タイプ
レポート
日付
2007/10/4

奨学事業レポート「 “より良いアジアの建設:将来を担うリーダーたちの対話(Building A Better Asia)”北京大学にてリトリート開催」

奨学事業部が運営するSYLFFプログラムは、日本財団が主催する“より良いアジアの建設:将来を担うリーダーたちの対話(Building A Better Asia:Future Leaders’ Dialogue)”、通称“BABAリトリート・プログラム”に参加しています。このプログラムは2006年度から開始されましたが、その第二回会議が去る9月9~16日の8日間北京大学にて開催され、アジア16カ国からSYLFFフェロー8名を含む合計23名の参加者が集結しました。今週の奨学事業レポートでは、この会議の模様をお伝えします。



日本財団が主催するBABAリトリート・プログラムは、様々な専門分野や背景をもつ将来のアジアを担うリーダーを育成し、彼らの間のネットワークを推進することを目的としています。日本財団とその関連団体である笹川平和財団および東京財団から奨学金や助成金を受給したことのあるアジア諸国出身の優秀な人材を招いて行なわれ、数日間にわたって寝食を共にしながらアジアの未来を考察し議論する機会を提供するものです。

具体的には、SYLFFフェローに加え、日本財団アジア・フェローシップ(Asia Pacific Intellectual:API)、北京大学国際関係学院の研究奨学生、および笹川平和財団の汎アジア基金などで開催したアジアのジャーナリズム・ワークショップをはじめとする各種国際会議参加者などを中心に募集した人々が参加します。3つの団体が、こうした優れた人材を引き続き支援する機会であると同時に、参加者間での交流や新しい取組みが生まれることも期待しています。

今回のBABAリトリートでは、「アジアにおける公益の創設(“Building the Common Good in Asia”)」というテーマが掲げられ、具体的には以下の4点に焦点を当てて、レクチャーや議論が行なわれました。
1)繁栄の共有(shared prosperity):アジア諸国がグローバリゼーションの波に翻弄されることのないよう、利益を諸国間で共有し経済的な成長を図っていく必要がある。貧困の撲滅も急務。
2)共通安全保障(common security):信頼醸成装置や危機管理能力の向上、平和構築・平和維持メカニズムの構築に努めることにより、アジア諸国間での衝突を無くすことが必要。
3)生態系のバランス(ecological balance):インド・中国の急速な経済的発展に伴うエネルギー消費や、インドネシアにおける大規模な森林伐採・山火事などが、アジア地域全体の脅威となっている。国境を越えた取り組みが必要。
4)人間の安全保障(human security):人間一人ひとりの安全と尊厳に焦点を当て、恐怖からの自由と欠乏からの自由を目指して、国家レベル・国際レベルで基本的人権の尊重に努める必要がある。地域内の軍事競争を抑制し、代わりに教育と医療に力を注ぐ必要がある。

基調講演では、アセアンの次期事務局長に就任予定のスリン・ピツワン(タイ元外相)が、「アジアは一つ」という岡倉天心の思想を引きながら、アジアの一致について論じました。またジャワ語に昔からある「多様性の中の一致」というフレーズも紹介し、アジア人は、相互に排他的で矛盾しているように見える状況でも、それらを取り込み調和していける能力を持っている、そしてそれは21世紀により良いアジアを建設していく上で非常に重要であると語りました。国や地域(東アジア、東南アジア、南アジア)といった枠を超えて対話をし、人間的なつながりをもっていくことの期待が述べられました。

この他、講演者として、英国ブリストル大学のAmitav Acharya教授、インドネシア『TEMPO』誌のYuli Ismartono氏、インドICRIER(Indian Council for Research on International Economic Relations)のRajiv Kumar博士、東京工業大学の原科幸彦教授、シンガポール・マネジメント大学のPang Eng Fong教授、北京大学国際関係学院の王緝思教授が招かれ、参加者との間で活発な議論が行なわれました。

なお、昨年度9月、同じく北京大学で開催された第一回BABAリトリートは、「和解再考(“Reconciliation Reconsidered”)」というテーマのもと、開発やガバナンス、政治体制の移行、メディア、イノベーション・テクノロジーや市民社会についての問題を中心に議論されました。日本財団笹川陽平会長も、ブログでこの様子をレポートしています。詳しくはこちら

第3回のリトリートは、2008年2月にインドのゴアでの開催を予定しています。


SYLFFフェロー紹介


山本達也(慶應義塾大学 SFC研究所 上席所員)
今回の参加者の一人である山本氏は、1999年に慶應義塾大学総合政策学部を卒業。2001年、慶應義塾大学大学院後期博士課程在学中にSYLFF奨学金を受給。その後、シリア国立アレッポ大学学術交流日本センター客員研究員(2002~2004年)、慶應義塾大学COE研究員(2003~2005年)等を経て2005年から現職。シリア国立アレッポ大学 学術交流日本センター 主幹を兼任。国際関係論、比較政治学、中東政治研究を専攻し、グローバリゼーション論、グローバル・ガバナンス論、技術と国際政治、宗教と国際政治などのテーマに関心を持つ。著書に、『サイバーポリティクス:IT社会の政治学』(共著;一藝社、2001年)、『かわりゆく国家』(共著;一藝社、2002年)、『政治のレシピ:[旬の素材]で読むニッポン事情』(共著;メタ・ブレーン、2006年)など。

SYLFF校紹介


北京大学 (Peking University/中国)
北京大学は清王朝時代1898年12月に京師大学(The Metropolitan University)として設立された。1912年に北京大学に名称を変更し、1919年までには、国内最大の高等教育機関となった。また、2000年4月に北京医科大学と合併した。中国では理科系が有名な清華大学と並び国内屈指の総合大学である。キャンパスは北京市北西の郊外に位置する。現在、31の学院(College)と14学部(Department)、216の研究所から構成され、学士101、修士224、博士課程202の専攻分野を提供している。1950年から、中国で最も早くから海外留学生を受け入れ始めた大学の一つとして、留学生を受け入れ始めた。2004年の段階で、学位取得のため、または短期の交換留学を通して、約80カ国から4千人以上の留学生の学びの場となっている。

(文責:丸山勇、星野文子)