タイプ
レポート
日付
2008/10/15

中国のSYLFFフェローによる四川大地震被災者のための支援活動―2つのボランティアチームからの報告―

中国のSYLFFフェローによる四川大地震被災者のための支援活動
―2つのボランティアチームからの報告―


東京財団では、中国・四川大地震被災者に対する支援活動を中国のSYLFFフェローに呼びかけ、SYLFFフェローを中心とする2つのボランティアチームに対して支援をいたしました。以前、それらの活動については、当財団のサイトにおいて財団スタッフの出張報告を掲載いたしました(中国のSYLFFフェローによる四川大地震被災者のための支援活動)。今回、東京財団が支援した蘭州大学および重慶大学のボランティアチームから報告書(中国語)が届きましたので、和訳・編集したものを以下に掲載いたします。


「東京財団―甘粛省隴南市文県一中における大学進学者支援プロジェクト」


プロジェクトリーダー
曾向紅
(蘭州大学SYLFFフェロー)

1.背 景
2008年5月12日、中国四川省汶川でマグニチュード8の大地震が発生した。被災地域は中国の四川省、重慶市、陝西省、甘粛省に及んでいた。被災者を支援するため、中国の蘭州大学、北京大学等10大学にて「ヤングリーダー奨学基金」(SYLFF)を運営している東京財団は、同基金による奨学生(SYLFFフェロー)に対して、四川大地震被災者への支援活動を呼びかけた。蘭州大学のSYLFFフェローであり、同大学政治行政大学院博士課程に在籍する曾向紅は東京財団の呼びかけに応えて「東京財団――甘粛省隴南市文県一中(日本の中学校と高校に当たる)における大学進学者支援プロジェクト」を申請し、東京財団の助成を受給した。

2.支援プロジェクトの内容
8月20日~24日、蘭州大学政治行政学院大学院生の8名からなるボランティアチームは甘粛省隴南市文県一中にて、上記プロジェクトを実施した。

今回の目的は、文県一中の四年制大学合格者に物資面と精神面での支援を提供することである。8月20日に長距離バスで蘭州を出発したチームは、翌21日午後に文県に到着、早速、隴南市文県一中の馬美安副校長と22日当日の活動実施について打ち合わせを行った。

8月22日に行われた活動には、ボランティア8名の他、文県一中馬美安副校長、総務課袁主任、文県一中高校3年生の担任5名、そして大学進学予定の生徒約180名が参加した。活動では、これらの大学進学予定者にカバン、ノート、ペン等、当座必要な学習用品を配布したほか、ボランティアが「大学生活について」と題してプレゼンテーションをし、大学での勉強方法、コミュニケーション、社会活動への参加、奨学金の申請方法等、これからの大学生活についての理解や必要な精神的準備について指導を行った。


生徒たちは、精神的準備と学生時代の成長体験、奨学金の申請方法について特に関心と興味を示し、メモを取りながら、熱心に耳を傾けていた。生徒たちの反応は良く、今回の活動計画の所期の効果が得られたといえる。

文県一中の生徒たちの住まいは文県の各地に点在しており、一部の生徒は学校から遠く離れて暮らしている。これらの生徒たちは時間通りに活動場所に到着できず、活動時間内に学習用品を受領することができなかったため、ボランティアはこれらの生徒たちが到着するのを待ち、活動終了後に遅れて来た生徒たち約20名に学習用品を手渡した。

3.反 響
事前準備(8月上旬にチームリーダーが文県一中に赴き、活動の綿密な打合せと現地視察を行った)と周到な手配により今回の活動は期待通りの成果が得られた。会場に来た生徒たちは今回の活動に積極的に参加し、この活動を高く評価してくれた。

また、今回の活動については文県一中から積極的なご協力をいただいた。活動場所の手配や生徒への通知は効率的に行われ、時間の段取りも非常に周到であった。準備段階で細かいところまでボランティア達と学校側が詰めた結果が、活動の成功へとつながった。

今回の大学進学予定者に対する支援活動は、物品援助が主であり受益者が学校であるという多くの支援活動と異なり、精神的サポートが主であり、一人一人の生徒が主な受益者となった。この方式は文県一中の教員や生徒から高く評価された。また、今回の活動を通じて、私たちボランティアの企画能力と組織能力も鍛えられたと思う。蘭州大学のSYLFFフェローは、今回の活動を通じ、人を助ける心を伝えたと同時に、東京財団の中国国民に対する好意と支援を具現することができた。

