タイプ
論考
プロジェクト
日付
2011/10/5

アメリカ大統領選挙UPDATE 1:労組票はどう動くか? (西川 賢)

近年の大統領選挙は接戦が多く、2000年選挙においては二大政党の候補間の得票率差が5%以内のいわゆる接戦州が16州、2004年には11州あった。これら接戦州を一つでも多く獲得することこそ選挙に勝利するための常道であると考えるのは合理的である。Cook Political Reportによれば、2011年9月現在両党の勢力が拮抗している州は10州ある。選挙が接戦になった場合、特に接戦州における組織票の動向が選挙の帰趨に関連する可能性が高い。例えば、ここで注目してみたいのは接戦州の内、フロリダ(労組組織率7.9%)、ミシガン(同19.6%)、オハイオ(同15.5%)、ペンシルヴェニア(同16.3%)、ウィスコンシン(同16%)といった諸州で労組の組織率が比較的高いという事実である。これら接戦州の内、共和党知事の主導で進められた「ウィスコンシン予算再生法」(Wisconsin Budget Repair Bill)に端を発するウィスコンシン州における公務員ストライキ及び労組による抗議運動の広がりは記憶に新しいところであるが、これは2012年選挙に向けて民主党/オバマ政権にとって追い風になるのではないかという見方もある。

また、2010年の5月に辞任したアンディ・スターンに代わってサービス従業員国際労働組合(以下SEIU)の議長に就任したマリー・ケイ・ヘンリーは就任後一年以内に新たに15万人以上を組織化する目標を掲げ、狭義の労組組合員以外の諸集団に対する積極的なアウトリーチにも力をいれているといわれている。特に自身がレズビアンでもあるヘンリーは議長就任にあたって移民層やLGBT(Lesbian, Gay, Bisexual and Transgender people)への新たなアウトリーチを重視しており、ドリーム法や同性愛者の軍隊入隊規制(DADT)の撤廃を支持する方針を打ち出していた。SEIUは2011年9月20日の同性愛者の軍隊入隊規制撤廃を評価しており、これも民主党をある程度後押しする要因に繋がるのではないだろうか。

ただし、アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(以下AFL-CIO)に目を転じると、必ずしも民主党が労組からの支持を盤石のものとしている訳ではない状況が浮き彫りになってくる。2012年の大統領選挙に関して、AFL-CIOの政治部ディレクターであるマイケル・ポッドホーザーはオバマ政権に不満なしとしないが、従来通り民主党/オバマ支援を継続するとしている。だが、2011年に入ってからリチャード・トラムカAFL-CIO議長は労組の目標は特定の政党や候補者を後援することではなく労働者の生活を改善することであると述べ、場合によっては「無党派としての労働運動」、すなわち共和党を支援する可能性があることを匂わせる趣旨の発言をするなど、選挙運動や資金面などで民主党に対する労組のアクティビストとしての活動を縮減する可能性を示唆していた。トラムカがこのような方針の変更をほのめかした理由はいくつか考えられる。第一に、労組の中にブッシュ減税を巡る共和党との妥協、あるいは失業対策に対する不満などオバマ政権に対する不信感が存在することがあげられる。第二に、労組が成立を期待していた被雇用者自由選択法が民主党議員の一部が反対に回ったことで不成立に終わるなど、選挙時には労組の協力を仰ぎながら当選後は労組が期待した活動を行わない民主党議員が存在することに労組が不満を抱いていることによるものであろう。

今後の政局いかんによっては労組票が思いもかけない動きをみせることもあり得るであろうし、その動向は選挙の帰趨に少なからぬ影響を与える可能性もある。