タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2016/3/8

[開催報告] 世論調査で生命倫理は測れるか?~実際の調査を例に考える

テーマ

: 「世論調査で生命倫理は測れるか?~実際の調査を例に考える」

開催日時
:2016年2月4日(木)18:00-20:00

開催場所
: 東京財団会議室

 開催概要(ねらい)
   脳死を人の死と考える人は○%、死後臓器を提供したいと思う人は○%、代理出産を認める人は○%、iPS細胞を使った再生医療の研究を進めてよいと思う人は○%・・・。
   倫理が問われる先端医療や研究について、政府やマスコミなどが行う世論調査の結果をよく目にします。みなさんは、そうした調査結果をみて、どのように思うでしょうか。おや、そんなに認める人は多いのか、とか、意外に少ないのだな、とか、いろいろだと思います。
   ではこうした世論調査の数字は、はたしてどれだけ実際の人々の意識を測れているでしょうか? 世論調査の数字を基にして、社会全体でどうするか決めることはできるでしょうか。
   今回は、最近実際に行われた生命倫理に関する世論調査を例に、参加者の方々の意識と調査結果がどれだけ同じか、違うかをまず測ってみます。そのうえで、調査を手がけた関係者をお招きし、調査を行う側の観点から、世論調査の意義と問題点について語っていただき、生命倫理に関する人々の意識をどう汲み取っていけばいいか、参加者のみなさんと議論してみたいと思います。

ゲスト
:岩本裕(ひろし)氏 NHKジャーナル・キャスター
   1965年生まれ。1988年早稲田大学法学部卒業、NHK入局。報道局科学文化部記者、解説委員、週間こどもニュース3代目お父さん、放送文化研究所世論調査部副部長などを経て、現職。著書に『朽ちていった命 被曝治療83日間の記録』(新潮文庫)、『失われた「医療先進国」』(講談社ブルーバックス)、『世論調査とは何だろうか』(岩波新書)など。


⇒ 聞き手紹介
ぬで島次郎(東京財団研究員)



聞き手からのコメント

    長くお休みをいただいていたにもかかわらず、たくさんの方にご参加いただき、熱心に議論を交わしていただきました。どうもありがとうございました。
    例に取り上げた世論調査の、たくさんの質問のなかから、代理出産、臓器提供、出生前診断、安楽死についての設問を取り上げ、調査結果について考えた前半では、予想以上にいろいろなご指摘、ご意見をいただき、だいぶ時間を取ってしまいました。それぞれの問いについて、そのような聞き方ではわからない、もっと設定や状況を詳しく出すべきだとのご意見が多かった一方、逆に、そういう例の挙げ方は適切ではないのではないかというご意見も出て、みなさんそれぞれのお考えを交わしていただけました。生命倫理の問題について意見を述べるには、適切な情報伝達と知識の共有がだいじであることを、あらためて認識できました。
    世論調査という方法が、生命倫理の問題についての社会の意見を汲み取るやり方としてどこまで有効かという後半の議論では、ゲストスピーカーとのやり取りを通じて、「世論調査は国民全体の意識の分布をみるためのものだ」ということがわかりました。いいかえれば、世論調査は「賛成か反対かの多数決をとるためのものではない」ということだと思います。
    平均的な人々の間での意見の分布をみるためにこそ、世論調査は統計の技術が細かく決められていて、質問のしかたも、ある意味で無色透明であることが求められるなど、融通が利かない(利かせてはいけない)こともよくわかりました。したがって、世論調査の結果の数字を、たとえば出生前診断をどこまで進めてよいかといった具体的な政策決定の根拠にすることには、ごく慎重でなければいけないこともわかりました。その点で、個々の世論調査の結果がどのように使われているかを検証することもだいじだというご意見もいただきました。
    時間が足らなくなって、公論を形づくるための世論調査以外のほかの方法との比較検討については、十分議論できませんでした。またあらためて機会をつくれればと考えています。

参加者からのコメント
・意識調査のヴァリューと限界について、全体を通してより深く知ることができてよかったです。個人情報保護法の施行やメディア環境、情報環境の複雑化の中で、世論を測ること自体がむずかしくなりつつあることがわかりました。「どちらともいえない」、「わからない」という答えの大切さが、とくに生命倫理のようなテーマでの調査ではあるだろうと思いました。(50代 女性)

・利益相反、政治、報道、政策といった課題について深く考えることになった。現在の社会システム、社会の構造の中で、このテーマ(生命倫理課題)について、何をすべきか、何ができるか、を引き続き考えていきたい。(20代 男性)

・参加されていた方からの意見や質問は、「より詳細な情報を与えてからの調査を」という考えの元に出たものが多い様に感じましたが、ざっくりとした質問だからこそ、世論の意識がより分かるのではないかと感じました(質問を受けていない人も同じ様な情報量と意識だと思うので)。(40代 女性)

・世論と輿論の違いが分かりました。国民の実態を測るには両方にアクセスする事が大切。特に日本は空気に流され易いですから。(70代 男性)

・世論調査で生命倫理は測れないと思いました。政治は、すべての人に関わりますが、生命倫理は個人的問題と思われがちなので。ただし調査は役立つと思います。(50代 女性)

・アンケート結果は、アンケートのデザイン、ビジネスか否か、問題数などにより左右されること、調査目的やすべての倫理観に配慮してデザインしなければならないことを理解した。(女性)

⇒ お問い合わせ
生命倫理サロン(東京財団内)
seimei-rinri@@tkfd.or.jp
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担当:冨田