タイプ
論考
プロジェクト
日付
2011/11/16

ワシントンUPDATE 「カダフィ(政権崩壊)後の疑問」

ポール・J・サンダース
センター・フォー・ザ・ナショナル・インタレスト常務理事
東京財団「現代アメリカ」プロジェクト・海外メンバー




 リビアの元最高指導者ムアンマル・カダフィの死後、リビアでの米・北大西洋条約機構(NATO)による介入が米国とバラク・オバマ大統領にとって大きな成功を成し、今後の米国の外交政策のモデルになるのではないか、という意見が一部に見られる。米国は、NATOを先頭に立たせて自らは補助的役割を果たすにとどまり、多大な国際支援を募ることによって米軍をリビアに大量派遣せずにカダフィ政権を崩壊させることができたというのだ。しかし、残念ながら、カダフィ打倒から得られる長期的な教訓は不明であり、オバマ政権のアプローチはいくつかの疑問を提起している。

 第一の疑問は、どうやってリビアを混乱から回復させるのかである。リビア国民評議会は経済を再建し、安定した民主政治を確立できるのだろうか。この疑問に答えるにあたり、アフガニスタンとイラクでの米国の経験を忘れてしまっている人が多いように思われる。

 10年前、米国は旧北部同盟の兵力を支援するため、空軍力と少数の特殊部隊を動員してタリバンを権力の座から駆逐した。タリバン政権が崩壊したとき、多くの人がこの軍事作戦は、アメリカの新たな戦いの成功を証明したとみなした。だが、アフガニスタンの情勢は悪化し―10年が経過した現在も―米国は依然として10万人の兵士を同国に駐留させている。同様に、米国はイラクに比較的少数の地上部隊を投入してサダム・フセインを権力から追放することに成功したが、戦後に安定した社会を築くことが予想よりもはるかに困難であることをすぐに痛感させられる結果となった。国家再建を急ぐことよりも、イラクの豊富な石油資源をめぐり政治や民族間の対立が激化した。リビアが同じ轍を踏まないといえるだろうか。

 第二の疑問は、NATOは対リビア軍事作戦のようなミッションを今後も果たす用意があるのかという点である。当然であるが、同盟としての能力と結束力を悪化させたアフガニスタンでのミッション終了後、NATOが再び「地域外」作戦に踏み切ることがあるのかという疑問を大勢の者が持っている。これらの疑問視する声にもかかわらず、実際にNATOは―地理的にはるかに近く、欧州の安全に直接影響する―リビアに介入した。だが、NATOに加盟する欧州二大国である英仏は窮地に立たされており、米国の圧倒的な支援なしでは作戦を実行することができず、わずか1ヶ月で精密誘導爆弾をほとんど使い果たした。退任するロバート・ゲーツ米国防長官は、リビアでの戦いの最中ですら、欧州政府がNATOに対する防衛支出を削減していることを厳しく非難した。また、欧州経済は財政危機に陥っており、当面の間軍事予算を制限せざるを得なくなった。

 第三の疑問は、同地域の他国がリビアの経験から何を学んだかというものだ。イラクの突然かつ劇的な敗北後、ムアンマル・カダフィ大佐は大量破壊兵器の開発を放棄し、英ロッカビー上空でのパンアメリカン航空103便爆破事件の犠牲者遺族への金銭的補償に応じ、米英をはじめとした西側諸国とリビアの関係修復のために措置を講じることを決断した。その代わり、ワシントンおよび同盟諸国は、カダフィによる統治を黙認するはずであったが、わずか数年後にはリビア国内の反体制勢力に多大な軍事支援を行いはじめた。西側の指導者は、カダフィ大佐が空爆によりベンガジ市民を脅かしたことで西側諸国との暗黙の約束を破ったと主張するだろうが、中東諸国は違う見方をしているようだ。リビアでの一連の騒ぎを見たイランの統治者は、グランドバーゲンの一環として、保有が明らかな核プログラムの放棄に応じるのだろうか。

 最後の疑問は、国際的な地政学である。3月に米仏英は、リビアに「飛行禁止空域」を設定し、「一般市民および一般市民居住地域を攻撃の脅威から保護するため、必要なあらゆる措置」を容認する国連安全保障理事会決議を勝ち取ることに成功した。中国とロシアは棄権し、後に、両国政府は米・NATO軍事作戦は国連決議の範囲を大きく逸脱していると非難した。

 この二国は今後も同様の投票を行うだろうか。この疑問への答えは、ある程度明確になっている。10月初旬、中国とロシアは、反政府デモの弾圧を続けるシリアのアサド政権を非難する国連安保理決議案に拒否権を行使した。北京とモスクワが恐れたのは、今回の決議案に賛成票を投じれば、米英仏のいずれかが、すぐにダマスカスに対する制裁またはその他の行為を容認する第二の国連決議案を提案することであり、それは支援できない姿勢を明らかにした。両国による拒否権の行使により、米国と欧州の懸念にもかかわらず、イランに対する国連安保理の新たな行動が―ワシントンにとっては、リビアよりもはるかに切実な優先事項であるが―近いうちに実行される可能性は低いことが示唆される。

 もし、リビアの暫定首相と国民が弾圧や内紛を回避して安定した政府と経済を築くことができれば、カダフィ打倒は、40年もの独裁政権に苦しめられた国にとって大きな前進となるだろう。しかし、この成功は―全くの未知数であるが―どれほどの犠牲を伴うだろうか。大方の予想を上回らないことを望むばかりである。

■オリジナル原稿(英文)はこちら