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中国18全大会を受けて ―農村政策の領域に関して

December 5, 2012

中国18全大会を受けて ―農村政策の領域に関して


東京大学大学院総合文化研究科准教授
田原 史起


十八回党大会の報告は,引き続き「三農」問題の解決を全党の事業における重要課題中のさらに重要な課題(重中之重)として位置づけ,「都市・農村発展の一体化」(城郷発展一体化)をその中心となる道筋として打ち出した。胡錦濤政権期以来の「三農」重視の姿勢が基本的には引き継がれたといえる。ただし,これまでは,大量の資金投入を通じて,「三農」それ自体を独立した領域として解決を目指そうとするニュアンスが強かったのに対し,今回の大会では,「三農」問題を都市との関係においてとらえなおし,都市・農村格差の縮小や農業と工業の互恵関係の構築などが謳われている点が新しい。都市・農村が分断された「二元構造」(城郷二元結構)による奇形的な発展を是正する意味で,「都市・農村の一体化」は従来から各界で唱えられてきたが,今回は共産党中央自身が「一体化」を掲げた点に意義がある。

個別の三農政策については,農業の総合的生産力を高め,食糧自給の道を確保すること,インフラ整備や社会事業展開の重点を農村におき続けること,農民の収入向上を維持すること,などの諸点ではこれまでの政策を堅持すべきことが確認されている。これらに加え,今回の報告で新たに強調されており,注目に値するのは以下の二点である。第一に,基層レベルのガバナンス向上につながる,集団経済の増強や,農民専業合作社,その他新たな経営主体の育成と,集約化,専業化,組織化,社会化による新しい農業経営体系の創出が目指されている点である。第二に,地方・基層社会のコントロールと安定に配慮したとみられる,土地収用制度の改革と,土地収益における農民の取り分の増加が強調されている点である。

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