タイプ
レポート
プロジェクト
日付
2011/11/9

日中政策勉強会レポート「昨今の中国企業の対日・対外投資について」

毎月開催している日中政策勉強会では、9月28日に安志達・中国中信集団公司(CITIC)駐日代表処総代表を招き、昨今の中国企業の対日・対外投資についてご講演いただいた。その後、最近の中国の外交戦略と対外投資状況について、グローバルな視点から高原明生上席研究員をはじめ行政関係者、党スタッフ、議員秘書等が積極的に意見交換を行った。研究会での講演概要は以下のとおり。(文責:東京財団研究員 大沼瑞穂)


1.はじめに ― CITICとは ―

CITICは中国が改革・開放した時に、トウ小平の指示によって窓口として設立したもので、トウ小平の任命によって社長に就任した 栄毅仁氏は、後に国の副主席に就任した。それだけ、国にとってCITICの存在は重要だった。現在は、32万の社員を有している大企業である。

2.大型国有企業による海外投資ブーム

中国が改革開放した際、中国では、資金が非常に不足しており、CITICの設立目標として、外国の資金を誘致する、利用するというものがあった。国の戦略は、どうやったら上手く、できるだけたくさんの外国の資金を利用できるかというような戦略だった。しかし、徐々に資金に余力ができるようになると、逆に海外投資するようになる。総務部国家統計局外貨管理局が、9月6日に発表した中国対外直接投資報告では、2010年度の中国対外直接投資は、21.7%の成長となっており、2010年まで連続9年成長したことになる。昨年はイギリスを越え、世界で5番目に対外投資の多い国になった。しかし、買収事業は、順調とは言えない。例えば中国企業は、アメリカ、オーストラリアなどの外国企業を買収するのに、失敗の比率が高い。経験不足、国の政治的な要因などが理由だが、ようやく買収が成功しても、収益がよくない、赤字が出てくるプロジェクトが多くある。例えば北アフリカの政治情勢が不安定な状態であったため、中国は沢山のプロジェクトを投資していたが、すでに6つのプロジェクトを中止した。その6つのプロジェクトの前年比の収益損は12億人民元。さらに、2009年の国際金融危機の影響はいまだ非常に大きい。

3.エネルギー関連企業の海外投資進出の現状

中国は1993年までは石油の輸出国、それ以降は石油の輸入国となった。統計によると、2015年、中国の石油ニーズの不足分は2億トン程度となる。石油エネルギー資源不足の懸念から、中国はエネルギー関連の海外投資を強化している。20世紀末以降、チャイナオイル、中国石油化学など大手エネルギー企業が海外資源を獲得する動きが出てきた。1つは中東から北アフリカ、もうひとつは中央アジアからロシア。3番目はラテンアメリカを中心とする地域。この3つの地域を押さえることで、中国の主な石油の供給は守れる。ASEANはやはり資源の獲得のために、一番資源の豊かなインドネシアへの投資はある。インドネシアの石油以外はない。

2009年末、中国の5000社の投資会社が海外で1万近くの海外直接投資企業を設立した。チャイナオイル、中国石油化学、中国石油海上の三大国有企業が占めている投資額は30億ドル以上で全体の総投資額の7分の1に上る。そのような状況をみると、中国の海外進出戦略は、メインはエネルギーを獲得する戦略ということがわかる。

4.海外移民による投資ブーム

この1年2年の間に、中国の海外投資は中国の富裕層によって展開している。特に中国富裕層による不動産投資は盛んに行われている。例えば、カナダのバンクーバーの高級マンションは、中国人が半分以上購入しており、イギリスでは、今年の4月、5月中国の富裕層によってロンドンだけで、1.2億ポンド分の不動産が購入された。統計によると、2003年から2011年の間に、香港に対する不動産投資総額はすでに690億香港ドルで投資の総額の35%を占めている。また、アメリカにおける2008 年グリーンカード保持者(中国人)は300人以上。2009年は1,979人、2010年は4月までにすでに772人となっていて、アメリカの全部の移民の占める割合の半分が中国人で構成されている。こうした海外移民が積極的に不動産投資をし、こちらは比較的成功しているというのが現状だ。

5.CITICの海外進出戦略

CITICの海外投資は、第一に主に海外資源への投資である。オーストラリアの石炭、鉄鉱山、アフリカ・ガボンのマンガン鉱山、カナダの林業、カザフスタンの石油。それからボリビアの塩湖開発。第二に海外のインフラ投資。例えば、イランの地下鉄、アルジェリアの高速道路。ベネズエラの公務員住宅団地。こうしたインフラを整える代わりに石油を獲得することはCITICにとって非常に大胆な戦略だった。CITICが実際の資源によって勝ったといえる。第三に、先進国のプロジェクト。CITICの主な目標はエネルギー、資源を獲得することであるが、日本もアメリカも資源はない。したがって、製造業の買収に着目した。アメリカはフェニックス製鉄所。日本では4つのプロジェクト。ポッカコーヒー、鳴瀬製陶、東山フィルム、トライウォール。すでに鳴海製陶の製品は香港、上海、北京、杭州、荊州、香港、瀋陽で販売拠点を置いた。また東山フィルムはパソコン、携帯電話などさまざまなところでフィルムが使われているため、将来中国が大きなマーケットになる。以上の4つは非常に成功した例である。

6.今後のCITIC

以前は、日本での不動産買収に関し、買収のために日本で新たな会社を設立してもいちいち政府に報告する必要はなかったが、今は何に関しても国に報告する必要がある。国は産業政策によって海外投資をコントロールしている。ただ、政府からお金をもらって投資するということはない。国の海外投資戦略を配慮しなければならないということだ。

CITICは最初、製造業、貿易に投資し、後に金融と資源エネルギーに投資するなど、国の発展戦略とともに成長してきた。今国は科学技術が発展しており、CITICは今後の海外投資戦略について、少し見直す必要がある。しかし、しばらくは、海外投資のメインは資源、エネルギー、インフラという時代がもう少し続くだろう。