タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2013/4/24

第15回「動物を犠牲にしない道は開けるか?~化粧品と再生医療の動物実験から考える」

⇒ テーマ
: 「動物を犠牲にしない道は開けるか?〜化粧品と再生医療の動物実験から考える」

⇒ 開催日時
:2013年4月17日(水)18:00-20:00 

⇒ 開催場所
: 東京財団A会議室

⇒ 概要説明(ねらい)

:今年3月11日、ヨーロッパ連合では、化粧品の製品開発で行われてきた動物実験が完全に禁止されました。日本においても、2月末、化粧品会社国内大手の資生堂が、動物実験をこの4月から全廃すると発表しました。この決定は、動物保護の理念が企業の研究開発のあり方を変えた画期的な出来事だといえます。
 
一方、昨年iPS細胞研究がノーベル賞を受賞して以来、再生医療推進の気運が官民挙げて高まっています。しかし再生医療を実現するには、ブタ、ヤギ、サルなど中型以上のほ乳類を、これまで以上に実験動物として使って犠牲にすることが予想されます。
 
 新しい医療技術を生み出すために、動物の命をどこまで犠牲にしてよいでしょうか。この点をどう考えるかは、再生医療の倫理を問ううえで、重要な課題になると思います。しかしこれまで日本の生命倫理の議論では、動物保護の観点から研究開発のあり方を問うことはほとんどありませんでした。 
  
 そこで今回のサロンでは、動物実験の問題に取り組んでこられた東さちこ氏をゲストスピーカーにお迎えし、まず化粧品開発での動物実験廃止に至る経緯と背景について伺い、さらにiPS細胞研究と再生医療開発についてどう見ているか、どのような取り組みが必要か、動物を犠牲にした医療や産業がどこまで許されるのかという観点からご意見を伺い、参加者のみなさんと議論してみたいと思います。

⇒ 議論の展開


1 化粧品開発での動物実験廃止について 

・どういう実験を、どんな動物に、どれくらいやるのか

・なぜ廃止に向かったのか:ヨーロッパで、日本で

・日本の動物保護の気運は、実験動物にも及んできているのか

2 再生医療実現のための動物実験について

・iPS細胞ノーベル賞受賞と再生医療推進を、動物保護団体はどう見るか

・再生医療の開発研究で、大型哺乳類の使用はどこまで認められるか、認められない
化粧品で廃止でも、医療では廃止とはいかないか

・iPS細胞は、動物を使わない代替実験法開発のツールとして有望か

・動物保護法の中での動物実験の位置付け:「適正に行われる動物実験は動物虐待ではない」
適正の基準=三つのR(代替、減数、苦痛の軽減)
     ~厳しく求めれば全廃へ? 別の次元?

3 動物はなぜ保護されなければいけないか:動物の地位について考える 

・動物は 刑法では器物/民法では財物/動物愛護法では「命あるもの」
ペットと実験動物の違い
日本と西洋の違い(「感覚ある存在」)

・動物の尊厳と人の尊厳との、連続するところと断絶するところ
日本:動物実験の倫理=原則のみ法規定あり/人体実験の倫理=法規定なし
人にしてはいけないことを動物にしていいか、いけないか/その根拠は

 
⇒ スピーカー
: 東 さちこ氏
(「さよなら、じっけんしつ~脱・動物実験を目指す情報サイト~」主宰、動物保護団体PEACE代表)
1992年、津田塾大学学芸学部国際関係学科卒。学生時代に「動物の権利」論を卒論のテーマに選び、自らもベジタリアンになる。2000年、個人サイト「さよなら、じっけんしつ」を立ち上げ、実験動物の里親探しなどの活動を開始。
動物ライター、NGO職員などを経て、2012年、仲間と動物保護団体PEACE (Put an End to Animal Cruelty and Exploitation)を立ち上げ、活動中。


⇒ スピーカー・東さちこ氏からのコメント

日本では、動物にかかわるテーマが生命倫理分野で扱われることが少ないような印象を持ってきましたが、当日はいろいろな立場の方が集まってくださり、新鮮な質問もあって、とても刺激的な経験でした。お招きくださって本当にありがとうございました。

サロンでは、動物実験をほかの方法へ代替していってほしい旨をお話しましたが、本当は、動物実験自体が人体実験の代替法なのであり、実際には、動物を用いない「人体実験の代替法」が必要なのだと思います。

また、私たちの運動には、実験的立証を伴わなければ科学ではないかのような価値観に対して異論を唱えている面があるということにも少し触れればよかったかもしれないと思いました(不自然な状況で飼育している動物で試した結果よりも、実際に人で起きていることの観察による立証のほうが科学的だと考える傾向があります)。

いずれにしても、科学者自らが動物実験を減らそうとする道の中でしか発想の転換は起きないのではないかとも考えており、市民サイドから「倫理的な科学」を求めていきたいと思っています。今後ともこの話題に関心をお持ちいただければ幸いです。


⇒ 聞き手ぬで島次郎(東京財団研究員)



⇒ 参加者からのコメント

・リスクと安全、動物愛護の狭間で正解のない難しい問題だと感じました。色々な代替手段に注力して数を極限まで減らしたいとは思いますが、自分がアレルギーになるのも嫌だと内心でも分かれています。では食料としての動物は?とか、動物の安楽死って本当に分かるのか?その前に人間の安楽死はどうなのか?とか疑問が広がる。(60代男性)

・医療の進歩には動物実験が必要だと漠然と思っていたが、実際にはどのような実験を行っているのかなど知らずにいることは、元の姿を知らずに刺身や肉を食べるのと同じだった…と感じた。薬理の教科書で有効量や致死量(有効率、致死率)という字面や定義は覚えるけれど、その実情も併せて学ぶ機会が必要か。その上で議論しないと、こういう議論のスタートラインに立てない。(40代女性)

・「動物を犠牲にする」ということの定義は何かを考え、どこまで許されるかを法やガイドラインで検討することも急務だと思った。グレーゾーンや緊急性がある場合において、施設等でのバラツキをなくすためにも必要だと思った。(女性)

・堅苦しくなく聞きやすかったです。東さんの見識にはいつも敬服していますが、バランスのとれた進行で聞き手の方のお話もとても良かったです。(30代女性)

・化粧品や薬ができるまでのプロセスを、消費者である国民はもっと知るべきです。たとえば、サルやイヌはダメ、マウスはOKではなく、命をどう捉えるかを考えることが大切だと思います。(40代女性)