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ODA大綱改定への安全保障の視座からの提言

October 23, 2014

国際の平和と安定そして繁栄のために、日本が果たすべき役割は大きい。これまで日本はODAを通じて、主に経済・社会開発の側面から国際社会に貢献してきた。これらは引き続き重要な役割を担うが、今後は国際安全保障の側面をより加味した各種の貢献が求められる。紛争に限らず海賊やテロ、そして大規模自然災害や感染症など、グローバル化に伴う各種の脅威はこれまでの開発の成果を奪う。私たちの生活にも無関係ではない。国際社会の安定は日本の安全と繁栄の前提としても不可欠である。開発と安全保障の両面からの支援が必要となってきている今、日本の有する能力を結集した新たな国際協力の体制整備が急がれる。

このような変化も踏まえ、日本政府は高位の政策文書「国家安全保障戦略」と「日本再興戦略」において、日本にとって好ましい国際環境を実現することを国家目標として掲げた。援助はそのための重要な政策手段として認識されている。新たな援助大綱はこの目標の実現に向けた、ODAに留まらない幅広い支援形態の具体的指針を提示することが期待される。

本提言書ではこうした国内外の潮流と背景を概説するとともに基本的な考えを論じ(第1章)、開発と安全保障の課題に対して日本政府がとるべき具体的な政策を論じている(第2章)。各9提言は以下のとおり。

政策提言「ODA大綱改定への安全保障の視座からの提言 ―『積極的平和主義』実現に向けた包括的な平和構築指針が必要だ」 (PDF:2.65MB)はこちら

 

提言1:平和構築の地平を広げ、「包括的アプローチ」の体制を整備せよ
提言2:国家安全保障会議(NSC)内に「平和構築・国際安全保障室」を設置する
提言3:平和構築人材育成を拡充し、治安・安全保障関係者との意思疎通の向上を図れ
提言4:国際活動を行う自衛隊を補佐する外交・開発アドバイザー職を新設せよ
提言5:広義の平和構築支援拠点として自衛隊の海外拠点を位置付けるべきだ
提言6:平和構築支援のニーズに応える、新たな経済協力手段の整備を進めよ
提言7:能力構築支援事業(キャパビル)の効力を高め、地域の平和と安定を促進せよ
提言8:海洋等における地域の安定を確保するため、装備品供与の支援形態を整備せよ
提言9:積極的平和主義の実施に向けて総合的な「国際協力」の概念整理を求める

 

これらについて、各提言では事例等を用いながら具体的に必要性を説く。本提言書は「開発協力」における基本理念や方針を補完しつつ、さらに、日本外交を効果的に展開する要素として広義の平和構築の観点を重視し、関連する政策指針を新たに盛り込むべきであるとの立場をとる。このため、提言の多くはODAあるいは開発協力そのものについての提言ではない。

変わりつつある国際社会において日本にとって好ましい環境を構築するためには、日本の対外援助の手段を統合した全体的な指針が求められる。次の10年の援助指針を示す新大綱には、このような視点と具体的な方向性が明確に盛り込まれるべきであろう。

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