タイプ
レポート
日付
2008/3/13

奨学事業レポート 「協働プロジェクト支援制度 (SYLFF Joint Initiatives Program: JIP) 2008年度 プロジェクト」

奨学事業部が運営するSYLFFプログラムでは、「協働プロジェクト支援制度 (SYLFF Joint Initiatives Program: JIP)」 により、SYLFF奨学金を受給して既に学位を取得したSYLFFフェロー(2名以上)がリードする共同研究プロジェクトや社会貢献プロジェクトを支援しています。今週の奨学レポートでは、2008年度にJIP奨励金を支給するプロジェクトをご紹介します。


2008年度実施プロジェクト
1. Human Rights-Based Approach to Disability and Health in Development Cooperation: Perspectives from the South [共同研究]
2. World Heritage, Regional Integration and Local Livelihoods: Tourism, development, and sustainability in mainland Southeast Asia [共同研究
3. An Investigation and Research of Traditional Houses in Gansu [共同研究]
4. Youth Entrepreneurial and Life Skills Workshop [社会貢献]


1. Human Rights-Based Approach to Disability and Health in Development Cooperation: Perspectives from the South [共同研究]


プロジェクトリーダー: 勝井久代、リチャード・ワマイ
(ヘルシンキ大学/フィンランド)

このプロジェクトは2006年に立ち上げられ、1年目は「国際開発政策における保健衛生および障害」をテーマとする研究を行った。国際開発政策において保健衛生(health)や障害(disability)という要素が、特定の分野に限らず、あらゆる政策分野で考慮され取り入れられているか(“メインストリーム化”されているか)、また、メインストリーム化に係わる様々なアクター(援助国・被援助国政府、NGO、障害者団体、国際機関等)がこの問題にどのように影響を及ぼしているかを検証した。

プロジェクト2年目は、アフリカの開発協力における保健衛生および障害の取り扱われ方について検証する。人権アプローチ* を分析ツールとして用いてケーススタディーを行う。第1のケーススタディーでは、障害を持つウガンダの女性達が自ら援助の受入れを決める際の要因は何か、そして援助受給者の権利とは何かを研究する。第2のケーススタディーでは、イギリスの国際開発省(Department for International Development: DFID)と日本の国際協力機構(JICA)のエチオピアとケニアにおける援助プロジェクトを検証し、開発協力の公平性や質などに関する評価を行う。開発協力においては、ドナー側の視点からの援助が多いが、このプロジェクトでは、NGOが活躍する現地の状況を調査発表し、援助の受け手の視点から貧困や人権問題について人々の認識の向上や社会的理解を目指す。

*人権アプローチ(human rights-based approach)とは、障害が原因でしかるべき権利や政策の恩恵を受けられない状態を人権侵害と定義することにより、問題の所在と方法論を明確にし、人々の障害やその他の特性に対する人権侵害も考慮しながら人権全般に配慮するアプローチである。人権アプローチでは、障害者自身を含む社会のすべての関係者が障害者の権利を理解し、障害者の権利が侵害されている場合は改善を求めていくものである。

勝井久代 (Hisayo Katsui)
katsui[at]mappi.helsinki.fi

ヘルシンキ大学(University of Helsinki)で2002年にSYLFF奨学金を受給。2005年に同大学で博士号を取得、現在は、フィンランドのオーボ・アカデミ大学人権研究所(Institute for Human Rights of Åbo Akademi University, Finland)のシニア・リサーチャーを務める。関心は、障害、市民社会、人権、開発など。

リチャード・ワマイ (Richard Wamai)
rwamai[at]hsph.harvard.edu

ケニア出身。ヘルシンキ大学で2000年にSYLFF奨学金を受給。2004年に同大学で博士号を取得。現在は米国ハーバード大学公衆衛生大学院人口・国際保健学部(Department of Population and International Health, Harvard School of Public Health)の武見国際保健プログラム(Takemi Program in International Health)のリサーチ・フェローを務める。 関心は国際保健衛生、公共政策、非営利活動のリサーチなど。

2. World Heritage, Regional Integration and Local Livelihoods: Tourism, development, and sustainability in mainland Southeast Asia [共同研究]


プロジェクトリーダー:コリーン・フォックス、ニコラス・コーラー
(オレゴン大学/米国)

このプロジェクトは、カンボジア、タイ、ラオスにおいて、世界遺産の制定による観光産業の発展が、どのように周辺の景観を変化させ、地域の発展や国際協力プログラムの実施に影響しているか調査する。世界遺産が多い東南アジアには、海外から多くの人々が観光に訪れ観光産業が発展し、また国際協力プログラムの発展につながっている。カンボジア、タイ、ラオス等の発展途上国では、世界遺産保存のための資金源を観光に頼っている。しかし、観光産業を発展させながら世界遺産を保護することは、双方の目的が相反しているため容易ではない。それは、経済発展、現地の人々の生活、世界遺産周辺の景観保護など、様々な要因が絡んでいるからである。このプロジェクトでは、遺産保護が国際的に行われている中、地域の観光発展がその土地の持続可能な発展や貧困対策につながっているか検証する。プロジェクト終了後は、調査結果をまとめ観光機関に配布する予定である。

コリーン・フォックス (Coleen Fox)
Coleen.A.Fox[at]Dartmouth.EDU

オレゴン大学(University of Oregon)博士課程在学中の1996~1997年にSYLFF奨学金を受給。現在は、ダートマス大学にて地理学部と環境問題研究プログラムで教鞭をとる。人間(人類)社会と環境変化についての研究を行う。今までインドネシア、ベトナム、タイ、ラオス、カンボジア、アフリカ南部にて調査を行う。

