タイプ
レポート
日付
2014/12/24

2015年以降のアフガニスタン(その2)

宮原信孝 研究員
 

現状から見た2015年以降のアフガニスタンの課題

前回の報告で筆者は、1ヶ月前の現状から見た2015年以降のアフガニスタンの課題につき、次の3点を述べた。
  • ? パキスタン政府の、アフガニスタン・タリバーンと域内諸国の反政府イスラーム過激派の勢力削減への取り組み如何。
  • ? 国際社会の一致した支援体制の継続。
  • ? 米国及び西側諸国によるアフガニスタン和平復興への関与継続の明確化。

これらの諸点について、この1ヶ月間にいくつかの進展があった。

反タリバーン/アル・カーイダ協力

まず、パキスタン政府は、タリバーンとアル・カーイダの勢力削減に対して米国との協力の姿勢をとり始めた。 本年6月から、シャラフ政権は、パキスタン・タリバーン(TTP)に対する攻撃を強化している。今月16日ペシャワールで起きたTTPによる軍学校襲撃と少年生徒虐殺は、この攻撃強化が原因の第1に考えられている(*1)。

アフメド・ラシッド(AR)によれば(*2)、過去10年なかったパキスタン軍によるハイレベルのアル・カーイダ(AQ)指導者(Adnan el-Shukrijumah)の殺害が行われ(12月6日)、米国の無人攻撃機が同じくハイレベルのAQ指導者Umer Farooqをパキスタン国内で殺害するなど、パキスタンと米国の協力が見られるようになっている。更にARは、米国が、今月7日に、アフガニスタンのクナール州にいた9人のTTP兵士を米国無人機により殺害し、かつTTPNo.2のLatif Mehsudを含む3人のTTP幹部をパキスタン政府に引き渡したことを挙げ、この協力の誕生を強調している(*3)。

これまで、アフガニスタン・タリバーンは、パキスタンISIの保護・監督を受け、一方でTTPは、カルザイ政権の支援を受けてきたとされる(*4)。上記の動きは、アフガニスタン、パキスタン両政府が、この状況の不利を悟り、両国の協力にまで進む可能性がある。ARは、アフガニスタン政府は、期待を込めてパキスタン政府の出方を待っているとしている(*5)。

中国の影響力の拡大

筆者のアフガン人友人の1人、ムハンマド・ナジーブ・アジジ博士(*6)が今月18日突然メールで知らせてきてくれたのが、中国北京で行われている中国・アフガニスタン・パキスタンの3カ国協議である(*7)。これは、平和軍縮中華人民協会(CPAPD)が開催し、同協会とパキスタンの地域平和研究所(RPI)が組織した学者・専門家のセミナーが主の協議である。アフガニスタンの代表団長はアジジ博士であるが、パキスタンの代表団長は、Kurshid Kasori元外相である。アジジ博士からのメールによれば、セミナーのテーマは、アフガニスタンと地域の安全保障であり、中国が提唱するシルクロード経済ベルト及び海のシルクロードの構想を元に自由闊達な議論がなされたとのことである。

筆者としては、友人がアフガニスタンの立場をしっかりと話してセミナーを実のあるものにしていったことについては、嬉しい限りであるが、一方で中国の地域構想を下敷きにアフガニスタン、パキスタンの有識者が地域の安全保障を考え始めているところに中国の影響力の拡大を見る。前回の報告で筆者は、中国が域内諸国をまとめる力はまだないとしたが、まとめる力はないとしても、地域の安全保障のルールづくりに大きな力を発揮し始めたと見るべきと考える。中国のシルクロード構想が議論の基礎となり地域の安全保障や開発の潮流やルールが決められていくとすれば、域内諸国もそれになびかざるを得なくなるであろう。このような中で、これまで国際社会としてまとまって支援し、アフガニスタン国家防衛治安部隊(ANDSF)隊員給与も支払ってきている欧米諸国及び日本はどのような役割を果たしていくのか要検討である。

米国及び西側諸国によるアフガニスタン和平復興への関与継続の明確化

 12月2日、ベルギー・ブリュッセルのNATO本部においてアフガニスタンの新政権とNATOは共同声明を発表(*8)し、再度、2015年以降のANDSFへの教育・訓練提供および資金的支援の約束を確認した。アフガニスタン側からは、ガーニ大統領及びアブドラ・アブドラ行政長官両人が同席し、挙国一致をアピールした。また、12月7日には、ヘーゲル国防長官がアフガニスタンを訪問し、2015年以降の米兵駐留数を1,000人増やし10,800人とする旨を発表した。

 米国は、これまで計画に従って撤退を着実に行ってきた。この増員は、首都カブールを含む各地域でタリバーンの攻撃が激化し、ANDSFの能力が不安視される中のことであり、現実に照らし合わせての対応がなされたものと見ることができる。

 しかし、2015年の対応はNATOも米軍も固まったが、米国の現在の計画では2016年には全面撤退となっており、より長期的な関与について検討し、早めに発表していく必要がある。さもなければ、タリバーン等反政府勢力や域内諸国の動きが助長されることになり得る。

必要な成長戦略

 アフガニスタンの安定化のためには、アフガン国民の貧困を減じ、同国の経済的発展を行っていくことが必要である。ガーニ大統領はその道のプロであり、開発発展構想は素晴らしいものができるであろう。しかし、これを実施するためには、治安の安定と海外からの支援が必要である。

 国際通貨研究所の福田幸正によれば(*10)、アフガニスタンは、援助依存体質から脱却し、農業を更に進行させるとともに、鉱業の発展に注力するべきである。アフガニスタン政府は、埋蔵鉱物資源の価値を3兆ドルと見積もっており、援助に頼らない経済を作っていく上での切り札になると考えている。短期的に収益が期待できるのは、北部のアムダリヤ推積盆の石油、首都カブール南東40キロに位置するアイナック銅鉱石、及び中部バーミヤンのハジカク鉄鉱石であるとされる。中国が石油と銅鉱石、インドが鉄鉱石の開発にとりかかっているが、銅鉱石と鉄鉱石は、治安不安定のためとりかかりが遅れており(*11)、開発の見直しを行っている。

 中国、インドの開発を傍観するのではなく、アフガン政府と国際社会が協力して、開発地に焦点を当てた治安対策やインフラ開発等を行うべきである。日本を含む国際社会の積極的な対応が望まれる。

  • (注)
  • (*1)Ahmed Rashid, 2014年12月16日付Financial Times記事”The motives behind the Taliban’s brutal attack on schoolchildren in Peshawar” http://www.ahmedrashid.com
  • (*2)Ahmed Rashid, 2014年12月9日付 BBC News Asia 記事“A Reinvigorated Anti-Taliban Alliance?” http://www.ahmedrashid.com
  • (*3)、(*4)及び(*5)同上
  • (*6)公共政策及び経済学教授、UNITAR及びスタンフォード大学の研究員。岡山大学で開発政策についての博士号取得。
  • (*7)2014年12月17日付 (International) The News Opinion ’ Dateline Beijing’ http://www.thenews.com.pk/Todays-News-9-290576-Dateline-Beijing
  • (*8)Joint Statement by the Islamic Republic of Afghanistan and NATO http://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_115587.htm?selectedLocale=en
  • (*9)2014年12月7日付WEB刊日経新聞記事「アフガン米軍1000人増員 国防長官が表明」http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM06H76_W4A201C1FF8000/
  • (*10)国際金融1265号(平成26年10月1日)福田幸正「アフガニスタン経済:復興13年の軌跡と大統領選挙後の課題」
  • (*11)福田幸正氏からの聞き取り