タイプ
レポート
日付
2007/6/27

イタリア出張報告

「日本のたからもの再発見プロジェクト」の一環でイタリアはピエモンテ州のブラにある食科学大学(University of Gastronomic Sciences)を視察してきました。

ブラは人口3万人の小さな町ですが、スローフード運動*発祥の地でもあり、豊かな食文化が根づいています。大学もスローフード協会が母体で2004年に設立されたばかりです。

それまでは食について学ぼうとすれば、農業は農学部、栄養は栄養専門学校、調理は調理師専門学校という具合に学校が分かれていますし、学部としても化学、経営学、文化人類学、歴史学等にいろいろな学部に散在している状況でした。

食科学大学は食に関する科学・技術的側面、文化・社会的側面、経済的側面等を総合的に学べる世界で初めての教育・研究機関を標榜しています。

3年間の学部コースと1年間の大学院コースがあり、学部の後に続く2年間の専門課程も来年から開設される予定だそうです。卒業生がまだやっと出始めたばかりだと言うのに、日本人留学生が既に10名もいるのは意外でした。

そういえば、ブラ周辺の町、そして昨年冬期オリンピックが行われたトリノでも、美味しいと定評のレストランに行くと必ず日本人シェフやソムリエの方がいらっしゃるので驚きました。いまや、料理界ではイタリアで修行するのは珍しいことではないのですね。日本のイタリア料理のレベルが高い筈です。

それにしても、現地で食べた生ハム、チーズ、オリーブ、オリーブオイル、パスタ、コーヒー、ワイン・・・の美味しかったこと。大量生産では絶対に味わえない伝統の味です。市場原理に任せていたら消えていってしまいかねない、小規模生産者による伝統的食品を大事にする土地柄ならではの豊かさがそこにあります。

翻って日本の食文化は本来、郷土色豊かであった筈なのに、多様性が急速に失われつつあります。儲からないから、効率が悪いからといって、その土地独自の素材や郷土料理を作るのをやめてしまったら、いつか私達の食生活は画一的な、限定的な、味気のないものになってしまうでしょう。

現在取り組んでいる「食のたからもの再発見プロジェクト」ではそんなふうにならないための打ち手を考えています。今回のイタリア訪問から得たヒントをプロジェクトに大いに活かしていくつもりです。


*スローフード運動の本来の趣旨は次の3つに集約されます:
・消えゆく恐れのある伝統的な食材や料理、質のよい食品、ワインを守る
・質のよい素材を提供する小生産者を守る
・子供達を含め、消費者に味の教育を進める


東京財団プログラム・オフィサー 安井 美沙子