東京財団 外交史ブックレビュー

東京財団 外交史ブックレビューvol.024

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2010.05.27
◆◇ 東京財団 外交史ブックレビュー Vol.024 ◇◆
      http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19
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1. ブックレビュー

■『行政改革と調整のシステム』牧原出著(東京大学出版会、2009年)
   評者:村井 哲也(明治大学法学部兼任講師)

■『辛亥革命と日本政治の変動』櫻井良樹著(岩波書店、2009年)
評者:小宮一夫(駒澤大学法学部非常勤講師)

■『元帥畑俊六回顧録』軍事史学会編、伊藤隆・原剛監修(錦正社、2009年)
   評者:大前信也(同志社女子大学嘱託講師)

2. 新刊図書・雑誌記事・書評紹介(2010年3月)

3. 編集後記

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1. ブックレビュー

このコーナーでは、日本政治外交に関連する最近の優れた書籍・論文等を、気
鋭の研究者が紹介します。特に外交の実務に携わる方々は必須のものばかりで
す。是非お読みいただければと思います。

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■『行政改革と調整のシステム』牧原出著(東京大学出版会、2009年)
  評者:村井 哲也(明治大学法学部兼任講師)

本書の著者は、2003年に刊行され大きな評判を呼んだ前著『内閣政治と「大蔵
省支配」 政治主導の条件』において、行政学の立場から政治史的アプローチ
を積極的に採用し、主に1950年代における政官関係の推移を詳細に検証してい
る。そこでは、大蔵省を中心とした「官房型官僚」の能動的な「調査」の政治
に焦点を当てることで、不毛な論争に陥りがちな日本の政官関係に再解釈を施
し、確かな役割分担に支えられた「政治主導」の条件を提示している。これに
対し本書は、やはり重厚な政治史的アプローチと闊達な国際比較分析を採用し
つつ、歴史的にも世界的にも行政改革の駆動力となってきた「調整」のシステ
ムを詳細に検証している。前著に比べ、本来の行政学のフィールドをより意識
したものになったと言える。

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  http://www.tkfd.or.jp/research/news.php?id=597

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■『辛亥革命と日本政治の変動』櫻井良樹著(岩波書店、2009年)
評者:小宮一夫(駒澤大学法学部非常勤講師)

本書は、辛亥革命が日本の外交と内政に如何なる影響を及ぼしたかを分析した
ものである。辛亥革命後、中国情勢は混沌とする。一方、本書が対象とする明
治末年から大正後期にかけての日本の対中外交は、混迷する中国情勢と呼応す
るかのようにしばしば迷走した。このような1910年代の激動の中国情勢を所与
の前提として、本書は日本の外交と内政がどのように動揺したかを明らかにし
ていく。

なお、著者は都市政治をはじめとする内政史研究から外交史研究まで自在にこ
なす政治外交史研究者として知られ、本書においても、その器用さは如何なく
発揮されている。

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  http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=593
 
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■『元帥畑俊六回顧録』軍事史学会編、伊藤隆・原剛監修(錦正社、2009年)
   評者:大前信也(同志社女子大学嘱託講師)

軍事史関係史料の翻刻に取り組む軍事史学会が、『機密戦争日誌』(平成10
年)、『宮崎周一中将日誌』(同15年)に続く第3弾として公刊したのが本書
である。日本陸軍最後の元帥であった畑俊六が巣鴨在監中に執筆した回顧録と
彼の昭和3年から4年、20年から23年の日記からなる。

監修者のひとり、伊藤隆氏のまえがきが示すように、回顧録は誕生から阿部内
閣陸相就任までの詳細な回想で、陸軍内の派閥対立から距離をおいていた畑な
らではの客観的な記述は、陸軍研究の貴重な資料といえよう。

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  http://www.tkfd.or.jp/research/news.php?id=586

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2. 新刊図書・雑誌記事・書評紹介

2010年3月に刊行された政治外交関連の新刊図書・雑誌記事・書評のリストで
す。外交に関する情報収集や研究のデータベースとしてお役立てください。

 リストはこちら↓
  http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=600

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3. 編集後記

「政治主導」と官僚・行政との関係はいかなるものであるべきか。中国の変貌
に日本はどう向き合うべきか。これらの課題が時代を超えて日本の政治外交で
いかに中心的な課題であったかが浮き彫りになる今月のブックレビューです。
現在もまた、歴史の中の一コマであるということを改めて感じています。
(宮城)

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日本外交に関心を持つ方々へ
北岡伸一(東京財団上席研究員、東京大学教授)

清沢洌は『外交史』(1940年)の序文に、「外交史に関する知識が、今日ほど
必要とされてゐる時はない。この知識を基礎とせずして造りあげられたる外交
政策と、外交輿論は、根のない花である」と書いています。

これは、時代を超えた真理だと思います。現代の日本は、当時ほど切迫した状
況にあるわけではありませんし、当時とは比較にならないほどの言論の自由が
あり、情報収集も容易です。にもかかわらず、現代の外交政策や外交世論が、
正確な外交史の知識の上に築かれているとは、決して言えないのではないでし
ょうか。

その一方で、戦後外交に関する研究は着実に発展しつつあります。外交文書の
公開や情報公開制度の利用等によって、新しい史料が利用可能となり、アメリ
カ等外国の文書に主として依拠した研究から、より総合的複眼的な視点が提示
されつつあります。それらの研究は、しかし、まだ専門研究者の間で共有され
るだけで、広い外交論議の基礎として十分利用されてはいないというのが現状
です。

このニューズレターは、そうしたギャップを埋めることを目指しています。す
なわち、戦後日本外交史およびこれに密接に関連する分野(日米関係史、日中
関係史、その他の国際政治史、日本政治史、地域研究など)において最近登場
した優れた研究を、対外政策に関心を持つ幅広い層、いわゆるforeign policy
constituency に紹介しようとするものです。日本外交を「根のある花」にす
るために、ささやかな貢献ができれば幸いです。

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『外交史ブックレビュー』第24号(2010年05月27日発行)

発行元:東京財団 政治外交検証研究会(リーダー:北岡伸一上席研究員)
    〒107-0052 港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
    http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19

編集責任者:五百旗頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)
      宮城大蔵(上智大学外国語学部准教授)

編集担当:林大輔(慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程)
     松下薫(東京財団広報渉外担当オフィサー)

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