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アメリカ経済を考える「在米日系企業による雇用創出は70万人を超える」(山田良平)

February 17, 2015


在米日系企業が米国から行う輸出額について、最新となる2012年の数字は676億ドルとなった。他国の在米拠点と比べて依然大きい規模ではあるが、米国の輸出の4.4%を占めるという比率は前年と変わらなかった。在米日系企業による雇用創出は、インディアナ、イリノイ、テキサスなどで、雇用増がけん引する形で70万人を超えた。

国籍別では日本が筆頭、英国の伸び目立つ

商務省は、米国での外資系企業の活動について、最新となる2012年のデータ(速報値)を11月末に発表した。各国企業の拠点が米国から行った輸出額は3,340億ドルとなり、全体の21.6%を占める(表1)。2011年の21.4%と比べると微増となった。拠点は、外国企業が株式の過半数を所有する子会社を対象としている。

企業の国籍別で比べると、日本は676億ドルで前年と同じく筆頭に位置する。とはいうものの、米国の輸出全体に占めるシェアは4.4%と、2011年と変わらなかった。これは、在米日系企業の輸出が前年比3.9%増と、米国全体の輸出とほぼ変わらない伸びに留まったため。

もともと、在米日系企業の輸出は、化学、機械、エネルギーと幅広い産業主体に渡っており、決して自動車頼みの構図になっている訳ではない。しかし、2012年は自動車の伸びが他産業の緩い伸びを補った。産業別の増減をみると、個別企業名が判別される可能性があるため非公開となっている数字が多いものの、化学は7.1%減、エレクトロニクスは23.1%減などが響き、製造業としては前年比3.8%の伸びに留まった。一方で自動車輸出は、本統計においては製造業と卸売業の2カ所に表れるが、輸送用機器(製造業 部門)は10.2%増、自動車・同部品(卸売業 部門)は24.8%増と、共に伸びた。

これを裏付けるように、日本自動車工業会の米国事務所が発表したデータによると、日系自動車メーカーの米国生産車の輸出台数は、2012年は33万5,680台と前年比で約30%伸びた。10月に発表した2013年の輸出台数も、39万1,336台と前年比で16.6%増えており、好調を維持している。

他の国では、英国が大きく伸びて518億ドルとなり、ドイツを抜いて日本に次ぐ2位になった。在米英国企業の輸出の内訳は、8割を超える433億ドルが製造業によるものである。更に細かい区分は非公開であるものの、他産業の数字から類推する限り、エネルギー産業による輸出だと考えられる。また、イタリアが246億ドルと大きく伸びてフランス、オランダの額を追い抜いた。在米イタリア企業の2010年の輸出額は35億ドルであり、わずか2年間で7倍以上に拡大した。この関連では、フィアットによるクライスラーへの出資比率引き上げがある。フィアットは、2011年7月にカナダ政府や米国政府が保有していたクライスラー株を買い取り、46.0%だった比率を53.5%にまで高めた。2012年1月にはさらに5ポイント引き上げて58.5%としている。

在米日系企業の対韓輸出は9億ドル

2012年の統計は5年に1回の基準年となっており、輸出相手も示されている。在米日系企業による輸出の相手国・地域は以下の通りである(表2)。NAFTA2割、日本3割、中国1割弱が目立つところで、以下、韓国、アラブ首長国連邦(UAE)、シンガポールなどが続く。分類不可とあるのは、各企業は50万ドル以上の輸出相手国を申告するようになっており、これに満たない相手国は「分類不可」として束ねられるため

5年前と比べると、対米州が縮小する中で対アジア太平洋が拡大している。中でも、中国への輸出の伸びは目立つ。対シンガポールやフィリピンも増えている。ただ韓国への輸出は、一過性のものである可能性もあるが5年前と比べて減少している。

2012年には、3月に韓国、5月にコロンビア、10月にパナマと批准待ちだった自由貿易協定(FTA)が発効した。米韓FTAの発効後に韓国の乗用車関税が8%から4%へと引き下げられたことを利用して、2012年10月から対韓輸出を始めた日系自動車大手企業もある。自動車のみならず工作機械においても、8%の関税が撤廃されたことを受けた、米韓FTAを用いた米国から韓国への輸出事例はみられる。

なお、ジェトロが2014年11月に発表した米国進出日系企業実態調査によると、米韓FTAの対韓輸出における企業単位での利用率は25.5%となった。米国から韓国へ輸出を行っている企業51社のうち、米韓FTAを利用しているのは13社であり、その業種は、輸送用機器、非鉄金属、化学品、一般機械、電気電子、食品など幅広い。

雇用創出における在米外資系企業の貢献は4.3%

また、在米日系企業が創出する雇用者数(2012年)は71万8,900人となり、前年比では3万4,800人増えた。州別の雇用創出数は以下の通りである(表3)。他国との比較では、英国(96万2,900人)が最大の雇用創出を行う投資国で、日本がこれに次ぐ順位は変わっていない。

在米日系企業の州別雇用創出を前年と比較すると、どの州も小幅な動きではあるが、増加が目立つのはインディアナ(増減:3,600人)、イリノイ(3,400人)、テキサス(3,100人)、ニューヨーク(2,800人)が挙がる。一方で減少しているのは、バージニア(△700人)、ニュージャージー(△500人)、カリフォルニア(△300人)となっている。

在米外資系企業が創出する雇用者数の各国合計は577万人となる。分母を非農業部門雇用者数(2012年は1億3,410万人)とすると、外資系企業が占める割合は4.3%となり、前年と同じだった。

■ 山田良平:日本貿易振興機構 海外調査部

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