タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2011/11/21

【生命倫理サロン】第8回「節電と医療・医学研究 ~エネルギー問題からみた生命倫理」

⇒ 第8回テーマ: 節電と医療・医学研究 ~エネルギー問題からみた生命倫理

⇒ 開催日時: 2011年10月31日(月)18:00-20:30

⇒ 開催場所: 日本財団ビル2階 第1-4会議室

⇒ 概要説明(ねらい)

 東日本大震災による電力供給の不安定化は、私たちの社会生活に大きな影響を及ぼすことになりました。
 今夏、医療機関は電力使用制限令の対象から外れたものの、大学など医学関連研究機関は節電要請の対象となりました。その影響で医学研究が遅れることは、長い眼で見れば医療の進歩に関わる問題となるでしょう。

 今回のサロンでは、今夏の節電要請が実際に医療と研究の現場にどのような影響を及ぼしたか、専門家から話を伺い、今後の望ましいあり方について議論します。
 
 また、私たちが取り組んできた、高度医療と医学研究を担う機関(大学附属病院、国立研究機関など)の使用電力量調査の中間報告を基に、医療全体における先端医学研究の位置付けを見直しながら、医療における資源配分のあり方を、経済政策・社会保障政策としてだけではなく、価値観に基づく生命倫理政策の問題としても考えなければならないことを示したいと思います。

  電力と資源の制約が、環境問題だけでなく、医療問題でも、人の欲望をあきらめさせる条件になるのでしょうか。エネルギーの有限性が、生命を操作する先端医療・研究の限界を画す制約条件になるとすれば、地球環境問題と生命倫理が同じ次元で語れるようになるでしょうか。みなさんと考えてみたいと思います。


⇒ 議論の展開

◆研究機関の電力使用について(主に絵野沢伸氏)

・医療に対する研究部門の電力使用の比重は比較的高いようであるが、医学研究では何に最も電力を使うのか
・この夏の節電要請下で、研究現場にはどのような影響があったのか
・成育の先端医療(臓器移植、胎児治療、生殖補助、出生前・着床前診断など)は、節電で何らかの影響を受けたのか
・今夏の経験をふまえ、この冬以降の節電対応は、医学研究現場にどのように適用されるべきなのか
・電力ないしエネルギーの制約は、生命を操作する先端医療研究への歯止めとなりうるのか、いいかえれば、先端医療研究はsustainable developmentをいかにして果たすのか。

◆医療機関の電力使用について(主に今村聡氏)

・一般の医療機関の電力使用量は、大学病院や国立センターに比べ、どれくらいの規模であるのか
・この夏の節電要請下で、一般医療機関ではどのような対応は採られたのか。医療機関はどのような影響を受けたのか。
・今夏の経験をふまえ、この冬以降の節電対応は、医学研究現場にどのように適用されるべきなのか
・電力ないしエネルギーの制約は、総医療費の抑制に繋がる効果を持ちうるのか。過剰医療に対する歯止めになりうるのか。


⇒ スピーカー紹介
今村聡氏(日本医師会 常任理事)

1977年秋田大学医学部卒業。77年三井記念病院研修医、79年神奈川県立こども医療センター医員、87年浜松医科大学講師を経て、91年に今村医院を開院。97年より板橋区医師会理事に就任し、99年に同医師会副会長。その後、2004年に東京都医師会理事、2006年より現職。医師会では、総務、財務、税制、日医年金、産業保健、環境保健、会員福祉等を担当。


絵野沢伸氏(国立成育医療研究センター 先端医療開発室 室長)

1980年東京医科歯科大学歯学部卒業。84年東京医科歯科大学大学院医学研究科生化学専攻修了、医学博士。84年明治乳業ヘルスサイエンス研究所生理・生化学研究室研究員、89年ニュージーランドオタゴ大学病理学教室博士後研究員、91年国立小児病院小児医療研究センター実験外科生体工学部研究員、97年同部実験外科研究室長、02年国立成育医療センター研究所移植・外科研究部実験外科研究室長、09年東京医科大学外科学第三講座客員教授、10年より現職。日本臓器保存生物医学会(編集/学術委員会副委員長)、日本組織培養学会(評議員)等に所属。



⇒ 聞き手紹介
ぬで島次郎(東京財団研究員) 

⇒ スピーカーからのコメント

・絵野沢伸氏
研究現場にはものを冷やす機器が多い。試薬や検体を保存する冷蔵庫、冷凍庫がところ狭しとならび、個々のパワーは家電品を大きく凌ぐ。レーザー光を用いた分析機、凍結検体の薄切器、遠心分離機なども使用時に冷却が必要である。これらの中には常に冷やしてスタンバイ状態にしておくものもある。冷却機能を有する機器は同時に強力な発熱源である。さらに別室には生きた発熱集団、実験動物、がいる。これらを含む全館が空調によって温湿度コントロールされている。この夏、研究機関では照明、エレベーター、室温管理の他、研究用機材にも優先順位を決めて節電に努めた。そして電力依存の高さを身をもって知ることになった。

・今村聡氏
東京財団という権威のある団体でお話しするということで大変緊張して参加しましたが、アットホームな雰囲気の中で気楽にお話しをさせていただきました。
温暖化対策という観点で、電気の使用量等をいかに減少させるかという取り組みをしてきましたが、今回の経験で改めて患者の生命を預かる医療機関の電力確保および院内各部署における電力需要と、いざというときにどの部署の電力を確保するかというトリアージとその方策について、検討していく必要性を感じました。
今後も東京財団のぬで島先生達とともに検討を進めていきたいと思います。


⇒ 参加者からのコメント

・電力・エネルギー制約が、先端医療研究や過剰医療の歯止めとなり得るか、という議論を非常に興味深く拝聴しました。科学の「欲望」を制限する手立てとして経済合理性という価値基準を援用することの意味、特定の価値基準を持ち出す際の前提となる内発的な動機・倫理のあり方などについて、思いをめぐらす貴重な機会となりました。グローバル化が進む環境下で、安易な相対主義を乗り越えた、より普遍的な生命倫理のあり方にも関心があります。今回のような挑戦しがいのあるテーマを取り上げ、幅広い層の知見を取り込んでいく生命倫理サロンの今後の活動に期待しています。(40代男性)

・今回初めての参加でしたが、生命倫理にこのような見方があるのかと興味を持ちました。実際に様々な立場の先生方のご意見を拝聴することができてたいへん勉強になりました。一研究者として考えさせられることも多く、今後とも参加させていただき、自分なりにいろいろ考えていきたいと思いました。(30代女性)