タイプ
その他
プロジェクト
日付
2008/3/7

海外自治体調査報告:「主権者のいる国 スウェーデン」(福嶋研究員)

スウェーデン憲法(統治法)の第1条には、「スウェーデンの民主制は自由な世論と選挙に基づき、国民の議会と地方自治によって築かれる」と書かれている。「国民は国会議員を通じて行動する(前文)」という日本国憲法とは大きく違う。そのスウェーデンの地方自治の現場を少しだけ見てくることができた。

スウェーデンのコミューン(基礎自治体)は議院内閣制を採っている。人口8万人のソデルタリア市の議会は65議席。一般議員は他に仕事を持っておりボランティアに近い。比例代表選挙で選ばれ、現在は社会民主党が与党。議員数に応じ各党から参加する執行役員会(11名)によって行政を運営する。議会議長が市を形式的に代表するが、執行役員会の筆頭役員が市長である。

議案は議員が提案する。執行役員会ではない。つまり、議会は賛否の表明だけではなく、自分たちで発議して討議して決定する。予算をはじめ市の運営の基本はすべて議会で決めている。その議員を比例選挙で選ぶから、市民は各政党が何を言っているか、政党の政策に非常に関心を持つ。「甘いこと」を言って財源を示せないと最も評判を落とすという。主権者である市民が政治を動かす道具として、政党を使っていると言ってよいのではないだろうか。

スウェーデンは税が高くても、それに見合うサービスを受け取るから国民は納得しているとも言われるが、そういう仕組みを自分たちで決めたという意識があるから納得しているように思う。「納税者」としてではなく、「主権者」として納得しているのだ。
スウェーデンは、コミューンと県と国、それぞれのやることが明確に分かれていて、コミューンがやることは財源も権限もコミューンにある。

教育はコミューン。学校にかなりの権限を持たせている。教科書は、使うか使わないかを含め校長が決める。教員の採用も校長の権限。ただし学力の基準は国が決め、全国一律の学力テストで評価する(もちろん学力とは、丸暗記の量ではない)。この評価も参考に、親や生徒は自由に学校を選択できる。


 私立Viktor Rydbergs Samskola中学校


穏健党が与党のダンデリード市(人口3万人)では、公立と私立の学校の競争を積極的に取り入れて学校の質を高めている。どちらも授業料は無料。私立も税金で運営されていて、コミューンから生徒数に応じて学校運営費がくる。公立も私立も、人気がなくて生徒が集まらないと運営費が少なくなり、先生を解雇することになる。(スウェーデンは公務員も比較的簡単に解雇できる。そのかわり社会人教育が充実し、転職も容易。労働市場の流動性が高いことは、スウェーデン経済の強みの一つのようだ。)

日本での「公共」をめぐる競争は「コスト」中心。本当は「質」をめぐる競争にしなければならない。そして「質」を判断するのは市民だ(市民が選ぶ)。スウェーデンは、安心のシステムの上に競争と選択を入れて質を高めている。そこには、人間の知恵の力によって豊かな社会を創ろうとする実験が歴史的に積み重ねられているように思えた。


 ダンデリード市議会議場