タイプ
論考
プロジェクト
日付
2014/12/10

?2014年アメリカ中間選挙 update 4:州知事選結果と2016年共和党大統領予備選候補予想(池原麻里子)

例年になく現職が苦戦した州知事選だったが、結局、再選を目指した現職29名中、24名(バーモント州を入れると25名)が再選された。しかし、現職4名が落選したのは、2002年以来、最多である。(参考:1960年以来の州知事再選率は拙稿「再選で苦戦する州知事たち」図表3 http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1365

現職で落選したのはショーン・パーネル(共・アラスカ)、トム・コーベット(共・ペンシルバニア)、パット・クイン(民・イリノイ)、そして予備選挙で落選したニール・アバクロンビー(民・ハワイ)の4名。(ハワイ州では結局、民主党支配は継続。)

バーモント州では、民主、共和党以外の候補者も加わった戦いとなり、現職のピーター・シャムリン(民)が 46.4%獲得し、最有力対抗馬スコット・ミルン(共)は 45.3%を獲得した。シャムリンが、過半数票を獲得できなかったため、州議会が1月に勝者を決める。州議会は1853年来、歴史的に支持率を一番獲得した候補を任命しており、また州議会は民主党支配なので、シャムリンの再就任は確実視されている。

全体的には、共和党は24州で勝ち、中間選挙前より州知事を2名増やしたのに対し、民主党は10州(バーモントを含むと11州)で勝ち、中間選挙前より4名(バーモントを含むと3人)減らした。

現職がいないオープン・シートでは、アーカンソー、メリーランド、マサチューセッツ、ロードアイランドの4州が民主党、アリゾナ、ネブラスカ、テキサスの3州が共和党支配だったのだが、中間選挙後はロードアイランド以外の6州が共和党の手に落ち、共和党の躍進が際立った。また、アーカンソー、イリノイ、メリーランド、マサチューセッツという現職が民主党だった州で、アーカンソー以外の3州は2012年、オバマ大統領がそれぞれ17、26、23ポイントで楽勝した州で、今回の中間選挙でも民主党が優勢と見られていたにもかかわらず、結局、落選した。オバマ不人気が影響した形となった。これに対し、民主党が新たに州知事となった州は、共和党現職の不人気から、民主党候補の当選が確実視されていたペンシルバニアだけである。アラスカでは無所属が現職共和党州知事に勝った。

直前までトスアップと予想されていた現職の再選について注目してみると、共和党はフロリダ、ジョージア、カンザス、メイン、ミシガン、ウィスコンシン5州で、全員が再選を遂げた。これに対し、民主党はコロラド、コネチカット、イリノイ3州でイリノイだけを落とした。これで現職の強さが明らかになったし、危機感を抱いた党がラストスパートでかなりのテコ入れしたことが効いた。

全州知事選の結果は次の通り。(勝者は太字、赤い州は今回新たに共和党が勝った州、青い州は今回新たに民主党が勝った州)



勝敗の決め手となった多額の広告費など
 

州知事選には多額の広告費が投じられ、それが果たした役割が注目される。例えば、大接戦となったフロリダでは、現職リック・スコット陣営とそれを支援する団体は何と6100万ドルを投じ、これは州知事候補中、最高だった。これに対して挑戦者チャーリー・クリスト元州知事側の広告費は3400万ドルだった。支持票1人当たりに費やされたTV広告費をみると、スコット陣営は21.50ドル、一方、クリスト陣営はほぼ半額12.25ドルを費やした計算になる*1 。

また共和党候補が民主党現職を追放したイリノイでも、両陣営は大金を投じており、ラウナーの支持票1人当たりのTV広告費は21ドル、クインも22.75ドルという結果が出ている。ラウナーは最低、自己資金2600万ドルを本選挙に費やしており、豊かな広告費の財源となった。

全体的に州知事選のTV広告費は5億5千万ドルで、当選した候補に費やされたのはその60%。そして勝者中18人が、対抗馬より100万ドル以上多くTV広告費を費やしている。外部の資金源としては州知事連盟が重要な役割を果たし、共和党は2850万ドル、民主党は1720万ドルを投じた。またそれ以外の第三者グループも共和党側1300万ドル、民主党側1100万ドルを費やしている。州知事連盟と第三者組織は広告費の約25%を投じており、その大半がネガティブな内容で、支持候補の勝利に貢献した。

