走れインドの救急車―ニューヨークレポート(1)―(藤田周子)

2010-2011東京財団AFFPフェロー藤田周子さんは、2010年9月より、ニューヨークでのリーダーシップ研修を受けました。研修前半のレポートをお届けします。

走れインドの救急車(目次ページ)―「リーダーとは?」を模索する日々―はこちら

ニューヨーク研修(前半)各週のテーマ

第1週:A Vision for Leadership in the Social Sector
第2週:Building Self-Awareness(オフサイト)
第3週:Why Charity alone is not the Answer ― the Role of the Markets in Poverty Alleviation
第4週:Self and the World ― Good Society Reading(オフサイト)


リーダーシップについての学び

この4週間で、私の「リーダーに求められる能力」「リーダー育成方法」に対する思い込みが大きく覆された。ニューヨーク研修の前半は、特に個人の内面を伸ばすことに重点を置いている。細かいノウハウというより、考え方・アプローチのフレームワークを与えられる。このあと、それらをどのように使うか、どこまで磨くかは各自の自由。日々学びの連続で数え上げるときりがないが、個人的に特に学びの大きかったリーダーシップの4つの側面を以下に挙げる。

(1)無防備になる力
人生の出来事、過去に出会ったよいリーダー、悪いリーダーを振り返って、自己の強み弱み、理想のリーダー像を考える演習が何日か続いた。それらを他のフェロー達と共有する過程で、目を背けたい弱点、触れたくない(が重要な影響を及ぼした)経験等も自分の一部として人前で認める行為の不安に直面した。リーダーは常に強くなければならないと思い込んでいたから不安になったのだと思う。終わって気づいたのは、リーダーも一個人として自分の弱みを周囲にさらけ出してよいのだ、そうしてこそ相手も心を開き信頼してくれるのだということ。ときには無防備に(業務に関しても、個人的にも)自分を開示する勇気を得た。

(2)傾聴力
自分と異なる意見、文化、コミュニケーションスタイルを持つ人々の声を聴くことができるか。フェローとのチーム作業の中で、自分が今までゴール達成(タスク遂行)にばかり気をとられていたと痛感した。過去の仕事でも、誰かが途中で脱落しても気づかなかったり、目をつぶってゴール達成を優先したこともあった。その結果ゴールを達成したにも関わらず、チームはバラバラになってしまったことも。似たようなスキル・経験を持ったメンバーでさえこうした事態が起こるのであれば、BOPビジネスの現場ではどうなってしまうか想像に難くない。スピードや効率を後回しにしても、投資先企業の同僚や貧困層の顧客の声に注意深く耳を傾ける時間を取ることの重要性を痛感した。言いたいことがあっても声を上げる勇気がない人・声がかき消されてしまった人の存在に常に敏感であるように、とフィールドでの日々に向けて肝に銘じた。

(3)ビジョンを描く力
泊りがけで、古代ギリシャから現代まで、政治哲学、経済学、文化人類学、文学などの書物を読み議論する機会があった。CEOジャクリーンがモデレーターとなり、各自の見解や経験を語り合う4日間。歴史上の偉人達が、時代を超え、自分の理想の「Good Society」を書き綴ってきたことへの純粋な感嘆に始まり、各人の描く「Good Society」が時には対立するほどに異なる内容を示すことへの驚きと戸惑いを経て、「Good Society」における国家の役割・個人の役割に関する議論、そして最後は、「私が作りたいGood Societyはどんなものだろうか?」との問いで終わった。正直なところ私はまだ断片的なイメージしか持っていない。問い続けないといけないのだと思う。他のフェロー達と、フィールド派遣後もこうしたリーディングを続け、月1回語り合う目標を立てた。

(4)表現力(レトリック)
同じく「Good Society」研修の中で、言葉の持つ影響力を確認した。特にキング牧師やネルソン・マンデラ。対立する相手と自分を決して切り離さず、共感を呼び起こし、説得する力に圧倒された。私は1対1、あるいは小グループで共感を生みだすことはできるかもしれない。でも、大多数の顔も知らない人々、しかも対立する立場の人々、にどこまで影響を与えられるか。心の中にどんな優れた考えを思っていても、それを伝え、人を動かす力に変えていけなければリーダーとしては意味がない。


さいごに

フェロープログラムは日本の教育機関や企業では受けたことのない研修の連続である。たとえ内容が似ていても、個人の内面に迫る深さが全く異なるといっていい。アキュメンは、個人が内面をさらけ出しても安全だと感じられる研修環境を作っているのだと思う。研修開始直後から「リーダーシップのスタイルは人それぞれ」「本研修の目的は、突き詰めると個人の成長(つまり、アキュメンのためでなく個人のためにこの1年を使ってよいということ)」と繰り返し聞かされる。何をどう感じても良し悪しはないし、迷いがあってもいい、ただしこのプロセスにオープンであること。この一貫したメッセージは、私を含めフェローに安心と自信を与え、のびのびと自己の課題に取り組む環境を作ってくれていると思う。
また、フェロー同期生の存在が学びに大きく寄与している。フェロープログラム担当者自身、フェロー選考プロセスにおいて、10名の構成に細心の注意を払っているとコメントしている。講師から学ぶことも多いが、フェローから学ぶことのほうが多いかもしれない。



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