アフリカに光を!―ナイロビレポート(2)―Base of Pyramidマーケットの開拓をめざして(井上直美)

d.lightは現在ケニアで、Brand Activator (BA)を要としたBase of Pyramid (BoP)マーケットの開拓を試行錯誤しながら進めています。そこで今回は、このBAの役割と、私が体験したBAトレーニングの様子を紹介します。また、終わりに私がこのBAの取り組みから学んだことについて考えてみたいと思います。

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Brand Activatorとは

d.lightが現在アフリカで力を入れて取り組んでいる活動のひとつに、Brand Activator と呼ばれるd.light独自のセールスエージェントを活用したBoPマーケット開拓があります。BAの特徴は、第一に彼・彼女らがその地域の出身者であること。すなわちBAは、地域の事情をに精通しており地元の人とのコミュニケーションにも適した人材であるといえます。第二にd.lightの企業ミッション、ビジョンや目指す方向などについて正しく理解していて、その上で確かな商品知識があること。最後に、顧客の抱える問題点と商品の利点を照らし合わせ、アフターサービスを含む継続的なセールス活動ができる能力を持つ人材であること。これは、d.lightによるセールストレーニングを受けることで身につけることができる能力です。以上3点がBAの主な特徴です。第三の点からも分かるように、BAはただ単に数多くの商品をBoPマーケットに対して売ればよいというわけではありません。最も重要なのは、まず顧客の抱える様々な問題の解決にソーラー・ランターンが役に立つということを、顧客自身に認知してもらうこと。そして、顧客が商品を正しく使うことで、実際に商品の利点を享受してもらい、その問題の解決に役立ててもらうということです。

またBAは、その名のとおりその土地でd.lightのブランド浸透をすることも期待されています。BAらは、地域の人々と触れ合いながら対話し、実際に商品のデモンストレーションを行います。よって、BAと対話しながら実際の商品に触れることができる地域の人々は、d.lightのソーラー・ランターンが、どのように自分たちの抱える問題解決に役に立つかを体験から理解することができるのです。また、BAは基本的に地域を離れることはないので、既存顧客へのアフターサービスの重要な窓口ともなります。したがって、地域に根差したBAの存在は、顧客に対する商品の正しい理解促進だけではなく、d.lightがなぜBoPマーケットへ商品を届けようとしているのかという点から考えても非常に重要なことなのです。次は、d.lightにとってBoPマーケットへのアプローチの要となるBAを、どのように育成しているのかについて述べたいと思います。

BAトレーニング

私にとって、1月のお正月休み明けの一番初めの仕事は、BAを養成するためのトレーニングに参加することから始まりました。セミナーに参加していたのは、ケニア各地から集まった、フレッシュな若者たち。このセミナーで、d.lightおよびソーラー・ランターン製品について学びます。特に、前項で述べたBAの3つの特徴のうち、2と3について特に集中してトレーニングを受けます。このトレーニングには、既に一度d.lightのBAセミナーを受けた経験があり、現在BAとして現場で活躍しているメンバーも参加していました。まだ商品を売ったことのないメンバーと、既に現場での経験があるメンバー同士のコミュニケーションから生まれる、新たな気付きや思考の深まりは驚くものがありました。また、インストラクターの説明する一言一句を聞き洩らさないようにと聞き入る様は、真剣そのものでした。

トレーニングでは、d.lightの商品の目的は顧客の抱える問題を解決することである、ということが説明されます。具体的には、まずBAが相手の状況を理解し、その問題はソーラー・ランターンを使うことで解決できるということを提示し、顧客の理解を促すことが重要だと学びます。さらに、顧客に商品の強みを理解してもらうことも大切な目的の一つなのですが、それが第一に来るのではなく、まずはBAが顧客のニーズを理解して、それと商品の利点をマッチングすることが大切なのだと理解します。

しかし、実際にBAたちがロールプレーをする段になると理想通りに事は進みません。どこがおかしいか、他のBAたちや講師が指摘することで次第にBAたちのスキルは上がって行きました。既に活動しているBAたちはそれぞれ自分なりの手法を持っているようでした。講師からのトレーニングに加え、現場での経験とナレッジ共有によってBAたちのスキルが今後もっと上がっていくことが期待されるトレーニングでした。

(写真:BAトレーニングの模様)



問題解決に必要な機会を創造する力

BAのトレーニングに参加しその仕組みを理解することは、私にとってd.lightの価値を再確認し、商品を売るスキルを身につける以上の意味がありました。それは、マーケットの声を聞き、共感し、彼らに必要なものは何か想像し、彼らが理解できる方法でそのソリューションを提案する。その結果、そこにいる人たちが改善の機会を自分たちで選べるようにするということが重要であるということを再確認しました。NYでのトレーニングで学んだ大切なキーワードのうち、頻繁に私の頭に浮かぶのが、ListeningとImaginationそしてEmpathy。マーケットソリューションを用いて複雑な問題解決に貢献するためには、これらが大切な鍵となります。今d.lightが実践しようとしているBAの取り組みは、想像力を持って相手の悩みを聞き、そしてそれを理解して共感し、彼らが自ら選べる解決策を提示することで、彼ら自身で選択し問題の解決に役立とうとする姿勢です。押しつけではなく、あくまで選ぶのは顧客自身です。これは、まさにこの3つの言葉を実践しているものではないでしょうか。

まだまだBAの取り組みは始まったばかり。アフリカの様々な国で、この取り組みを効率的に採算がとれる形で拡大することには様々なハードルがあります。しかし、これが現実になる姿を想像して、自分たちのビジネスにチャンスを創ることが私たちには求められていると考えるとまた、楽しみも大きく広がってきます。