東京財団 外交史ブックレビュー

東京財団 外交史ブックレビューvol.044

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2012.12.21
    ◇◆◇ 東京財団 外交史ブックレビュー Vol.044 ◇◆◇
     http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19
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▼▽ ブックレビュー

日本政治外交に関連する最近の優れた書籍・論文等を、気鋭の研究者が紹介し
ます。外交の実務に携わる方々には必須のものばかりです。是非お読みくださ
い。


■┓『中曽根康弘が語る戦後日本外交』中曽根康弘著(新潮社、2012年)
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   評者:佐藤 晋(二松学舎大学国際政治経済学部教授)


本書は、1982年から1987年にかけて首相を務めた中曽根康弘に対するインタビ
ュー調査の記録である。中曽根元首相に対する聞き取りの記録としては、『天
地有情』などがあり、本人が出版した回顧録・著作の類も数多く存在する。そ
のような状況で、本書が刊行された意義は何であろうか? われわれ歴史研究
者が回顧録やインタビュー調査を利用する価値は、(1)未知の事実の発見、
(2)既知の事実の当事者による確認、(3)既知の事実の背後にあった動機の
理解、にあるであろう。とりわけ、中曽根氏のような重要人物を対象とする場
合は、(3)のポイント、すなわち過去に実施された重要な政策について、最
高意思決定者を長く務めた人物に直接その動機または意図を問いただすという
点にある。この観点から本書は、十分に研究者のニーズを充足するものとなっ
ている。


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 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1087
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■┓『日本はなぜ日米開戦に踏み切ったのか』森山優著(新潮選書、2012年)
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   評者:小谷 賢(防衛省防衛研究所主任研究官)


太平洋戦争が勃発したのは単純に軍部が暴走したからではない。陸軍参謀本部
の一部組織を除けば、天皇、政府、海軍、陸軍省ですら対米戦には及び腰であ
った。さらに言えば、「なぜ日本はあんな無謀な戦争を行ったのか」という問
いかけ自体、戦争の悲惨な結末を知っているが故の後知恵であり、当時「対米
戦」という選択は最も有望と考えられていたのである。

ではなぜ皆が戦争に消極的なのに対米戦が有望とされ、それが実行されたの
か、この一見すると矛盾だらけの問いに対して、本書は日本の政治、官僚シス
テムの「非(避)決定」という構図から明快に論じている。


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▼▽ 新刊図書・雑誌記事・書評紹介

2012年10月に刊行された政治外交関連の新刊図書・雑誌記事・書評のリストで
す。外交に関する情報収集や研究のデータベースとしてお役立てください。


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           日本外交に関心を持つ方々へ

          北岡伸一(東京財団上席研究員)

清沢洌は『外交史』(1940年)の序文に、「外交史に関する知識が、今日ほど
必要とされてゐる時はない。この知識を基礎とせずして造りあげられたる外交
政策と、外交輿論は、根のない花である」と書いています。

これは、時代を超えた真理だと思います。現代の日本は、当時ほど切迫した状
況にあるわけではありませんし、当時とは比較にならないほどの言論の自由が
あり、情報収集も容易です。にもかかわらず、現代の外交政策や外交世論が、
正確な外交史の知識の上に築かれているとは、決して言えないのではないでし
ょうか。

その一方で、戦後外交に関する研究は着実に発展しつつあります。外交文書の
公開や情報公開制度の利用等によって、新しい史料が利用可能となり、アメリ
カ等外国の文書に主として依拠した研究から、より総合的複眼的な視点が提示
されつつあります。それらの研究は、しかし、まだ専門研究者の間で共有され
るだけで、広い外交論議の基礎として十分利用されてはいないというのが現状
です。

このニューズレターは、そうしたギャップを埋めることを目指しています。す
なわち、戦後日本外交史およびこれに密接に関連する分野(日米関係史、日中
関係史、その他の国際政治史、日本政治史、地域研究など)において最近登場
した優れた研究を、対外政策に関心を持つ幅広い層、いわゆるforeign policy
constituency に紹介しようとするものです。日本外交を「根のある花」にす
るために、ささやかな貢献ができれば幸いです。

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『外交史ブックレビュー』第44号(2012年12月21日発行)

発行元:東京財団 政治外交検証研究会(リーダー:北岡伸一上席研究員)
    〒107-0052 港区赤坂1-2-2 日本財団ビル3階
    http://www.tkfd.or.jp/research/project.php?id=19

編集責任者:五百旗頭薫(東京大学社会科学研究所准教授)
      細谷雄一(慶應義塾大学法学部教授)
      宮城大蔵(上智大学外国語学部准教授)

編集担当:林大輔(慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程)
     松下薫(東京財団広報渉外担当オフィサー)

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