これまで民主党が圧倒的に優勢だったグラウンド・ゲームでも、今回、共和党はひけをとらなかった。デジタル技術を駆使し、”High Value GOP”と呼ばれる共和党候補を支持しそうな有権者をターゲティングし、投票場に足を向かせることに成功したのだ。
 

2016年大統領選挙へ
 

さて、中間選挙の結果をふまえ、2016年の共和党大統領候補予測が盛り上がり始めたが、中西部の州知事を選ぶべきであるという声が上がっている。例えば、共和党世論調査専門家ビル・マッキンターフは、ブルー、またはパープル・ステートで保守的改革を実施していて、ワシントン批判をできる州知事がよいと指摘している*2 。つまり、ウィスコンシンのスコット・ウォーカー、オハイオのジョン・ケイシックなどだ。また、インディアナのマイク・ペンス、ミシガンのリック・スナイダーも見逃せない。中西部以外では、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事や、クリス・クリスティー・ニュージャージー州知事なども出馬を検討しているといわれている。
 
ウォーカーは州職員の労組交渉権限を奪たことからリコールされたが、米史上初めてリコール選挙を生き延 びた。保守政策を推進したことから、中道、穏健派共和党有権者の支持を失ないながらも、今回、再選を果たしたことから注目されている。ウィスコンシン州は2012年にオバマ大統領を7ポイント差で再選しており、リベラルなタミー・ボールドウィンを上院に送り込んだ州で、接戦と見られていた州知事選だったが、ウォーカーは5.7ポイント差で再選を果たした。

対抗馬のメアリー・バークはTrekという自転車メーカー創業者を父に持ち、自身も同社に勤務。州商務長官を務めた経験があるが、政治家としては新人である。中絶禁止や、参政権に州発行の写真付き身分証明書取得を義務付けるウォーカーの政策を批判し、ウォーカーのリコール原因となった州職員の労組交渉権限を復活させると公約していた。また、2010年のウォーカーが公約した25万人の雇用創出が、その半数以下の111,000万人にとどまったことや、教育予算を10億ドル以上、カットしたことを攻撃した。

共和党全国委員会委員長(ウィスコンシン出身)は、保守のスター、ウォーカーが「共和党の未来だ」と宣言し、党はその再選を優先課題としていた。ウォーカーが2500万ドル集めたのに対し、バーク自身も選挙資金1500万ドルのうち3分の1に相当する500万ドルは自己資金を投じた。両陣営4000万ドル以外から2000-3000万ドルが投じられ、総額6000万から7000万ドルが費やされた、ウィスコンシン州知事選で最も高い選挙となった。
 
結局、現職に対するレファレンダムであるはずの選挙で、オバマ大統領に対する不満が高まっていることがウォーカーに有利に働いた。(もっとも連邦議会共和党議員に対する不満も高い。)地元紙の出口調査によると、過半数が大統領に不満で、経済に不安を抱いていることが明らかになっている。ウィスコンシンの失業率は4年前の7.7%から5.5%に下がり、全米の5.9%より低いにもかかわらずである。また、ウォーカーの減税策が支持を集めた。
 
 一方、オハイオ州のケイシックは63.8%という高支持率で再選を果たした。下院議員時代は予算委員長として活躍した。州知事としては、企業税、所得税を減税する一方、消費税を増税し、教育予算は充実させている。また医療保険制度改革予算を活用して、メディケアを拡張した。不法移民については市民権を与えることが解決方法であるという見解も示している。2000年に大統領選予備選出馬を検討し、資金が集まらず断念した経歴の持ち主でもあるが、2015年に出馬した場合、超保守的なポジションを打ち出す必要がある共和党予備選を勝ち抜けるかが、注目される。
*1: http://www.publicintegrity.org/2014/11/05/16175/ad-war-winners-take-governors-mansions
*2: http://www.nationaljournal.com/politics/gop-strategists-republicans-should-nominate-a-governor-for-2016-20141113

■池原麻里子    在米ジャーナリスト