東京財団 外交史ブックレビュー

東京財団 外交史ブックレビューvol.029

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2011.02.18
◆◇ 東京財団 外交史ブックレビュー Vol.029 ◇◆
      http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19
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▼ ブックレビュー

日本政治外交に関連する最近の優れた書籍・論文等を、気鋭の研究者が紹介し
ます。外交の実務に携わる方々には必須のものばかりです。是非お読みくださ
い。

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│『グローバル冷戦史-第三世界への介入と現代世界の形成-』
│ O. A.ウェスタッド著/佐々木雄太監訳(名古屋大学出版会、2010年)
│  評者:水本義彦(二松学舎大学専任講師)
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本書の原書が出版されたのは2005年のことであるが、本書は冷戦史研究の新た
な方向性を提示した画期的な研究であり、すでにガディスやレフラーの著作に
並ぶ冷戦史の必読書として定着した感がある。このたび、最新の研究成果であ
る本書が、平易な日本語に翻訳され、学究者のみならず一般読者にも容易に入
手できるようになったことを、まず喜びたい。

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 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=716

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│『同盟外交の力学―ヨーロッパ・デタントの国際政治史、1968-1973』
│ 山本健著(勁草書房、2010年)
│  評者:森聡(法政大学法学部教授)
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ヨーロッパ安全保障協力会議(CSCE)は1973年からおよそ2年間にわたって開
催され、アルバニアを除いたヨーロッパ35ヵ国とアメリカ及びカナダが、ヨー
ロッパにおける現状の承認、信頼醸成措置、経済交流、人道問題といった議題
に関する共同文書を策定するための交渉を行った。その最終段階となった1975
年夏の首脳会議では、こうした諸議題に関する参加国の合意内容をまとめたい
わゆるヘルシンキ最終議定書が採択された。

本書は、CSCEの開催に至る国際政治の展開、特に西側陣営内における外交に焦
点を絞りながら、次の二つの問いを解明しようとするものである。第一に、な
ぜ1970年代初頭に多国間のヨーロッパ・デタントが実現し、CSCEが開催される
に至ったのか。第二に、西側はヘルシンキ最終議定書に人道的要素を盛り込む
にあたって、会議手続きというものをいかに利用したのか。

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 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=717
 
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▼ 編集後記

在外研究から帰国しまして、再びこのプロジェクトに参加をさせて頂き、2年
半ぶりの編集後記となります。この間、サブリーダーで編集責任者の宮城大蔵
さんと五百旗頭薫さんのお二人を中心に活発な研究会を続けて頂き、メンバー
も増えて、また書評した本の数も膨らみ、大変に嬉しく感じております。よく
考えると、アメリカとフランスに滞在中に、日本での外交史関連の新刊本が容
易に入手できなかったために、随分とこのメーリングリストの書評を参考にさ
せて頂き、新鮮な情報を知ることが出来ました。日本から離れて、あらためて
このプロジェクトの意義について感じる結果となりました。これも、魅力的な
書評を数多くご報告頂いたメンバーの皆さんのおかげと感謝しております。

今回は、水本義彦さんと森聡さんという二人の中堅を代表する外交史家の方
に、最新の著書について書評をご担当頂きました。お二人ともそれぞれ『同盟
の相克』(千倉書房)と『ヴェトナム戦争と同盟外交』(東京大学出版会)と
題する優れた専門書を最近刊行され、英米関係や米仏関係の視座から1960年代
の国際政治史を再検討されておられます。ご担当頂いた書評も含めて、われわ
れがこれまで持っていた単純な米ソ対立による二極構造としての冷戦史観が大
きく修正されつつあり、より立体的で奥行きのある理解が可能となりました。
良質な研究は、専門領域を越えて研究者に新しい知的刺激と活力の源泉を提供
してくれます。これからも、そのような知的刺激と活力の源泉を可能な限り数
多くご紹介していきたいと思います。(細谷)

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日本外交に関心を持つ方々へ
北岡伸一(東京財団上席研究員、東京大学教授)

清沢洌は『外交史』(1940年)の序文に、「外交史に関する知識が、今日ほど
必要とされてゐる時はない。この知識を基礎とせずして造りあげられたる外交
政策と、外交輿論は、根のない花である」と書いています。

これは、時代を超えた真理だと思います。現代の日本は、当時ほど切迫した状
況にあるわけではありませんし、当時とは比較にならないほどの言論の自由が
あり、情報収集も容易です。にもかかわらず、現代の外交政策や外交世論が、
正確な外交史の知識の上に築かれているとは、決して言えないのではないでし
ょうか。

その一方で、戦後外交に関する研究は着実に発展しつつあります。外交文書の
公開や情報公開制度の利用等によって、新しい史料が利用可能となり、アメリ
カ等外国の文書に主として依拠した研究から、より総合的複眼的な視点が提示
されつつあります。それらの研究は、しかし、まだ専門研究者の間で共有され
るだけで、広い外交論議の基礎として十分利用されてはいないというのが現状
です。

このニューズレターは、そうしたギャップを埋めることを目指しています。す
なわち、戦後日本外交史およびこれに密接に関連する分野(日米関係史、日中
関係史、その他の国際政治史、日本政治史、地域研究など)において最近登場
した優れた研究を、対外政策に関心を持つ幅広い層、いわゆるforeign policy
constituency に紹介しようとするものです。日本外交を「根のある花」にす
るために、ささやかな貢献ができれば幸いです。

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『外交史ブックレビュー』第29号(2011年2月18日発行)

発行元:東京財団 政治外交検証研究会(リーダー:北岡伸一上席研究員)
    〒107-0052 港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
    http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19

編集責任者:五百旗頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)
      細谷雄一(慶應義塾大学法学部准教授)
      宮城大蔵(上智大学外国語学部准教授)

編集担当:林大輔(慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程)
     松下薫(東京財団広報渉外担当オフィサー)

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