タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2011/6/2

2011年2月21日 現代アメリカ研究会報告

報告者:石川葉菜(東京大学大学院博士課程)
テーマ:Tea Party運動支持者の実態 -世論調査結果の分析-
報告概要
本報告では、Tea Party運動についての様々な世論調査結果の主張に着目し、Tea Party運動支持者の実態を明快に論じた。

Tea Party運動については、メディアのレベルで実に多くの世論調査が行われているものの、実に様々な結論が含まれており、時には相容れない結論すらある。そしてその原因は、多分に、その手法の統計的な不確かさによるものである。そこで本稿では、複数の世論調査を横断的に統計的に正しく評価・分析することで、Tea Party運動、特にTea Party運動支持者について正確に理解することの一助としたい。ただし、本報告の限界もある。未だにTea Party支持者について公表されているデータセットがないため、最良の形での統計的な分析はほぼ不可能だということである。唯一有効なのは、公開されているクロス表を主に用いた分析である。

本稿では特に、2010年3月にそれぞれ独自の世論調査を行い分析したGallup社とパーカーら(Parker and Barreto. 2010)の研究の二つに着目する。どちらの世論調査分析も、『Tea Party支持者集団』と『有効回答者全員(=アメリカ市民全体)』との集団に分け、調査結果に対する回答割合の差を比較している。しかしこの方法には、大きな問題がある。『Tea Party支持者集団』は『有効回答者全員』の部分集合であるから、こうした包含関係にある集合同士を単純に比較し、その違いを議論することはできないからである。Gallup社の結論は、Tea Party支持者の集団はアメリカ人全体と比べて共和党支持、保守、男性、高所得の傾向があり、他方で、年齢、教育水準、雇用、人種については違いがない。そのため、Tea Party支持者は人口動態的にアメリカ人の主流によって構成されているが、人種差はない、というものである。しかし本分析によれば、人種的な偏りがないとするGallupの指摘は誤りである。Tea Party運動支持者はアメリカ人全体と比べて白人が多いのである。次に、パーカーらの結論は、この運動支持者は年齢が高く、共和党支持で、大変保守的で、白人で、教育水準が比較的高く、そしてミドルクラスだというものである。しかしながら、本分析によれば、特に知的水準の高い人たちが支持する運動というわけではないことがわかった。

しかしながら、年齢については両分析で異なる結論を得た。その原因は二つある。一つは、両分析で異なる年齢の群の分け方を用いていたこと。もう一方は、『Tea Party支持者』と分類される人が、両分析で異なる指標を用いていたことである。Gallup社はTea partyを支持する人を、パーカーらはTea Partyを強く支持する人を、それぞれ『Tea Party支持者』と分類していたのである。これらに注意して考えると、Tea Party支持者は、45-54歳の割合が多く、35-44歳で少ないことがわかる。ここに、世代や年齢特有の事情があるように思える。そしてこの結果は、支持者レベルでの情報源に、近年話題になっているツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアというよりも、テレビチャンネルのFOXが指摘されることが多い事実と符合する。なぜなら、若い世代はソーシャルメディアに強いが、やや上の世代の人々は、それよりもテレビを主たる情報源としているからである。こうした世代間に着目した分析は、今後さらなる研究が必要である。

報告者:廣瀬淳子(国立国会図書館調査及び立法考査局海外立法情報課課長)
テーマ:Tea Party Caucusと112議会の動向
報告概要
本報告では、アメリカの議会内に誕生したTea Party Caucusに着目し、Tea Party運動が選挙レベルにとどまらず、議会内にまで波及している様子を大変詳細かつ明快に論じた。

