東京財団 外交史ブックレビュー

東京財団 外交史ブックレビューvol.034

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2011.12.13
     ◆◇ 東京財団 外交史ブックレビュー Vol.034 ◇◆
     http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19
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日本政治外交に関連する最近の優れた書籍・論文等を、気鋭の研究者が紹介し
ます。外交の実務に携わる方々には必須のものばかりです。是非お読みくださ
い。

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■┓『ビスマルクと大英帝国 ― 伝統的外交手法の可能性と限界』飯田洋介著
┃┃ (勁草書房、2010年)
┃┃
┗┛ 評者:君塚直隆(関東学院大学文学部教授)

「ビスマルク」という名前を聞いて、われわれ日本人は何を想像するだろう
か。かつて明治の元勲である伊藤博文は「日本のビスマルク」になることを自
認していたし、山県有朋はかの椿山荘の客間のマントルピースの上にビスマル
ク像を置いていたとされている。日本が近代化を成し遂げ、欧米列強に伍して
いくうえで、プロイセン主導のドイツ統一を達成し、ヨーロッパ国際政治に一
時代を築いたビスマルクは、彼ら元勲たちの憧れだった。

そのビスマルクの外交政策を、数々の一次史料を博捜して鋭く探究したのが飯
田洋介氏による本書である。本書は、日本で本格的にビスマルク外交を追究し
た、初めての研究書といっても過言ではない。特に本書で飯田氏が注目するの
が、これまで内外の研究者たちのあいだでも評価が定まっていなかった、ビス
マルクの対イギリス外交のあり方についてである。ロシアに対しては一貫して
良好な関係を保つことを心がけていたビスマルクではあったが、ことイギリス
に対しては同盟を持ちかけたり離れたりを繰り返していた。いったいなぜだっ
たのか。

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 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=720

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■┓『工部省の研究:明治初年の技術官僚と殖産興業』柏原宏紀著
┃┃ (慶應義塾大学出版会、2009年)
┃┃
┗┛ 評者:稲吉晃(新潟大学法学部准教授)

近代社会においては、経済的発展のためにしばしば「先端技術」の導入が試み
られる。けれども、それらは「先端技術」であるがゆえに、その導入に際して
正否の判断が容易に付かない問題でもある。そもそも「先端技術」の成果は保
証されているものではないし、その成果が社会全体にもたらす影響は、さらに
予測がつかないからである。かかる性質をもった政策課題に対しても、なんら
かの決定を下さなければならない点が、近代社会における政治のひとつの特徴
ともいえる。

明治維新直後の日本政府にとって、西洋の電信・機械などの技術は、まさにそ
のような正否の判断が付かない問題であった。本書は、明治政府草創期におけ
る殖産興業の推進勢力として技術官僚に焦点をあて、組織の未整備や政策上の
優先度の低さにもかかわらず、初期の殖産興業事業が着実に進んだ背景を明ら
かにしようとするものである。

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 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=847

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■┓『ドキュメント 東京電力 ― 福島原発誕生の内幕』田原総一朗著
┃┃ (文春文庫、2011年)
┃┃
┗┛ 評者:宮城大蔵(上智大学外国語学部准教授)

本書は1986年に刊行された『ドキュメント 東京電力企画室』が改題の上、復
刊されたものである。いうまでもなく今年3月の大震災と原発事故を受けたも
ので、復刊に際して「福島原発誕生の内幕」という副題がつけられた。

今春の震災と事故までさほど意識されることはなかったが、電力会社とはいか
にも巨大な存在である。本書によれば1980年度の時点で電力業界の設備投資は
自動車業界の4倍であり、国内の民間設備投資の4割あまりを占めた。産業や国
民生活すべての根幹に関わる事業であれば、その巨大さもある意味、当然であ
ろう。しかしそれゆえに、電力事業はしばしば政治の焦点として取り上げられ
てきた歴史があった。

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 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=848

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日本外交に関心を持つ方々へ

北岡伸一(東京財団上席研究員、東京大学教授)

清沢洌は『外交史』(1940年)の序文に、「外交史に関する知識が、今日ほど
必要とされてゐる時はない。この知識を基礎とせずして造りあげられたる外交
政策と、外交輿論は、根のない花である」と書いています。

これは、時代を超えた真理だと思います。現代の日本は、当時ほど切迫した状
況にあるわけではありませんし、当時とは比較にならないほどの言論の自由が
あり、情報収集も容易です。にもかかわらず、現代の外交政策や外交世論が、
正確な外交史の知識の上に築かれているとは、決して言えないのではないでし
ょうか。

その一方で、戦後外交に関する研究は着実に発展しつつあります。外交文書の
公開や情報公開制度の利用等によって、新しい史料が利用可能となり、アメリ
カ等外国の文書に主として依拠した研究から、より総合的複眼的な視点が提示
されつつあります。それらの研究は、しかし、まだ専門研究者の間で共有され
るだけで、広い外交論議の基礎として十分利用されてはいないというのが現状
です。

このニューズレターは、そうしたギャップを埋めることを目指しています。す
なわち、戦後日本外交史およびこれに密接に関連する分野(日米関係史、日中
関係史、その他の国際政治史、日本政治史、地域研究など)において最近登場
した優れた研究を、対外政策に関心を持つ幅広い層、いわゆるforeign policy
constituency に紹介しようとするものです。日本外交を「根のある花」にす
るために、ささやかな貢献ができれば幸いです。

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『外交史ブックレビュー』第34号(2011年12月13日発行)

発行元:東京財団 政治外交検証研究会(リーダー:北岡伸一上席研究員)
    〒107-0052 港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
    http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19

編集責任者:五百旗頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)
      細谷雄一(慶應義塾大学法学部教授)
      宮城大蔵(上智大学外国語学部准教授)

編集担当:林大輔(慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程)
     松下薫(東京財団広報渉外担当オフィサー)

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