タイプ
論考
プロジェクト
日付
2014/11/5

アメリカNOW第120号 2014年米中間選挙―オンラインデータベースを駆使する共和党(清原聖子)

1994年10月、ホワイトハウスはホームページを開設した。今年はその20周年。ホワイトハウスのホームページにも当時のデザインとともに、当時を振り返る記事が掲載された。この20年を振り返ると、アメリカの政治コミュニケーションにおけるインターネットの利用はとどまるところを知らない勢いがある。4年ごとの大統領選挙戦で、次々に新しいテクノロジーを駆使した斬新な選挙戦術が生まれてきた。ブロードバンドや携帯電話の普及を背景に、2008年大統領選ではソーシャルメディアやYouTubeの動画が積極的に利用され、2012年大統領選では、オバマ陣営の有権者情報のオンラインデータベースを駆使した戦術も注目された*1。インターネットを使った選挙運動というと、これまで民主党や民主党の候補の方が得意としてきたが、2014年の中間選挙では、共和党側にこれまでとは違ったオンラインデータベースのフル活用選挙戦術が見られ、2014年中間選挙にとどまらず、今後の選挙に何らかの影響を与えそうな兆候がある。ここでそのポイントを整理してみよう。

第一に、アメリカの選挙はますます「金のかかる選挙」になっている点を軽視できない。2014年中間選挙では(2014年10月29日の時点)、少なくとも36億7000万ドル使われると見られ、2010年中間選挙の36億3000万ドルをわずかに超える見通しである*2。それだけに、毎日政党から送られてくる電子メールも、民主党、共和党問わず内容は選挙献金を頼むものばかりだ。ちなみに、10月31日の共和党全国委員会からの電子メールでは、オンライン献金を特に求めており、「オンライン献金目標額に87,352ドル足りないから早く献金してくれ」というものであった。

そこで注目したいのが2012年大統領選で共和党ロムニー陣営が蓄積した電子メールリストの政党側の活用である。2012年大統領選において、ロムニー陣営は十分にその電子メールリストのデータを活かしきれなかったが、2014年中間選挙ではロムニー陣営がかつて手に入れたリストを全国共和党上院委員会が活用しているという。「その価値は明らかだ」と共和党上院選挙運動チームの部長であるMatt Liraは述べる*3。とりわけ、ロムニー陣営が保有する何百万もの電子メールリスト、多額の献金者から少額の献金者まで入っている献金者リストが有効で、「電子メールがオンライン資金調達をする上で非常に大きな役割を果たしている」と共和党系メディアコンサルタント会社、Harris MediaのVincent Harrisは言う*4。確かに連日のように電子メールで選挙献金の依頼が送られてくるものの中に、2012年の大統領選の際に登録しておいたために、ロムニー陣営から送られてくる電子メールも含まれている。そこには「This email was sent by: Romney for President Inc., 138 Conant St., 1st Floor, Beverly, MA 01915.You are receiving this email because you signed up as a member of Mitt Romney's online community….」と表示されている。ロムニー自身は2012年に敗れ、また2016年の大統領選に出馬しない意向だが、この時に作られた電子メールリストの蓄積は後々生きてきそうだ。ロムニー陣営の電子メールリストは2016年の大統領選で、共和党の候補者に再び活用されるだろう、と目されている。

電子メールで献金を募ることは2000年の大統領選の頃から始まったが、これだけ毎回送られてくると、有権者は煩わしくないのだろうか。2013年に解禁された日本のインターネット選挙運動では電子メールの取り扱いに厳しい規制が残っていることとは大きな違いである。

第二に、共和党と共和党を支持するAmericans for Prosperity(AFP)のような保守系団体との間で有権者情報のデータベースが共有化された、という点に注目したい。AFPは国内歳入庁の規則による501c(4)という社会福祉団体の法的ステータスを持つ。この法的ステータスを持つ団体は、所得税の控除を受けられ、団体の主たる活動でなければ選挙活動に関与することができる。AFPは、2014年中間選挙ではこれまで以上に選挙戦にコミットすることを決め、より直接的な選挙活動として、上院の接戦州で草の根のボランティアによる戸別訪問に力を入れている。彼らはiPadのアプリを使って戸別訪問を行い、その際共有化されたデータベースのおかげでどの有権者にアプローチをすべきか、即座にピンポイントでわかるようになっている。さらに彼らが次々に戸別訪問をすることで、その新たな情報がデータベースに蓄積されていく、という仕組みだ。なぜ共和党と外部の団体がこのデータベースを共有化しているのか。それを可能にしたのは、共和党が設立したData Trustという民間企業と、「i360」というデータ管理会社との間で2014年8月に行われた業務提携だ。「i360」は、AFPやその他大富豪のコーク(Koch)兄弟に支援された政治ネットワークとの関係が深い。この提携により、共和党と保守系団体は、両社が保有する有権者情報のデータベースにアクセス可能になった。いまでは共和党とその外にいるAFPのような団体とがリアルタイムで共通のデータベースに登録された個別の有権者情報にアクセスし、更新できる。その内容はたとえば、有権者が特定のイシューにどのような立場をとるのか、どのようにコンタクトされるのを好むのか、投票所に行く可能性がどのくらいあるのか、といったことがわかるというものだ。「i360」のMichael Palmer社長は、「データベースの共有化で、保守系団体にとってアウトリーチ活動がはるかに効率的に行えるだろう」と述べている*5。しかし、もはや有権者から見たら、戸別訪問に訪れた人物が共和党の特定の候補者の選挙を応援している人が来たのか、AFPのボランティアなのか、見分けがつかない*6

そこで、こうした共和党全国委員会と外部の支持団体とのデータベースの共有化について、リベラル系団体(American Democracy Legal Fund)は2014年10月15日、連邦選挙員会に対して、連邦選挙資金規正法に違反している、として調査を行うよう申し立てを行った。それに対して共和党全国委員会側は、民主党の申し立ては政治的動機からの主張で断固として受け入れられない、と反対しており、データシェアリングは弁護士によって入念にチェックされている、と反論した*7。政党と外部の団体との有権者情報データベースの共有化はどこまで法律的に可能なのか、これから次の選挙までに問われることになりそうだ。連邦選挙委員会がどのような行動を取るのか、注目していきたい。

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*1: 詳しくは、清原聖子「第2章進化するネット選挙戦略―2012年アメリカ大統領選挙戦を読み解く」、清原聖子・前嶋和弘編著『ネット選挙が変える政治と社会―日米韓に見る新たな「公共圏の姿」、慶應義塾大学出版会、2013年9月、を参照されたい。
*2: “Overall Spending Inches Up in 2014: Megadonors Equip Outside Groups to Capture a Bigger Share of the Pie”, October 29, 2014.
*3: Zeke J Miller, “GOP Wields Romney Fundraising List in Senate Battle”, Oct.20, 2014
*4: ibid
*5: John DeStefano, “Data Trust and i360 Announce Historic Data Sharing Partnership”, August 28, 2014.
*6: Matea Gold, “Americans for Prosperity plows millions into building conservative ground force; In long-term play, Koch-backed Americans for Prosperity works to build permanent ground force”, October 7, 2014.
*7: Matea Gold, “Democratic legal watchdog group accuses RNC and outside groups of illegal coordination”, October 15, 2014.

■清原聖子 明治大学准教授