タイプ
その他
日付
2008/6/2

幸福を実感できる都市づくり(荒川区 佐鳥秀樹)

荒川区 福祉部 佐鳥秀樹

第五期の市区町村職員国内外研修プログラムが始まり約2か月が経過しました。早稲田大学大学院公共経営研究科では専門知識の習得はもちろんのこと、自治体職員としてそれらを政策形成や効率的な行政運営に活かしていくという視点で思考することが求められます。本稿では2つの講義について紹介します。

まず、和佐野哲男教授の「ユビキタス社会経営」。この講義は和佐野教授が教授・講師陣のなかで唯一のエンジニアということもあり、公共経営研究科のなかでもユニークな講義です。「ユビキタス社会」というのは、いつでも、どこでも、誰でもネットワークを介して様々な情報やサービスの享受が可能な社会です。

講義では、ユビキタス社会を象徴する携帯電話やPDA(携帯情報端末)などに焦点をあて、それらの機能の高度化に合わせてユビキタス社会の10年先の姿を考えていきます。技術的な視点に留まらず、社会状況や生活スタイルの将来像もあわせて想定していきます。受講者は、自身の関心領域に沿ったテーマを設定し、関連する様々な事象の変化を想定しながらユビキタス社会のひとつの姿を研究します。


正直なところ自治体職員がユビキタスという考え方に接する機会は少ないのが現実ですが、社会環境の変化や新たな時代の動きを的確に把握することが求められているなか、次世代の生活スタイルを思い巡らす作業は非常に有意義なことだと思います。講義のなかで私は「携帯端末を活かした行政マーケティング」とい課題を設定しました。モバイル端末の特性を利用した行政サービスの拡充という観点からユビキタス社会について検討しています。今後の講義では、NTTドコモの社員も加わったワーク・ショップやドコモ本社へのフィールド・ワークなどが予定されており、より実践的な内容の講義に期待を膨らませています。

次に、岡本正耿教授の「経営品質」。この講義では、硬直化した組織の体制や考え方を変化させる「革新者(イノベーター)」となるため、自身をどのように変えていくかということを学んでいます。経営品質が目指すのは、組織における統制・階層型の管理を自律参画型へ、組織中心志向を顧客中心志向へ、コスト思考を価値思考に変えていくとことであり、そのような革新を可能にするイノベーターの養成が講義の目標です。

イノベーターは、組織の現状を把握し、思考力と対話力を駆使して組織を変えていきます。企業以上に組織が硬直化しやすい公的セクターでは、既存の業務内容はもちろん、新たな制度への対応や新規事業の実施の際には変化に抵抗する職員の意識の問題が出てくるため、職員の意識改革に寄与するイノベーターの役割は重要です。若手職員の指導的立場と事業運営の原動力となる中堅職員にはこのイノベーターとしての役割が求められていると強く実感しました。

荒川区では少子高齢の問題はもちろん、再開発による住民層の変化・行政ニーズの多様化、下町地域特有の住宅密集による防災上の問題などが大きな行政課題となっています。「区政は区民を幸せにするシステム」という理念を掲げ、区民が幸せを実感できる都市像を定め、その実現に向け様々な事業を展開しつつあります。それを支える職員の育成にも力を入れており、組織としての職員育成機関である「荒川区職員ビジネスカレッジ(ABC)」の活動は年々充実しています。

私は、今回の研修を通して、区が行う様々な事業に有効な手法を学び、それを自分だけでなく他の職員をはじめとする組織全体へ浸透させていくことを目標に取り組んでいきたいと思います。