タイプ
政策提言・報告書
プロジェクト
日付
2008/5/4

政策提言 「北京五輪後の日中関係 ―8つの提言―」

政策提言「北京五輪後の日中関係-8つの提言」

 

このたび、東京財団では、日中関係の第一線で活躍する若手実務家による政策提言「北京五輪後の日中関係-8つの提言」を取りまとめました。

本政策提言の取り扱うテーマは、政治経済の総論はもちろん、消費者やビジネスマンにとって関心が高い「食と農業」、「資源エネルギー」、「環境」、「知的財産」、「文化交流」、「地域協力」といった実務分野にまで及びます。

殺虫剤入り餃子の問題やチベットでの暴動などで揺れる日中関係ですが、中国との関係を安定的にマネージして日本にとって有利な状況を創り出すためには、お互いに利益のある実務分野で一つ一つ協力を重ねて相互依存関係を強化していくことが重要だと我々は考えます。

本政策提言では、こうした基本認識のもと、それぞれのテーマについて実務家ならではの視点で過去から現在に至る経緯を振り返り、現状の問題点と今後の課題を洗い出して、それを克服するための方策案の提言を目指しました。

そうした提言のなかでも特に我々自身として今後もフォローアップしていきたいと考えているものが8つあります。

「八」という数字は、我が国同様、中国においても「末広がり」として縁起の良い数字とされており、北京五輪も08年8月8日午後8時8分の開幕が予定されています。北京五輪後の日中関係が正に「末広がり」で安定的に子々孫々発展することを祈念して、この8つを本政策提言の中心提言としたいと思います。

胡錦濤国家主席の訪日を契機に中国との関係が改めて注目を集めるなか、我々の具体的な政策提言が新たな日中関係構築の一助となることを願ってやみません。



東京財団政策研究部
研究員兼プログラム・オフィサー
関山  健


【8つの提言】


(1)「日中実務家交流プラットフォーム」の開催
「食と農業」、「環境」、「知的財産」、「資源エネルギー」、「文化交流」、「地域協力」などのテーマごとに、日中の若手実務家・専門家が定期的に意見交換・交流できる場として、年に1回程度シンポジウム「日中実務家交流プラットフォーム」を開催することを提案。


(2)若手実務家研修プログラムの立ち上げ
近年、多くの企業・官公庁が語学習得、中国理解、人脈作り等を目的に中国へ留学生を派遣しているが、みな外国人専用の語学コースで座学を受けているだけであり、1年の留学を経ても中国人の友人が一人もいないケースが珍しくない。そのため、「知中派」育成研修の受け皿として、ハーバード大学「日米関係プログラム」のような研修プログラム「日中関係プログラム」を中国の大学で開設することを提案。


(3)中国における「食の安全」キャンペーン
中国産食品の安全性が不安視されるなか、税関における水際の取り締まりだけではなく、抜本的な問題解決と日本と中国双方の消費者の利益のために、「食の安全」に対する中国社会の意識向上を目的としたキャンペーンの実施を提案。


(4)「公害防止事業団」の提言
環境保全投資のための資金が不足している中国において、これを長期・低利で安定的に供給する政策金融機関の設立を中国政府に働きかけ、日本からもコア・マネー提供や専門家派遣などの形での協力を提案。


(5)日中間における「知的財産保護に向けた中長期計画」の策定
中国製模倣品・海賊版製品によって日本企業が大きな被害を受けているが、これに効果的に対処するためには、単に中国へ改善を要請するだけでなく、日中間で協力して中国における法制度改善と摘発能力向上に向けた取り組みをバランス良く、包括的に実施していくことが必要である。そこで、日中共同で「知的財産保護に向けた中長期計画」を策定し、中国国民に対する啓発活動、地方部における適切な法執行の確保、知的財産権関連法分野における学術交流等を具体的に合意・確認したうえで、官民の適切なチャネルで毎年その進捗状況を確認していくことを提案。


(6)学生向け日本紹介DVD無償提供
日本を訪れることができる中国人は経済面や制度面の理由によって限られており、中国国内には「本当の日本」を紹介する映像資料が不足していることから、一人でも多くの中国人、特に若い中国人学生にもっと日本を知ってもらうために、日本紹介DVD(日本の歴史、文化(ドラマ、映画、文学、伝統芸能)、日常生活、政治、経済、IT事情、通訳養成に有益な資料等)を中国各大学に配布することを提案。


(7)「アジア・コール・チェーン」の提言
国内の低品質炭で自給している中国の石炭利用は、非効率で環境上も問題が大きく、エネルギー利用の効率化を目指す中国自身の政策方針にも沿わない。そこで、日中双方の商業上、環境上、エネルギー政策上の利益に適うビジネス・モデルとして、供給余力のある豪州やインドネシア等の「日の丸炭鉱」から、日本の海運会社が持つ専用大型船で中国沿海部の消費地へ高品質炭を運び、これを高効率で環境に配慮された日本のプラントで利用することを提案。


(8)「日中共同メコン開発」の提言
東アジア地域の統合にとって重要な地政学上の意味を持つメコン地域(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム)においては、現在日中両国が影響力争いを展開しているが、それでは日本にも中国にもメコン地域諸国にも得るところはない。そこで、この地域の開発や課題について日中両国で政策協調を図り、同地域の安定的発展に対して共同して取り組むことを提案。


【研究メンバー】
 ■関山 健(東京財団研究員)
   編集および第1章「北京五輪後の日中関係-ポスト円借款時代」担当

 ■前田宏子(PHP総合研究所研究員)
   第2章「北京五輪後の日中政治関係」担当

 ■西村豪太(東洋経済新報社記者)
   第3章「北京五輪後の日中経済関係」担当

 ■福田善久(アイアグリ常務取締役)
   第4章「食と農業から見た日中関係」担当

 ■寺田 強(電源開発室長)
   第5章「資源エネルギーから見た日中関係」担当
  
 ■染野憲治(環境省勤務)
   第6章「環境から見た日中関係」担当

 ■分部悠介(弁護士〈経済産業省模倣品対策・通商室出向中〉)
   第7章「知的財産保護から見た日中関係」担当

 ■加藤嘉一(北京大学日本人留学生会顧問)
   第8章「文化交流から見た日中関係」担当

 ■村上正泰(国際フォーラム所長)
   第9章「東アジア地域協力と日中関係」担当

※ 本政策提言は、各研究メンバーの個人的見解にもとづき東京財団が作成したものです。メンバーが所属する機関・団体の見解を示すものではありません

■英語サイト記事もぜひご覧ください。→ An Eight-Point Proposal for Japan-China Relations