タイプ
その他
日付
2014/11/10

来たれ! 地域をよりよくしたい人-2015年度東京財団週末学校 参加者募集開始

「25年後には、全国の896市区町村が『消滅』の危機に直面する」。そんな衝撃的な試算結果が公表され、しばらくメディアを賑わせたことは記憶に新しい。実際わが国は、2011年を境に人口減少社会に突入している。都市部ではいまだ顕著ではないが、集落の消滅が現実的になり始めている過疎の地域では、自治体はこれまでに取り組んだことのない様々な課題に直面している。これまでどおりの右肩上がりの発想で、それらの課題を解決することは不可能だ。限りある資源を無駄に浪費し、衰退がむしろ加速することになるだろう。これからは、人口が減ることを前提として、いかに行政サービスの質を高めながら全体を小さくしつつ、地域の魅力を最大化していくかを考えていく必要がある。

例えば、高度成長時代に建築された学校や公営住宅、公民館といった公共施設の老朽化が全国各地で問題となってきている。耐震基準が低かった時代に建てられた多くの建物が、修繕、建て直しの時期を同時に迎えようとしている。年々少子高齢化が進み、税収が減る一方で、社会保障に多くの予算が割かれており、限りある予算の中ですべてに対応することは不可能である。ではどうするのか。

いくつかの自治体は、この課題に積極的に取り組み始めている。施設を複合化・多機能化することでサービスの質を高め、施設自体の数は減らすという基本方針を立て、住民に対して丁寧な説明を繰り返している。
大切なのは、「予算がかけられないから公共施設を削減するしかない」という考え方をせず、「住民の幸せのために最適な方法を選択する」と考えることである。この場合、住民の幸せのための最適な方法が、「サービスの質を高めるために公共施設を減らす」ことなのである。この考え方を住民と共有するべく、対話を重ね、合意をつくりだしていくこと、これこそが自治のかたちと言える。

行政に何もかもおまかせの時代は終わった。地域に暮らす人々が幸せになるために、私たち一人ひとりが、自分たちの責任でまちづくりに取り組まなければならない。まちづくりは住民一人ひとりの想いから出発するのである。

ヒト・モノ・カネに限りがある中、物事の質を高めつつ全体を小さくしていくことは、すなわち新しい価値を創造することである。日々、新しい課題に直面している”現場”で、住民と自治体職員が共に、創意工夫の取り組みによる個性豊かな地域を自らの手でつくることで、地域に活力が生まれ、日本社会全体を覆う閉塞感を打開していくことになるだろう。「東京財団週末学校」は、その原動力となる人材の育成を目指している。

「東京財団週末学校」は、住民を主体とする地方自治の実現と地域の潜在力を活かした多様性あるまちづくりのため、自らの頭で考え、行動を起こすことができる人材の育成を目的に、東京財団が2004年より実施している人材育成プログラムだ。対象は、全国の市区町村職員であり、これまでの11年間で、北は北海道から南は沖縄県まで、全国各地から集った220名の精鋭が本プログラムを修了している。

楽なプログラムではない。半年間、全10回のプログラムは、首長経験者から哲学者に至る多彩な講師陣による講義や演習、国内外の先進地域におけるフィールド調査、そしてプログラムの"卒業論文"にあたる、「私の政策提言」の作成などで構成される。各回の合間には、必読書を何冊も読み、事前・事後課題に取り組む必要がある。前回のプログラム内容を消化する間もなく、プログラムは進んでいく。多くの参加者が、「全体像が見えないまま進む不安があった」と振り返るが、終わってみればみな一様に、地域の課題を「自分ごと」としてとらえ、自分たちこそが地域づくりの担い手の一員であるという当事者意識が芽生えていることに気づく。基礎自治体職員として仕事に臨む原理原則を叩き込み、同時に自己の内面を磨き、新しい自分を発見することに自ら挑むリーダーシップ開発プログラムでもある。

その一例を紹介しよう。半年間のプログラムのターニングポイントは、米国オレゴン州ポートランド市で行う国外調査だ。東京財団週末学校の特長の一つでもあるポートランドプログラムのテーマは、「住民主体のまちづくり」。全米一、住民参加が盛んと言われるポートランドで、参加者は住民と行政の関わり方を講義や現場視察などを通じて学び、日米間の違い、ならびに共通点の分析を踏まえて、住民主体のガバナンスのあり方に関する考えを確立することを目標とする。

中でも特筆すべきカリキュラムが、「イノベーション・ラボ」と名づけられたセッションだ。日本からの参加者と、ポートランドでまちづくりに携わる多様な主体、たとえば行政職員、大学教授、非営利団体の代表、住民リーダーらが一堂に会し、歴史、文化、言語等の違いを超えて、地方行政が直面する普遍的な課題の革新的解決方法を模索しようというセッションである。「ごみ処理場の建設問題」「ごみ屋敷問題」といった、シンプルなようで解決策が一通りではない問題が取り上げられる。はじめはアメリカ人の突拍子もなく聞こえる意見に目を白黒させていた日本人参加者も、それぞれのタイミングでぽろりと目からウロコが落ちる場面があったようで、日本の自治体職員に顕著な「枠にはまった」「固定化した」ものの考え方を変えることに有効だ。以下は、2014年度参加者である出南力氏(北海道栗山町)のコメントである。

「約3時間の中で、イノベーティヴな解決策を見出す、という緊張感のあるプログラムであったが、実はその討議のプロセスにこそ学びがあったと後で気づいた。まず、ステークホルダーをリストアップし、可視化して共有するプロセスの意義を理解することができた。メンバーで協力し、知恵を出し合うと、自分が気づかなかった当事者が見えてくることを実感した。そして、イノベーションとは、必ずしも天才一人の閃きではなく、多様なステークホルダーを認識したうえで、それぞれが持つ資源や特徴を組み合わせることにあるとも感じた。水俣市の国内調査で学んだ地元学の一つの教訓「“あるもの”と“あるもの”を組み合わる」ことにもつながるものと感じた。また、チームのメンバーそれぞれが個性に応じたリーダーシップを発揮した討議の時間でもあった。リーダーシップは人の個性によって当然違うものであり、一人だけで発揮するものとも限らない。リーダーシップの意識を持つ人間が集まり、多様な意見と対話を重ねることで、イノベーションが起こりうるのだと感じた。」

自らの地域をよりよくしたいという強い想いと、そのために自ら行動する覚悟と勇気を持つ全国の市区町村職員のみなさんに、ぜひ挑戦していただきたいプログラムである。

■応募に関する詳細はこちら「2015年度週末学校参加者募集」