東京財団 外交史ブックレビュー

東京財団 外交史ブックレビューvol.040

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2012.08.14
     ◆◇ 東京財団 外交史ブックレビュー Vol.040 ◇◆
     http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
───────────────────────────────────

▼▽ ブックレビュー

日本政治外交に関連する最近の優れた書籍・論文等を、気鋭の研究者が紹介し
ます。外交の実務に携わる方々には必須のものばかりです。是非お読みくださ
い。


■┓『ラザフォード・オルコック ― 東アジアと大英帝国』
┗┛  岡本隆司著(ウェッジ、2012年)

   評者:君塚直隆(関東学院大学文学部教授)

「日本やチベットのような遠くで起こったのであれば、たとえそれが戦争や反
乱につながったとしても、イギリスの政府にも国益にも何の影響も与えないで
しょう。しかし反乱はポルトガルで生じたのであります」(Hansard's
Parliamentary Debates, 3rd series, vol.XCIII, c.572)。これは、1847年
5月にポルトガルで生じた内乱にイギリスがフランス・スペインと共同で軍事
介入した際に、当時の自由党政権の貴族院指導者で枢密院議長の第3代ランズ
ダウン侯爵が貴族院で行った演説である。ペリー来航の6年前にあたる当時の
イギリスにとって、日本はチベットと同じぐらい、地理的にも精神的にも遠い
存在であった。

それから55年を経た1902年1月、その同じロンドンでひとつの条約が結ばれ
た。極東における安全保障のために締結された「日英同盟」である。条約に署
名したのは、当時の保守党政権の外相第5代ランズダウン侯爵。先に見た、ポ
ルトガル内乱介入時の侯爵の孫にあたる。わずか半世紀ほど、名門貴族が祖父
から孫へと世代交代した程度の期間で、日本はイギリスにとってかけがえのな
い同盟者(パートナー)になっていた。そのような日英関係の端緒を切り開い
たのが、本書の主人公オルコック(Sir Rutherford Alcock, 1809~1897)で
ある。本書は、中国近代史の専門家であられる岡本隆司氏による、わが国でも
初めての本格的なオルコックの評伝である。


 続きはこちら↓
 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1008
----------------------------------------------------------------------

■┓『ドキュメント沖縄経済処分 ― 密約とドル回収』
┗┛  軽部謙介著(岩波書店、2012年)

   評者:野添文彬(一橋大学大学院法学研究科特任講師)

近年の普天間基地移設問題や「密約」問題をめぐる動向に加えて、今年は沖縄
返還40周年にあたることから、沖縄返還に関する書籍が相次いで出版されてい
る。その中でも本書は、これまで主に安全保障の観点から論じられてきた沖縄
返還を、通貨という観点から検討した異色のノンフィクションである。著者の
軽部謙介氏は、現在、時事通信社編集局次長兼解説委員を務めるジャーナリス
トで、かつて那覇支局に勤務した経験もあるという。


 続きはこちら↓
 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1009
───────────────────────────────────

▼▽ 新刊図書・雑誌記事・書評紹介

2012年6月に刊行された政治外交関連の新刊図書・雑誌記事・書評のリストで
す。外交に関する情報収集や研究のデータベースとしてお役立てください。

◎ 6月のリストはこちら↓
 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1006
───────────────────────────────────
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

           日本外交に関心を持つ方々へ

          北岡伸一(東京財団上席研究員)

清沢洌は『外交史』(1940年)の序文に、「外交史に関する知識が、今日ほど
必要とされてゐる時はない。この知識を基礎とせずして造りあげられたる外交
政策と、外交輿論は、根のない花である」と書いています。

これは、時代を超えた真理だと思います。現代の日本は、当時ほど切迫した状
況にあるわけではありませんし、当時とは比較にならないほどの言論の自由が
あり、情報収集も容易です。にもかかわらず、現代の外交政策や外交世論が、
正確な外交史の知識の上に築かれているとは、決して言えないのではないでし
ょうか。

その一方で、戦後外交に関する研究は着実に発展しつつあります。外交文書の
公開や情報公開制度の利用等によって、新しい史料が利用可能となり、アメリ
カ等外国の文書に主として依拠した研究から、より総合的複眼的な視点が提示
されつつあります。それらの研究は、しかし、まだ専門研究者の間で共有され
るだけで、広い外交論議の基礎として十分利用されてはいないというのが現状
です。

このニューズレターは、そうしたギャップを埋めることを目指しています。す
なわち、戦後日本外交史およびこれに密接に関連する分野(日米関係史、日中
関係史、その他の国際政治史、日本政治史、地域研究など)において最近登場
した優れた研究を、対外政策に関心を持つ幅広い層、いわゆるforeign policy
constituency に紹介しようとするものです。日本外交を「根のある花」にす
るために、ささやかな貢献ができれば幸いです。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
───────────────────────────────────

ブックレビューへのご意見・ご感想は info@tkfd.or.jp までお寄せください。

▼ バックナンバー閲覧、配信登録はこちら
 http://www.tkfd.or.jp/ml/

**********************************************************************

『外交史ブックレビュー』第40号(2012年8月14日発行)

発行元:東京財団 政治外交検証研究会(リーダー:北岡伸一上席研究員)
    〒107-0052 港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
    http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19

編集責任者:五百旗頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)
      細谷雄一(慶應義塾大学法学部教授)
      宮城大蔵(上智大学外国語学部准教授)

編集担当:林大輔(慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程)
     松下薫(東京財団広報渉外担当オフィサー)

**********************************************************************