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米大統領選挙の結果と今後のオバマ政権の政策の行方

November 6, 2008

東京財団研究員 渡部恒雄

オバマの地滑り的勝利の背景

米大統領選挙が11月4日に行われ、オバマ候補が地すべり的な圧倒的な勝利を得て、米国史上初の黒人大統領となった。大統領に選出されるためには、全米の選挙人の総数538人のうち、過半数の270人を獲得する必要があるが、日本時間11月6日の時点で、オバマ候補は28州で349人の選挙人を獲得し、マケイン候補の獲得選挙人の21州163人を圧倒する得票で勝利した。ミズーリ州とノースカロライナ州の26人の選挙人は、僅差のため、まだ結果がでていない。

また、上下院議員選挙も同時に行われたが、上下院とも民主党が圧勝し、議席を伸ばした。なお上院において、与党の民主党が、野党の議事妨害(フィリバスター)を止めさせることができる絶対安定の60議席を確保できるかどうかは現時点ではまだわからないが、現時点で、民主党は民主党系無所属も含め56議席となり、共和党の40議席を圧倒している。

今回のオバマ候補の地すべり的な勝利の理由は、2004年の大統領選挙で有権者の関心が最も高かったテロ・安全保障から、9月に深刻化した金融危機により経済・雇用にシフトしたため、この問題で終始安定した姿勢を示したオバマ候補が、不安定さと弱さをみせたマケイン候補に対して、選挙民の支持を得たことだ。金融危機が深刻化してから、それまでも30%台という低い支持率を、さらに20%台に落ち込んだ共和党現職のブッシュ政権の史上最低レベルの不人気も、共和党のマケイン候補には不利に働いた。

またオバマ陣営は結束が固く、史上最高額の選挙資金を集め、終始、安定した選挙戦を展開した。かたやマケイン陣営は、マケイン系のスタッフとブッシュ大統領の流れを組む二つの勢力が混在し、本来ならばブッシュとは明確な違いをアピールできるはずのマケイン候補の中道の魅力を生かす選挙を作り出せなかった。

オバマ政権への移行と新政権の政策の方向性

今後のオバマ政権への移行期では、現在の米国発の世界の金融危機を封じ込めるための間髪をおかない対応が求められる。すでに共和党との超党派の協力を宣言しているオバマ陣営は、現ブッシュ政権と緊密に協力して移行チームを作ると予想あれている。特に空白が許されない新財務長官の指名は、当選から数日の間になされると予想されている。

新財務長官は引き続き、金融機関への資本注入などの金融安定化対策を実行していくことになる。次期財務長官として名前が挙げられているのは、ボルカー元連邦準備制度理事会(FRB)議長、サマーズ元財務長官、ルービン元財務長官、ガイトナー・ニューヨーク連銀総裁等だ。ガイトナー、ニューヨーク連銀総裁は、かつて東京の米国大使館に財務省からの書記官として勤務した経験がある知日派であり、日本としては要注目だ。

またイラクからの米軍の撤退とアフガニスタンへの増派という二つの戦争への取り組みが政権の最重要課題の一つとなるオバマ候補は、共和党や軍との連携と連続性を維持するために、ブッシュ政権のゲーツ国防長官を指名する可能性も十分にある。その他の有力候補は、ダンズィグ元海軍長官やハムレ戦略国際問題研究所(CSIS)所長などの名があがっている。ハムレ氏はクリントン政権で国防副長官を歴任したが自身は共和党員。外交を担う国務長官にも、共和党のヘーゲル上院議員やルーガー上院の名も挙がり、民主党からは、ケリー上院議員やホルブルック元国連大使などの名が挙がっている。

オバマ政権の外交政策は、北朝鮮やイランとの指導者とも条件を付けずに話し合うという穏健な関与政策を志向しており、この点が共和党の穏健な現実主義者との超党派での協力が期待される部分である。

対日、対アジア政策では、日本の内部事情に詳しく地域政策の中で日米同盟を最重視する専門家が多かった第一次ブッシュ政権に比較すると、ジェフ・ベイダー、ブルッキングス研究所上級研究員や、バイデン新副大統領の懐刀のフランク・ジャヌージ上院外交委員会上級スタッフなど、中国専門家を中心に日米中の連携で東アジア地域をマネージしていくという方向性が予想される。これは必ずしも日本軽視につながるわけではなく、彼らも中国の将来の不確定性ゆえに日本との同盟性の重要性を理解しており、ジャヌージ氏は最近、日本に一年間滞在し 研究活動を行っているほどだ。

ただし日米中の多国間の枠組みの中では、日本がより明確な外交のゴールを打ち出し、積極的な働きかけをしないと、米中外交の谷間に埋没する可能性はある。日本はオバマ政権では、第一次ブッシュ政権のような「特別扱い」ではなく、より「普通の国」として扱われるという認識が必要だろう。

    • 元東京財団上席研究員・笹川平和財団特任研究員
    • 渡部 恒雄
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