4.活動を振り返って
地震の影響
支援活動を振り返り、一番強く感じたのは、やはり四川省大地震の影響そのものである。四川省大地震の発生は5月12日であり、今回の支援活動準備のため文県に行った8月初旬は地震発生から3カ月余り経ち、地震からの直接的な破壊は一部解消されてはいた。しかし、道端や畑、山、川辺と、到る所に仮住まいのテントが点在している。

また、地震の破壊力により多くの財産と生命が奪われたのみならず、人々への心理的衝撃やその後に続く余震は、被災地の人々の生活に大きな影響を与え続けている。
文県一中は3棟の教室棟があるが、地震で大きく損壊し、再建せざるをえない状況である。現在、生徒たちは外部から支援された仮設教室で授業を受けているが、学習環境は劣悪である。学校の事務棟も損壊がひどく、立入禁止になっている。学校のスタッフたちは損壊程度が比較的軽い図書館で事務処理をしている。

大地震による甚大な破壊に比べれば今回の私たちの文県一中への支援活動はきわめて限られたものであった。しかし、被災地の人々に微力ながら貢献でき、とても意味のある活動だったと思う。

リーダーとしての経験
また、支援活動の責任者として今回の活動をリードしたことについて述べたい。これまで、大学や指導教授が主催した社会実践活動には数多く参加したが、自分自身がリーダーとしてボランティアチームを組織し、活動したのは今回が初めてだった。今回の経験を通じて、グローバルな視野をもつリーダー育成を目標とする「ヤングリーダー奨学基金」についてよく理解できた。今回の支援活動では、支援プロジェクトの立案と企画から、文県一中とのコンタクト、ボランティアの募集、東京財団とのやり取り、実施の調整まで、チームリーダーとして的確な行動と決断が要求された。そして、支援活動中は、コミュニケーション能力、先見力、決断力が試された。幸い、自ら企画した支援プロジェクトを順調に実施し、とても良い結果に終わった。ボランティアたちの安全確保もでき、チーム全員が快く支援活動に参加できた。東京財団が私自身とボランティアチームに貴重な機会を与えてくれたことを心から感謝したい。

文県一中の生徒たち
最後に、今回の支援対象――文県一中の大学進学予定者のことについて感想を述べたい。地震からもたらされた様々な不便の中、文県一中は今年の全国統一試験において4年制大学合格者240数名という記録的な実績を挙げた(昨年度は165人)。これは、被災地受験生を支援する中国政府の政策による部分ももちろんあるが、生徒達が被災後も受験勉強に励んでいたこと、その勇敢さと精神力の強さも大きな理由であろう。

支援活動の実施当日、私たちは180数名の4年制大学合格者と会った。彼らの大学生活への憧れ、大学生活への前向きな姿勢に、私たちボランティアは深く感動した。これらの生徒の90%以上が農村出身だという。彼らの家庭収入については具体的なデータがないが、彼らに聞いた範囲では今後の家庭生活と本人達の大学生活の困難が予想される。「大学生生活について」のプレゼンテーションをした際も、奨学金や貸与助学金に対する生徒たちの関心度が最も高かった。しかし、どんな困難があっても、彼らが強い精神力で勇敢に挑んでいくことと確信している。



「被災地綿陽市でのボランティア活動」


プロジェクトリーダー
唐松林
(重慶大学SYLFFフェロー)


5月12日の大地震の被災地、四川省綿陽市での7日間のボランティア活動が終了した。短い期間だったが、綿陽での支援活動は私の脳裏に焼きついて忘れられない出来事となった。

東京財団の支援により、志を共にする何人かの友人が集まり、被災地綿陽の中高生の心理的支援を目的とするボランティア活動を行った。ボランティアチームのメンバーは、私の他に、「新思考トレーニング」の賀国棟講師、重慶山水旅行社社長陳岩、西南大学教師李麗輝、西南大学大学院心理学研究科大学院生呉梅宝・安暁鵬、およびデザイナー周友蘭である。

