東京財団 外交史ブックレビュー

東京財団 外交史ブックレビューvol.025

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2010.06.28
◆◇ 東京財団 外交史ブックレビュー Vol.025 ◇◆
      http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19
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1. ブックレビュー

■『後藤新平と日露関係史―ロシア側新資料に基づく新見解』
   ワシーリー・モロジャコフ著/木村汎訳(藤原書店、2009年)
評者:千葉功(昭和女子大学人間文化学部准教授)

■『政党内閣の崩壊と満洲事変―1918~1932―』小林道彦著
  (ミネルヴァ書房、2010年)
   評者:小宮一夫(駒澤大学法学部非常勤講師)

2. 新刊図書・雑誌記事・書評紹介(2010年4月)

3. 編集後記

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1. ブックレビュー

このコーナーでは、日本政治外交に関連する最近の優れた書籍・論文等を、気
鋭の研究者が紹介します。特に外交の実務に携わる方々は必須のものばかりで
す。是非お読みいただければと思います。

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■『後藤新平と日露関係史―ロシア側新資料に基づく新見解』
   ワシーリー・モロジャコフ著/木村汎訳(藤原書店、2009年)
評者:千葉功(昭和女子大学人間文化学部准教授)

本書は、モスクワで2006年に刊行された原著の完訳である。著者であるモロジ
ャコフ氏は1968年モスクワ生まれ、モスクワ国立大学と東京大学で博士号を取
得、現在は拓殖大学日本文化研究所客員教授を務めている。

本書を書評する前に、簡単に本書の内容をまとめておこう。

第1章では、「鉄道帝国主義」の時代、満鉄総裁に就任した後藤新平が満鉄な
いし日本の官営鉄道のレールをロシアの工場に発注するため、ロシアを訪問
(1908年)したときのことを中心に扱っている。ロシア訪問は後藤自身のイニ
シアティブというよりも、ヴィレンキン(大蔵省駐日特別顧問)の鼓舞による
ものだという(pp.22-24)。また、後藤は歓迎会の席上、「本当の経済関係な
くして、国家間の友好的関係は存在しない時代となった」というスピーチした
という(p.36)が、この発想はいかにも後藤らしい。

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  http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=609

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■『政党内閣の崩壊と満洲事変―1918~1932―』小林道彦著
  (ミネルヴァ書房、2010年)
   評者:小宮一夫(駒澤大学法学部非常勤講師)

1931年9月、関東軍が柳条湖事件を引き起こした。これに端を発する満州事変
を第二次若槻内閣(立憲民政党)は解決できないまま、総辞職に至った。替っ
て登場した犬養内閣(立憲政友会)も満州事変の解決に取り組むさなかの1932
年5月、犬養毅首相が官邸で海軍の青年将校らによって暗殺される五・一五事
件によって、総辞職となった。周知のとおり、このあと政党内閣は第二次世界
大戦後まで復活することはなかった。1924年から続いた政党内閣は、8年でそ
の歴史の幕を閉じたのである。

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2. 新刊図書・雑誌記事・書評紹介

2010年4月に刊行された政治外交関連の新刊図書・雑誌記事・書評のリストで
す。外交に関する情報収集や研究のデータベースとしてお役立てください。

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  http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=607

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3. 編集後記

急に暑くなりますと、梅雨の鬱陶しさよりも水不足が案じられます。おかわり
ないでしょうか。

こういう折こそ居住まいを正し、論文集のような風格で本号をご披露したいも
のでございます。

ロシアなど、今まで縁遠かった史料の発掘によって、外交史の新たな知見が拓
かれつつあります(千葉書評)。しかしその間、日本の史料を用いた歴史研究
は精度を挙げており(小宮書評)、新たな角度からの知見が日本史研究におい
て歓待されるためのハードルが高くなった面もあります(再び千葉書評)。既
存研究のエセンスを分かりやすく解説し広く伝える書評(再び小宮書評)の意
義は、実務家のみならず研究者にとっても侮れないものがあるのではないでし
ょうか。

やはり夏の編集後記、我田引水でございました。ご免下さいませ。

(五百旗頭)

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日本外交に関心を持つ方々へ
北岡伸一(東京財団上席研究員、東京大学教授)

清沢洌は『外交史』(1940年)の序文に、「外交史に関する知識が、今日ほど
必要とされてゐる時はない。この知識を基礎とせずして造りあげられたる外交
政策と、外交輿論は、根のない花である」と書いています。

これは、時代を超えた真理だと思います。現代の日本は、当時ほど切迫した状
況にあるわけではありませんし、当時とは比較にならないほどの言論の自由が
あり、情報収集も容易です。にもかかわらず、現代の外交政策や外交世論が、
正確な外交史の知識の上に築かれているとは、決して言えないのではないでし
ょうか。

その一方で、戦後外交に関する研究は着実に発展しつつあります。外交文書の
公開や情報公開制度の利用等によって、新しい史料が利用可能となり、アメリ
カ等外国の文書に主として依拠した研究から、より総合的複眼的な視点が提示
されつつあります。それらの研究は、しかし、まだ専門研究者の間で共有され
るだけで、広い外交論議の基礎として十分利用されてはいないというのが現状
です。

このニューズレターは、そうしたギャップを埋めることを目指しています。す
なわち、戦後日本外交史およびこれに密接に関連する分野(日米関係史、日中
関係史、その他の国際政治史、日本政治史、地域研究など)において最近登場
した優れた研究を、対外政策に関心を持つ幅広い層、いわゆるforeign policy
constituency に紹介しようとするものです。日本外交を「根のある花」にす
るために、ささやかな貢献ができれば幸いです。

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『外交史ブックレビュー』第25号(2010年6月28日発行)

発行元:東京財団 政治外交検証研究会(リーダー:北岡伸一上席研究員)
    〒107-0052 港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
    http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19

編集責任者:五百旗頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)
      宮城大蔵(上智大学外国語学部准教授)

編集担当:林大輔(慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程)
     松下薫(東京財団広報渉外担当オフィサー)

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