東京財団 外交史ブックレビュー

東京財団 外交史ブックレビューvol.043

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2012.11.13
     ◆◇ 東京財団 外交史ブックレビュー Vol.043 ◇◆
     http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19
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▼▽ ブックレビュー

日本政治外交に関連する最近の優れた書籍・論文等を、気鋭の研究者が紹介し
ます。外交の実務に携わる方々には必須のものばかりです。是非お読みくださ
い。


■┓Daisuke Ikemoto, European Monetary Integration 1970-79: British
┗┛and French Experiences (Basingstoke: Palgrave Macmillan, 2011).

   評者:小川浩之(東京大学大学院総合文化研究科准教授)


本書は、1970年代の欧州通貨協力に対して、イギリスが参加の権利を留保しつ
つ、最終的にその中核をなす為替相場メカニズム(ERM)への参加を見送った
理由をフランスとの比較を念頭に解明したものである。目次は以下の通りであ
る。

 第1章 イントロダクション
 第2章 欧州統合研究における各国の政党と政党システム
 第3章 EEC加盟交渉中のイギリスのEMUへの政策、1970~71年
 第4章 イギリスとEMUに向けたEECの最初のステップ、1971~74年
 第5章 欧州通貨統合に関する英仏の政策比較(1):1976年の通貨危機
 第6章 欧州通貨統合に関する英仏の政策比較(2):EMSの設立、1978~
     79年
 第7章 結論

まず、第1章で、本書の主な目的として、1970~79年の欧州通貨協力の発展過
程と、イギリスの段階的なオプトアウトの理由を解明することがあげられる。
そして、欧州通貨協力に対するイギリスの政策についての詳細な事例研究とフ
ランスの事例との比較を通して、英仏両国が対照的な結論に至ったことを示す
とされる。特に、欧州通貨協力をめぐる英仏の対応は、1970年代後半になり西
ドイツの欧州通貨制度(EMS)提案への対応をめぐり分岐し始めるが、欧州通
貨協力の萌芽期に現れた英仏の相違は、今日まで十分に説明されてこなかった
ことが指摘される。著者によれば、英仏の異なる対応の説明要因として、
(1)主要な戦略的目標(英米特殊関係と仏独和解)、(2)帝国の遺産、
(3)欧州通貨協力への参加と相容れない経済政策、(4)国家主権の重要性が
ありうるが、(1)(2)はイギリスにとって欧州通貨協力を望ましいものと
し、(3)(4)は英仏に共通していた。そこで著者が新たな仮説として提示す
るのは、1970年代後半以降の欧州通貨協力をめぐる英仏の政策の相違は、左右
両派の欧州統合をめぐる連合形成の成否によって最もよく説明されるというも
のである。より具体的には、(1)英仏ともに欧州統合をめぐり左右両派がそ
れぞれ分裂していた。(2)その結果、左右いずれの政府も、与党の平議員や
連立パートナーの支持のみに頼ることができない(特に政府の議会での過半数
が与党内の欧州懐疑派よりも小さい場合)、(3)それゆえに、政府と野党が
協力しえた場合にのみ、政府は欧州通貨協力に参加するための国内的支持を確
保できる、というものである。


 続きはこちら↓
 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1059
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▼▽ 新刊図書・雑誌記事・書評紹介

2012年9月に刊行された政治外交関連の新刊図書・雑誌記事・書評のリストで
す。外交に関する情報収集や研究のデータベースとしてお役立てください。


リストはこちら↓
 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1061
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           日本外交に関心を持つ方々へ

          北岡伸一(東京財団上席研究員)

清沢洌は『外交史』(1940年)の序文に、「外交史に関する知識が、今日ほど
必要とされてゐる時はない。この知識を基礎とせずして造りあげられたる外交
政策と、外交輿論は、根のない花である」と書いています。

これは、時代を超えた真理だと思います。現代の日本は、当時ほど切迫した状
況にあるわけではありませんし、当時とは比較にならないほどの言論の自由が
あり、情報収集も容易です。にもかかわらず、現代の外交政策や外交世論が、
正確な外交史の知識の上に築かれているとは、決して言えないのではないでし
ょうか。

その一方で、戦後外交に関する研究は着実に発展しつつあります。外交文書の
公開や情報公開制度の利用等によって、新しい史料が利用可能となり、アメリ
カ等外国の文書に主として依拠した研究から、より総合的複眼的な視点が提示
されつつあります。それらの研究は、しかし、まだ専門研究者の間で共有され
るだけで、広い外交論議の基礎として十分利用されてはいないというのが現状
です。

このニューズレターは、そうしたギャップを埋めることを目指しています。す
なわち、戦後日本外交史およびこれに密接に関連する分野(日米関係史、日中
関係史、その他の国際政治史、日本政治史、地域研究など)において最近登場
した優れた研究を、対外政策に関心を持つ幅広い層、いわゆるforeign policy
constituency に紹介しようとするものです。日本外交を「根のある花」にす
るために、ささやかな貢献ができれば幸いです。

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『外交史ブックレビュー』第43号(2012年11月13日発行)

発行元:東京財団 政治外交検証研究会(リーダー:北岡伸一上席研究員)
    〒107-0052 港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
    http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19

編集責任者:五百旗頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)
      細谷雄一(慶應義塾大学法学部教授)
      宮城大蔵(上智大学外国語学部准教授)

編集担当:林大輔(慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程)
     松下薫(東京財団広報渉外担当オフィサー)

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