東京財団 外交史ブックレビュー

東京財団 外交史ブックレビューvol.018

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2009.05.21
◆◇ 東京財団 外交史ブックレビュー Vol.018 ◇◆
      http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19
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─ 目次 ─

1. ブックレビュー
  『台湾の政治―中華民国台湾化の戦後史』(若林正丈著、東京大学出版会)
    評者:松田康博(東京大学東洋文化研究所准教授)

2. 新刊図書・雑誌記事・書評紹介(2009年2、3月)

◆ 編集後記

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1. ブックレビュー

このコーナーでは、日本政治外交に関連する最近の優れた書籍・論文等を、気
鋭の研究者が紹介します。特に外交の実務に携わる方々は必須のものばかりで
す。是非お読みいただければと思います。


■『台湾の政治―中華民国台湾化の戦後史』(若林正丈著、東京大学出版会)
   評者:松田康博(東京大学東洋文化研究所准教授)

本書の著者である若林正丈氏は、日本を代表する台湾政治研究者であり、本書
は著者の本格的な研究書として3冊目である。これ以前の2冊とは、日本時代の
抗日運動史の先駆的研究である若林[1983]と、台湾型権威主義体制とその解
体・民主化に焦点を当てた若林[1992]である。本書の位置づけは、構成から
見て通史的な特徴が強いが、著書が「学術的に厳密な意味で歴史書であると言
うのには無理がある」(ii頁)という通り、歴史研究の基礎の上に様々な政治
理論を援用して展開された「現代台湾政治論」という方がよいかもしれない…

▼続きはこちら
 http://www.tkfd.or.jp/research/news.php?id=444

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2. 新刊図書・雑誌記事・書評紹介

2、3月に刊行された政治外交関連の新刊図書・雑誌記事・書評のリストです。
外交に関する情報収集や研究のデータベースとしてお役立てください。

▼リスト(2月分)はこちら
 http://www.tkfd.or.jp/research/news.php?id=437

▼リスト(3月分)はこちら
 http://www.tkfd.or.jp/research/news.php?id=438

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◆ 編集後記

今回は、国民党の移転から開発の時代、そして民主化へという台湾現代史を跡
付けた大著『台湾の政治』を取り上げました。これまで本研究会で扱った戦前
の日本統治時代をめぐる諸相を重ね合わせると、台湾という土地を舞台に展開
した壮大な歴史ドラマが浮かび上がってくるかのようでした。

『台湾の政治』のあとがきで若林氏は、台湾研究の新たな手がかりとして「脱
植民地化」を挙げ、「日本植民帝国という東アジアにおける秩序形成・維持の
アクターのひとつが1945年で消滅した後、かつての植民地地域にはどのような
アクターがどのように新たな秩序形成を行ったのか、東西冷戦の波及によりそ
れは重層的なものにならざるを得なかったのだが、そのような日本支配後の空
間と時間の中で人々はどのように生きたのか、それはどのように政治史として
現れてくるのか、台湾政治史研究の一つの柱は、こうした問いに応答すること
から構築されるのではないか」と記しています。

「海のアジア」と「陸のアジア」のあいだの「気圧の谷間」(若林)としてさ
まざまな支配者が往還した台湾なのであれば、そこには台湾のみならずアジア
国際政治の秘められた構図を読み解く手がかりが潜んでいるのかもしれませ
ん。(宮城)

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日本外交に関心を持つ方々へ
北岡伸一(東京財団主任研究員、東京大学教授)

清沢洌は『外交史』(1940年)の序文に、「外交史に関する知識が、今日ほど
必要とされてゐる時はない。この知識を基礎とせずして造りあげられたる外交
政策と、外交輿論は、根のない花である」と書いています。

これは、時代を超えた真理だと思います。現代の日本は、当時ほど切迫した状
況にあるわけではありませんし、当時とは比較にならないほどの言論の自由が
あり、情報収集も容易です。にもかかわらず、現代の外交政策や外交世論が、
正確な外交史の知識の上に築かれているとは、決して言えないのではないでし
ょうか。

その一方で、戦後外交に関する研究は着実に発展しつつあります。外交文書の
公開や情報公開制度の利用等によって、新しい史料が利用可能となり、アメリ
カ等外国の文書に主として依拠した研究から、より総合的複眼的な視点が提示
されつつあります。それらの研究は、しかし、まだ専門研究者の間で共有され
るだけで、広い外交論議の基礎として十分利用されてはいないというのが現状
です。

このニューズレターは、そうしたギャップを埋めることを目指しています。す
なわち、戦後日本外交史およびこれに密接に関連する分野(日米関係史、日中
関係史、その他の国際政治史、日本政治史、地域研究など)において最近登場
した優れた研究を、対外政策に関心を持つ幅広い層、いわゆるforeign policy
constituency に紹介しようとするものです。日本外交を「根のある花」にす
るために、ささやかな貢献ができれば幸いです。

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『外交史ブックレビュー』第18号(2009年5月21日発行)

発行元:東京財団「政治外交検証プロジェクト」(北岡伸一主任研究員)
    〒107-0052 港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
    http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19

編集責任者:五百旗頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)
      宮城大蔵(上智大学外国語学部准教授)

編集担当:林大輔(慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程)
     松下薫(東京財団広報部)

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