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【Views on China】新しいビジネスアライアンスの可能性 ~日台企業の新潮流(1)~

January 7, 2014

多摩大学准教授 バートル

1.はじめに

日本と台湾は緊密な経済関係に留まらず、民主主義や自由、人権などの価値観でも共有するものが多く、かつ歴史的にも縁が深い。1972年の日中国交正常化に伴い、日本は台湾と断交したものの、日台の民間レベルにおいては経済や文化、人的交流など様々な分野で良好な関係を維持してきた。2012年春に注目されたシャープと台湾の鴻海精密工業(EMS世界最大手)との資本提携をめぐる一連の動向を始め、2013年7月に台湾大手の中国信託商業銀行が日本の中堅地方銀行の東京スター銀行の全株式を買収することで主要株主と合意したことに象徴されるように、日台企業のビジネス関係が新たな局面を迎えている。また、近年における日本の貿易構造の変化とアジア域内における国際分業体制の構築が進む中で、日本とアジア地域、とりわけ中国や台湾を含む大中華圏との経済交流が日増しに活発化しており、双方の企業間の相互補完関係の構築によるビジネス関係の深化、企業間のビジネスアライアンスの重要性が高まっている。

本稿では、日台間の貿易、投資、人的交流の現状と緊密化する中台経済関係の実態を踏まえ、これまで構築されてきた日台企業間の緊密な関係に基づいた新たなビジネスアライアンスの可能性について主にマクロな視点から考えてみたい。

2.日台経済関係の現状

2.1 貿易・投資関係

1990年から2012年までの日台貿易の推移を見ても、2008年秋の米国発の世界金融危機の影響を受け貿易関係が大幅に縮小した2009年を除くと、基本的に増加ないし横ばいで推移している。2012年の日台間の貿易総額は665億米ドル(台湾から日本への輸出額は189億米ドル、日本からの輸入額は476億米ドル)で、過去最高だった2011年(700億米ドル)とほぼ同水準を維持している(図1)。台湾にとって、日本は第2番目の貿易パートナーであり、日本にとって台湾は第5番目の貿易パートナーである。台湾貿易統計(台湾財政部統計処)によると、台湾の輸出総額に占める日本の割合は6.3%と、中国、香港、米国、シンガポールに次いで第4位となっており、輸入総額に占める割合は17.6%と前年に続き第1位となっている(図2、図3)。

(図1:台湾の対日貿易総額の推移)
(図2:台湾の輸出先上位10カ国地域シェア、2012年)


(図3:台湾の輸入先上位10カ国地域シェア、2012年)


日台間の投資関係においては、2009年の中台経済連携枠組み協定(ECFA)発効後、日本から台湾への投資件数と金額は、2009年は266件、2.4億ドルだったが、2012年は619件、4.1億ドルと大幅に伸びている。特に、2011年9月に締結された日台間の投資協定が大きなきっかけとなり、2011年の日本企業による対台湾投資件数は441件、投資総額は4.4億米ドルと、いずれも過去最高となり、日台経済関係は一層緊密化する様相を呈している(図4)。

(図4:日本の対台湾投資状況)

冒頭で触れたように、2013年7月に台湾大手の中国信託商業銀行が日本の中堅地方銀行の東京スター銀行の全株式を買収することで主要株主と合意した。実現すれば、外資系の金融機関が邦銀を買収する初の事例となる。中国信託商業銀行は、今後日本全国の地方銀行にも提携網を広げ、アジアに進出する日本企業を支援する新たなビジネスモデルの確立を目指すとしている。

2.2.日台間の人的交流

こうした日台の経済関係の緊密化に伴い、相互の人的交流も活発となっている。過去5年間の日台双方の人的交流の状況からみると、2009年の世界金融危機と東日本大震災の影響で若干減少した2011年以外は、増加傾向が堅調に推移している(図5)。

(図5:日台間の人的交流状況)

こうした中で、2011年11月に日台間で締結されたオープンスカイ協定により、2012年からは台北市と鹿児島市、静岡市、富山市などの間に新たな航空路線が開かれ、双方の人的往来がますます盛んになっている。日本政府観光局と台湾交通部観光局の統計によると、2012年の訪日台湾人観光客数は143万人(外国人全体では第2位)、訪台日本人観光客数は147万人(外国人全体では第2位)となっており、双方の人的往来の規模は過去最高となっている。  このように、日台関係は貿易や投資など経済関係の緊密化と共に、人的往来も活発化しており、日台関係は新たな段階に入ったと言えよう。
次ページ に続く

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