まず、Tea Party Caucusの現状について整理する。そもそもCaucusは、下院だけのものが多い。上下両院のCaucusというのはあまりない。ところが、Tea Party Caucusは下院と上院両方で設立されている。設立時期は、2010年7月に下院(当初52名)、2011年1月に上院(3名)である。下院のCaucusについては、勉強会を続けている。下院のCaucusの代表者はMichele Bachmanで、2011年1月からの第112議会の下院指導部の役職を目指していたが、失言で辞退した。上院のCaucusは現在4名で、うち1期目が3人。他に上院には3名ほど、Tea Partyに政策選好が近いものがいる。だが彼らはTea Party Caucusとは距離をおいていた。その理由は「極端な立場をとっていると思われたくなかった」とされている。また、現在の下院議長であるJohn BoehnerはTea Partyと距離を置いている一方で、上院は、民主党Harry Reid院内総務とMike Lee議員(上院Caucus設立時メンバー)が個人的に非常に近しい。

以上のようにTea Party Caucusは議会内においてそれなりのプレゼンスをもっているようだが、そう簡単なものではない。Caucusは、一人の議員が一つしか所属できないというものではなく、複数、好きな数だけ所属することができるからである。具体的には、共和党保守派の議員連盟であるRepublican Study Committee(RSC)にも所属するTea Party Caucusのメンバーが非常に多い(Tea Party Caucusの設立メンバーのうち4名ほどが重複していないだけ)。RSCの政策課題も、Tea Partyの理念と似通っている。

Tea Party Caucusの政策面について、整理する。彼らの優先課題は、憲法尊重、小さな連邦政府、州の権限増大、財政赤字削減、減税である。「Contract from America」は、2010年の中間選挙での候補者たちが署名したものだった。これは、近年の共和党下院候補者の公約である「Contract with America」や「Pledge to America」と呼ばれる政策集とは性質を異にしていた。「Contract with America」は、トップダウン的に作成された政策集であるのに対し、「Contract from America」は、オンライン投票の上位10項目を集めた、いわばボトムアップ的なものであった。また、「Contract with America」は法案集であったため、2010年度の「Pledge to America」よりはるかに具体的であった。 

現在までのTea Party Caucusが達成したと思われる業績については、2011年度の議会における、議事規則改正である。この改正は104議会の議事規則改正よりははるかに小規模ではあったものの、三つの点が指摘できるだろう。それは、?法案の憲法上の根拠の明示、?各種財政赤字削減策(Cut-as-you-go。財政均衡よりも義務的経費をターゲットにしている)、?下院審議の公開促進、である。

今後のTea Party Caucusの立法課題は、医療保険改革法廃止法案、公債発行限度額引き上げ法案、予算削減法案、米韓自由貿易協定関連法案、財政均衡憲法改正法案である。また、今後の注目点は、投票集団としての結束力がどれほどあるのか、共和党主流派との関係はどのようなものになるのか、そして、選挙運動から議員活動へと移行したとき、運動とどのような関係になるのか、ということである。


質疑応答
Q:?Tea Party運動とCaucusとの違いについて。?収入による差がGallupの調査結果とパーカーの調査結果とで違う。
A:?選挙運動と、議会で法案を通していく議員活動とは、全く別物である。また、下院については、Michele Bachmanは選挙キャンペーンにおいては資金集めに大変影響力を発揮したが、賛成票を集めて法案を通過させる力は疑問視されている。?Gallupは支持者を、パーカーは『強い』支持者を対象にした分析をしている。また区分も異なる。それでも、共にミドルクラス層が多いという結果には違いがないというのは興味深い。

Q:議会で予算が通過せず連邦政府の窓口が閉鎖されててしまうことで、国民や民主党から反発を受けることをベイナーらは恐れているように思える。Tea Party系議員はそれについてどう考えているのか。
A:彼らの議論では、予算の大幅削減一辺倒で、対立の影響や予算を削減した後にどうするのかということについては、あまり議論がない。連邦教育省や住宅省、環境保護庁に対する予算の大幅カットを主張している。

Q:Tea Party系の議員に、以前州議会議員だった人たちはどのような特徴があるといえるのか。
A:たとえば下院のMichele Bachmanは州議会議員時代も一貫して税制を簡素にして住民負担を減らすすべきという立場であった。

