タイプ
レポート
日付
2008/1/31

奨学事業レポート「第2回SYLFF賞贈呈式&シンンポジウム:アフリカ平和構築への課題」

奨学事業部が運営するSYLFFプログラムでは、奨学金受給者としての経験や恩恵を最大限に活かし、地域社会に貢献してきたSYLFFフェローに「SYLFF賞」を授与しています。

今週のレポートでは、「第2回SYLFF賞贈呈式」の模様と、引き続き開催された「東京財団創立10周年記念シンポジウム アフリカ平和構築への課題-コンゴ民主共和国の事例から-」の様子をご紹介します。今回は、アフリカ支援NGO、アフリカ専門の研究者をはじめ、アフリカ各国の外交団など、約150名の方々のご出席を賜りました。


地域社会の活動に貢献したヤングリーダー奨学基金フェローに贈られるSYLFF賞。第2回の受賞者は、コンゴ民主共和国の民主化選挙に尽力したリゴベール・ミナニ・ビフゾ氏です。去る2008年1月25日、ミナニ・ビフゾ氏を招いて、第2回SYLFF賞贈呈式が行われました。

ミナニ・ビフゾ氏の最大の受賞理由は、2006 年7月30日に約40 年ぶりに実施されたコンゴ共和国大統領選挙及び国民議会議員選挙における選挙監視活動におけるリーダーシップです。ミナニ・ビフゾ氏は、選挙監視活動を支援する22 のNGO から構成されるCDCE(La Cadre de Concertation de la Société Civile pour lʼObservation des Elections / Framework for Dialogue of the Civil Society for the Observation of the Election)のコーディネーターとして、約5 万人の国内選挙監視員と125 名の国際選挙監視員の活動を指揮しました。同選挙は、大きな混乱もなく実施され、和平プロセスの進展に向けた重要な一歩とみなされています。なお、国際選挙監視員はヨーロッパ各国における46 のNGO から構成されるEURAC(European Network for Central Africa)から派遣されましたが、ミナニ・ビフゾ氏はEURAC との連携にも大きな役割を果たしました。その結果、EURACの主要メンバーであるDIAKONIAというスウェーデンのNGO より、“The Diakonia Changemaker Award” を受賞しています。

また、SYLFF賞贈呈式の後、東京財団創立10周年記念シンポジウムシリーズ「グローバル化時代の価値再構築」の第2回として、「アフリカ平和構築への課題―コンゴ民主共和国の事例から」を開催し、ミナニ・ビフゾ氏がパネリストの1人を務めました。

このシンポジウムでは、アフリカにおける紛争と紛争後の平和構築に焦点をあてています。「アフリカ大戦」と言われ、10年近く続いたコンゴ(民)紛争において国連や当事国や国際NGOなどとともに、紛争終結に向けて極めて重要な役割を担ったNGO“Groupe Jérémie”の創設者であるミナニ・ビフゾ氏の体験を事例に、片岡貞治氏(早稲田大学国際戦略研究所所長)、石弘之氏(北海道大学公共政策大学院特任教授)を交え、アフリカの「内」からと日本を含む「外」からの視点双方から見えてくる紛争解決に向けた支援のあり方と、紛争後の平和構築に対する国際社会の役割について、議論を行いました。

片岡教授は、コンゴ民主共和国の紛争概要を複雑な政権の移り変わりと共に報告し、持続可能な平和構築のための国際支援の必要性を主張されました。その中で、日本が担うべき役割として、現場での取組、知的貢献、人材育成という3本柱を提案されました。更に、戦争や内戦は一国でもできるが、平和は一国では作り上げられないことを強調し、そのために継続的な支援がアフリカの平和を構築していく上で極めて重要な要素であることを指摘されました(片岡教授寄稿「グローバル化時代とアフリカ諸国」はこちら)。

石教授は、環境破壊と国家崩壊の結びつきを論じられました。本来、アフリカの豊富な天然資源は国民へ還元されるべきものであるにもかかわらず、それらの輸出や密輸によって入ってくる多額の外貨は中央政府・軍部など特権階級だけの利権となり、一般国民へは殆ど回らない。それどころか国民は、資源をめぐる武力紛争に巻き込まれ、最近の映画「ブラッドダイアモンド(2007、米)」や「ナイロビの蜂(2005、英)」などでも垣間見るような非人道的な扱いを受けている、ということを、シエラレオやルワンダの具体例を交えて報告していただきました。また、人口増加にと伴い、自然資源(農地、森林、水資源、漁業資源)が欠乏しており、それがもとで紛争が多数起きていることや、政治・経済にまで深刻な影響が及ぼされていることを指摘されました。

ミナニ・ビフゾ氏は、アフリカでは国々が独立し始めたときから内戦・紛争が絶えず、コンゴ民主共和国が最終的に舞台となった「アフリカ大戦」においては、アフリカ諸外国の内戦や天然資源をめぐる諸外国の武力行使がコンゴ民主共和国に波及したことを指摘しました。そして、長期にわたる紛争により安定した政府機関がなく、今日アフリカ大陸において安全だと言い切れる国が一つもないことを指摘し、平和構築は全アフリカ人にとっての優先事項であり、国際社会にとっての道徳的義務だと主張しました。

なお、シンポジウム当日の朝には、コンゴ民主共和国の東部、ルワンダとの国境付近に位置するゴマで開催された和平協議(同協議には、ミナニ・ビフゾ氏も途中まで参加していました)において、和平協定が締結されたことが日本でも報道されました。10年にも及んだ紛争での犠牲者は約540万人(朝日新聞 2008年1月25日)という最悪の事態が、これから少しずつ平和な方向にむかっていくようにと願ってやみません。

ミナニ・ビフゾ氏は、今回2週間日本に滞在し、政府機関やNGOの関係者、研究者と意見交換を行うほか、京都・広島を訪問しています。訪問記については、後日WEBでご紹介します。

リゴベール・ミナニ・ビフゾ プロフィール

リゴベール・ミナニ・ビフゾ氏は、1960 年、コンゴ民主共和国(旧ザイール)ブカブ生まれ。1987
年、イエズス会に入会し、同時にイエズス会の牧師、学者、組織者、また市民社会のリーダーとして活躍し始めた。人権擁護・市民教育に取り組むNGO、Groupe Jérémie の創設者・代表者として、同国内及びアフリカ大湖地域において活動。また、RODHECIC、CDCE(上記参照)といったNGOネットワークのコーディネーターを務め、2006 年に同国で実施された大統領選挙、国民議会選挙における選挙監視活動に大きな役割を果たした。2001 年からは同国の研究センターCEPAS (Centre dʼetudes pour lʼaction sociale /Center of Studies for Social Actions) の社会政治部門の責任者として活動を続けている。
1995 年から1997 年まで、SYLFF基金校の1つであるイタリア・パレルモ市所在ペドロ・アルペ社会研究センター在学中にヤングリーダー奨学金を受給、同校より高等研究学位(D.E.A.)を取得した。

(文責 井野麻美、星野文子)