走れインドの救急車―インドレポート(7)

2010-2011東京財団AFFPフェロー藤田周子さん。インドでの実地研修最後の2カ月も、新規に事業展開している各州で救急車を効率的に走らせるため、業務に奔走しました。そんななか、インドの女性企業家たちの声に耳を傾け、自分の生き方を改めて振り返る機会もありました。

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活動概要

Ziqitza最大の事業地ラジャスタン州のコールセンターに、パンジャブ州と同じソフトウェアを導入することになった。8月1日深夜に旧ソフトウェアから新ソフトウェアに切り替えるため、7月はその準備に追われ、8月は切り替え後のフォローアップに終始した。7月31日~8月1日にかけては、チーム一同ラジャスタン州ジャイプールのオフィスに泊まり込んで緊迫した作業になった。一方、パンジャブ州も救急車の台数が増え、救急車出動回数が伸びるにつれて新たなニーズや課題が出始め、そちらの対応にも追われた。
並行してムンバイ本社では10名程度で構成されるコアチームミーティングがあったり、アキュメンの企画としてビジネススクールで女性起業家向けワークショップを開催したりと、日常業務から少し離れてリーダーシップについて考える機会にも恵まれた。



リーダーシップについての学び


創業メンバーからの学び

Ziqitzaの創業メンバー5名のうち、今も経営に関わっている3名(Shaffi, Ravi, Sweta)から学ぶことがたくさんあった。ひとつは忍耐。今ではすっかり事業が軌道に乗ったZiqitzaだが、当初はここまで成長するとは誰にもわからなかった。創業メンバーが、手探りで小さなパイロットテストから始め、信じ続けて、粘り強く続けてきたから今がある。彼らは会社の成功のためにだったら(倫理的なことであれば)何でもやる。そして同時に、流れに任せる柔軟性も持っている。今期中にこれをやるのだという決意と、想定外の事態が起きて実現が難しくなったときに、軌道修正の判断を柔軟にできる力。特にインドのような計画通りに物事が進みにくい場所では、ポジティブな姿勢を維持しつつ、停滞あるいは後退を受け入れる能力が問われると痛感した。次に、彼らの役割の変化。同社は成長フェーズに入り、創業者が会社を運営する体制から脱却、約10名からなるコアチームが日々の事業運営を担う体制へと移行しつつある。創業者チームは政府入札や資金調達などに専念。これはどの組織でも同じなのだろうが、創業者が組織への思いを、「自分の赤ん坊」から、従業員の、あるいはより多くのステークホルダーの赤ん坊へと変容させていく様子を目の前で見られたことは、私にとって大きな刺激になった。

インドの女性起業家からの学び
ゴールドマンサックス10,000 Women という女性起業家支援プログラムの一環で、他のアキュメン・フェロー達と共に、ISB(India School of Business)でリーダーシップ研修を実施した。フィードバックの手法や交渉術など、実用的なツールは予想通り好評を博したのだが、それ以上に参加者が盛り上がったのが、価値観を語り合ったセッションだった。達成感、正義、自由、財産、家族、友情、宗教、他者への奉仕など20近くの価値観を各自が大切と思う順に並べ替え、 共有したのだが、一番驚いたのは、家族を第一位に置いた女性が8割にも上ったこと。以前アキュメンで同じ演習をやったときは正義や達成感などを挙げた人が多かったのとは明らかに異なる結果である。インドというお国柄も影響しているかもしれない。私はプロジェクトを手がけたりすると、昼も夜もそれが頭から離れなくなって、他の事ができなくなってしまうことがよくある。しかし、彼女たちは(もちろん真剣に、一生懸命自分の会社を立ち上げ、運営しているのだが)、どこかでしっかり一線を引いて、自分の人生で本当に大切なものを大切にしている。起業家は起業家である前に一人のひと。リーダーもリーダーである前に一人のひとなのだ。

この時期に起業家たちと時間を過ごせたことは、フィールドでの体験を振り返る非常によい機会になった。そしてフェローシップが始まる前にアキュメンで言われた言葉「これはプロフェッショナルとしての成長機会であると同時に、一個人としてのパーソナルな成長の機会でもある」を思い出したのであった。

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