タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2010/10/22

【生命倫理サロン】第2回 再生医療の展望は開けるか

⇒ 第2回テーマ「再生医療の展望は開けるか」

⇒ 開催日時:2010年10月22日(金)15:00-17:00
⇒ 開催場所:日本財団ビル3F 東京財団内会議室
 
⇒ 概要説明(ねらい)
クローン胚、ES細胞、iPS細胞研究が進められ、先端医療の実用化への期待が高まっています。この急速な流れの中で、今一度、守られるべき人間の尊厳とは何か、そもそも医療は何を目指すのか、生物学者と一緒に考えていきたいと思います。分子生物学、発生工学の専門家、勝木元也氏をお迎えし、再生医療の最新動向についての解説、分析を行いながら、ぬで島研究員と議論します。

⇒ 議論の展開
・臓器移植の限界⇒高まる再生医療への期待
・世界初のES細胞由来神経幹細胞の臨床試験をどうみるか
・再生医療の現状と問題点、癌化について
・万能細胞で発生と分化の時計を逆に戻せるのか
・生命操作における生物学的拘束条件の重要性
・再生医療の「不都合な真実」を明らかに
・2010年ノーベル医学生理学賞(体外受精でエドワーズ氏)をどうみるか

⇒ スピーカー紹介
勝木元也 
自然科学研究機構理事、新分野創成センター長。日本学術振興会学術システム研究センター 副所長、基礎生物学研究所名誉教授。九州大学生体防御医学研究所教授、東京大学医科研究所教授、基礎生物学研究所長などを経て現職。専門は分子生物学、発生工学。共著書に『対談集 先端バイオの先を読む-トップサイエンティストたちの知的格闘』(共立出版、2001年)、編書に『マウス-DNA生物学のゆりかご』(共立出版、1997年)など。

ぬで島次郎研究員

⇒ スピーカーからのコメント
・臓器移植については、再生医療と関連づけて考えない方が良いと思います。臓器が不足しているというのは、脳死が不足していると言うことです。死は本人にとっては、生の一部ではなく、本人の知るところではありませんが、死ぬまでは臓器を含めて、その人の所有物です。さて死は本人が決められることでないとしたら、脳死として臓器移植の為に医師が規範に従って功利主義的に決めることで良いのでしょうか。長くなりますので、結論から言いますと、きわめて懐疑的です。

・ヒトの体外受精に対するノーベル賞授賞に対しては、?島さんの本来のお聞きになりたかったことではない答え方をしましたが、質問を頂いたときにすぐに「人を家畜と見なす技術」と言うことが頭をよぎりました。確かにマウスや、ウサギやウシなどでの研究者や専門家による重要な貢献は知っておりますが、それは受精のメカニズムに関することで、さらに畜産の目的の為に(乳牛を得る為に飼育してきた牝ウシから牡しか生まれなかったら、農家は悲惨なことになる為、X型精子の分別が経済的に重要でした)様々な技術開発がなされてきました。ヒトもきっと男女の産み分けについて興味ある技術や言い伝えがありますので、それを家畜と同様に体外受精を通して技術的に選別することが最初にあったのではないかと思います。しかし体外受精は、ヒトに適用すると(中略)、必ず選別や、操作に使われ、本人の人としての自由の基である「偶然の受精と予測不可知」という「個人にとっての生物的拘束条件」が揺らぐことになります。したがって体外受精は人に適用すべきではないと考えますので、この技術の開発者を賞賛する気に全くなれません。

・集まりで私の意見を吐かせて頂いて、皆さんにはご迷惑だったかもしれませんが、私にとって、とても楽しい午後でした。マイケル・サンデル(ハーバード白熱教室/正義論)を引いてみましたが、私はリバタリアンでもないし、身体を越えた自己所有からの新自由主義的競争原理は苦手です。むしろ度々使った「生物的拘束条件」というのは、多様性の保障という概念に近く、落語のなかの秩序のように、多様な生を尊重し、苦痛や死でさえ、呑み込んでしまうような共同体が理想です。一方向の価値だけを正義とする社会は大変苦手であります。

⇒ 参加者のコメント
・医療技術の進化に人類の知恵が追いついていない。医療技術という知識は進んでも、それをどう使うべきか、どう使われるべきか、という知恵を作っていないからこそ、臓器移植を巡って議論が残されている感がある。仮に、人体のほとんどの組織を移植したり、再生したりした場合に人格の維持はされるのか、人体の所有権という概念は、あらゆる所有権の中でも最も厳格に捉えるべき問題であるが、部分的に修正は許されるのか。まさにタブーなき議論が必要である。(30代男性)

・心と身体はつながっていることを改めて気付かされました。例えば、豚の組織を体内に移植すると、アイデンティティ・コンフュージョンが起こるという話。体外のものを体内に取り込むということは、精神的にも大きな変化が起こる可能性(危険性)は当然ながら充分にあるのだと思いました。勝木先生とぬで島研究員とざっくばらんに話し合うことができて良かったです。(20代女性)

・医療技術の急速な進歩で、これまで治療不可能だった病気まで治せる可能性が出てきている。勝木先生のお話では、「再生医療の不都合な真実を明らかに」ということが繰り返されていた。プラスの情報ばかりが報道され、マイナス情報があまり出てこない。限りある生命に「何でも可能」という幻想を抱いてしまうことは危険だと思う。医療関係者には、医療技術についての現状・課題を整理し、わかりやすく一般人に伝えていただきたい。医療の問題は、医療関係者、患者だけではなく、みんなの問題になるのだから。(40代女性)