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限界費用ゼロが引き起こすエネルギー・ゲームチェンジ~原発か再エネか、ベースロードの確保、電源別コスト・・・、古典化する日本の議論~

May 20, 2015

東京財団研究員
平沼光

再エネ普及で起きるエネルギー・ゲームチェンジの世界潮流

2014年11月30日、ドイツの4大電力会社の一つでありEUでは第4位の発電規模を誇るE・ON社(エーオン)が、これまで本業としてきた大規模集中型の原子力発電と褐炭や石炭などによる火力発電事業など伝統的な発電事業を採算悪化により本社から切り離して分社化することを公表した。本社は再生可能エネルギー(再エネ)と分散型発電の時代に適応するためのスマート・グリッド、そして顧客のニーズに対応する電力供給サービスの3つを基幹事業にするという方針にその舵を大きく転換することになった。

日本では原発やその他の電力に比べコストが高いとされている再エネだが、諸外国では再エネの投資コストが近年急速に低下していることからその普及が進み、自由化された電力市場で取引を行う国では、燃料費がかからず限界費用(マージナルコスト)がゼロの再エネが市場競争力を発揮し電力卸市場価格を低下させるとともに、メリットオーダー効果により他の電源の電力を淘汰する事態が起こっている。

従い、大電力会社であっても自社の発電構成における再エネ比率が低い電力会社は、市場での取引環境が厳しくなり、再エネに比べ限界費用が高い大規模集中型の原子力発電や火力発電事業などは採算が悪化し経営方針の転換に迫られることになっている。

E・ON社の経営方針転換の事例は、電力自由化市場を有する国における限界費用ゼロの再エネの普及は、エネルギー需給体制を大規模集中・独占型のエネルギー需給体制から多元・分散型のエネルギー需給体制へと転換させることを実証したもので、エネルギー需給における従来の体制やルールを根本から変えるエネルギー・ゲームチェンジが世界で起きつつあると言える。同時にそれは、多元・分散型のエネルギーを有効に活用するためのエネルギー需給システムの開発を促すとともに、それに必要となる技術製品、サービスなどの新たなグローバル市場も生み出しつつある。

古典的な考えから脱却しない日本のエネルギー議論

日本でも2016年には電力市場の全面自由化が行われることになる。再エネの普及を政策的に妨げたり、事業者間における公正な競争が妨げられない限り、好むと好まざるとにかかわらず自由化市場で限界費用ゼロの再エネが取引されることになり、日本でもドイツと同様な事態が起こることが予測できる。
当然それは発電別電源構成にも大きな影響を及ぼすことになるが、現在政府が行っている3.11後の電源構成を決めるエネルギーミックスの議論では、限界費用ゼロの再エネが自由化市場で及ぼすインパクトについて十分検討されているとは言えない。

例えば、電源別費用は大規模集中・独占型時代の積み上げ式の費用が主な検討材料とされ限界費用という視点が欠けているほか、各電源の位置付けもベースロード(原子力、石炭、地熱、水力)、ミドルロード(天然ガス)、 ピークロード(石油)という大規模集中・独占型時代の古典的な考えが主流でメリットオーダー効果という視点が欠けており、このままでは日本のエネルギー需給体制は大規模集中・独占型から脱却することが出来ずガラパゴス化してしまう危険がある。それは、多元・分散型のエネルギー需給体制が生み出すグローバル市場の中で日本が競争力を失うことを意味する。

下記本論全文 では、限界費用ゼロの再エネ普及により起こりつつあるエネルギー・ゲームチェンジの動きに対し日本は対応できるのか、またどのような影響が及ぶのかを再エネ賦課金の上昇、再エネの投資コストなどこれまでの再エネの課題も振り返りつつ考察する。


(論考全文) 限界費用ゼロが引き起こすエネルギー・ゲームチェンジ
~原発か再エネか、ベースロードの確保、電源別コスト・・・、古典化する日本の議論~


目次一覧

◆第三次産業革命のカギとされる限界費用ゼロのエネルギー
◆限界費用とメリットオーダー
◆不採算化する原子力、火力発電を切り離すドイツ大手電力会社
◆再エネの普及で経営が苦しくなっているのは再エネ比率が低い電力会社のこと
◆再エネの担い手は誰か?
◆賦課金の増加を招いたドイツの失敗
◆IEAが示す賦課金の見通し
◆ドイツの家庭用電力料金を上げているもう一つの理由
◆ドイツが陥ったもう一つの失敗
◆二つの失敗を防ぐには
◆限界費用ゼロが生み出すエネルギーのゲームチェンジ
◆古典化するこれまでの日本のエネルギーの議論
◆日本はエネルギー・ゲームチェンジに対応できるか

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