことは今後のパレスチナ問題解決の上で、必ずしもも有利な条件を、パレスチナ側にもたらすわけではない。そもそも、ファタハはイスラエルという国家の存在を認め、パレスチナとイスラエルの国境は、1967年戦争以前に戻して引くことを考えてきた。
しかし、ハマース側は1967年の国境は当面の国境であり、その先にはイスラエル国家を滅亡させる、という大ゴールがあるのだ。つまり、イスラエル国家を認める意思はない、というのがハマースの立場だ。
それでは今後、ファタハとハマースはどこで合意し、イスラエルとの交渉を進めるのであろうか。イスラエル側を認めないハマースが参加するパレスチナ政府とは、イスラエルは交渉できまい。だからこそネタニヤフ首相は『ファタハはハマースを選択するのか。それとも我々との和平を選択するのか』とマハムード・アッバース議長に迫ったのであろう。
カタールのドーハ市で交わされた合意によれば、今後、マハムード・アッバース議長が大統領職と首相職を、兼務することが決まったが、すでに今の段階から、ガザのハマース・メンバーの間から『ノ―』が突きつけられている。
マハムード・アッバース議長はカタールの突きつけた、巨額の援助に目がくらんだのであろうか。そして、ハマースのハーリド・ミシャアル氏も、同様なのであろうか。
今回のファタハとハマースの合意は、パレスチナ問題を進展させるのではなく、逆に後退させるものになるだろうと思われる。イスラエルがこの合同政府を認め、和平交渉に入るまでには、相当の時間がかかるのではないか

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:59 | パーマリンク

2012年02月06日

NO・2219「イスラエルも常識的な判断をする時がある」

 イスラエルはイランが核兵器開発に、まっしぐらに進んでおり、近い将来、イランが核兵器保有国家になってしまう、と世界中に吹聴した。

 しかし、アメリカを含め世界の情報機関は、イランが核兵器の開発を始めたという情報を持っていない。そればかりか、イランが核兵器を開発する意図があるのかについても、いたって定かではない。

 イランの最高指導者ハメネイ師が、何度も言ってきたように、イランには核兵器を開発する、意志はないのではないか。この段階に到って、実はイスラエルの情報機関も、イランには核兵器を開発する方向に、向かっているという確たる情報を、入手していないのだ。

 それにもかかわらず、イスラエルがイランの核兵器開発の危険さを、世界に叫び続けているのには、裏があるのではないか。つまり、イラクから撤退したアメリカ軍を、湾岸諸国に貼り付けておくために、イランの脅威を煽っているのではないかということだ。

 オバマ大統領が最近、イスラエルにはイラン攻撃の準備が出来ていない、と語っているがその通りであろう。これだけ騒いでいるのだから、何時イラン側がイスラエルに、攻撃をかけてくるか分からないのだ。

それにもかかわらず、イスラエルがイラン攻撃の、準備ができていないということは、イラン、アメリカ、イスラエルの連係プレーなのではないか、と思えてさえ来る。

その連係プレーを百も承知で、アメリカ軍の駐留経費を出し、自分たちでは使えない大量の兵器を、購入する湾岸諸国は気の毒だ。まあある意味では日本も、同じような状況にあるのだが。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 19:39 | パーマリンク

