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アフガニスタン:大統領選出とその後の見通し

August 22, 2014

宮原信孝 研究員

ケリー米国務長官の仲介

6月14日行われたアフガニスタン大統領選挙決選投票の結果生じた、アフガニスタンの分裂の危機をケリー米国務長官の仲介で回避し、アブドラ・アブドラ候補(以下「AA」)、アシュラフ・ガーニ候補(以下「AG」)双方が、全投票再検査とその結果の尊重で合意し、7月17日には同再検査が始まった旨、前回の報告で述べた。しかし、その後、同再検査の方法・手順等や挙国一致政府づくりに両陣営の対立が顕になり、同再検査が進まない状況が生まれた。

これに対し、ケリー長官は8月7日再度アフガニスタンを訪問し、両候補と会い、翌日には、前回の合意を再度誓わせるとともに、挙国一致政府づくりに両陣営が着手することを確約させた(*1)。この結果、現在の現地からの報道を見る限り、一方で全投票再検査が進み始め(*2)、他方で両陣営の挙国一致政府づくりの話し合いが行われている(*3)。未だAA陣営より再検査のやり方について批判がなされたり(*4)、アタ・ムハンマド・ヌール・バルフ州知事がAGを認めない発言を行う(*5)など先行き不明な部分もあるが、大統領選出のプロセスは再開した。

これらの動きから読み取れることは、2つある。第1に、オバマ政権が敷いたアフガニスタンからの撤退予定を確実に実行する米政権の姿勢。第2に、イスラム過激組織へは必要あらば、イラクの「イスラム国(IS)」への武力攻撃に見られるような軍事攻撃も行う方針。

オバマ政権は、本年中にアフガニスタン治安部隊(ANSF)を訓練・支援する1万名を残し、全て撤退し、残った1万名も2016年末までには撤退するスケジュールを組んでいる。そのような中、新大統領が決まらないままでは、2015年以降のアフガニスタン駐留米軍の地位を決定する協定が結べない。米国は、9月4、5日英国ウェールズで行われるNATOサミットにおいて同協定を結ぶことを予定しており、それまでに新大統領を決定することは必須事項となっている。

ケリー長官は、2人の大統領候補との共同記者会見において、ISへの攻撃方針についてオバマ大統領の方針として発言の初めの方で言及した(*6)。これは、タリバーン等反政府勢力に対するメッセージの役割を果たしている。アフガニスタンにおいては、米国撤退後をにらんでタリバーンの攻勢が強まっており(*7)、今次大統領選挙で現体制が見せたもろさからすれば、米国撤退後タリバーンが2001年以前のように、あるいはISのように支配地域をもつようになる可能性も排除できない。必要とあらば軍事力を行使した具体例はタリバーン等反政府勢力への警告の意味をもつであろう。

今後の見通し

9月4,5日のNATOサミットに新アフガニスタン大統領が出席できるかどうかは軽々には言えないが、全投票調査を早期に終了させ新大統領を決定するとともに挙国一致政府を構成するための、AAとAG両陣営に対する米国からの圧力は強まり、結局は新大統領が選出され、内容はともあれ挙国一致政府がつくられるであろう。

前回の報告でも述べたように、対タリバーンのポジションをどれだけ強くできるか、あるいはこれ以上どうやって弱めないでいられるか、が課題である。過去1ヶ月の両陣営の対応の経緯は、この方向には進んでいるとは言いがたい。また、8月5日には、ANSF兵訓練施設を視察中のグリーン米少将が同施設に勤務するアフガニスタン兵士に殺害された(*8)。この事件は他の政治情勢とは独立して起こったようであるが、訓練施設で起こったということは、あらためてNATOのANSF兵士訓練能力に対して疑問符がつく(*8)。ANSFに対する指揮能力を新政府がもつことができるかどうかは、対タリバーン戦においては大きな意味をもつ。両候補の発言(*9)を読む限り、両候補の協力姿勢を見られるが、それぞれの陣営内のメンバーの協力姿勢をどれだけ両候補が促すことができるか、あるいは彼らに対するリーダーシップを発揮できるかが、こんごの新体制強化を占うポイントになるであろう。

(注)

  • (*1)8月8日記者会見記録(国務省remarks:remarks with Afghan officials after their meeting: John Kerry Secretary of State; UNAMA Special Representative Jan Kubis; Afghan Presidential Candidate Abdullah Abdullah; Afghan Presidential Candidate Ashraf Ghani、場所: United Nations Assistance Mission, Kabul, Afghanistan) http://www.state.gov/secretary/remarks/2014/08/230420.htm
  • (*2)TOLO NEWS ‘53% of Vote Audit Completed’ 2014年8月19日投稿:   8/18までに53%の再検査が終了した旨独立選挙委員会が発表。   http://www.tolonews.com/elections2014/53-percent-vote-audit-completed
  • (*3)TOLO NEWS ‘Two of Three Working Groups Complete National Unity Negotiations’ 2014年8月18日投稿:8/17、挙国一致政府構成協議のための3つの作業部会中2つが作業を終了した。 http://www.tolonews.com/elections2014/two-three-working-groups-complete-national-unity-negotiations
  • (*4)TOLO NEWS ‘IEC: Tensions Prolong Auditing Process’8月20日投稿 http://www.tolonews.com/elections2014/ec-tensions-could-prolong-auditing
  • (*5)TOLO NEWS ‘Atta Mohammad Noor Responds to Ashraf Ghani’ http://www.tolonews.com/elections2014/atta-mohammad-noor-responds-ashraf-ghani
  • (*6)上記(*1)に同じ。
  • (*7)MSN産経ニュース、7月29日8:22投稿記事 http://sankei.jp.msn.com/world/news/140729/asi14072908220002-n2.htm
  • (*8)BBC News Asia 6 August 2014 Last updated at 00:31 http://www.bbc.com/news/uk-28666287
  • (*9)上記(1)に同じ。
    • 元東京財団研究員
    • 宮原 信孝
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