走れインドの救急車―ニューヨーク最終レポート―(藤田周子)

藤田さんの研修もいよいよフィナーレを迎えます。救急車を走らせるために自分自身も走り続けた日々。1年を振り返り、彼女の胸にはどんな思いが去来するのでしょうか。

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活動概要

投資先への派遣期間が終わり、9月初めにニューヨークに戻ってきた。3週間ほどかけて、アキュメン内外の関係者に、投資先での活動を報告。アキュメンのポートフォリオチームと投資家サイドの視点から議論を交わしたり、ニューヨーク大学ビジネススクールの学生たちと語り合ったり、昨年講師として来てくれた方々と再会したりというイベントが続いた。最後の数日間は次のクラスのフェローと共に時間を過ごし、そして9月27日卒業式を迎えた。

リーダーシップについての学び

立ち止まる

インド・1298での時間を満喫していた私にとって、当初は「ニューヨークに戻らなければいけないのか?インドにもう少し残っていたい。」というのが正直な心境だった。現場はここ(インド)なのだから、ソーシャル・ベンチャーを支援するためにも、ひいては社会的インパクト拡大に少しでも貢献するためにも、最後までインドにいるべきではないかと。
しかし、ニューヨークに戻ってみると、インドでは見えなかったものが見えてきた。他のフェロー達の話を聞くと、自分と似たような経験があったり、全く異なる経験があったりする。また、立場や関心の異なる人に話すことで、自分の経験を様々な視点から見直すこともできる。一歩引いて見ることで、気づかなかった点に気づくこともある。自分が何を学んだのかを咀嚼して、エッセンスを抽出し、整理できる。
ニューヨークでの3週間、私はあまり先のことを考えず(悩まず)、ただフェローやアキュメンスタッフとの再会を楽しむことに集中した。この1年間ひたすら自分の中にいろいろなものを取り込み続けた結果、私自身がとても混乱していたから。いろいろな人と語り合う中で、私の中に渦巻いていた無数の塵が居場所を見つけ、沈殿していった。

自分自身との対話

この一年間は何だったのか。結局のところ、私にとってそれは「自分自身との対話」に尽きた。年間10名のフェローに選ばれた時点で、周囲から見ればかなり成功しているように(そして将来も成功するように)思われるかもしれない。派遣先の1298では、それなりに貢献できたと思う。にもかかわらず、自分に自信が持てなくて、この先私に一体何ができるのだろうかと途方に暮れた日々。
今回ニューヨークでメトロポリタン美術館に行った。エジプトからの出土品が並ぶ一角に飾られた不完全な壁画が目に留まった。本来はおそらく壁いっぱいを覆う巨大壁画だが、発掘されたのはいくつかのかけらのみ。まるで作りかけのジグソーパズルのように、空白が多い。
それを見てふと、これが人生なのかもしれないと思った。まだすべてのピースが揃っていない。それどころか全部揃うことなどきっとない。様々な場面で、ついつい「これが終わったら答えが手に入る」「これができたら○○完成」のような考えになっていることがある。しかし、仕事であれ、キャリアであれ、人生であれ、すべてのプランが存在するわけでもなければ、私(あるいは誰か)がプランを描けるわけでもない。プランもなければ、ゴールもない。だから、今手持ちのピースが少ないことに不安を感じたり、将来現れるピースに自分が対応できるのか思い悩んでも仕方がない。できるのは、ただ、ありのままの自分を尊重し受け入れること。そして目の前のことにベストを尽くすこと。

フェローシップ修了に際し、ジャクリーンから次の言葉をもらった。
“….. That combination of strength and vulnerability will enable you to do great things once you come to fully trust it. ….. You have so much to give the world, and need only give yourself permission to know how wonderful you truly are….”

私のレポートを読んで下さる方の中には、常日頃世界の現状に胸を痛めていたり、努力家で、向上心が強くて、自分にも何かできないだろうかと真剣に考えていらっしゃる方々がたくさんいらっしゃるのではないかと思う。だからこそ、このジャクリーンの言葉を共有したい。自分に厳しくし過ぎないでください。完璧を求める必要はない。今のままで大丈夫。自分の強さも弱さも受け入れて、信じて、一歩(一歩だけでいいから)踏み出してみよう、と。

インパクト投資、ソーシャル・ベンチャーの経営、インド流コミュニケーション等々、たくさんのことを学んだけれど、自分自身との付き合い方を再発見できたことが最大の学びかもしれない。

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