2012年02月05日

NO・2218「アッラーウイの危険な発言・イラクは未だ米軍の支配下」

 昨年の12月末日をもって、アメリカ軍はイラクから、全面撤退したことになっている。世界中もそのように受け止め、イラクには既に、アメリカ軍は残留していない、と思っている。
 しかし、現実はそうではない。相変わらずイラク国内にアメリカ軍が留まっているのだ。理由は治安協力、軍人、治安軍警察に対する訓練、在イラク・アメリカ大使館と職員の警護などだ。(在イラク・アメリカ軍の数は、15000人といわれている)
 それでも、そうした説明は表面的なもののようだ。イラクの元首相を勤めたアッラーウイ氏は、イラクがいまだにアメリカの、強い影響力下にあると語った。彼によれば、アメリカ軍の撤退は笑い話でしかなく、現実は、いまだにアメリカ軍がイラク国内に、駐留しているというのだ。
 しかも、イラクに駐留するアメリカ軍は、相変わらずイラクの治安を牛耳っており、政治にも深く関与しているというのだ。アメリカの意向無しには、マリキー首相も何も決定できない、ということであろう。 
 現在のイラクは汚職が蔓延し、マリキー派の独裁が続いており、彼に反対する人士はことごとく『バアス党と関係がある。』ということで、政治の舞台から、葬り去られているということのようだ。従って、イラクは近い将来、必ず内戦が起こる、とアッラーウイ氏は断言している。
 イラクに対するアメリカ軍の駐留と、イラクの政治を大変革する意向は、周辺諸国やイランによって支持されており、確実に進んでいる。
 イラクの石油収入は、全てが安全上の問題という口実で、いまだにアメリカによって管理されており、イラク政府の自由にはならないということのようだ。
 アッラーウイ氏といえば、彼はCIAとの関係があった、と散々に語られてきた人物であり、例えそれが嘘であったとしても、アメリカとの関係が強い人物、として知られてきた。
 そのアッラーウイ氏が今回話したことは、いまのイラクが、どのようなポジションにあるのかということの、核心を突いているということではないのか、と思われる。
 イラクに駐留するアメリカ軍の存在により、イラクの政治がどれだけ腐敗しても、軍はクーデターを起こすことができない、状態いなっているということだ。それでは一体、今後のイラクはどうなっていくのであろうか。
 イラクは当面の間、アメリカの傀儡であるマリキー首相によって、統治されていくということであろう。イラクが抱える矛盾が、やがては暴発する時を迎えるということを、アッラーウイ氏は言いたかったのではないのか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 12:01 | パーマリンク

2012年02月04日

NO・2217「自国に失望しトルコを理想国と思うアラブ人」


 最近トルコが行った、中東諸国での世論調査の結果が出た。その調査内容は『トルコについて中東諸国の人たちが、どう思っているか?』ということだ。
 結果は、78パーセントの中東の人たちが、トルコについて、極めて好印象を持っていることが分かった。なかでも、トルコの政治手法を支持する人が、極めて多いという結果だった。
 この調査は、トルコ経済社会研究財団(TESEV)が行ったものであり、中東の16カ国、2323人を対称にしたものだった。昨年も同様の調査が行われたようだが、今年の結果は昨年同様に、トルコにとって極めて、好意的なものだったということだ。
 例外的に、トルコに対する印象が悪くなっている国は、シリアとイランであり、このことは最近のトルコ政府の、シリア内紛に対する厳しい対応を、反映したものと思われる。
 これとは逆に、トルコに好印象を持つ人たちが、安定的に多いのは、トルコのイスラエルに対する厳しい対応が、反映しているものと思われる。このため、中東諸国なかでもアラブの人たちは、トルコがパレスチナ問題に、もっと関与してくれることを期待する、と答えている。
 加えて、61パーセントの人たちが、トルコの政冶手法を、自国のモデルとしたい、と答えているということだ。これに反対し、トルコは自国政治のいいモデルとなり得ない、と答えた人たちが、22パーセントいたということだ。
 トルコの対する印象が極めていいのは、トルコ経済が極めて順調なことと、対外政策が一貫していることに、よるのではないか。
 他方、アラブの春を経験したアラブ諸国では、革命後の成果が、何一つ大衆の手に渡っていない。このことから来るフラストレーションが、ますますトルコを理想国家というイメージで、捉えさせているのかもしれない。
 しかし、一部のアラブ人インテリのなかには、トルコがかつてのオスマン帝国時代のように、自国を支配下に置くのではないか、という懸念を抱いている人たちもいる。
 だが、彼らの主張は極めて身勝手であり『トルコに指導されたくも、支配されたくも無いが、トルコにあらゆることで支援して欲しい。』というものだ。そのような甘えの構造が、アラブのインテリの間にある限り、アラブは独り立ちできないのかもしれない。
 革命が第一段階を過ぎた今こそ、インテリが率先して自国の将来像を、作っていかなければならないはずだ。そのことを怠って『アッラーが全ての問題を解決してくれる。』という神頼みが、ムスリム同胞団やサラフィ組織の選挙での、大勝利に繋がったのであろう。
 しかし、それはやり場の無い不満を、若者層に抱かせ、今回のポート・サイドのサッカー試合における、74人もの死者を出す大惨事を生み、続いてカイロでの暴動に繋がっているのではないか。エジプトについて言えば、状況は今後ますます、悪化していくものと思われる。それを止めうるのは、エジプトでは軍だけであろう。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 22:58 | パーマリンク

