東京財団 外交史ブックレビュー

東京財団 外交史ブックレビューvol.002

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.002━2007.08.10━
      ◆◆ 東京財団 外交史ブックレビュー ◆◆

     編集・発行:東京財団政治外交検証プロジェクト
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はじめに――日本外交に関心を持つ方々へ
/北岡伸一(東京財団主任研究員、東京大学教授)

清沢洌は『外交史』(1940年)の序文に、「外交史に関する知識が、今日ほど
必要とされてゐる時はない。この知識を基礎とせずして造りあげられたる外交
政策と、外交輿論は、根のない花である」と書いています。

これは、時代を超えた真理だと思います。現代の日本は、当時ほど切迫した
状況にあるわけではありませんし、当時とは比較にならないほどの言論の自由
があり、情報収集も容易です。にもかかわらず、現代の外交政策や外交世論が、
正確な外交史の知識の上に築かれているとは、決して言えないのではないでしょうか。

その一方で、戦後外交に関する研究は着実に発展しつつあります。外交文書の
公開や情報公開制度の利用等によって、新しい史料が利用可能となり、アメリカ等
外国の文書に主として依拠した研究から、より総合的複眼的な視点が提示されつつ
あります。それらの研究は、しかし、まだ専門研究者の間で共有されるだけで、
広い外交論議の基礎として十分利用されてはいないというのが現状です。

このニューズレターは、そうしたギャップを埋めることを目指しています。
すなわち、戦後日本外交史およびこれに密接に関連する分野(日米関係史、
日中関係史、その他の国際政治史、日本政治史、地域研究など)おいて最近
登場した優れた研究を、対外政策に関心を持つ幅広い層、いわゆる
foreign policy constituency に紹介しようとするものです。日本外交を
「根のある花」にするために、ささやかな貢献ができれば幸いです。



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  【第2号 目次】

1.政治外交ブック・レビュー

『独仏関係と戦後ヨーロッパ国際秩序
ドゴール外交とヨーロッパの構築1958-1969』川嶋周一著
/評者 細谷雄一(慶應義塾大学法学部准教授)

『中国外交の新思考』王逸舟著
/評者 川島真(東京大学大学院総合文化研究科准教授)

2.読書案内(短評)

『選挙違反の歴史 ウラからみた日本の100年』季武嘉也著
/評者 黒澤良(学習院大学法学部兼任講師)

「『対米強調』/『対米自主』外交論再考」保城広至
(『レヴァイアサン』第40号掲載論文)
/評者 宮城大蔵(政策研究大学院大学政策研究科助教授)

3.今月の新刊・書評紹介

編集後記


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1.政治外交ブック・レビュー

※このコーナーでは、日本政治外交に関連する最近の優れた書籍・論文等を、
気鋭の研究者が紹介します。特に外交の実務に携わる方々は必須のもの
ばかりです。是非お読みいただければと思います。


『独仏関係と戦後ヨーロッパ国際秩序
ドゴール外交とヨーロッパの構築1958-1969』川嶋周一著
/評者 細谷雄一(慶應義塾大学法学部准教授)

本書は、1958年から1969年までのフランスのドゴール外交を中心にして、
独仏関係と「ヨーロッパ構築」としての国際秩序の展開を論じる研究書である。
フランスおよびドイツの広範な一次史料のみならず、アメリカやイギリスの
史料も用いた画期的な国際政治史研究であり、また、ドゴール外交を検証する
日本語ではじめての研究書でもある。

ドゴール外交を軸とした伝統的な外交史的手法と、近年顕著に発展しつつある
ヨーロッパ統合史的手法を組み合わせて、冷戦という国際政治構造の中に位置
づけるという、きわめてスケールの大きな構図の研究として仕上がっている…

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『中国外交の新思考』王逸舟著
/評者 川島真(東京大学大学院総合文化研究科准教授)

胡錦濤政権下の中国外交を読み解く上での最適の参考書のひとつである。
これを読むことで現在の中国の外交における自画像、国際社会において中国が
自覚している役割などが把握できるであろう。新聞書評で、胡錦濤政権の外交
内容と変わりないとの批判があったが、それは発想が逆で、むしろ胡錦濤政権の
外交の解説書として有用だということだろう。だが、新聞の書評子がこのような
書き方をしたのは、「新思考」という語から何か今の中国外交との違い、新しさ
があるのではないかと思ったからかもしれない…

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2.読書案内(短評)

『選挙違反の歴史 ウラからみた日本の100年』季武嘉也著
/評者 黒澤良(学習院大学法学部兼任講師)

日本では政治改革の実現を選挙法改正に期待する傾向がある。大正期の普選運動
には、男子普選導入に加えて、政治腐敗一掃という目的があった。有権者の飛躍的
増大によって買収が不可能になれば、選挙資金を調達する必要性が減じ、結果として
政治と金の問題も解消すると考えたからであった。普通選挙は万能であり、すべての
政治問題は一挙に解決すると考えられていた…

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「『対米強調』/『対米自主』外交論再考」保城広至
(『レヴァイアサン』第40号掲載論文)
/評者 宮城大蔵(政策研究大学院大学政策研究科助教授)

「対米協調」か「対米自主」かと、戦後日本外交の営為をアメリカとの距離感を
基準に意味づけることがこれまで日本外交(史)研究において広く行われてきた。
保城氏の論考は、精緻な分析によって対米「協調」/「自主」という枠組みが、
いかに妥当性を欠いたものであるかを論じている。研究者によって「協調」「自主」
の意味内容も、扱う事例も恣意的であり、戦後外交を分析する枠組みとして有用
ではないとの結論は説得的である…

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3.今月の新刊・書評紹介

2007年5月に刊行された政治外交関連の新刊図書・雑誌記事・書評のリストです。
↓外交に関する情報収集や研究のデータベースとしてお役立てください。
http://www.tkfd.or.jp/research/news.php?id=82

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◆編集後記

暑い日々が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。これから夏期休暇を
取ることの出来る方は、大型書店で面白そうな新刊本をまとめ買いして、旅行先や
帰省先で少しばかり読書に没頭する至福の時を過ごされるのかもしれませんね。

4月にスタートしました政治外交検証プロジェクト研究会も、順調に軌道に乗り始め、
北岡伸一主任研究員の下に毎回優れた若手研究者が数多く集まって、新刊本をめぐる
意見交換に花を咲かせております。特にここ一年で画期的な研究書が次々と刊行
されることからも、どの良書を選定して書評をするかを思案するのも楽しい作業です。
書評以外にもメールマガジンでは、短評として色々な著書や論文を紹介いたします。
また「新刊著書・記事・書評リスト」として、新しい大量の関連する文献のリストを
作成しております。是非とも、ホームページにてご覧頂ければ幸いでございます。

夏期休暇をとられる方は楽しい時間をお過ごしになり、それをとるのが難しい方は
日々の生活に少しでもリラックスした時間をおとりできますことを、願っております。
(細谷)


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政治外交検証プロジェクトニュース 第2号(2007年8月10日発行)
発行元:東京財団政治外交検証プロジェクト北岡伸一主任研究員
    〒107-0052 港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階 東京財団


編集責任者:
細谷雄一(慶應義塾大学法学部准教授)
五百旗頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)

編集担当:
林大輔(慶應義塾大学大学院法学政治学研究科)
佐藤孝弘(東京財団研究部プログラム・オフィサー)

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