Q:Tea Party運動とCaucusとの関係はどのようなものか。
A:Tea Party運動の目的は、Tea Party支持の候補者を当選させることではなく、政策達成である。そういった意味で、彼らの運動にとって、Caucusの存在は大変重要だろう。だが、Tea Party運動系の団体は全国的でもありローカルでもある。また、それらは共和党の傘下にあるわけではない。そういった意味で、CaucusとTea Partyが直接結びつき、共和党の下で一丸となる、というわけではない。

Q:Tea Party CaucusはPACをもっている?
A:まだちょっとわからない。

Q:下院のMichele Bachmanの資金集めは?
A:おそらく、リーダーシップPACだろう。共和党内での影響力を持ちたいために、資金集めに奔走したと考えられる。

Q:印象としてはTea Party運動がブルーカラー層のイメージがあるにも拘わらず、データセットからみるとブルーカラーに見えない。
A:支持層と活動家層との間の違いと考えられるが、その違いを説明する要因がまだわからない。もし、多くの大衆がTea Party運動をブルーカラーのイメージで捉えているのならば、なぜそれが白人ミドルクラスに支持されるのか、など、疑問は尽きない。
コメント:ナショナルジャーナルについての昨年5月の調査結果に、共和党保守・穏健などに分けて、保守はモラル、穏健が小さな政府という傾向があるという調査結果がある。調べてみると良いと思われる。

Q:共和党は民主党と比べるとpro-trade。貿易に関してTea Partyは共和党と違うのかとなるほどと思った。貿易や外交全般についてどういう態度をとっているのか。
A:自由貿易は支持するが、二国間での自由貿易に反対だったように記憶している。外交については不明であるが、対外援助予算の削減は主張していたのではないか。

Q:Pay-as-you-go規則とcut-as-you-go規則の違いは何か。
A:Cut-as-you-go規則は財政均衡を目指したpay-as-you-go規則と異なり、減税で赤字はよいが、義務的経費を増やすような法案は審議できないとする義務的経費を標的とした規則。
コメント:196,70年代に南部の州政府について、pay as you goという言葉がよくつかわれた。ジョンソンの南部政策に反対して。そのときの言葉が由来だろう。

Q:下院審議の公開性について具体的に。
A:委員会の逐条審査をインターネットで中継したり、委員長は委員会での逐条審査の24時間前までに、法案を一般国民が電子的な利用が可能な状態にしなければならないなど細かく規定されていた。

Q:Republican study comitteeは強い国防を目指している。これは、Tea Party Caucusの政策方針と違うのでは?
A:これまで共和党ではあまり言われなかった国防予算の削減まで今議会では踏み込んで主張している。選挙向けと実際とが異なる。つまり、ランド・ポールのように極端に過激な主張が見られるが、どこまでがパフォーマンスで、どこまでが現実ラインなのか、という判断が難しい。

Q:Tea Party CaucusとRepublican study comitteeとを重複している議員が多いが、それにはどのような意味があるのか。
A:RSCは社会的に保守的な政策を掲げていて、tea partyはリバタリアン的な性格が強いので、両者が協調できるのか、共和党内を分裂させる方向にゆくのか、まだよくわからない。

Q:軍事費に手をつけない限り、大幅な財政赤字削減は達成できないと思える。軍事費は広く浅く予算をばらまいているため、個々の選挙区でみると大きい額ではなく、議員はあまり関心をもちにくい。
A:軍事予算については、これまでもF35第二エンジンなど、数年前から議論が分かれている。そこが今年改めて蒸し返されてきたという印象がある。オバマ政権が予算の削減を求めているものでも議会の側で腐れ縁で辞めれないものもある。

Q:今年度会計年度予算は個別にどうなっているのか。
A:2011年度予算12本のうち一本も両院を通っているものはない。これまで短期の暫定予算でつないできたが、暫定予算では新しいことができない。下院では年度末までの一括法案が通過したが、予算の削減が大幅で上院は反発するだろう。まとめて通すということになると、いわゆる『踏み絵』が少なくなるので、通る可能性がある。

■報告:石川葉菜(東京大学大学院法学政治学研究科博士課程)