2012年02月03日

NO・2216「アーデル・イマーム氏を裁くムスリム同胞団の愚」

 アラブ世界のなかで、エジプトは最も多くの映画と、テレビ・ドラマを制作している国だ。エジプト人の明るさと軽妙さが、その作品には表れている。そのため、アラブ世界でのエジプト映画やテレビ・ドラマは押し並べて評判がいいのだ。
 そのエジプトの映画界で、最も人気が高いのがアーデル・イマーム氏であろう。彼は政治もの、社会ものなど、各種の映画に出演し、独特の味を出してきている。
 ところが最近、エジプトの法廷は彼に対し、宗教侮辱罪で1000エジプト・ポンドの罰金と、3カ月の投獄という判決を下した。1000エジプト・ポンドは日本円にして2万円程度であり、大金持ちの映画俳優である彼には、痛くもかゆくもなかろう。
 しかし、3カ月の投獄は、極めて不名誉なことではないのか。映画俳優はあくまでも、台本に則って役割を演じるのであって、俳優自らが台本を書くわけでも、映画を製作するわけでもないのだから、彼にそのような罪状が言い渡されること自体が、おかしな話なのだが、ご時世なのであろうか。
 このアーデル・イマーム氏に対する裁判を仕切った裁判官はアスラン・マンスール裁判官だが、彼はムスリム同胞団との関係が、強い人物と言われている。もっと直接的な言い方をすれば、彼はムスリム同胞団のメンバーなのであろう。
 アーデル・イマーム氏は72歳であり、エジプトの映画界では重鎮中の重鎮であり、映画のストーリーや制作にも、大きな発言力を持っていたろう。また、彼はイスラム過激派に関する、映画にも参加していた。
 つまり、ムスリム同胞団にとっては、極めて不愉快であり、社会的影響力も強い人物であったことから、目の敵にしていたものと思われる。
 しかし、いまエジプト社会では、ムスリム同胞団の異常なまでの台頭と、国会占拠状態の中で、世俗派との対立が表面化してきている。
 そうしたなかで、今回の判決が下されたことは、世俗派にとっては、格好のムスリム同胞団攻撃の、口実となるのではないのか。アーデル・イマーム氏のフアンはエジプト国内ばかりではなく、アラブ世界全体に多数いるのだ。
 彼は2010年に、カタールのドーハで開催された映画祭では、生涯賞を受賞しているのだ。
権力を握った側は、往々にして行動が横柄になるが、ムスリム同胞団もその類なのであろう。必ずや近い将来、アーデル・イマーム氏に対する判決が、ムスリム同胞団にとって、不都合な結果を招くものと思われる。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 15:29 | パーマリンク

