今の中国を理解するための9つの視点 | 研究プログラム | 東京財団政策研究所

東京財団政策研究所

詳細検索

東京財団政策研究所

今の中国を理解するための9つの視点

July 11, 2012

日本と中国は、経済、貿易、文化、人的交流が深まる一方、現在でも尖閣諸島や歴史認識問題、油田開発問題などでは、一気に関係が冷却化する不安定要因を抱えている。政治、行政がいかに問題発生の際、冷静かつ迅速に対応できるか。対中関係者間でのパイプをつなげ、将来起こりうる日中間での問題を予測し、その問題解決のシミュレーションを重ねておく必要があるが、従来からの各省庁間での縦割りに加え、近年では、日中双方のパイプの老朽化、さらに政党間の交流の減少などにより、対中関係者間での情報共有や議論がなされなくなってきている。研究者やマスコミだけで中国について議論していても前に進まない現状がそこにある。

東京財団 「現代中国」プロジェクト では、こうした状況を打破するために、月一回、対中政策を担う国会議員、政策担当秘書、各省庁職員、政党の政調スタッフが一同に集い、現在の中国で何が起こり、今後の中国はどこに向かうのか、それに対し、日本はどのような方策をとればいいのかを議論する日中政策勉強会を実施している。

勉強会は、中国問題の専門家を迎え、中国の現状を理解した上で、参加者全員で議論を行うもので、その内容は、外交・安全保障、政治、経済、社会など多岐に渡る。中国問題の専門家である 高原明生 東京財団上席研究員(東京大学法学部教授)が毎回参加し、議論をリードしている。2010年9月から2011年12月までおよそ1年に渡り、計16回に及んだ対中政策実務者による勉強会での議論を 「今の中国を理解するための9つの視点」 として報告書にまとめた。

研究報告書「今の中国を理解するための9つの視点」の全文(PDF:1.7MB)はこちら

研究報告書の要旨

日本人の対中観と日中関係

近年では、尖閣諸島をめぐる対立などから中国に対する警戒感が高まる一方、多くの日本人が中国の経済成長とともに自分たちも利益を享受していることを同時に理解している。今後は世論調査やメディア報道など多角的な視点からの分析が必要。

政治

ネット言論の統制や民主活動家への迫害が継続して行われている一方、農村では民主選挙が導入されている。しかしボトムアップで民主化が進むより、中国共産党内の党内選挙の拡大というトップダウン型の政治改革が進む可能性のほうが高い。政策決定に影響力のある利益集団と共産党との調整が今後の民主化にとって鍵となる。

外交

リーマン・ショック以降、これまでの外交政策「韜光養晦、有所作為」に「堅持韜光養晦」、「積極有所作為」の四文字が加わった。「積極有所作為」には摩擦を恐れないという意思が内在している。今後は、東アジアの枠内だけでなくより大きな国際関係の中で中国を捉える必要がある。

軍事・安全保障

中国の国防費増加への批判だけでなく現実問題への対応が重要だ。中国は空の管制システムにも主権という概念を持ち込もうとしている。東シナ海では石油・天然ガス以外にも水産資源があり、こうした分野での協力は可能だ。国内の問題としては、海洋法令の整備、特定海域における領海の範囲の見直しが望ましい。

経済・対日投資

不動産バブル、インフレ懸念、人民元問題などの根本的な解決のためには、国内の制度改革を進めなければならない。2015年以降、経済成長率は徐々に低下していくと予想され、個人消費の拡大やサービス業などの第三次産業による経済の牽引という構造転換が必要となってくる。

エネルギー・環境

中国ではエネルギーの7割は石炭に依存し、石油の半分以上は輸入に頼っている。経済成長に伴い、クリーンエネルギーへの転換が謳われているものの、市場主義にそぐわない統制の強い管理体制では国家の政策が地方政府に下達しない事例が多く政策の実行性との間で乖離を生み出す恐れがある。

食糧問題

中国では中東とは異なり、穀物を自給できていることが社会の安定の基礎となっている。しかし、今後水不足や土壌汚染、凶作などで穀物を輸入せざるを得なくなれば、投機マネーの影響を受けやすくなり、価格が高騰すれば社会の不安定化の一要因になる危険性も否めない。

格差

中国の格差問題は経済が自由化する中、土地・戸籍制度は自由化されずそのままであることの矛盾により生じている。都市に住んでいても都市戸籍と農民戸籍によって社会保障や教育の条件が異なり、格差の原因となっている。

中国人を知る

中国社会では、インターネット・携帯電話等の新興メディアが力を持ち始めており、政府の取り締まりが難しくなってきている。一方、取材への制限は変わらないことから情報量は多いが、情報の多様性は見られず海外の情報も遮断されており、いまだ情報公開の制限という本質的な問題が根底にある。
    • 高原 明生/Akio Takahara
    • 元東京財団政策研究所上席研究員
    • 高原 明生
    • 高原 明生

注目コンテンツ

BY THIS AUTHOR

この研究員のコンテンツ

0%

INQUIRIES

お問合せ

取材のお申込みやお問合せは
こちらのフォームより送信してください。

お問合せフォーム