タイプ
論考
プロジェクト
日付
2008/2/14

アメリカNOW 第13号出口調査にみる「党内分裂」の現状~予備選挙終盤に向けて~ (2008年2月14日 安井明彦)

24州で予備選挙が行われる2月5日のスーパーチューズデー、首都ワシントン周辺で予備選挙が集中する2月12日のポトマック・プライマリーを終え、米国の予備選挙にはつかの間の静けさが訪れている。共和党では、マケイン候補が指名獲得をほぼ確実としており、オバマ候補とクリントン候補の争いが長引いている民主党も、次の山場はオハイオ、テキサス州で予備選挙が行われる3月4日であるためである。
そこでこの間隙を利用して、これまでの予備選挙における出口調査の結果 を、簡単に分析してみたい。
着目点は、党内分裂の度合いである。民主党側では、オバマ候補とクリントン候補の支持層の違いが指摘されている。この違いが今後の選挙戦に与える影響としては、大きく分けて2つの指摘がある。第一は、今後の予備選挙では、人口構成的に支持層が多いクリントン候補が有利ではないかという意見である。いわゆる「人口は運命だ(demography is destiny)」という指摘である。第二は、本選挙を見通すと、予備選挙戦が長引くほどに党内の亀裂が深くなり、勝者の下に党が団結しにくくなるという見方である。こうした議論に対しては、スーパーチューズデー後の予備選挙で連勝を続けているオバマ候補にはモメンタムがあり、党内の支持はオバマ候補に集束する方向にあるという反論がある。
他方の共和党サイドでは、マケイン候補に対する保守層の懐疑的な見方が指摘される。スーパーチューズデーでのマケイン候補の勝利は、保守票がロムニー候補とハッカビー候補に分裂した結果に過ぎないというわけだ。こうした議論は、マケイン候補が本選挙で勝つためには、保守層をまとめることが不可欠だという結論につながりやすい。
以上の議論を念頭におきながら、出口調査の結果をながめてみたい。図表1・2は、入手可能な各州の出口調査結果を平均した数字である。いずれもスーパーチューズデーと、それ以降(ルイジアナ、バージニア、メリーランド)の予備選挙を分けて表示してある。
民主党、共和党ともに共通するのは、オバマ候補、マケイン候補が、ともにスーパーチューズデーの時点でみられた「党内分裂」を修復する方向に動いているように見える点だ。
民主党の場合、スーパーチューズデーの時点では、様々な部分でクリントン候補とオバマ候補の支持層の違いが浮き彫りになっていた。具体的には、性別(男性はオバマ、女性はクリントン)、人種(白人、ヒスパニックはクリントン、黒人はオバマ)、年齢(若年層はオバマ、高齢者はクリントン)、年収(低収入はクリントン、高収入はオバマ)といった投票層で、両者支持層の違いがみられていた。しかし、スーパーチューズデー後の予備選挙では、オバマ候補がこれまで弱かった全ての投票層において、クリントン候補との差を縮小、もしくは逆転している。投票層ごとの相対的な強さの度合いには違いはないが、全体的に投票者の志向がオバマ候補にシフトしている様子がうかがえる。
その中で、オバマ候補がいぜんとしてクリントン候補に遅れをとっているのは、白人、白人女性、ヒスパニック、そして経験を重視する層である。いずれについても両者の差は縮まっているが、白人女性層の差はいぜんとして20%程度残っている。他方で、経験を重視する層では、いぜんとしてクリントン候補に軍配を上げる向きが圧倒的に多いが、「司令官にふさわしいのは誰か」という問いに対しては、オバマ候補を上げる割合がクリントン候補を上回っている。




共和党についても、マケイン候補の下に支持者がまとまりつつある傾向がみてとれる。3名の有力候補が争っていたこともあり、スーパーチューズデーの時点では、マケイン候補が対立候補の合計を上回る支持を得ていた投票層は多くはなかった。しかし、ロムニー候補の退場も手伝い、スーパーチューズデー後の予備選挙では、マケイン候補が多数の支持を得る投票層が格段に増加している。
それでもマケイン候補に対する懐疑的な雰囲気は残っている。「とても保守」「価値共有を重視する」とした投票層での差の大きさは、指名獲得を手中にした候補としては異例といえるかもしれない。



以上、出口調査の結果を簡単に紹介させていただいた。スーパーチューズデー後の予備選挙については、サンプルとなる州の数が少ない点や、民主党ではクリントン候補の敗北が事前に予想されていたという事情がある。このため、こうした結果をどこまで将来に敷衍できるかは、議論の残るところかもしれない。
最後に、民主党と共和党の予備選参加者について、その構成の違いを示したのが、図表3である。ここにあるように、民主党と共和党の支持者の構成には明確な違いがある。一点だけ指摘すれば、共和党の参加者に占める保守層の割合は、民主党におけるリベラル層の割合を上回っている。予備選挙の参加者数で民主党が共和党を大幅に上回っている点を考え合わせると、中道よりの支持者が民主党側にシフトし、結果的に共和党支持者の「保守化」が進んでいるのかもしれない。


________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________
i: CNN及びMSNBCのウェブサイトより入手。全ての州で出口調査が行われているわけではない点、また、確定値ではないため、今後数字が変わる可能性がある点には注意いただきたい。


■安井明彦:東京財団現代アメリカ研究プロジェクトメンバー、 みずほ総合研究所ニューヨーク事務所長