2012年02月02日

NO・2215「きな臭くなってきたエジプトの世俗対イスラム」

 革命が達成されたのは、昨年の1月25日だったが、以来1年間が経過した。そのなかで、ムスリム同胞団やサラフィ派は、次第に勢力を増している。先に行われた選挙では、ほぼ70パーセントがムスリム同胞団と、サラフィ派の手に議席が渡っている。
こうした状況を、革命の火付け役をし、しかも、犠牲者を大量に出した世俗派、なかでも若者層が黙っているわけがない。ついに世俗派若者によるムスリム同胞団に対する、反発の動きが始まった。
イスラム原理主義者が過半数となった、議会が開催され始めると、若者たちは議事堂へと集結し、反ムスリム同胞団の行動を起こした。この時、ムスリム同胞団は治安部隊に代わり、このデモを阻止した。
当然の帰結として、若者たちはムスリム同胞団に対する、非難を強めることとなった。彼らは『大衆はムスリム同胞団が失墜することを望んでいる』『ムスリム同胞団は革命を売った』などと叫んだ。
これ以外にも『革命は新たに始まる』『大衆よしっかりしろ』などと、いずれのシュプレヒコールも、ムスリム同胞団に対する非難だった。
ムスリム同胞団の結成した自由公正党は、新憲法で女性の服装に対して、規制をするつもりはないと語っているが、それは段階的な措置であって、最終的には、イスラムの法律に則ったものとなろうことは、誰にも想像がつこう。
現実に、ムスリム同胞団は憲法の基礎は、イスラム法(シャリーア)だ、と明言しているのだ。
エジプトのキリスト教徒であるコプト教徒に対しては、コプト教の法律で、裁くことを認めると語っている。そうなると、エジプトでは二つの法律が適用されることになるが、問題はないのだろうかと疑問が湧く。
エジプトのポートサイド市で開催されたサッカー試合で、アルマスリー・チームがアルアハリー・チームを破った後、観客同士が衝突し、73人(74人とも報じられている)の死者が出る、という大惨事になった。
エジプト国民の間では、サッカーは最も人気のあるスポーツで、過去にもエジプト人同士や、他のアラブとの試合で、暴力事件が発生し、死傷者を出したことが何度もある。
今回の場合は、そのことに加え、政治へのやり場のない不満が、サッカーの試合を通じて、暴発したのかもしれない。エジプトの革命はこれからだ、と捉えておくべきではないのか。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 13:23 | パーマリンク

2012年02月01日

NO・2214「アサドもカダフィと同じ運命を選ぶのか」

 シリアの情勢が、どうやら最終段階を、迎えているようだ。国連安保理がより厳しい制裁を、シリアのアサド体制に突きつけることは、ほぼ確実であろう。しかも、それはシリアが所属する、アラブ連盟の要請によって行われるのだ。
 トルコは今日の様な状況に、シリアのアサド大統領が直面することを予測し、5〜6年前から民主化を進めるよう、助言してきていた。しかも、その民主化は通常のレベルではなく、抜本的なもので無ければならない、とも説得してきていた。
 しかし、アサド大統領はこのトルコの助言を、聞き入れることが出来なかった。それは、アサド大統領が頑迷だったからだとは思えない。彼を取り巻くシリアの権力者集団の、意向であったろうと思われる。
アサド大統領は父親のハーフェズ・アサド氏が大頭領の時代に、次男であったことから、政治ではなく医学の道に進むよう、イギリスに留学させられているからだ。彼には民主主義とはどのようなものなのか、実際に生活を通じて体験して、分かっていたものと思われる。
残念なことに、彼の兄バーセルの事故死により、彼は急遽帰国させられ、父の後を継ぐことを運命付けられ、大統領に就任している。マイノリテイのアラウイー派の権力集団は、彼をトップに据えることによって、安堵したものと思われる。
しかし、今は状況が全く変わった。アサド政権は風前の灯、となっているのだ。取り巻きの勧めによる強圧政策は、国民の反発を強め、既に後退出来ないところまで来ている。
アサド大統領が試みた、土壇場の妥協と政治改革は、ことごとく反政府勢力によって拒否され、妥協の余地は残されていない。アラブ連盟が送った調査団も、彼に味方してはくれなかった。
ここまで来ると、アサド大統領に残された道は、他国に亡命するか、力で最後まで勝負するしかあるまい。そうしたなかで『アサド大統領はカダフィ大佐と同じ道を選択するだろう。』という予測が出始めている。つまりシリアの国内で死亡するということだ。
彼の妻子と家族親族は、既に国外脱出を試みたようだが、失敗に終わっている。大統領宮殿からたった訳8キロしか離れていない空港に到着し、国外に脱出することが出来なかったのだ。
それは大統領宮殿から空港までの道が、既に反体制派によって、制圧されていたからに他ならない。彼の妻アスマ夫人は、才色兼備の女性として、国際的にも著名だが、彼女は二人の子供と共に、国外脱出することが出来ず、大統領宮殿に逃げ帰ったと伝えられている。
この段階に到っては、アラブ諸国もなかなか、受け入れると言い出す国が、出てこないのではないか。それは湾岸王制諸国が、こぞってアサド体制に、批判的であったからだ。それはアサド大統領と、湾岸諸国の宿敵であるイランとの関係が、強かったからであろう。
ロシアやイランは受け入れる可能性が高かろうが、問題は脱出手段が無いということだ。どこかの国あるいは機関が仲介に入り、アサド大統領が全面的に権力を放棄して、大統領の座から降りることを決断し、その仲介を受け入れれば、あるいは可能性があるかもしれない。
その場合、残されたアラウイー派の、権力中枢に位置している人たちと、彼らの家族の運命はどうなるのか。多分、皆殺しになる危険性が、高いのではないか。5000人を超える死者を出したシリアの革命は、残虐で悲劇的な結末を向かえそうだ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 22:09 | パーマリンク

