タイプ
論考
プロジェクト
日付
2009/7/2

ワシントンUPDATE No.1 「共和党の危機」

ワシントンUPDATE No.1 「共和党の危機」


2009.06.27

スコット・ベイツ(元バージニア州務長官、コネチカット・カレッジ客員教授)


アメリカ共和党は、アイデンティティの喪失と指導力の欠如という危機ゆえに30年ぶりの支持率低迷に苦しんでいる。2012年の大統領選挙に向けて、ここ数週間の間に共和党の有力候補者のほぼ全員がスキャンダルなどにより自滅して、共和党は国民的な指導者やメッセージの不在という状況に陥っている。

共和党の盛哀と民主党の台頭:レーガンからオバマへ

共和党は、1980年以来、ロナルド・レーガン大統領によって打ち出された明快な哲学に支えられて興隆してきた。「政府は問題を解決するどころか、政府そのものが問題である」というレーガンの哲学は、減税、規制緩和、反共主義、伝統的な家族の価値観重視などの政策となって体現された。

ところが、30年の長きにわたってアメリカ政治を支配したレーガンの哲学も、ジョージ・W・ブッシュ政権末期に米国が直面することになったシステミックな危機に対して、効力を失い始めたのである。

オバマ大統領が登場すると、リンドン・ジョンソンの「偉大な社会」以来の大きな政府の時代を迎え、これまでのところ米国民の60パーセントがオバマを支持し、不支持の33パーセントを大きく上回っている。

支持率がここまで高ければ、もしいま大統領選挙を行えばバラク・オバマが再選されることはほぼ確実だろう。他方、もしいま選挙を行うとしても、有望な共和党の対抗馬が現れるかと言えば、それはわからない。先月だけで6~7名の有力候補が、2012年の共和党大統領候補の指名を獲得するチャンスを失ったのだ。

2008年の大統領選挙では、選挙民の4人に1人が非白人であるというアメリカ社会の人口動態が明らかになった。この比率は歴史上もっとも高い数字であり、どのような政党であれ、選挙で成功を収めるには、アメリカ社会のこの変化を反映するリーダーを必要としたのだ。

新しいタイプの共和党リーダー:ジンダルとペイリン

この意味で共和党には、ルイジアナ州知事ボビー・ジンダルとアラスカ州知事サラ・ペイリンという二人のリーダーがいる。

ジンダルはインドからの移民2世であり、インテリとして名声が高く、やり手のリーダー、州知事として評価されており、共和党大統領候補の一人とみなされていた。

サラ・ペイリンは間違ってもインテリであることを非難されるようなことはないが、労働者階級の男性にアピールするという点で共和党にとって異なるタイプのリーダーである。

これまで大統領候補を狙う有力政治家がすべて白人男性であった共和党において、ジンダルとペイリンは新たな顔として注目された。

そのジンダルとペイリンが、最近、おそらく修復不能と思われる過ちを犯した。オバマ大統領の一般教書演説に対する反論の機会を与えられたジンダルは、未曾有の危機において新しいアイディアを何一つ提示することなく、堅苦しい講演調の話に終始したため、その政治生命は絶たれたも同然の結果となった。

ペイリンは、アラスカ州議会で苦労したあげく、めったに訪れないワシントンでは、つまらない争いに巻き込まれ、荒っぽい歓迎を受けた。どうもペイリンは買ってはいけない喧嘩を買って出る傾向があるようだ。デビッド・レターマンが夜のトークショーでペイリンの娘をネタにジョークを放ったのを受けて立ち、ペイリンがレターマンにやり返した。

共和党の保守層は、コメディアンとの機知の争いにのめり込んだ彼らのヒロイン、ペイリンを支持したが、国民の大半はこのペイリンの振る舞いを大統領にふさわしくないと見た。こうしてペイリン人気も失速したのである。

不倫に沈んだエンザインとサンフォード

共和党では、他にも二人の有望な候補が保守派の支持を集め、2012年の選挙で大統領の地位を目指していた。ネバダ州出身のジョン・エンザイン上院議員とサウスカロライナ州知事のマーク・サンフォードである。

保守的、魅力的、野心的な人物で大統領選への出馬を狙っていた。家族を大事にすると見られていたこの二人の男が、ここ10日くらいの間に相次いで不倫を認めた。これは、共和党保守層にとっては許すことのできない不謹慎な行為であり、宗教心の薄い国民に対しては、偽善者であるとの非難に自らを晒すことになった。

重量級のロムニーとギングリッチ

共和党の重鎮の中には、前マサチューセッツ州知事のミット・ロムニーと元下院議長のニュート・ギングリッチという、長きにわたり大統領を狙ってきた二人の経済保守派がいる。彼らは2008年の大統領選挙が終わった直後から、次期大統領選を意識した全国規模の遊説を繰り広げている。

ロムニーは、未曾有の危機の中で、経済問題に関して現政権に取って代わるべき候補として自らを売り出している。しかし、ロムニーの自由放任主義的経済政策は、共和党内では支持を得られても、今回のようなシステミックな経済危機に見舞われて政府に積極的な解決策を望む中流階級に対しては説得力がない。

ギングリッチは、アメリカが直面する重要案件については、どんな問題に対しても政策提言を提示できる共和党きっての政策通でありリーダーである。彼は1994年、共和党が30年ぶりにアメリカ議会の上下両院で多数派を占める「革命」を実現した人物だ。

その戦闘的なスタイルゆえに権勢の頂点を極めたが、そのスタイルが今度は、わずか4年後の失脚につながったのである。以来、ギングリッチは、メディアのコメンテーターとして、また問題解決を目指す革新的な政策を提供するシンクタンクのリーダーとして活動してきた。

最近の世論調査で共和党内のギングリッチ支持率は再び上昇しており、大統領候補として名前が上がるようになっていた。ところが、最高裁判事に指名され国民に人気の高いソトマイヨールについて「人種的偏見を持っている」とギングリッチが非難した時点で、潮目は変わったのである。

この発言に強い拒絶反応が出たため、ギングリッチは発言を取り下げざるを得なくなった。その戦闘的なスタイルゆえに優れた政策論議を台無しにしてしまったギングリッチの昔の姿を思い出させたのである。

穏健派ハンツマンの選択

一方、オバマ大統領は、2012年に挑戦を仕掛けてくる実力の持ち主で共和党穏健派のリーダーであるジョン・ハンツマン・ユタ州知事を中国大使に任命して、その芽を摘むという政治手腕を見せた。ハンツマンは共和党員としてはめずらしく、保守的なユタ州で同性愛者の権利を支持するというユニークな候補だった。

ハンツマンは共和党を再定義する能力を持つ候補として、党内では「一味違う共和党員」と目されていたが、そのハンツマンが大統領選への出馬の可能性を捨てて中国大使を引き受けたということは、2012年の大統領選で、穏健派の彼が共和党候補の指名を勝ち取る見込みはないと判断したことを物語る。

政治の世界では「1週間は一生に相当する(長い)」と言われる。アメリカ共和党はこの言葉が真実であることを願うのみだ。なぜなら、共和党を代表するメッセージと、バラク・オバマの野心的なアジェンダとリーダーシップに対抗できる人物とを探し出すまでには、長い道のりが待っているからだ。


(翻訳:政策研究部 片山正一)


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