活動内容
綿陽には8月20日に到着した。

翌8月21日に綿陽郊外にある被災者の避難所で被災者、特に中高生たちにインタビューし、彼らの心理状況を調べた。インタビューにおいて多くの生徒は、一見非常に平静で、すでに地震の悲しみから抜け出したかのように見えたが、話を進めるうちに、地震が被災者や生徒たちの心に残した傷が依然と深く、心に暗い影を落としていることがわかった。将来の生活への困惑や不安がかなりあり、彼らが現在必要としているのは具体的な生活物資の救援だけではなく、今後の生活についての強い信念と希望であると分った。これらの現状から私たちは今回の精神的支援を目的とするボランティア活動の価値を感じ、私たちの自信と決意が更に固まった。

8月22日、私たちは今回の地震で最も大きな被害を受けた北川中学校(日本の中学校と高校に当たる)に向かった。(地震の破壊により、もとあった校舎は永遠に北川県から消えてしまった。教職員や生徒をはじめ、学校全体が北川県から綿陽市郊外にある大手企業「長虹」のトレーニングセンターに移転しており、私たちが向かったのはその移転先の方である。)そこで北川中学校の中学生たちと座談会を開催した。地震の話を切り出すと、多くの学生はまだ恐怖の表情が隠せなかった。生徒たちはまた、地震の中で生徒を救うために命を捧げた先生たちのことを涙ながらに話してくれた。とても感動的であった。彼らが一日も早く地震という暗い影から抜け出すようにするために、ボランティアチームの心理学の専門家はカウンセリングを実施した。

北川中学校の被害は大きく報道され、被災後の重要な再建計画にもリストアップされたため、国内外からたくさんの援助が届いている。そのため、私たちは北川中学校での活動後、もっと援助を必要としている他の学校に移って活動することにした。

8月23日、私たちは綿陽市管轄下の安県秀水中学校に赴き、心理訓練を実施する前の準備をした。また、各学年の生徒たちとそれぞれ面談し、地震発生以来の心理的な変化及び当面の勉強面や生活面の問題点を聞いた。約200名の学生に心理調査アンケート表を配布した。アンケート調査を通じて生徒の心理状況をより多角的に把握するためである。

8月24日、生徒たちから回収したアンケート表に対して分析と整理をした。そしてアンケート調査の結果に基づき、具体的な訓練計画を策定した。その後、訓練に必要な物資を購入し、事前に活動の模擬訓練を行った。

8月25~26日、私たちは秀水中学校で2日間にわたる心理訓練を実施した。地震により、秀水中学校所在地域の宿泊施設が使えなくなったため、私たちは綿陽市内に宿泊し、連日秀水中学校まで片道約2時間をバスで通った。

チームメンバーの心理学講師は自らの経験を基に被災地の中学生のために「被災後の心理状態の調整と夢の掘り起こし」、「コミュニケーションと協力」、「信頼感と責任感」、「感謝の気持ち」と4つの訓練コースを計画、実施した。ボランティアも生徒たちに交じって共に参加した。

「被災後の心理調整と夢の掘り起こし」のコースを通じて生徒たちは地震への恐怖感を軽減し、感受性や未来への憧れが沸いてきた。この活動に参加する意欲や積極性も高まってきた。次の2つのコース(「コミュニケーションと協力」と「信頼感と責任感」)は集団活動を通じて生徒たちの責任感と使命感を増強し、チームワークを醸成した。最後の「感謝の気持ち」のコースは、緩やかな音楽の中でリラックスした状態で講師の朗読を聞いた。

これらの訓練コースを通じて長い間閉じていた生徒たちの心が開かれるのを感じた。生徒の多くは思う存分泣いた。これらの活動を見ていた先生と保護者たちも生徒たちと抱き合って泣き、その場面を目にした私たちも涙が止まらなかった。
2日間の活動が終了しても、生徒たちは私たちから離れようとせず、私たちといろいろな話をした。これは実に感動的なものであった。私たちもこの2日間の感想を生徒たちと分かち合った。お互いに連絡先を交換し、別れの言葉を交わした。空腹のまま綿陽市内に戻った時は夜10時をまわっていたが、高ぶった感情はなかなか収まらなかった。生徒たちに深く感動させられた私たちであった。

活動が終了してボランティアが各々の大学や職場に戻った後にも生徒たちから多くのEメールが寄せられた。自分達の勉強や将来への夢を語り、感謝の言葉を送ってくれた。これらを見て私たちは安心し、嬉しかった。もちろん、報いを期待していたからではない。愛の種が彼らの心に根を下ろし、芽生え、希望の火が燃えていることを見届けることができたため、安堵を感じたのである。

愛があれば希望がある。被災地の明日は更によくなり、世界の明日も更によくなることを信じている。