NO・2213「ムバーラクへのラブコールがこだまし始めた」

 最近と言いうか、過去10日間ぐらいの間に、何本かの記事を目にした。それは押し並べて、ムバーラク前大統領を支持する内容のものであった。例えば、アードリー元内務相の裁判のなかで、ムバーラク氏がデモ隊に対する発砲を、命令したか否かをめぐるやり取りがあった。
 これに対し、アードリー氏は『ムバーラク大統領は命令を発しなかった。』と答えている。付け加えて、ムバーラク氏の弁護士は、ムバーラク大統領自身からはその任を降りると語っていないのだから、現職の大統領だとも語っている。
 デモ隊に対する発砲をめぐっては、軍も情報を知りえる立場にあったため、タンターウイ国防相も証言を求められているが、彼もムバーラク大統領からそのような命令は出ていない、と証言しているようだ。
 そうなると、裁判はどう進むのであろうか。発砲に関する命令については、内務相が発したのであれば、彼がその責任を取ることになり、ムバーラク氏がその件で裁かれることはあり得ない。つまり、発砲命令については、ムバーラク氏は無罪になるということだ。
 加えて、シナイ半島で生産されるガスの、イスラエル向け輸出についても、ムバーラク氏は関与していなかった、という証言がなされており、この件でも彼は無罪ということになる。それでは何を持って、ムバーラク氏を裁くのであろうか。
 次いで、ムバーラク氏が妻に対し、彼の友人であった各国の元首に働きかけ、無罪になるようにしてくれと依頼した、ということも明かされている。もしかすると、カイロの街に出回っている、ムバーラク氏と彼の二人の息子アラーアとガマールとの、絞首刑のポスターに、恐れをなしたのであろうか。
 つい最近では、月刊新聞がムバーラク氏擁護論を展開している、その内容の要点は次のようなものだ。
1:ムバーラク氏の尊厳を守り彼を釈放しろ。
2:革命は国家に損失だけを生み出した。
3:革命はムバーラクを追放できたがそのあとの状態はアナーキーだ。
4:マスコミも政治も分裂状態になりアナーキーな状態に陥っている。
 こうしたムバーラク擁護論が出てくるということは、ムスリム同胞団の権力掌握に対する、不安や国内経済がムバーラク時代よりも、悪化していることに起因しているのではないか。
 いまさら、ムバーラク氏が無罪になるとは思わないが、相当軽い判決が出ることもありうるのではないか、と思える昨今のエジプト事情だ。

投稿者: 佐々木良昭 日時: 14:53 | パーマリンク

 
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