ニコラス・コーラー (Nicholas Kohler)
nicholas[at]uoregon.edu

オレゴン大学(University of Oregon)博士課程在学中の1996~1997年にSYLFF奨学金を受給。現在は、同大学の地理学部で教える。関心は、人と環境との関係、土地利用、土地被覆変化、地理調査技術 (リモートセンシング、遠隔探査地理情報(処理)システム、環境モニタリング、地図製作法)。今までに東南アジア諸国で研究を行い、アメリカ西部とアジアでも多くのプロジェクトに参加する。

3. An Investigation and Research of Traditional Houses in Gansu [共同研究]


プロジェクトリーダー:唐暁軍、魏迎春(蘭州大学/中国)

このプロジェクトでは、中国・甘粛省の伝統家屋を保存のための調査研究を行う。研究チームには、歴史、文化人類学、そして文化遺産の分野の専門家が参加し、明・清朝の時代と中華民国の時代(1911~1949)に建てられた家屋を調査する。この時代に建てられた家屋は、現在11の都市に点在し、建築資材、様式や構造に様々な特色がある。プロジェクトチームは、甘粛省の伝統家屋の歴史的背景と6つの建築様式を調査し、調査結果を系統的かつ詳細なアーカイブとしてまとめる。また、これら伝統家屋の現在の保存状況を調べ、今後の保存方法を提案する。

唐暁軍 (Xiaojun Tang)
tangxj[at]lzu.edu.cn

蘭州大学(Lanzhou University)の修士課程在学中、2000年にSYLFF奨学金を受給。2006年に同大学敦煌研究プログラム(Dunhuang Studies)で博士号取得。現在は、甘粛省の文化局(Cultural Relics Preservation and Maintenance Research Institute of Gansu Province)で文化遺産の保存管理する部署のディレクターを務める。関心は、文化遺産学、歴史建造物の保存、古代石碑文など、専門は文化遺産保存のためのプロジェクトマネジメントで、現在までに30の論文と3冊の著書を出版している。

魏迎春 (Yingchun Wei)
Weiyingchun1968[at]163.com

蘭州大学(Lanzhou University)の修士課程在学中、2000年にSYLFF奨学金を受給。2005年に敦煌研究プログラム(Dunhuang Studies)で博士号を取得。現在は、蘭州大学の敦煌研究所(Dunhuang Studies Institute)のアシスタント・リサーチャー、敦煌文化センター(Dunhuang Literature Center)のディレクターを務める。研究分野は、敦煌の古代史、歴史文学、民族文学、仏教と文化遺産。

4. Youth Entrepreneurial and Life Skills Workshop [社会貢献]


プロジェクトリーダー:プラシマ・ロドリゲス (コロンビア大学/米国)、バダムジャブ・バツクー(経営アカデミー/モンゴル)

本プロジェクトは2006年に立ち上げられ、1年目は発展途上国の高校生の起業家育成の教材作りのための研究を行った。またその前段階として、起業家精神の育成と経済発展の関係を研究し、起業家育成の役割、起業家の特性や様々な教育方法を調査した。また、インドの15~18歳の子供達を対象にした起業家育成プログラムを開発した。

プロジェクト2年目は、7歳から14歳までの子供を対象とした起業家とライフスキルのワークショップのためのカリキュラムを開発・実施する。このカリキュラムにはマーケティングをはじめ、コミュニケーションや財務といった起業家能力や、アイディア創造、想像力、チャンスに気付く力など、起業家としての資質を向上させるためのアクティビティーが多く取り入れられている。各国の状況やニーズに合わせてカリキュラムをカスタマイズし、インド、シエラレオネ、モンゴルで試験的に2~3日のワークショップとして実施する。チームメンバーは、子供達が起業家として成功するためのスキルのみでなく、将来どのような仕事や個人的な状況においても役立つ様々なスキルを習得することを目指す。ワークショップ終了後は、カリキュラムやワークショップを評価分析し、スケールを拡大して世界の他地域でもプロジェクトを行う予定である。

プラシマ・ロドリゲス (Prathima Rodrigues)
prathima.rodrigues[at]gmail.com

コロンビア大学(Columbia University)の修士課程在学中2005年にSYLFF奨学金を受給。現在は、ワシントンDCの世界銀行本部の人材(人間)開発ネットワークのリサーチ・アナリストを務める。インド出身。ドレキセル大学でコンピューターサイエンス、コロンビア大学で経済学の修士号を取得。国連工業開発機関・ユニド(United Nations Industrial Development Organization – UNIDO)とユニセフでの勤務や国連ミレニアムプロジェクト(United Nations Millennium Development Goals)に携わるなど、国連機関での職務経験を持つ。

バダムジャブ・バツクー(Badamjav Batsukh)
Badamaad[at]yahoo.com

経営アカデミー (Academy of Management/モンゴル)の修士課程在学中1999年にSYLFF奨学金を受給。現在は、モンゴルの教育・文化・科学省の初等・中等教育局に勤務。モンゴル・ユース連盟で国内・国際レベルのプロジェクト実施に携わる。大阪大学でも教育行政の修士号を取得し、日本の教科書政策と開発をテーマに研究を行った。今回のプロジェクトでは、モンゴル教育省の経験を活かしモンゴルのワークショップ実施において重要な役割を果たす。

(文責:椎名 麻紀)