生命倫理の土台づくり(-2010)

実施体制

本プロジェクトは2007年11月~2010年3月の期間で実施されました。これをもとに東京財団では、より多くの人々と議論を続けて、社会に広めていく「場」が必要ではないかと考え、2010年9月より新たに「生命倫理サロン」を立ち上げました。

研究の趣旨

日本ではこれまで、先端生命科学・医学の何をどこまで認めるかについて、場当たり的な対応をしてきた結果、ごく一部の医療や研究には厳しすぎる規制がかけられている(脳死移植、クローン関連研究、ES細胞研究)一方で、まったく野放しにされている分野も依然多く(生体移植、生殖補助など)、いびつな状況にある。

この現状は正される必要があるが、現実の政策形成過程では、具体的なルールの提案を行なうと、まずそうした規制を正当化しうる理念的根拠を問われる。さらに、次の二つの面での消極姿勢が、全体を見通した合理的で過不足のない公的ルールの策定を阻んでいる。本研究は、その二つの面での消極姿勢を超え、現実の政策過程で求められる理念的根拠となりうる概念の構築を試み、日本における生命倫理政策の論議をリードすることを目的とする。

1)先端医療の規制に対しては、生命・身体への侵害などのフィジカルなリスクが伴うものでない限り、当事者の同意を要件とする以上の制限は正当化できないとの謙抑的姿勢が見られる。これは生体移植や代理出産などの生殖補助について顕著である。フィジカルなリスクを伴わなくとも、人の生命・身体の要素をどこまで利用してよいか、第三者をどこまで巻き込んでよいかについて、説得力のある判断基準の根拠を構築する必要がある。

2)先端研究の規制に対しては、憲法上の学問の自由を盾に、やはりフィジカルなリスクが伴わない限り、倫理上の理由で研究の実施に許可制や禁止などの制限を立法によって課すことに謙抑的な姿勢が目立つ。しかし現実には、行政指針の形で、多くの研究が国内ではできなかったり(クローン研究)、事実上許可制のような規制を受けており(ES細胞研究)、学問の自由は法に基づかずに制限されている。これは科学政策上、非常に望ましくない状況である。生命現象の本質に迫り、それを深いレベルで操作する力を持つに至った現代の科学技術に対して、そうした事態を想定していない「学問の自由」の概念は、根本的に構築され直す必要がある。

研究プロジェクト「生命倫理の土台づくり」スタート! (2007/11/21)


研究会報告


定期観測-《時評》

本プロジェクトでは、日本の生命倫理政策確立のための理念的根拠=「土台」を構築することを最終目標としています。そこに至る道筋の一つとして、そのときどきの最新動向の紹介や話題となった問題に対するコメントを、土台づくりという広い視点から、短い評論として逐次発信して行くことにいたします。内容はすべて現在進行形です。途中経過で熟していない論点でも大胆に提起して行きたいと思います。ご意見、ご批判をいただければ幸いです。

 

 

 

プロジェクトリーダー

ぬで島 次郎(研究員)

プロジェクトメンバー

  • 橋爪 大三郎(社会学者、東京工業大学教授)
  • 島田 裕巳(宗教学者、東京大学客員研究員)
  • 洪 賢秀(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター公共政策研究分野特任助教)
  • 小門 穂(京都大学大学院博士課程終了)
  • 小林 英司(大塚製薬工場特別顧問、自治医科大学客員教授)
  • 田川 陽一(東京工業大学准教授)
  • 勝木 元也(基礎生物学研究所名誉教授)
  • 光石 忠敬(弁護士)

 

政策プロデューサー