走れインドの救急車―ニューヨークレポート(2)―(藤田周子)

2010-2011東京財団AFFPフェロー藤田周子さんは、2010年9月より、ニューヨークでのリーダーシップ研修を受けました。研修後半のレポートをお届けします。

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ニューヨーク研修(後半)各週のテーマ


第5週:Empathy: Learning to listen
第6週:Business Tools for Poverty Alleviation: Building your toolbox
第7週:Becoming an influencer: Communicating your mission, vision, and story
第8週:Investors Gathering


リーダーシップについての学び

個人の内省を重視していた前半に比べ、ニューヨーク研修後半は、現場ですぐにでも役立つと思われる、実践的なスキルやツールの習得に力点が置かれた。習得の方法として、聴講形式ではなく、フェロー自身が(教室の外に出て)体験する中で学ぶ形式、及び講師とのフリースタイルでの対話といったスタイルが多用された。これらは私にとっては不慣れな手法だったため戸惑うこともあったが、文字通り体と心で直接感じたことは、深く私自身の内面に刻まれたと思う。特に私にとって大きな学びとなった2点を以下に挙げる。

ストーリーテリング (Storytelling)
アキュメンではストーリーテリングが重視されており、我々フェローも複数の外部講師から手ほどきを受ける機会に恵まれた。Areal Groupによる「Leadership by presence」ワークショップでは、演劇の手法を取り入れて、(やや大げさに)演じるように物語を語る練習を繰り返した。詩人Rives氏、TEDキュレーターChris Anderson氏それぞれとのセッションでも、フェローが一人ずつ即興でストーリーを語り、講師と他のフェローがフィードバックするという形式だった。
これらは、今まであまり使ってこなかった「筋肉」を呼び覚ます体験だった。創造力・聴衆とつながる力・聴衆を惹きつける力等が潜在的には私にも備わっているのだと自信を持つ機会になった(本来誰にでも備わっているのだと思う)。
今後ストーリーテリングの能力を向上させるために心掛けたいのは、1)発声、2)個人的な体験を盛り込むこと。ワークショップを通して、発声は相手にとっての聞き取りやすさだけでなく、自信というポジティブ・フィードバックとなって私に返ってくると実感した。(発声をめぐる気づきはこちらのWebサイトに寄稿した。Rising Pyramid:Be the last one to define you.
また、個人的な体験を盛り込むことで、聴衆は話し手(私)に対して個人的・感情的なつながりを感じるようになる。演習を繰り返す中で、特に即興で語るとき、私には無意識のうちにこれを避けてしまう癖があることに気がついた。これは、ストーリーテリングの総仕上げ、ニューヨーク研修最終日Investors Gathering(IG)での発表に際しても直面した壁だった。本番までの約2週間、CEOジャクリーンを始め、マネジメント層からスタッフまで複数のメンバーが私たちフェローのプレゼンテーションをレビューし、アドバイスする。その過程で、私を含むフェロー全員が繰り返し言われたのは、「Be more personal!」
Personalになることは、研修前半で学んだ「無防備になる力」(Be vulnerable)にも共通する姿勢だと思う。IGに向けて準備する中で、私は他のフェロー達とお互いのスピーチについて何度も語り合った。いくつものバージョンを書いては、ボツにした。私も、そして他のフェローも、普通だったら言わないような個人的な事柄をステージの上で言えたのは、互いの信頼とサポートがあったから。そして、本番でそうして自分をさらけだして、聴衆から得た共感、終わった後に人ごみをかき分け、歩み寄って、「共感した」「私も同じ悩みを持っていた」「応援している」と言ってくれる人が複数いたことに、さらなる勇気を得た。

リーダーのロールモデル
研修後半は、現在「リーダー」として成功している方々と対話も多く設けられていた。Tom Barry(CEO, Zephyr Management L.P.)、Bill Meyer(アスペン研究所名誉会長)、Carlos Dominguez (シスコ上級副社長)、Tim Brown (IDEO社長)、Anthony Romero (Executive Director, American Civil Liberties Union)等、それぞれ非常に魅力的な人物である。彼らの生い立ちからキャリアの変遷、その中で「リーダーシップ」についての考えがどう生まれ、変容し、今に至ったか。非常に率直で、パーソナルな対話の中から、彼らのリーダーシップ哲学、スタイルを知り、翻って自らに問いかける時間となった。
自らのリーダーシップ能力を磨いていく上で、特に指針になると感じたのはBill Meyer氏の言葉である。「自分にはリーダーになる力があるのか?」「自分のどんな力が世の中の役に立つのか?」といった問い(悩み)はあったのですか、という我々の質問に、次のように答えてくれた。「誰にでも、子どもの頃から家庭・学校・職場など場所を問わず、無意識のうちに繰り返していて、得意で、好きな行動があるはず。僕の場合は、自分で答えを見つけること(Figure things out by myself)だった。それを繰り返していたら、いつのまにかどこに行ってもリーダーの役割をやることになっていた。(笑)」
確かにニューヨーク研修の初日から言われていたとおり、リーダーシップのスタイルは人それぞれ。周りと比べる必要もないし、自分らしさを抑える必要もない。むしろ、自分ができること且つやりたいことを、真摯にやり続ければ、結果は後からついてくる。フィールドに出るにあたって、結果を出さなければとの気負いがあったが、まずはそこから見直そうと思った言葉だった。

さいごに

約2か月間のニューヨーク研修は、たくさんの人と出会い、刺激を受け、自分自身を見つめ直した時間だった。自分を知り、自分の良いところも悪いところも受け入れ、広い視野で自分を受け入れることを学んだ。評価・判断することなしに、長所・短所・悩みなどすべてを含めた存在を受け入れて、建設的なフィードバックを与えてくれる仲間に出会えたのも、間違いなく一生の財産である。


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